HAY(ヘイ)

HAY(ヘイ)は、ロルフ・ヘイとメッテ・ヘイにより2002年にデンマークで設立された、現代性と機能性を融合させたインテリアプロダクトブランドです。1950年代から60年代のデンマーク家具デザインの優れた伝統を継承しながらも、インターナショナルな視点を持ち、アート、建築、ファッションの三つの要素からインスピレーションを得て、時代に即した革新的なコレクションを展開しています。

「よいデザインはあらゆる人の権利である」という創業者の理念は、ブランドの根幹をなす哲学として今日まで受け継がれており、幅広い層の人々が手にできる高品質な製品づくりを追求しています。家具から照明、インテリアアクセサリー、ステーショナリーに至るまで、日常生活のあらゆる領域において、美しさと実用性を兼ね備えたプロダクトを提供し、世界中のデザイン愛好家から支持を集めています。

ブランドヒストリー

HAYの歴史は、2002年にロルフ・ヘイとメッテ・ヘイ夫妻、そしてデンマークのアパレルグループ「Bestseller(ベストセラー)」の協力により始まりました。設立翌年の2003年、ドイツ・ケルンで開催された国際家具見本市「ケルンフェア」においてHAYは華々しいデビューを飾り、その斬新なデザインアプローチと洗練されたプロダクトは、瞬く間に国際的な注目を集めることとなりました。

創業当時のデンマークでは、1990年代まで高額なミッドセンチュリーの復刻版家具が市場を支配しており、新進デザイナーが活躍する場は限られていました。また、若い世代は親たちが好んだクラシック家具にこだわらなくなっていたものの、市場には安価で品質の低い製品があふれており、高品質と手頃な価格を両立させた「ハイとローの中間」に位置する選択肢が不足していました。HAYはこの市場の空白を的確に捉え、優れたデザインと適正な価格を実現することで、新しいデザインカンパニーのあり方を示したのです。

設立以来、HAYは国籍や年齢、キャリアにこだわらず、世界中の優れたデザイナーとの協働を重視し、インターナショナルなデザインコミュニティの構築を目指してきました。2013年には、コペンハーゲン大学の新校舎完成に伴う家具リノベーションプロジェクトを担当し、フランスのロナン&エルワン・ブルレック兄弟に依頼した「Copenhague(コペンハーグ)」シリーズは、大学の国際化という時代の要請に応える象徴的なプロジェクトとなりました。

2018年には、日本国内初となる旗艦店「HAY TOKYO」を東京・表参道のGYREに期間限定でオープンし、200坪を超える世界最大級の規模を誇る店舗として大きな反響を呼びました。当初は期間限定の予定でしたが、好評により継続営業となり、日本市場におけるHAYの存在感を確立しています。創業から20年以上を経た現在も、HAYは進化し続ける現代社会のニーズに対応しながら、デザイン界における革新的な存在として、その地位を揺るぎないものとしています。

デザインの哲学とコンセプト

HAYのデザイン哲学の核心には、「よいデザインはあらゆる人の権利である」という民主的な理念が据えられています。この信念は、高品質なデザイン製品を特権的な一部の人々だけでなく、より幅広い層の人々に届けることを目指すものです。共同創業者でありクリエイティブディレクターを務めるロルフ・ヘイとメッテ・ヘイは、洗練された工業生産技術を活用することで、デザインの質を損なうことなく、手の届く価格での製品提供を実現してきました。

HAYの創造的インスピレーションの源泉は、アート、建築、ファッションという三つの領域にあります。ロルフ・ヘイは次のように語っています。「アートの素晴らしい点、それはオリジナリティと思いも寄らない意外性に溢れていることです。建築は、私たちの作品を生み出す背景であり、また実際に用いられる場でもあります。そして、ファッションにはその時代の精神や出来事を反映した力強さがあります。このアート、建築、ファッションの三者の間に存在しながらすべてを少しずつ取り入れることのできた製品こそ、いままで手掛けた中で最高の製品といえるかもしれません」。

デザインアプローチにおいては、1950年代から60年代のデンマーク家具デザインの優れた伝統を尊重しながらも、それに縛られることなく、現代の生活様式に適合した機能性と美しさを追求しています。住まいと職場の境界がより流動的になりつつある現代社会において、HAYの製品は多様な環境とニーズに柔軟に対応できるよう設計されており、ホームユースはもちろん、オフィス、ホテル、レストラン、教育施設など、あらゆる空間において調和的に機能します。

