New Order:現代生活に適応する無限の可能性を秘めたモジュラーシステム

New Orderは、ドイツの工業デザイナー、シュテファン・ディーツがデンマークの家具メーカーHAYと協働して2014年に発表したモジュラー式シェルフ・テーブルシステムである。変化し続ける現代の住空間とワークスペースの境界線に柔軟に対応することを目的として開発された本システムは、シンプルなオープングリッド構造を基盤としながら、使用者の具体的なニーズに応じた無限の構成を可能にする革新的な収納ソリューションとして、現代デザイン界において高い評価を確立している。

デザインコンセプト:産業生産の論理と詩的な柔軟性の融合

New Orderの設計思想は、工業製品の合理性と家具としての情緒性を巧みに両立させた点に特徴がある。ディーツは、倉庫の収納システムのように積み重ねられる単純なアルミニウム製棚板という基本要素から出発しながら、それを洗練された家具システムへと昇華させた。押出成形されたアルミニウムプロファイルは、鋳造されたペグを用いて工具なしで簡単にスナップ接続できる直感的な構造原理を採用しており、組み立て、再構成、拡張のすべてを最小限の労力で実現する。

このシステムの美学は、グラフィックで禁欲的とも言える外観にある。しかし、その簡素な骨格は使用とともに実体を帯び始める。トレイ、パネル、引き出し、ドア、テーブルトップといった多様なコンポーネントを統合することで、New Orderは単なる収納システムを超え、空間を定義する建築的要素へと変貌する。ディーツとHAYの創業者ロルフ・ヘイ、メッテ・ヘイの協働により、この多様性と価格のバランスを保ちながら量産可能な工業製品として完成させることに成功した点は、特筆に値する達成である。

技術的特徴と構造的革新

New Orderの構造的優位性は、その素材選択と組み立て方式に集約される。アルミニウムという軽量かつ高強度な素材を採用することで、最大2メートルの幅を持つ棚板でも撓みを最小限に抑え、書籍や重量物を安定して支持することが可能となった。これは従来の木製シェルフでは実現困難な長大スパンであり、空間に開放感と視覚的な軽快さをもたらす重要な要素となっている。

組み立てプロセスの簡便性も本システムの際立った特性である。単一のアレンキーのみで全ての組み立て作業を完結できる設計は、専門的な技術や複雑な工具を必要とせず、使用者自身による設置と再構成を容易にしている。ヒンジは視覚的にも物理的にも極めて繊細に設計され、その存在をほとんど意識させない。ドアやパネルは壁際に設置された場合でも、システムを移動させることなく前面と背面の両方に取り付け可能であり、フリースタンディング配置においても同様の柔軟性を発揮する。

カラーバリエーションとマテリアルの展開

New Orderは、アーミー、チャコール、ライトグレー、レッドという四つの主要カラーで展開されるパウダーコーティング仕上げのアルミニウムフレームを基調としている。これに加えて、木材のトレイやシェルフはライトグレーのアッシュ材のステイン仕上げで提供され、金属の産業的性格と天然素材の温もりを対比させることで、空間に奥行きと豊かな表情をもたらしている。パネル、引き出し、スライディングドアには、突板仕上げのMDFまたはパウダーコーティングされた鋼板が用いられ、用途に応じた選択が可能である。

New Order 2.0:ワークスペースソリューションへの進化

2018年、ディーツとHAYはNew Order 2.0としてシステムの大幅な拡張を発表した。ミラノデザインウィークにおいてPalazzo Clericiで開催された展示では、この進化したシステムが展示会場の建築的フレームワークそのものとして用いられ、その多様性と適応力を印象的に提示した。New Order 2.0では、テーブル、パネル、引き出し、ドア、ワークスペースマネジメントソリューションといった新たなコンポーネントが統合され、オリジナルデザインと同様に単一のアレンキーで設置可能な構造を維持している。

