バイオグラフィー

1907年6月17日、ミズーリ州セントルイスで鉄道警備員の父チャールズ・イームズ・シニアと母マリー・アデル・セリーヌの間に生まれた。姉アデルがいる家庭で育ち、若い頃から建築と写真に興味を持った。ワシントン大学セントルイス校で建築を学ぶも、フランク・ロイド・ライトを支持し、モダン建築への関心を示したことで2年後に退学。

1930年、チャールズ・M・グレイと建築事務所を設立し、1935年にはロバート・T・ウォルシュと新たな建築事務所を設立。1938年、フィンランド人建築家エリエル・サーリネンの招きでミシガン州のクランブルック美術学院に移り、産業デザイン部門の責任者となる。

クランブルック在学中の1940年、チャールズはエーロ・サーリネンとともにニューヨーク近代美術館(MoMA)主催の「家庭用品における有機的デザイン」コンペティションに参加し、一等賞を獲得。このプロジェクトでレイ・カイザーと出会い、1941年6月に結婚。二人は新婚旅行を兼ねてカリフォルニア州ロサンゼルスに移住し、最初はリチャード・ノイトラ設計のアパートメントに住みながら、寝室で成型合板の実験を開始した。

1945年、アーツ&アーキテクチャー誌主催のケーススタディハウス・プログラムに参加し、1949年にパシフィック・パリセーズに自邸(イームズハウス)を建設。これは生涯にわたる二人の唯一の住まいとなった。チャールズは1978年8月21日、故郷セントルイスで71歳で死去。レイは1988年8月21日、チャールズの命日と同じ日にロサンゼルスで死去した。

デザインの思想とアプローチ

チャールズ・イームズは「良いデザインとは、最良のものを最大多数の人々に最小の費用で提供すること」という理念を掲げていた。この民主的なデザイン哲学は、高品質でありながら手頃な価格の製品を大量生産することで実現された。

「何が良く機能するかは、何が良く見えるかよりも重要である。なぜなら良く機能するものは長持ちするからだ」というレイの言葉に代表されるように、イームズ夫妻は機能性を最優先に考えながらも、美しさを決して犠牲にしなかった。

チャールズはデザインプロセスについて「一つまたは複数のものを意識的に組み合わせて、個別に達成できるよりも良いものを達成できるようにすること、これがデザインの行為である」と定義している。この考えは、異なる素材や技術を組み合わせて革新的な家具を生み出す彼らのアプローチの基盤となった。

イームズラウンジチェアの開発において、チャールズは「よく使い込まれたファーストベースマンのミットのような温かく受容的な外観」を目指したと説明している。この比喩は、彼らが求めた快適性と親しみやすさの本質を表現している。

作品の特徴

素材の革新

イームズ夫妻の最大の功績の一つは、家具デザインにおける新素材の開拓である。成型合板技術の開発から始まり、1950年代にはそれまで主に軍事用途に限定されていたファイバーグラス(ガラス繊維強化ポリエステル樹脂)を家具に応用した最初のデザイナーとなった。

1958年に発表されたアルミニウムグループは、座面と背もたれを一体化した「スリング構造」という技術的な大きな成果を達成し、シェルという概念からの脱却を示した。軽量でありながら耐久性があり、エレガントなデザインは現代のオフィス家具の原型となった。

モジュラーシステムの先駆け

1950年に発表されたプラスチックチェアシリーズは、一つのシェルを様々なベースと組み合わせることができる多機能チェアという新しい家具類型を市場に導入した。DSW(木製ベース)、DSR(エッフェルベース)、DSX(4本脚)など、同じシェルに異なるベースを組み合わせることで、用途に応じた椅子を作り出すこのコンセプトは画期的だった。

人間工学への配慮

成型合板やファイバーグラスを用いたシェルチェアは、人体の輪郭に合わせて成型され、快適に体を支える形状を実現した。座面と背もたれの間にショックマウント(ゴム製の緩衝材)を配置することで、急な動きの衝撃を和らげる工夫も施された。

主要代表作品

イームズラウンジチェア&オットマン(1956年)