また、HAYは持続可能性を重要な価値として位置づけており、環境への影響を最小限に抑える長持ちする製品の開発に注力しています。リサイクル素材、FSC認証木材、水性ラッカーなどの持続可能な素材の使用を最適化し、エコ認証製品の数を増やし続けています。製品の大部分は、強度、耐久性、および安全性に関する国際規格に準拠するよう厳格にテストされており、品質保証への真摯な姿勢が貫かれています。

代表的なプロダクト

About A Chair(アバウト ア チェア)シリーズ

HAYのアイコン的存在として広く認知されているのが、デンマークのプロダクトデザイナー、ヒー・ウェリングによって手掛けられた「About A Chair(AAC)」シリーズです。このコレクションは、椅子デザインにおける最も基本的でありながら本質的な要素を追求した作品群であり、シンプルさの中に洗練された美学を宿しています。

ポリプロピレン製の頑丈なシートは、アームレストと一体型となった美しい曲線を描く背もたれと融合しており、柔らかな印象と一体感のあるシルエットが、非常に快適な座り心地を生み出しています。人間工学に基づいた形状設計により、一体成型のシートでありながら背もたれがフレキシブルにしなり、座る人の背中にやさしく寄り添います。木製ベースには時代にとらわれないクラシックな表情があり、優れた安定性と長期間にわたる使用に耐えうる品質を備えています。

近年のバージョンアップでは、シート素材に100パーセントのポストコンシューマーリサイクルプラスチックを採用し、環境への配慮をさらに深化させました。また、HAYらしいフレッシュで遊び心のある豊富なカラーバリエーションも特徴の一つであり、多様な空間演出を可能にしています。家庭のダイニングルームから、オフィス、公共施設、商業施設まで、あらゆる場面で活躍する汎用性の高さが、このシリーズの大きな魅力となっています。

Copenhague(コペンハーグ)シリーズ

2013年、フランスを代表するデザインデュオ、ロナン&エルワン・ブルレック兄弟によってデザインされた「Copenhague(コペンハーグ)」シリーズは、コペンハーゲン大学の改装プロジェクトのために生み出された記念碑的なコレクションです。このプロジェクトは、HAY創業時からの夢であったブルレック兄弟との協働を実現したものであり、ブランドにとって重要なマイルストーンとなりました。

コペンハーグシリーズの最大の特徴は、独創的で特徴的な角度を持つ脚部と、薄く仕上げられた天板との組み合わせにあります。この大胆な構造デザインは、視覚的な軽やかさと機能的な堅牢性を両立させており、個性的な魅力を放ちながらも、さまざまな環境に調和します。デザインの伝統と近代テクノロジーを大胆に組み合わせることで、パブリック空間だけでなく、家庭やオフィスなど幅広い用途に対応できる汎用性を獲得しています。

円形のCPH 20や長方形のCPH 30をはじめとするテーブル類、そしてデスクとして機能するCPH 90など、豊富なバリエーションが展開されています。天板には、天然素材由来のリノリウムを使用したモデルもあり、柔らかく滑らかな感触と、指紋が付きにくく手入れが容易という実用性を兼ね備えています。FSC認証取得の木材、水性ラッカーといった環境配慮型の素材を使用している点も、現代的な価値観を体現しています。

Palissade(パリサード)シリーズ

ロナン&エルワン・ブルレック兄弟によってデザインされた「Palissade(パリサード)」シリーズは、屋内外を問わず使用できる多目的なアウトドアコレクションです。その名が示す通り、柵や囲いを連想させる垂直のラインが特徴的なデザインであり、構造的な美しさとミニマリズムが融合しています。

チェア、アームチェア、ベンチ、ラウンジチェア、テーブルなど、多様なアイテムが展開されており、庭やテラス、バルコニーといったアウトドア空間はもちろん、カフェやレストランのテラス席、公共空間など、商業用途においても高い人気を誇っています。耐候性に優れた素材と仕上げにより、屋外での長期使用にも耐えうる耐久性を備えながら、洗練されたデザイン性を失わない点が高く評価されています。

