カレイドトレイは、スウェーデンのグラフィックデザイナー、クララ・フォン・ツヴァイグベルクが2012年にデンマークのインテリアブランドHAYのためにデザインした革新的なトレイコレクションである。その名称は万華鏡(カレイドスコープ)に由来し、幾何学的な形状と鮮やかな色彩の組み合わせによって、無限の構成可能性を提示する。パウダーコーティングを施したスチール製のこのトレイシリーズは、5つの異なる幾何学的形状と豊富なカラーバリエーションを展開し、実用性と装飾性を兼ね備えた現代デザインの傑作として広く認識されている。
デザインの特徴とコンセプト
グラフィックデザインと折り紙の融合
カレイドトレイの最も顕著な特徴は、ツヴァイグベルクのグラフィックデザイナーおよび折り紙作家としての背景が明確に反映されている点にある。彼女はデザインプロセスにおいて、しばしば紙を折ることから始め、幾何学的な形状を探求する。菱形をモチーフとした紙の折りから発見された美しさと実用性が、このトレイシリーズの基礎となっており、平面的な素材から立体的で機能的なオブジェクトを生み出す彼女独特のアプローチが結実している。
モジュラーシステムの革新
カレイドトレイは5つの異なるサイズで展開されており、それぞれが精密に設計された幾何学的形状を持つ。エクストラスモール、スモール、ミディアム、ラージ、エクストララージの各サイズは、互いにネスト(入れ子)することが可能であり、使用しない時には効率的に収納できる。また、サイズや色の異なるトレイを並べたり重ねたりすることで、ユーザー独自の構成を創出できる。この設計は単なる機能的配慮を超え、トレイ自体を創造的な遊びの対象へと昇華させている。
色彩への直感的アプローチ
ツヴァイグベルクの作品の特徴である卓越した色彩感覚が、カレイドトレイの多様なカラーバリエーションに表現されている。ミント、ピーチ、ジェイド、ロイヤルブルー、エメラルド、オリーブグリーンなど10色以上の展開は、クラシックな色調と非定型的な色調を組み合わせることで、コントラストの相互作用を生み出す。彼女は色彩が空間と気分に与える影響を深く理解しており、ユーザーが自由に色の組み合わせを実験できる環境を提供することで、予期せぬ美しい構成が生まれることを意図している。
デザイナーの思想とエピソード
日常の所作への敬意
ツヴァイグベルクは、トレイという家庭用品が過小評価されていると考え、その価値を再発見することを目指した。彼女は「トレイの上に何かを載せて提供するという行為は、日常の所作に特別な意味を付与する」と語っている。9歳の娘が小さな木製トレイにトーストと紅茶を載せる姿を見て、その小さな行為が日常的なルーティーンに特別な機会感をもたらすことに気づいた。この観察が、カレイドトレイのコンセプトにおける「実用性と装飾性の両立」という中核的な思想を強化した。
HAYとの緊密な協力関係
ツヴァイグベルクがカレイドトレイをデザインする際、9つの色と5つの形状をHAYの創業者メッテ・ハイに提案したところ、最初からすべてが承認されたという。この決断により、個々のオブジェクトが相互に作用し合うシリーズとしての力が大幅に強化された。彼女は「ひとつの作品を購入し、後から別の作品を追加して新しい色の組み合わせを創出できる、手頃な価格であることも重要だった」と述べており、アクセシビリティとクリエイティビティのバランスを重視する姿勢が明確に示されている。2010年以降、ツヴァイグベルクはHAYのビジュアルアイデンティティの形成から製品デザインまで幅広く関与しており、カレイドトレイはその協力関係を象徴する代表作となった。
紙からスチールへの変換
デザインプロセスにおいて、ツヴァイグベルクは菱形の紙片を用いて形状を探求し、トレイの美しさと実用性を発見した。この紙による実験が、最終的にパウダーコーティングされたスチール製の製品へと変換される過程は、彼女の手工芸への関心と工業生産技術の調和を示している。紙の柔軟性と軽さがスチールの堅牢性と永続性へと昇華され、日常使用に耐える耐久性を持ちながら、視覚的な軽やかさを保持する製品が実現された。
評価と影響
