Superellipse Table(スーパーエリプステーブル)は、1968年にデンマークの数学者・詩人ピート・ハイン(Piet Hein)、スウェーデンの家具デザイナー、ブルーノ・マットソン(Bruno Mathsson)、そしてデンマークの建築家アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)の3人が共同でデザインした、北欧モダンデザインの傑作である。このテーブルは、数学的な美しさと機能性を融合させた革新的なデザインとして、発表から半世紀以上経った現在も世界中で愛され続けている。

最も特徴的なのは、ピート・ハインが開発した「超楕円(Superellipse)」と呼ばれる独特の天板形状である。これは1959年にストックホルムのセルゲル広場(Sergels Torg)の交通問題を解決するために考案された数学的な曲線を、家具デザインに応用したものである。この形状により、テーブルのどの位置に座っても同じような座り心地を得られることから、「民主的なテーブル」とも称される。

製造はデンマークの名門家具メーカー、フリッツ・ハンセン(Fritz Hansen)が1968年から現在まで継続して行っており、2017年には最新のナノテクノロジーを活用したFenix NTMラミネート仕上げが導入されるなど、時代に合わせた技術革新も続けられている。

デザインの特徴とコンセプト

超楕円形状の数学的美学

Superellipse Tableの最大の特徴は、その天板の形状にある。ピート・ハインが考案した超楕円は、数学的には n=2.5、a/b=6/5 のパラメータで定義される特殊な曲線である。これは円と長方形の中間的な性質を持ち、どのサイズにおいても調和のとれた美しいプロポーションを保つという特性がある。

この形状の最大の利点は、テーブルに「頭席」が存在しないことである。従来の長方形テーブルでは短辺に座る人が主賓として扱われることが多いが、超楕円形状では全ての席が平等な条件となる。これにより、会議やディナーパーティーにおいて、参加者全員が対等な立場でコミュニケーションを取ることができる。

スパンレッグの革新性

ブルーノ・マットソンが設計したスパンレッグ(Span legs)は、複数の細い金属ロッドが中央に向かって収束する独特の構造を持つ。この脚部デザインは1954年から開発が始まり、天板があたかも空中に浮いているような軽やかな印象を与える。取り外し可能なテンション機構により、必要に応じて簡単に分解・組み立てができるという実用性も備えている。

脚部はクローム仕上げのほか、2017年以降はホワイト、ブラック、グレーのパウダーコート仕上げも選択可能となり、現代的なインテリアにより調和しやすくなっている。

素材と仕上げの進化

当初はチークやビーチ材などの天然木材とラミネート仕上げが主流だったが、現在では多様な素材選択が可能である。特に2017年に導入されたFenix NTMラミネートは、イタリアで開発されたナノテクノロジーベースの素材で、超マットな質感、指紋がつきにくい表面、そして軽微な擦り傷を熱で修復できる革新的な特性を持つ。

天板の厚さは22mmで、ラミネート仕上げの場合はマット仕上げのアルミニウムエッジ、ウォールナット突板仕上げの場合は同材のエッジ処理が施される。これらの細部へのこだわりが、半世紀以上にわたる製品の品質と耐久性を保証している。

誕生のエピソード

セルゲル広場からの着想

1959年、スウェーデンの都市計画担当者たちは、ストックホルム中心部のセルゲル広場における交通渋滞の解決策を模索していた。長方形の広場に円形のロータリーを設置しても、楕円形にしても、交通の流れがスムーズにならないという問題に直面していた。この時、建築家のダヴィッド・ヘルデン(David Helldén)がデンマークの多才な知識人ピート・ハインに相談を持ちかけた。

ピート・ハインは後に語っている。「人間は自ら線を引き、その線につまずく唯一の動物である。文明のパターン全体において、直線と長方形のパターンに向かう傾向と、円形の線に向かう傾向の2つが存在してきた。しかし我々は、しばしば中間的な形態がより良い場合があるにもかかわらず、どちらか一方を受け入れなければならない拘束衣の中にいる。」