1956年に発表されたイームズラウンジチェアは、19世紀のクラブチェアを現代的に解釈した作品で、50年以上経った今でも20世紀で最も重要な家具デザインの一つとして認識されている。成型合板と革を組み合わせたこのチェアは、イームズ夫妻が初めて高級市場向けにデザインした椅子だった。

初期モデルは5層の薄い合板にブラジリアンローズウッドのベニヤで覆われていたが、1990年代初頭に環境保護の観点からブラジリアンローズウッドの使用が中止され、現在は7層の合板にチェリー、ウォールナット、パリサンダーローズウッドなどの仕上げベニヤが使用されている。

1956年にNBCテレビネットワークのホーム・ショーで全国デビューを果たし、即座に高い評価を受けて以来、継続的に生産されている。

DCW/LCW成型合板チェア(1946年)

DCW(ダイニングチェア・ウッド)は1946年に一般に発売され、成型合板を複雑な曲線に成形する技術の集大成となった。タイム誌に「世紀の椅子」と評されたLCW(ラウンジチェア・ウッド)と共に、これらの椅子は戦時中の脚用スプリント製造で培った技術を応用して開発された。

座面と背もたれを分離した2ピース構造を採用することで、成型合板の誠実な使用法を発見した。この決定は、単一シェルへのこだわりを捨て、素材の特性を最大限に活かす柔軟な思考の表れだった。

プラスチックシェルチェアシリーズ(1950年)

1950年に発表されたファイバーグラス製アームチェアは、MoMA主催の「低価格家具デザイン国際コンペティション」のために開発され、戦後の住宅不足に対応する低コストで高品質な家具という課題に応えた。

当初はグレージュ(グレーとベージュの混合)、エレファントハイドグレー、パーチメントの3色で展開され、その後カラーパレットが拡大された。学校、空港、レストラン、オフィスなど世界中で使用され、即座にアイコニックなデザインとなった。

アルミニウムグループ(1958年)

1958年に発表されたアルミニウムグループは、元々カミンズエンジンズ社長J・アーウィン・ミラーの邸宅のための屋外用家具として、エーロ・サーリネンとアレキサンダー・ジラードによって依頼された。アルミニウムリブの間に織物の座面と背もたれを張った革新的な構造は、当初「インドア・アウトドアグループ」と呼ばれていた。

1969年にはクッションを追加した「ソフトパッド」バージョンが追加され、より豪華なオフィス家具として展開された。この椅子は現在も「モダンデザインの高い地位の象徴」として認識されている。

ワイヤーチェアシリーズ(1951年)

1951年に発表されたワイヤーチェアは、イームズオフィスが金属を主材料とした椅子を市場に投入するという長年の願望を実現した作品である。プラスチックチェアと同じ形状を溶接スチールワイヤーで表現し、透明感と軽快さを実現した。

DKR-2モデルは座面と背もたれに分かれた2ピースのパッドを持ち、その形状から「ビキニチェア」という愛称で呼ばれた。

功績と業績

主要な受賞歴

  • 1940年:MoMA主催「家庭用品における有機的デザイン」コンペティション 一等賞(エーロ・サーリネンと共同)
  • 1946年:MoMA「チャールズ・イームズによる新しい家具」展(デザイナーとして初の個展)
  • 1960年:イームズラウンジチェアがMoMAの永久コレクションに収蔵
  • 数々のミラノ・トリエンナーレでのメダル受賞

パートナーシップと生産

イームズオフィスは1943年から1988年まで、ヴェニスのアボットキニー通り901番地の元ベイシティーズガレージで40年以上にわたって運営された。スタッフには、グレゴリー・エイン、ハリー・ベルトイア、デボラ・サスマンなど、後に著名となるデザイナーが含まれていた。

ハーマンミラー社との協力関係は1946年に始まり、現在に至るまで継続している。ハーマンミラーはヨーロッパと中東を除くすべての市場でイームズ家具の唯一の認定製造業者であり、ヴィトラ社がヨーロッパと中東市場での認定製造業者となっている。

評価と後世への影響

チャールズとレイ・イームズは20世紀で最も影響力のあるデザイナーとして認識されており、ミッドセンチュリーモダンアメリカンデザインの中心にある創造性、エネルギー、楽観主義の体現者だった。彼らの作品は単なる家具デザインを超えて、「デザインは前向きな変化の担い手であるべき」という理念を具現化している。

