FRITZ HANSEN フリッツ・ハンセン
1872年にデンマーク・コペンハーゲンで創業したフリッツ・ハンセンは、150年以上の歴史を誇る北欧デザインの象徴的存在です。アルネ・ヤコブセン、ポール・ケアホルムといった北欧デザイン界の巨匠たちと協働し、世界の家具史に燦然と輝く数々の名作を世に送り出してきました。「セブンチェア」「エッグチェア」「スワンチェア」など、時代を超えて愛され続ける傑作の数々は、デンマークデザインの精髄を体現しています。
世界85カ国以上、約2,000箇所の販売拠点を通じて展開されるフリッツ・ハンセンの製品群は、美しさと品質、そして卓越したクラフトマンシップを追求し続けています。「たった1つの家具が部屋や建物全体を美しくすることができ、その空間で過ごす人々の幸せを高める」という信念のもと、クラシックからコンテンポラリーまで、家具、照明、アクセサリーをひとつの世界観で表現し、現代の北欧ライフスタイルを体現し続けています。
ブランドの特徴とコンセプト
革新的技術と伝統的職人技の融合
フリッツ・ハンセンは創業当初より「高品質の機能的家具を工業的製造プロセスによって製造する」という哲学を掲げ、革新的な製造技術の開発に取り組んできました。1920年代には新素材と新たな生産技術を積極的に導入し、1930年代にはスチームによるブナ材の曲げ木技術を確立。この革新的な曲げ木技法により、フリッツ・ハンセンは世界に先駆ける存在となり、後のデザイン史に多大な影響を与えることとなります。
成形合板技術の発展においても先駆的役割を果たし、1952年のアントチェア、1955年のセブンチェアでは、座面と背もたれを一体成形する革新的な技術を完成させました。これらの技術革新は、デザイナーの創造性を最大限に引き出し、機能美と芸術性を高次元で融合させる基盤となっています。現代においても、最先端のCNC技術から伝統的な手仕事まで、多様な製造手法を駆使し、最高品質の製品を生み出し続けています。
タイムレスなデザイン哲学
フリッツ・ハンセンの製品に共通するのは、流行に左右されないタイムレスな美しさです。シンプルでありながら独創的、機能的でありながら芸術的という、北欧デザインの本質を体現した製品群は、半世紀以上を経た今なお現代性を失わず、世界中の空間で愛用され続けています。
デザインとアートの境界線を曖昧にする彫刻的でアーティスティックな表現は、フリッツ・ハンセンの大きな特徴です。それらエレガントで存在感のある製品は、空間を輝かせながら人に寄り添い続けます。流行を追うのではなく、普遍的な価値を創造するという姿勢こそが、フリッツ・ハンセンが長年にわたり世界中で支持され続ける理由に他なりません。
デザイナーとの協働による創造
フリッツ・ハンセンの歴史は、時代を代表するデザイナーとの協働の歴史でもあります。デザイナーの先見性あふれるコンセプトに対し、高度な技術力と製造ノウハウで応え、時代を超越する傑作を具現化してきました。アルネ・ヤコブセン、ポール・ケアホルム、ハンス・J・ウェグナーといった巨匠たちとの協働により生まれたクラシック・コレクションは、今日においても色褪せることなく輝きを放っています。
また、セシリエ・マンツ、ピエロ・リッソーニ、ハイメ・アジョンなど、現代を代表するデザイナーとの協働により、コンテンポラリー・コレクションも充実させています。伝統を継承しながらも常に新しい挑戦を続けるこの姿勢が、フリッツ・ハンセンをグローバルデザインリーダーたらしめているのです。
ブランドヒストリー
創業期から家族経営の時代(1872年-1979年)
1872年、25歳の若き家具職人フリッツ・ハンセンがコペンハーゲンで家具部材メーカーを創業したことから、すべては始まりました。確かな技術力により高品質のメーカーとして評価を高め、1885年にはオリジナル家具の製造会社を設立。1887年にはコペンハーゲンの中心地に製作所を立ち上げ、事業を拡大していきます。
1899年、フリッツ・ハンセンの息子であり後継者のクリスチャン・E・ハンセンが事業を引き継ぎます。この頃から重要なプロジェクトへの関与が増え、クリスチャンボー城、デンマーク国会議事堂、コペンハーゲン市庁舎など、大規模な建造物の家具を次々と手掛けるようになりました。
1932年、クリスチャン・E・ハンセンの息子にあたるポール・ハンセンとソーレン・ハンセンが共同ディレクターに就任。ヨーロッパ旅行中にドイツのバウハウスという工業的デザインの美学に出会ったことが、フリッツ・ハンセンに大きな転機をもたらします。この影響により、当時のデンマークでは珍しかったスチール製家具を発表。これはデンマーク家具史における初の試みとなり、デンマークデザインの機能性発展に大きく貢献しました。