彼は数学的な計算により、n=2.5、a/b=6/5というパラメータを持つ超楕円形状を導き出した。この形状は円と長方形の最良の特性を併せ持ち、交通の流れを最適化すると同時に美的にも優れていた。セルゲル広場は1967年に完成し、大成功を収めた。

家具への応用と三者の協働

広場での成功を受け、ピート・ハインはこの超楕円形状を家具デザインに応用することを考えた。1960年代、彼はスウェーデンの家具デザイナー、ブルーノ・マットソンと出会う。マットソンは曲木技術の先駆者として知られ、1937年のパリ万国博覧会でグランプリを受賞するなど、国際的な評価を得ていた。

二人は1954年から脚部デザインの開発を始めており、1968年にはデンマークの巨匠アルネ・ヤコブセンも加わった。ヤコブセンはエッグチェアやセブンチェアなどの名作を生み出し、フリッツ・ハンセンとの長い協力関係を持っていた。この3人の才能が結集し、Superellipse Tableが誕生した。

興味深いことに、1968年にパリで行われたベトナム戦争の和平交渉において、交渉テーブルの形状について合意が得られなかった際、ニューヨーク・タイムズ紙への投書で超楕円形のテーブルが提案されたという逸話も残されている。

評価と影響

デザイン界での評価

Superellipse Tableは、発表直後から「スカンジナビアンデザインの真のクラシック」として高く評価された。数学的精密さと芸術的美しさの融合、そして実用性を兼ね備えたこのテーブルは、モダニズムデザインの新たな可能性を示した。

特に「民主的なテーブル」という概念は革新的であった。従来の階層的な座席配置を否定し、全ての参加者が平等に対話できる空間を創出するというコンセプトは、1960年代の民主化運動の時代精神とも合致していた。このデザイン哲学は、現代のオフィス空間やコワーキングスペースの設計にも大きな影響を与えている。

商業的成功と継続的生産

フリッツ・ハンセンによる生産は1968年から現在まで途切れることなく続いており、これは家具デザイン史において稀有な例である。50年以上にわたる継続的な需要は、このデザインのタイムレスな魅力を証明している。

テーブルは世界中の住宅、オフィス、公共施設で使用されており、ニューヨーク近代美術館(MoMA)をはじめとする多くの美術館や文化施設にも採用されている。また、ヴィンテージ市場でも高い人気を誇り、初期の生産品は特にコレクターズアイテムとして珍重されている。

現代における意義

2017年のFenix NTMラミネートの導入は、クラシックデザインと最新技術の融合という新たな可能性を示した。傷や指紋に強く、メンテナンスが容易なこの新素材は、現代のライフスタイルに完璧に適応している。

また、持続可能性の観点からも注目されている。EU Ecolabelの認証を受けており、環境に配慮した生産プロセスと長寿命設計により、サステナブルな家具の模範となっている。「良いデザインは長く使われる」という北欧デザインの理念を体現する製品として、循環型社会における家具のあり方を示している。

基本情報

製品名 Superellipse Table(スーパーエリプステーブル)
デザイナー ピート・ハイン(Piet Hein)、ブルーノ・マットソン(Bruno Mathsson)、アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)
デザイン年 1968年
製造ブランド フリッツ・ハンセン(Fritz Hansen)
原産国 デンマーク
カテゴリー ダイニングテーブル、会議テーブル
サイズ展開 B611(135×90cm)〜B617(300×130cm)、拡張式モデルあり
高さ 72cm(標準)
天板素材 Fenix NTMラミネート(6色)、ウォールナット突板
脚部仕上げ クロームスチール、パウダーコートスチール(ホワイト、ブラック、グレー他)
特徴 超楕円形状、スパンレッグ、取り外し可能な脚部、拡張式オプション
認証 EU Ecolabel