椅子の座と背をひとつながりの薄い曲面としてつくった部材。骨組みを持たず、面そのもので荷重を受ける。名は建築のシェル構造に由来する。
シェル
シェルとは、椅子の座と背をひとつながりの薄い曲面としてつくった部材のこと。骨組みを持たず、面そのもので荷重を受ける。英語では shell と書き、貝殻を意味する。
解説
名は建築のシェル構造から来ている。薄い曲面板を外郭として用い、加わった力を面のなかへ流すことで、材が薄くても大きな荷重に耐える構造である。貝殻や卵の殻が薄さに似合わず強いのと同じ理屈で、材料の厚さではなく曲面の曲がり具合が強さを生む。柱や梁を減らせるため、建築では大きな屋根に用いられてきた。
椅子に置き換えると、座枠・貫・背柱といった骨組みを省けることになる。従来の木の椅子では、座る力を脚へ伝えるために枠を組み、そこへ座面を張っていた。シェルはこの役目を面が引き受けるため、上半分は殻、下半分は脚だけという二部構成が成立する。イームズ プラスチック サイドチェア DSWは一体成形の殻に木の丸棒の脚を差し込む構成をとり、同じ殻に別の脚を組み合わせることで用途の異なる型を展開している。
成立には素材と工法の条件がある。成形合板、ガラス繊維強化プラスチック、ポリプロピレンのように、薄く広い曲面を精度よく作れる材でなければならない。曲率が急な箇所では応力が集中するため、殻の厚みを部位ごとに変えたり、縁を巻き込んで剛性を上げたりする処理が加わる。アントチェア (3100)は座と背を1枚の成形合板でつなぎ、腰の位置でくびれさせることで、身体の動きに合わせて面がしなる余地を残している。
シェルという語は、座と背を一体にしたものだけでなく、座面だけ、あるいは背もたれだけを指して使われることもある。製品の説明で「シートシェル」と書かれている場合は、脚部と分けて交換や色替えができる部材を指していることが多い。
Reference
- シェル構造(artscape 現代美術用語辞典)
- https://artscape.jp/artword/6012/
- シェル構造(コトバンク・世界大百科事典)
- https://kotobank.jp/word/しえる構造-3153792