協働デザイナー

HAYの成功の鍵の一つは、世界中の優れたデザイナーとの継続的な協働関係にあります。国籍、年齢、キャリアの長短にこだわらず、才能あるデザイナーとパートナーシップを結ぶことで、多様性に富んだコレクションを実現しています。

Hee Welling(ヒー・ウェリング)

デンマーク・コペンハーゲン出身のプロダクトデザイナーであるヒー・ウェリングは、HAYを代表する「About A Chair」シリーズの生みの親です。人間工学に基づいた機能性と、ミニマルな美学を融合させたデザインアプローチは、HAYのデザイン哲学を体現するものとして高く評価されています。シンプルさの中に本質的な要素を凝縮させる彼のデザインは、時代を超えた普遍性を獲得しており、HAYのアイコン的プロダクトとして世界中で愛用されています。

Ronan & Erwan Bouroullec(ロナン&エルワン・ブルレック)

フランス・カンペール出身の兄弟デザイナーであるロナン・ブルレック(1971年生まれ)とエルワン・ブルレック(1976年生まれ)は、HAYとの長期的なコラボレーションにより数々の名作を生み出してきました。1999年からパリを拠点に共同でデザインを手掛け、Vitra、Artek、FLOS、Kartell、MAGISなど、世界的ブランドとの協働実績を持つ彼らは、現代デザイン界を代表する存在です。

HAYとの協働においては、コペンハーゲン大学のための「Copenhague」シリーズや、屋内外で使用できる「Palissade」シリーズなど、機能性と美学を高次元で融合させたプロダクトを手掛けています。彼らの作品は、日々の暮らしの中で使う小物から建築プロジェクトまで多岐にわたり、パリのポンピドゥー・センター、ニューヨーク近代美術館(MoMA)、ロンドンのデザイン・ミュージアムなど、世界中の美術館に永久保存されています。

その他の協働デザイナー

HAYは、ガムフラテージによる「Silhouette Sofa(シルエットソファ)」、倉本仁による個性的なコートラック「Knit(ニット)」、ジョナス・トラペダッチによる屋内外兼用の「Type Chair」、ベルギーのアーティストデュオ「ミュラー・ヴァン・セヴェレン」による「Ceramic Table」など、多様なバックグラウンドを持つデザイナーとの協働により、常に新鮮な視点を取り入れたコレクションを展開しています。

また、1950年代の名作椅子を復刻した「Lizard Chair(リザルドチェア)」に見られるように、歴史的な名作への敬意を払いながら、現代の技術と感性で新たな息吹を吹き込むプロジェクトにも積極的に取り組んでいます。

インテリアアクセサリーとライフスタイルプロダクト

HAYの魅力は家具だけにとどまらず、日常生活を彩るインテリアアクセサリーや雑貨類にも及んでいます。照明器具、花器、トレイ、キッチン雑貨、ステーショナリーなど、生活のあらゆる領域において、機能性とデザイン性を兼ね備えた製品を提供しています。

例えば、「DLM(Don't Leave Me)サイドテーブル」は、上部に突き出た取っ手が特徴的で、その名の通り「私を置いていかないで」という愛らしいコンセプトを体現しています。軽量で持ち運びやすく、リビング、ベッドルーム、バルコニーなど、どこへでも気軽に移動させることができる汎用性が人気の理由です。

また、上面がトレイになったコーヒーテーブル「Tray Table」シリーズは、フチがあることでドリンクのグラスやフラワーベースを安定して置くことができ、実用性とデザイン性を高い次元で両立させています。サイズやカラーのバリエーションも豊富で、個々の空間や用途に合わせた選択が可能です。

照明器具においては、ライスペーパーを使用したライトシェードなど、素材の持つ温かみと北欧らしいミニマリズムを融合させたデザインが展開されています。花器や食器類では、色とりどりのアイテムが楽しくインテリアを彩り、HAYらしいフレッシュで遊び心のある色使いが存分に発揮されています。

ステーショナリー分野では、ペンやクリップといった小物から、おしゃれなデザインのハサミまで、デスク周りを魅力的に演出するアイテムが揃っています。トレイの組み合わせ使いや、アクセサリー置き場としての活用など、使い方は無限大であり、日常生活における創造性を刺激します。