この拡張は、HAYとコワーキングスペース運営企業WeWorkとの長期的な協働関係から生まれた。WeWorkの会員調査と洞察に基づき、ディーツとHAYは共有ワークスペース環境の特有のニーズに応える適応的で柔軟なソリューションを開発した。音響吸収性のファブリックパーティション、洗練されたケーブルマネジメントシステム、モバイルトローリーなど、多層的なアクセサリーにより、New Order 2.0は文書、配線、作業面を整理する包括的なワークスペース組織化システムとして機能する。

空間における多様性と適応力

New Orderの真価は、その適用範囲の広さにある。住宅のリビングルーム、キッチン、ホームオフィスから、商業施設、展示会場、オフィス環境に至るまで、あらゆる空間スケールと機能的要求に対応する。壁面設置型としても、部屋の中央に配置するフリースタンディング型としても機能し、オープンシェルフと扉付き収納を自由に組み合わせることで、視覚的な透過性と収納の実用性のバランスを使用者が決定できる。

システムの本質的な柔軟性は、人生の変化に対応する能力にも表れている。家族構成の変化、仕事のスタイルの変遷、空間の用途変更といった状況に応じて、New Orderは容易に再構成される。新たなモジュールの追加、既存要素の再配置、カラーセクションによる新しい構造の創出など、使用者のニーズの進化とともにシステムも進化する。この時間軸に沿った適応性こそが、ディーツが提唱する「世代を超えて使用される耐久性のある質の高い製品」という設計哲学の具現化である。

デザイナー シュテファン・ディーツの設計思想

シュテファン・ディーツは、指物師の息子として生まれ、幼少期から工房で素材と製作プロセスに親しんだ経験を持つ。この実践的な素材知識への情熱は、彼のデザインアプローチの基盤となっている。シュトゥットガルト造形芸術大学を卒業後、2003年にミュンヘンでDiez Officeを設立したディーツは、著名な工業デザイナーであるリチャード・サッパーに師事した経験も持ち、技術的専門性と美的洗練を統合する能力で知られる。

ディーツの作品は、iF Gold AwardやRed Dot Best of Design Awardをはじめとする国際的な賞を多数受賞している。彼の設計哲学は未来志向であり、循環経済の可能性を重視しながら、デザインとは次世代のための耐久性ある質の高い製品を創造することであるという信念に基づいている。家具生産の真の実践的側面を徹底的に追求する厳密な姿勢と、強力なアイデア創出能力を併せ持つディーツは、2018年にはウィーン応用芸術大学のインダストリアルデザインプログラムの主任に就任し、次世代のデザイナー教育にも貢献している。

業界における評価と影響

New Orderは発表以来、デザインコミュニティと一般ユーザーの双方から高い評価を受けている。その成功は、システムとしての機能性を保ちながら、家具としての存在感と美しさを損なわない稀有なバランスに起因する。ロルフ・ヘイは本システムについて、「New Orderは最大2メートルの長さを持つ開放的な空間であり、木材では書籍の重量を支えられないこの長さを実現できる他の棚ユニットは存在しない。これは新しく強力であり、New Orderを遠くまで導くだろう」と語っている。

ディーツ自身は、「New Orderは、システムでありながら家具として受け入れられる」という点を強調している。この二重性こそが、本システムが単なる工業製品の領域を超え、人々の生活に深く浸透する理由である。物質への愛着が増している現代において、New Orderは生活の細部を想起させる「物」を収納し展示する器として、個人のアイデンティティを空間に表現する手段を提供している。

基本情報

デザイナー シュテファン・ディーツ(Stefan Diez)
ブランド HAY
発表年 2014年(New Order 2.0は2018年)
分類 シェルフシステム / テーブルシステム / 収納システム
主要素材 パウダーコーティング仕上げアルミニウム、突板仕上げMDF、アッシュ材、スチール
カラー展開 アーミー、チャコール、ライトグレー、レッド(アルミニウムフレーム)
最大棚幅 200cm
組み立て方式 工具不要のスナップ接続(最終設置にアレンキー1本使用)
主な用途 住宅(リビング、キッチン、ホームオフィス)、商業施設、オフィス環境、展示空間