Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)

Fritz Hansenは、1872年にデンマーク・コペンハーゲンで創業した家具メーカーである。指物の工房から始まり、20世紀前半に成形合板の量産技術を確立して、Arne Jacobsenの椅子を製品化したことで事業の性格が定まった。現在はコペンハーゲン近郊のアレレズに本社と工場を置き、家具のほか照明と屋外用の製品も扱う。1979年に創業家の手を離れ、Skandinavisk Holdingの傘下に入った。

事業と製造の実体

本社と生産拠点はコペンハーゲン北方のアレレズにある。創業者が製材所の開設を見込んで森林と鉄道に近いこの土地を取得したのが始まりで、1963年に3棟の工場棟が増設され、1965年には管理部門もコペンハーゲンのクリスチャンハウンからここへ移された。以後、同社の本拠地はアレレズに置かれている。

製造技術の中心にあるのは、薄い単板を重ねて型で圧着する成形合板の加工である。座と背を継ぎ目なく一体で成形する構成は、1952年のアントチェア (3100)で製品化され、1955年のセブンチェア 3107シェルの面積を広げる形に発展した。表面には突板を用いる仕様と塗装仕上げの仕様があり、脚部の金属加工と組み合わせて製品の系列が分かれる。

エッグチェアスワンチェアでは、合板ではなく合成樹脂の成形シェルに発泡材と張り地を重ねる構成が用いられる。この方式は当時の同社にとって新しい工程で、複雑な曲面を持つ椅子を量産する条件を作った。一方、Poul Kjærholmの家具では鋼材の加工が主体となり、ステンレス鋼の平鋼や鋼管に革・籐・キャンバスを組み合わせる。

沿革

創業と拠点の形成

1872年、ロラン島ナスコウ出身の指物師Fritz Hansenがコペンハーゲンで営業許可を取得した。1885年に自身の名を冠した家具製造会社を興し、1887年にはクリスチャンハウンに工房を構える。事業の拡大にともない、森林と鉄道に近いアレレズの用地を取得した。1899年、25歳の息子Christian E. Hansenが会社を引き継いでいる。この時期の同社は、公共建築や議事堂の家具を請け負う信頼のある製造業者として知られていた。

成形合板とArne Jacobsen

1952年、Arne Jacobsenの設計によるアントチェア (3100)が発表された。座と背を一体で成形する構成が製造技術の到達点を示し、同社とJacobsenの協働はここから本格化する。1955年のセブンチェア 3107はこの構成を広げたもので、以後同社の主力製品となった。

1958年、JacobsenがコペンハーゲンのSASロイヤルホテルの設計を担当した際、建物に合わせてエッグチェアスワンチェアが作られた。建築と内装、家具、照明を一人の設計者が通しで手がける事例として知られる。1960年代にはBruno MathssonとPiet Heinによるスーパーエリプステーブル、Børge Mogensenのスポークバックソファの再生産、Hans J. WegnerのChina Chairの再投入が続いた。

資本の移動と製品群の再編

1979年の年始、Fritz Hansenは創業から107年続いた同族経営を終え、株式の75%をSkandinavisk Holdingへ譲渡した。新たな資本のもとで設備投資と組織の再編が行われ、1983年のコペンハーゲン家具見本市では新作のみによる展示が組まれている。

1980年代には、Poul Kjærholmが1951年から1980年にかけて設計した家具の権利を取得した。Kjærholmはそれまで別の製造業者と組んでおり、この取得によってPK22 ラウンジチェアをはじめとする鋼材を用いた一群が同社の製品に加わった。あわせてKeviのコレクションとMunch Møblerを取得している。

2000年には「Republic of Fritz Hansen」の名称でブランドの位置づけを整理し、同時期からCecilie Manz、Kasper Salto、Piero Lissoniら現行世代の設計者との協働を始めた。近年は屋外用の家具や照明も製品群に含めている。

デザイナーとの協働

Fritz Hansenは社内に設計部門を置かず、外部の設計者が持ち込む案を製造技術に置き換える形で製品を開発してきた。合板の成形や樹脂シェルの量産といった工程の開発が、設計者の構想を実現する条件になっている。20世紀の設計者については、権利を取得して生産を引き継ぐ経路も併用してきた。

長期の協働相手はArne Jacobsenで、椅子のほか照明や小物にも及ぶ。Poul Kjærholmの家具は権利取得を経て製品群に加わった。ほかにHans J. Wegner、Børge Mogensen、Bruno Mathsson、Piet Heinとの協働があり、現行世代ではCecilie Manz、Jaime Hayon、Piero Lissoni、Kasper Saltoが挙げられる。

主な製品群

成形合板の椅子が製品の基幹をなす。1952年のアントチェア (3100)と1955年のセブンチェア 3107がこれにあたり、いずれも積み重ねができる構成を採る。SASロイヤルホテルのために作られたエッグチェアスワンチェアは、樹脂シェルに張り地を重ねる系統に属する。

Poul Kjærholmの設計では、PK22 ラウンジチェアPK20 ラウンジチェアPK24 ハンモックチェアPK9 チェア(チューリップチェア)、寝椅子のPK80 デイベッドがある。机と台ではPK54 ダイニングテーブルPK61 テーブルPK71 ネストテーブルが現行の製品にあたる。

そのほか、Bruno MathssonとPiet Heinによるスーパーエリプステーブル、Børge Mogensenのスポークバックソファ、Cecilie Manzのオブジェクツ・プフを扱う。照明ではChristian Dellの設計によるカイザー・イデル 6631 Luxusを生産している。

基本情報

ブランド名 Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)
創業 1872年
創業者 Fritz Hansen
創業地 デンマーク・コペンハーゲン
本社所在地 デンマーク・アレレズ(Allerødvej 8, DK-3450 Allerød)
資本関係 1979年にSkandinavisk Holdingが株式の75%を取得
事業内容 家具・照明・付属品の製造および販売
公式サイト https://www.fritzhansen.com

Reference