グローバルな展開と日本市場

HAYは設立以来、デンマーク国内にとどまらず、積極的なグローバル展開を推進してきました。コペンハーゲンの旗艦店「HAY HOUSE」をはじめ、デンマーク、ノルウェー、ドイツ、オランダなど、ヨーロッパ各国に店舗を展開しています。コペンハーゲンの中心地、ストロイエの百貨店Illum向かいに位置するHAY HOUSEは、2階と3階にわたる広々とした空間に、デザイン・エキシビションのように商品が展示されており、訪れる人々にインスピレーションを与える場となっています。

日本市場においては、2018年に東京・表参道のGYRE B1Fに国内初の旗艦店「HAY TOKYO」がオープンしました。200坪を超える世界最大級の規模を誇るこの店舗は、当初は期間限定営業の予定でしたが、好評により継続営業となり、日本におけるHAYの存在感を確立しています。店内では、デンマークを代表する高級ファブリックメーカー、クヴァドラ社のテキスタイルがショールーム並みに充実しており、上質な天然ウールを使用して作られたツィードやフェルトを実際に手に取って選ぶことができます。

HAY TOKYOでは、ソファやチェアの座面の布地、デスクや棚の素材や色をカスタムオーダーすることも可能であり、個々のニーズに応じたパーソナライズされた製品を提供しています。また、「WITH HAY」と名付けられた東京限定の企画では、HAYの世界観に共鳴するデザイナーやアーティスト、クリエイターたちとのコラボレーションを通じて、カフェ、ブックキオスク、植物屋などの独自コンテンツを展開し、単なる家具店を超えた文化発信の場としての役割を果たしています。

日本国内では、株式会社ウェルカムが正規代理店として、オンラインショップや全国の正規取扱店を通じてHAY製品を提供しており、日本の消費者にとってHAYのデザインがより身近なものとなっています。

持続可能性への取り組み

現代のデザインブランドにとって、持続可能性は避けて通れない重要なテーマです。HAYは、環境への影響を最小限に抑える長持ちする製品の開発に積極的に取り組んでおり、この分野においてもリーダーシップを発揮しています。

素材面では、リサイクル素材の活用に力を入れています。例えば、最新版の「About A Chair」シリーズでは、シート素材に100パーセントのポストコンシューマーリサイクルプラスチックを採用し、環境負荷の低減を実現しています。また、木材については、FSC(森林管理協議会)認証を取得した持続可能な森林資源からの木材を使用し、責任ある調達を徹底しています。

仕上げ材においては、有害物質を含まない水性ラッカーの使用を推進しており、これはEUエコラベル要件を満たした自然環境に優しい塗料です。水性ラッカーは、水性の汚れやシミを防ぎながら、自然環境や室内環境への配慮を実現しています。さらに、天然素材由来のリノリウムをテーブル天板に採用するなど、環境負荷の少ない素材選択を継続的に拡大しています。

製品の耐久性と品質管理も、持続可能性の重要な要素です。HAYの製品は、強度、耐久性、および安全性に関する国際規格に準拠するよう厳格にテストされており、長期間にわたる使用に耐えうる品質が保証されています。長く使える製品を作ることこそが、資源の無駄を削減し、真の意味で環境に優しいアプローチであるという認識のもと、妥協のない品質管理が行われています。

これらの取り組みを通じて、HAYはエコ認証製品の数を継続的に増やしており、デザイン性と環境配慮を両立させることが可能であることを実証しています。美しく機能的でありながら、地球環境への責任を果たす製品づくりは、HAYの企業哲学の重要な柱となっています。

基本情報

ブランド名 HAY(ヘイ)
設立 2002年
創業者 Rolf Hay(ロルフ・ヘイ)、Mette Hay(メッテ・ヘイ)
本社所在地 デンマーク
デビュー 2003年 ケルンフェア(ドイツ)
製品カテゴリー 家具、照明、インテリアアクセサリー、テキスタイル、ステーショナリー、アウトドア家具
デザイン理念 「よいデザインはあらゆる人の権利である」
日本正規代理店 株式会社ウェルカム
公式サイト(グローバル) https://www.hay.com
公式サイト(日本) https://www.hay-japan.com