概要
ブルーノ・マットソン(1907-1988)は、スウェーデンの家具デザイナー・建築家である。家具職人の家に生まれ、父の工房で修業した。座る姿勢を観察して座面と背の曲線を決め、木の骨組みに帯状の織物を張る構成をとる。1934年のエヴァ・チェア、1941年のペルニラがその例にあたる。詰め物を持たず、帯の張力で身体を支える。
バイオグラフィー
1907年1月13日、スウェーデンのヴェルナモに生まれた。父カール・マットソンは家具職人で、5代続く家系にあたる。学校教育は限られており、家具については父の工房で学んだ。
1930年代前半から独自の椅子の設計を始めた。1933年頃から曲げ木の骨組みに帯を張る構成を試み、1934年にエヴァ・チェアを発表している。
1937年のパリ万国博覧会に出品した。1939年のニューヨーク万国博覧会にも作品が出ている。
1940年代以降は建築の設計も手がけ、ガラスを多用した住宅を残した。1960年代にはピート・ハインと共同でスーパー楕円の卓を設計している。1988年に没した。
デザインの思想と方法
マットソンが出発点に置いたのは、人が実際にどう座っているかという観察である。詰め物で身体を受けるのではなく、身体の形に沿った面をつくれば、詰め物なしで座れる。この考えから、骨組みの曲線と張り材の組み合わせという構成が生まれた。
座る姿勢から曲線を決める
座面と背の曲線は、座った人の身体の輪郭に合わせて決められる。腰の位置で背が前に出て、肩の位置で後ろへ逃げる。この曲線が決まれば、詰め物は要らない。骨組みそのものが座り心地を担う構成にあたる。
帯を張って面をつくる
骨組みには、麻や紙紐を編んだ帯を張る。帯は張力を受け、荷重に応じてたわむ。面としては連続していないが、間隔が狭ければ身体を支えられる。材料の量が少なく、通気もある。
曲げ木で骨組みをつくる
骨組みはブナやカバの曲げ木による。積層した材を型で曲げることで、必要な曲線を作れる。父の工房で培われた木工の技術が前提にある。
スーパー楕円で卓をつくる
1960年代、数学者で詩人のピート・ハインが定義した「スーパー楕円」を天板の輪郭に用いた。楕円と矩形の中間にあたる形で、角がなく、かつ縁に沿って座る人数を確保できる。アルネ・ヤコブセンを含む三者の名で発表されている。
代表作にみる方法
エヴァ・チェア(1934年)
曲げ木の骨組みに帯を張った椅子である。座面から背へ連続する曲線が身体に沿い、詰め物を持たない。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号227.1944)。→マットソン エヴァ・チェア
シェーズロング(1936年)
エヴァの構成を寝椅子に展開したものである。骨組みの曲線が長くなり、脚まで支える。ニューヨーク近代美術館が2件を収蔵している(収蔵番号67.1990、1272.2018)。
ペルニラ(1941年)
肘掛けと頭部の支えを備えた安楽椅子である。エヴァより背が高く、寄りかかる姿勢を想定する。フットレストと組で用いられる。ニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、シカゴ美術館が収蔵している。
折りたたみテーブル T702(1944年)
脚を折り畳める卓で、車輪を備える。移動と保管を条件に含めた構成にあたる。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号294.1976)。
スーパーエリプス テーブル(1964年)
ピート・ハインが定義したスーパー楕円を天板の輪郭に用いた卓である。楕円と矩形の中間の形で、角を持たない。アルネ・ヤコブセンを含む三者の名で発表され、フリッツ・ハンセンが生産している。→スーパーエリプステーブル
評価と影響
マットソンは一般に、20世紀スウェーデンの家具設計を代表する人物と評価されている。詰め物を持たず、骨組みの曲線と帯の張力で座り心地をつくるという構成が特徴にあたる。
家具職人の家に生まれ、工房で修業したという経歴が設計の前提にある。曲げ木の技術は父の代から蓄積されたもので、設計と製作が同じ場で行われた。
1937年のパリ万博、1939年のニューヨーク万博への出品を通じて国外で知られるようになった。ニューヨーク近代美術館は1944年にエヴァ・チェアを収蔵している。1960年代のスーパーエリプス テーブルは現在もフリッツ・ハンセンが生産する。
受賞・収蔵
受賞
- 1937年 パリ万国博覧会 出品
- 1939年 ニューヨーク万国博覧会 出品
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、Met=メトロポリタン美術館、AIC=シカゴ美術館)。
- MoMA エヴァ・チェア(T101 モデル41、1934年) 収蔵番号 227.1944
- MoMA シェーズロング(1936年) 収蔵番号 67.1990
- MoMA 読書台つきラウンジチェア(1936年) 収蔵番号 1272.2018
- MoMA ペルニラ1 イージーチェア(T105、1944年) 収蔵番号 33.1949
- MoMA キャスターつき折りたたみテーブル(T702、1944年) 収蔵番号 294.1976
- MoMA テーブル(1952年頃) 収蔵番号 137.1955
- V&A 椅子(1934年) 収蔵番号 CIRC.74-1971
- V&A 椅子(1934-36年) 収蔵番号 W.13:1, 2-1979
- V&A ヴィルストーレン(1933-36年) 収蔵番号 W.50:1 to 3-2005
- V&A シェルスティン(1980年) 収蔵番号 W.31:1, 2-1980
- Met ペルニラ イージーチェア(1941年) 収蔵番号 1982.397.1
- Met ペルニラ フットレスト(1941年) 収蔵番号 1982.397.2
- AIC シェーズロング「ペルニラ」(1960年製造) 収蔵番号 1988.247
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1933-36年 | 椅子 | ヴィルストーレン | Firma Karl Mathsson |
| 1934年 | 椅子 | マットソン エヴァ・チェア | Firma Karl Mathsson / Bruno Mathsson International |
| 1936年 | シェーズロング | シェーズロング | Firma Karl Mathsson |
| 1941年 | 椅子 | ペルニラ | Firma Karl Mathsson |
| 1944年 | テーブル | 折りたたみテーブル T702 | Firma Karl Mathsson |
| 1952年頃 | テーブル | テーブル | Firma Karl Mathsson |
| 1964年 | テーブル | スーパーエリプステーブル | Fritz Hansen |
| 1980年 | 椅子 | シェルスティン | Bruno Mathsson International |
| 1940-70年代 | 建築 | ガラスを多用した住宅 | スウェーデン各地 |
プロフィール
| 生没年 | 1907年1月13日〜1988年 |
|---|---|
| 出身地 | スウェーデン・ヴェルナモ |
| 国籍 | スウェーデン |
| 活動拠点 | ヴェルナモ |
| 分野 | 家具、建築 |
| 主な協働ブランド | Bruno Mathsson International、Firma Karl Mathsson、Fritz Hansen |
Reference
- Bruno Mathsson International
- https://www.brunomathssoninternational.com/
- Bruno Mathsson | Fritz Hansen
- https://fritzhansen.com/en/designers
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325
- The Metropolitan Museum of Art Collection
- https://www.metmuseum.org/art/collection
- Victoria and Albert Museum Collections
- https://collections.vam.ac.uk/