黄金期とデザインアイコンの誕生(1940年代-1960年代)
第二次世界大戦中の困難な時期においても、フリッツ・ハンセンは拡張を続けました。厳冬により枯れたウォルナットの木を大量に購入するという独創的な発想から、ウォルナット材を使用した新シリーズの家具が誕生。この積極的な姿勢がメディアの注目を集め、大きな成功を収めることとなります。
戦後、フリッツ・ハンセンは才能豊かな気鋭デザイナーや建築家とのコラボレーションを本格化させます。ハンス・J・ウェグナーのチャイナチェア、ボーエ・モーエンセンのスポークバックソファなど、デンマークデザインを代表する傑作が次々と生まれました。
そして1952年、アルネ・ヤコブセンがデザインしたアントチェアの発表により、フリッツ・ハンセンは世界的な注目を集めることとなります。成形合板による革新的なフォルムと優れた機能性を併せ持つアントチェアは商業的にも大成功を収め、フリッツ・ハンセンとヤコブセンの協働関係を決定づけました。
1955年には、アントチェアをさらに進化させたセブンチェアが発表されます。現在までに累計700万脚以上が販売され、世界で最も売れているスタッキングチェアとして、デザイン史に燦然と輝く地位を確立しました。
1956年から1960年にかけて、ヤコブセンがコペンハーゲンのSASロイヤルホテル(現ラディソン・コレクション・ロイヤルホテル)のトータルデザインを手がけたプロジェクトは、世界初の試みとして高く評価されました。建築から内装、家具、照明、カトラリーに至るまで、すべてをヤコブセン自らデザインしたこのプロジェクトで誕生したのが、エッグチェアとスワンチェアです。卵のような有機的なフォルムで身体を包み込むエッグチェア、優雅な曲線が美しいスワンチェアは、瞬く間に世界中で愛されるアイコンとなりました。
変革と再生の時代(1970年代-2000年代)
デンマーク家具の黄金期が過ぎた1970年代後半、フリッツ・ハンセンの経営にも陰りが見え始めます。1979年、107年間続いた家族経営に幕を下ろし、スカンジナビアヴィクスホールディングの傘下に入る決断を下しました。新事業主による大型投資と再構築により、未来への新たな展望が開かれることとなります。
1982年、フリッツ・ハンセンは重要な決断を下します。ポール・ケアホルムが1951年から1980年にかけてデザインした、ミニマルで美しいコレクションの生産権利を獲得したのです。ケアホルムの代表作PK22をはじめとする「ケアホルム・コレクション」は、スチール素材の可能性を極限まで追求した傑作群であり、フリッツ・ハンセンのラインナップに新たな魅力を加えることとなりました。
2000年、「Republic of Fritz Hansen」というブランドコンセプトを発表。個性と独創的なメッセージを表現する企業や家庭において、フリッツ・ハンセンの家具が重要なイメージ表現の一部であるというメッセージを発信しました。同時に、キャスパー・サルト、ピエロ・リッソーニ、セシリエ・マンツといった新鋭デザイナーを迎え入れ、コンテンポラリーな方向性での進化を遂げていきます。
グローバル展開と現在(2010年代-現在)
2020年代を迎えた現在、フリッツ・ハンセンは真のグローバルブランドとして確固たる地位を築いています。コペンハーゲン、ニューヨーク、ソウル、上海、ミュンヘン、東京に旗艦店およびショールームを展開し、世界85カ国以上で製品を販売。コペンハーゲン北部の本社から、全世界310名以上の社員とともに、卓越したコレクションを世界中のデザイン愛好家に届け続けています。
2021年には、デンマークのアウトドアファニチャーブランド「Skagerak」を傘下に収め、「Skagerak by Fritz Hansen」として展開を開始。心地良い暮らしに密着した家具ラインナップをさらに充実させています。
伝統を継承しつつ、常に革新を追求するフリッツ・ハンセン。次の50年、100年先の未来に残せる新たな名作を生み出すという使命のもと、進化を続けています。
主要デザイナー
アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen, 1902-1971)
20世紀デンマークデザイン界の巨匠として、半世紀以上にわたりスカンジナビアから世界中に影響を与え続けたアルネ・ヤコブセン。建築家でありデザイナーでもあった彼は、デンマーク国立銀行のような複雑な建物から、ティースプーンといった細やかなアイテムに至るまで、生活に関わるあらゆるものをデザインし、後世に残しました。