「デザイナーの役割は、ゲストのニーズを予測する、とても良い、思慮深いホストのそれである」というチャールズの言葉は、使い手を第一に考える彼らのデザイン哲学を端的に表現している。

イームズ夫妻の遺産は、機能性と美しさ、革新と伝統、技術と人間性を融合させた総合的なデザインアプローチにある。彼らの作品は時代を超えて愛され続け、現代のデザイナーにとって永遠のインスピレーションの源となっている。

作品一覧

年月 区分 作品名 ブランド
1940年 アームチェア Organic Armchair MoMA Competition (with Eero Saarinen)
1945年 ラウンジチェア LCW (Lounge Chair Wood) Evans Products / Herman Miller
1946年 ダイニングチェア DCW (Dining Chair Wood) Evans Products / Herman Miller
1946年 ダイニングチェア DCM (Dining Chair Metal) Evans Products / Herman Miller
1946年 ラウンジチェア LCM (Lounge Chair Metal) Evans Products / Herman Miller
1946年 折りたたみスクリーン Folding Screen (FSW) Evans Products / Herman Miller
1946年 コーヒーテーブル CTW (Coffee Table Wood) Evans Products / Herman Miller
1946年 コーヒーテーブル CTM (Coffee Table Metal) Evans Products / Herman Miller
1946年 ダイニングテーブル DTW (Dining Table Wood) Evans Products / Herman Miller
1946年 ダイニングテーブル DTM (Dining Table Metal) Evans Products / Herman Miller
1948年 ラウンジチェア La Chaise Vitra (現在)
1949年 収納ユニット ESU (Eames Storage Unit) 100/200/400 Series Herman Miller / Vitra
1949年 住宅 Case Study House #8 (Eames House) Pacific Palisades, CA
1950年 アームチェア DAR (Dining Armchair Rod Base) Herman Miller / Vitra
1950年 アームチェア DAW (Dining Armchair Wood Base) Herman Miller / Vitra
1950年 アームチェア DAX (Dining Armchair X-Base) Herman Miller / Vitra
1950年 アームチェア RAR (Rocking Armchair Rod Base) Herman Miller / Vitra
1950年 アームチェア LAR (Lounge Armchair Rod Base) Herman Miller / Vitra
1950年 アームチェア SAX (Standard Armchair X-Base) Herman Miller / Vitra
1950年 アームチェア PAC (Pivot Armchair on Castors) Herman Miller / Vitra
1950年 デスクユニット EDU (Eames Desk Unit) Herman Miller
1950年 サーフボードテーブル Elliptical Table (ETR) Herman Miller / Vitra
1950年 ショールーム Herman Miller Showroom Los Angeles
1951年 サイドチェア DSR (Dining Side Chair Rod Base) Herman Miller / Vitra
1951年 サイドチェア DSW (Dining Side Chair Wood Base) Herman Miller / Vitra
1951年 サイドチェア DSX (Dining Side Chair X-Base) Herman Miller / Vitra
1951年 サイドチェア DSS (Dining Side Chair Stacking Base) Herman Miller / Vitra
1951年 ワイヤーチェア DKR (Dining K-Wire Chair Rod Base) Herman Miller / Vitra
1951年 ワイヤーチェア DKW (Dining K-Wire Chair Wood Base) Herman Miller / Vitra
1951年 ワイヤーチェア DKX (Dining K-Wire Chair X-Base) Herman Miller / Vitra
1951年 ワイヤーチェア LKR (Lounge K-Wire Chair Rod Base) Herman Miller / Vitra
1951年 ワイヤーチェア RKR (Rocking K-Wire Chair Rod Base) Herman Miller / Vitra
1951年 ワイヤーチェア PKC (Pivot K-Wire Chair on Castors) Herman Miller / Vitra
1951年 ワイヤーベーステーブル Wire Base Table Herman Miller
1952年 ハングイットオール Hang-It-All Herman Miller / Vitra
1953年 玩具 The Toy Tigrett Enterprises
1953年 短編映画 A Communications Primer Eames Office
1954年 スタジアムシーティング Tandem Shell Seating Herman Miller
1954年 コンパクトソファ Sofa Compact Herman Miller
1954年 住宅 De Pree House Zeeland, MI
1956年 ラウンジチェア Eames Lounge Chair (Model 670) Herman Miller / Vitra
1956年 オットマン Eames Ottoman (Model 671) Herman Miller / Vitra
1956年 玩具 House of Cards Tigrett Enterprises
1957年 短編映画 Toccata for Toy Trains Eames Office
1957年 短編映画 The Information Machine IBM
1957年 ソーラー装置 Solar Do-Nothing Machine Alcoa
1958年 アルミニウムグループ EA 105/107/108 Management Chair Herman Miller / Vitra
1958年 アルミニウムグループ EA 115/116/117/119 Lounge Chair Herman Miller / Vitra
1958年 アルミニウムグループ EA 124/125 Executive Chair Herman Miller / Vitra
1958年 アルミニウムグループ EA 101/103/104 Side Chair Herman Miller / Vitra
1958年 タンデムシーティング Tandem Sling Seating Herman Miller
1958年 コントラクトベース Contract Base Tables Herman Miller / Vitra
1959年 展覧会 Glimpses of the USA American National Exhibition, Moscow
1960年 玩具 The Coloring Toy Tigrett Enterprises
1961年 展覧会 Mathematica California Museum of Science and Industry
1961年 短編映画 Eames Lounge Chair Herman Miller
1962年 タンデムシーティング 3473 Tandem Seating Herman Miller
1964年 セグメントテーブル Segmented Base Tables Herman Miller / Vitra
1964年 アクションオフィス Action Office I (with George Nelson) Herman Miller
1964-65年 展覧会 IBM Pavilion New York World's Fair
1968年 シェーズロング Eames Chaise (ES106) Herman Miller / Vitra
1968年 アクションオフィス Action Office II Herman Miller
1968年 短編映画 Powers of Ten (試作版) Eames Office
1969年 ソフトパッドグループ EA 215/216/217/219 Management Chair Herman Miller / Vitra
1969年 ソフトパッドグループ EA 222/223 Lounge Chair Herman Miller / Vitra
1969年 ソフトパッドグループ EA 435/437/438 Executive Chair Herman Miller / Vitra
1969年 ソフトパッドグループ EA 205/207/208 Side Chair Herman Miller / Vitra
1969年 展覧会 What is Design? Musée des Arts Décoratifs, Paris
1972年 展覧会 The World of Franklin and Jefferson American Bicentennial
1972年 短編映画 SX-70 Polaroid
1977年 短編映画 Powers of Ten (最終版) IBM