カレイドトレイは発売以来、デザイン業界と消費者の双方から高い評価を獲得してきた。その革新的なモジュラーシステムと美的魅力は、現代のスカンディナヴィアデザインにおける重要な参照点となっている。国際的なデザイン専門誌やオンラインメディアで頻繁に取り上げられ、デザイン愛好家やインテリアスタイリストから「マストハブアイテム」として言及されることが多い。トレイという伝統的な家庭用品の概念を再定義し、実用的なオブジェクトが同時に装飾的なアート作品にもなり得ることを実証した点で、カレイドトレイは現代プロダクトデザインにおける重要な貢献として認識されている。また、このシリーズはHAYのアクセサリーコレクションを代表する製品のひとつとなり、ブランドのデザイン哲学を体現するアイコニックな存在として確立された。
受賞歴
カレイドトレイは2014年にEuropean Consumers Award(ヨーロッパ消費者賞)を受賞している。この栄誉は、製品の革新性、デザインの質、そして消費者への訴求力が高く評価されたことを示すものである。デザイナーであるクララ・フォン・ツヴァイグベルク自身も、2012年にWallpaper Design AwardおよびSwedish Design Awardを受賞しており、2016年にはシェーン・シュネックと共にBruno Mathsson Award(ブルーノ・マットソン賞)を受賞するなど、国際的に認められたデザイナーとしての地位を確立している。カレイドトレイはこうした評価を受けるデザイナーの創造性と技術力を結集した作品として、デザイン史において重要な位置を占めている。
多様な用途と使用シーン
カレイドトレイの汎用性は、その最も魅力的な特性のひとつである。最小サイズのエクストラスモールは、鍵やアクセサリー、小銭などの小物を整理するのに適しており、玄関やベッドサイドテーブルでの使用に最適である。スモールおよびミディアムサイズは、デスク上の文房具や書類の整理、あるいは化粧品のディスプレイに活用できる。ラージおよびエクストララージは、コーヒーやティーセットを運ぶサービングトレイとして、またはリビングルームでの装飾的なディスプレイプラットフォームとして機能する。キッチン、バスルーム、寝室、オフィスなど、住空間のあらゆる場所で活用可能であり、その鮮やかな色彩は単調な空間に視覚的なアクセントをもたらす。ただし、パウダーコーティングされたスチール製であるため、食品や液体を直接載せることは推奨されておらず、装飾的かつ乾燥した物品の収納・提示に使用することが望ましい。
後継作品とデザインの展開
カレイドトレイの成功を受けて、ツヴァイグベルクは2020年代にエリプストレイコレクションを発表した。エリプスは楕円形をモチーフとし、カレイドトレイの角張った幾何学性に対して、より柔らかく有機的な美学を提示している。エリプスコレクションもカレイドと同様のサイズ構成を採用しているが、その対称性は異なる原理に基づいており、最小サイズから最大サイズへと等間隔で成長する形態を持つ。ツヴァイグベルクは、エリプスが楕円軌道や宇宙の軌道といった概念とも関連していると述べており、デザインにおける空間への関心を示している。カレイドとエリプスは、形状が異なりながらも関連性を持つ姉妹コレクションとして位置づけられ、ユーザーは両シリーズを組み合わせることで、さらに豊かな構成の可能性を探求できる。ツヴァイグベルクは「トレイは常に必要とされる物品であり、さらに多くのバリエーションを制作できる」と語っており、このデザイン言語のさらなる展開への意欲を示している。
基本情報
| 製品名 | Kaleido Tray(カレイドトレイ) |
|---|---|
| デザイナー | Clara von Zweigbergk(クララ・フォン・ツヴァイグベルク) |
| ブランド | HAY |
| 発売年 | 2012年 |
| 素材 | パウダーコーティングスチール |
| サイズ展開 | XS: 19 x 11 cm / S: 22 x 19 cm / M: 33.5 x 19.5 cm / L: 39 x 34 cm / XL: 45 x 39 cm |
| カラーバリエーション | ミント、ピーチ、ジェイド、アンバー、レッド、ブラック、オリーブグリーン、ロイヤルブルー、エメラルド、グレーほか |
| 原産国 | デンマーク |
| 受賞歴 | European Consumers Award 2014 |
| 特記事項 | 食品・液体不可。乾いた布または軽く湿らせた布で拭き、使用前に乾燥させる。 |