幼少期、自身の寝室のビクトリア朝の壁紙を白く塗りつぶしたというエピソードが示すように、ヤコブセンは時代を先取りする美的感覚の持ち主でした。細部への徹底した配慮を創作プロセスの中心に据え、綿密な手描きの水彩画でアイデアを生き生きとしたものにしていきました。
フリッツ・ハンセンとの協働により生み出された作品群は、まさにデザイン史に残る傑作です。1952年のアントチェアで世界的な認知を獲得し、1955年のセブンチェアでその地位を不動のものとしました。1958年にはSASロイヤルホテルのプロジェクトで、エッグチェアとスワンチェアという二つの不朽の名作を誕生させます。その他にも、グランプリチェア、リリーチェア、ドロップチェア、ポットチェアなど、数々の傑作を生み出しました。
ヤコブセンのデザインは、「機能」と「詩的な美しさ」を両立させる北欧の哲学そのものを体現しています。余計な装飾を排し、使い手を第一に考えた作品は、没後50年以上を経た今なお、世界中で愛され続けています。
ポール・ケアホルム(Poul Kjærholm, 1929-1980)
「家具の建築家」と自称したポール・ケアホルムは、空間における家具の存在を何よりも重要視したデザイナーです。コペンハーゲンのデンマーク美術工芸学校で学び、家具職人として修練を積んだケアホルムは、建築素材、とりわけスチールに強い関心を持っていました。
「スチールは、木などの天然素材と同様に芸術的な敬意に値する素材である」というケアホルムの信念は、彼の作品すべてに貫かれています。極限まで削ぎ落とされた構造美、線画のような美しいシルエット、そして「自分の個性よりも、素材の特性を表現したい」という哲学が、静かな佇まいの中に知的な緊張感を生み出しています。
1955年から生涯にわたり家具メーカーのアイヴィン・コル・クリステンセン社とコラボレーションを続けたケアホルムでしたが、彼の死後、1982年に「ケアホルム・コレクション」の製造と販売がフリッツ・ハンセンに委ねられました。
ケアホルムの最も有名な作品であるPK22は、1956年にデザインされ、翌1957年にミラノ・トリエンナーレでグランプリを受賞しました。近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエのバルセロナチェアの「機能」に着目し、それ以外の要素を徹底的に削ぎ落とした本質的な機能美は、パリの国立図書館や東京の国立新美術館など、世界中の公共機関で使用されています。その他、PK25、PK24、PK31など、数々の傑作を残しました。
その他の協働デザイナー
フリッツ・ハンセンは、時代を代表する多くのデザイナーと協働してきました。デンマーク家具デザインの父と称されるハンス・J・ウェグナーは、チャイナチェアなどの傑作を生み出しました。現代を代表するデンマークのデザイナー、セシリエ・マンツは、優しく心地よいデザインで新たなファンを獲得しています。
イタリアを代表する建築家・デザイナーのピエロ・リッソーニ、スペイン出身のハイメ・アジョン、デンマークのキャスパー・サルトなど、国際色豊かなデザイナーとの協働により、フリッツ・ハンセンは常に新鮮で革新的なコレクションを提供し続けています。
主要製品とその特徴
セブンチェア(Series 7, 1955年)
アルネ・ヤコブセンがデザインし、1955年に発表されたセブンチェアは、世界で最も売れているスタッキングチェアとして知られています。累計販売台数は700万脚以上に達し、日本でも公共施設や飲食店で広く使用されているため、目にしたことがある方も多いでしょう。
アントチェアの成功を受けて開発されたセブンチェアは、より広い座面と改良された座り心地を実現しました。7枚の合板を2枚の仕上げ板で挟んだ成形技術により、身体に沿った美しい曲線と優れた機能性を両立。当初はアーム付きチェア(3207)として発表されましたが、現在ではアームなしのスタッキングチェア(3107)が最も人気を集めています。
カラードアッシュのシェルは16色、脚部は7色から選択可能で、ナチュラルウッド、フロントパディング仕様など、多様なバリエーションが用意されています。シンプルでありながら個性的、どんな空間にも調和する普遍的なデザインは、半世紀以上を経た今なお、世界中で愛され続けています。
エッグチェア(Egg Chair, 1958年)