Reference

Charles Eames - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Charles_Eames
Charles and Ray Eames - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Charles_and_Ray_Eames
Charles Eames and Ray Eames | Biography, Design, and Facts | Britannica
https://www.britannica.com/biography/Charles-Eames-and-Ray-Eames
Charles Eames (1907–1978) and Ray Eames (1913–1988) - The Metropolitan Museum of Art
https://www.metmuseum.org/essays/charles-eames-1907-78-and-ray-eames-1912-88
Biography - The Work of Charles and Ray Eames: A Legacy of Invention | Library of Congress
https://www.loc.gov/exhibits/eames/bio.html
Biography – Charles & Ray – Eames Office
https://www.eamesoffice.com/about/biography/
Eames Office – Official Website & Online Store
https://www.eamesoffice.com/
Eames Lounge and Ottoman - Herman Miller
https://www.hermanmiller.com/products/seating/lounge-seating/eames-lounge-chair-and-ottoman/
Eames Lounge Chair - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Eames_Lounge_Chair
Eames Lounge and Ottoman Design Story - Herman Miller
https://www.hermanmiller.com/products/seating/lounge-seating/eames-lounge-chair-and-ottoman/design-story/
Eames Aluminum Group - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Eames_Aluminum_Group
Eames Fiberglass Armchair - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Eames_Fiberglass_Armchair
DCW - Eames Office
https://www.eamesoffice.com/the-work/dcw/
EAMES ALUMINUM GROUP - Eames Office
https://www.eamesoffice.com/the-work/eames-aluminum-group/
Eames.com - The best place for your Eames collection
https://eames.com/