アルネ・ヤコブセンが1958年、コペンハーゲンのSASロイヤルホテルのロビーのためにデザインしたエッグチェアは、デンマークデザインにおける不朽の名作として世界中で認識されています。
ヤコブセンは彫刻家のように、自身のガレージでワイヤーと石膏を使用した試作を繰り返し、シェルの完璧なフォルムを追求しました。卵のようなハイバックのフォルムが特長で、アルミニウム製のスターベースに合成素材の成形シェルを乗せ、常温硬化フォームの層と張り地で覆うという革新的な技術を採用しています。
座ってみると、まるで椅子に包み込まれるような心地良さを感じることができます。リクライニング機能付きで、シェル下部のバーで固さを調整することも可能。ファブリックとレザーのバリエーションから、使用する空間や好みに合わせて選択できます。自宅で過ごす時間を快適にしてくれる、まさに名作チェアと呼ぶにふさわしい逸品です。
スワンチェア(Swan Chair, 1958年)
エッグチェアと同じくSASロイヤルホテルのプロジェクトで誕生したスワンチェアは、白鳥の優雅な姿を思わせる美しい曲線が特徴です。エッグチェアよりもコンパクトで軽やかな印象を与えながらも、身体を優しく包み込む快適な座り心地を実現しています。
アームレストが背もたれとシームレスに繋がる有機的なフォルムは、ヤコブセンの卓越したデザイン感覚の結晶です。ダイニングやリビングはもちろん、ホテルのロビーやオフィスの応接スペースなど、様々な空間で洗練された雰囲気を演出します。
アントチェア(Ant Chair, 1952年)
1952年にアルネ・ヤコブセンがデザインしたアントチェアは、フリッツ・ハンセンとヤコブセンの協働関係を決定づけた記念すべき作品です。蟻(Ant)を思わせる独創的なフォルムから名付けられたこのチェアは、座面と背もたれを一体成形した革新的な成形合板技術により誕生しました。
セブンチェアよりもコンパクトで軽量なアントチェアは、丸テーブルと組み合わせても空間を圧迫しません。オリジナルは3本脚で、石畳などデコボコした床面でも安定するというデンマークならではの配慮が施されています。10脚までスタッキング可能で、実用性も抜群です。
PK22(1956年)
ポール・ケアホルムが1956年にデザインし、翌1957年にミラノ・トリエンナーレでグランプリを受賞したPK22は、ケアホルムの代表作として世界中で愛されています。派手な装飾を一切省いたシンプルなデザインで、真横から見ると線画のような美しいシルエットが特徴です。
細いスチール脚に傾斜したL字型の背座という構成は、ミース・ファン・デル・ローエのバルセロナチェアの「機能」に着目し、それ以外の要素を徹底的に削ぎ落とした本質的な機能美を体現しています。フラットなスチールバーでシート部分とねじ止めできるノックダウン構造により、生産性にも配慮した設計となっています。
座面は籐、キャンバス、レザーから選択でき、それぞれ異なる質感を楽しむことができます。広く取られた座面と程よく傾斜のある背もたれが、ハンモックのような極上の座り心地を実現。パリの国立図書館や東京の国立新美術館など、世界中の名建築で採用されている名作です。
その他の名作
リリーチェア、グランプリチェア、ドロップチェアなど、アルネ・ヤコブセンによる数々の傑作チェアをはじめ、スーパー楕円テーブル、AJランプシリーズなど、照明やテーブルにおいても優れた製品を展開しています。また、ハイメ・アジョンがデザインしたイケバナベース、キャンドルホルダーなど、インテリアアクセサリーも充実しており、空間をトータルでコーディネートすることが可能です。
基本情報
| ブランド名 | FRITZ HANSEN(フリッツ・ハンセン) |
|---|---|
| 創業年 | 1872年 |
| 創業者 | フリッツ・ハンセン(Fritz Hansen) |
| 本社所在地 | デンマーク・コペンハーゲン北部(Allerødvej 8, DK-3450 Allerød, Denmark) |
| 展開国 | 世界85カ国以上、約2,000箇所の販売拠点 |
| 旗艦店 | コペンハーゲン、ニューヨーク、ソウル、上海、ミュンヘン、東京 |
| 主要製品カテゴリー | 家具(チェア、ソファ、テーブル)、照明、アクセサリー小物、アウトドア家具 |
| 代表的なデザイナー | アルネ・ヤコブセン、ポール・ケアホルム、ハンス・J・ウェグナー、セシリエ・マンツ、ピエロ・リッソーニ、ハイメ・アジョン |
| 公式サイト | https://www.fritzhansen.com/ja/ |