イームズ ハングイットオールは、1953年にチャールズ&レイ・イームズがデザインした壁掛けのコートラックである。白いスチールワイヤーのフレームに、赤・黄・青・オレンジ・緑など色とりどりの木製ボールを取り付けた造形で、実用と遊び心を併せ持つミッドセンチュリー・モダンの代表的なプロダクトとして親しまれている。
特徴・コンセプト
ハングイットオールは、子どものためのデザインというイームズ夫妻の関心から生まれた。当時、夫妻は玩具メーカー、ティグレット・エンタープライズ社のプレイハウス部門向けに子ども用の家具や玩具を手掛けており、本作もその一環として企画された。フレームには、夫妻がワイヤーチェアやワイヤーベーステーブルのために編み出したワイヤー溶接の技法が用いられている。色付きの木球が空中に浮かんでいるように見える構成は、当時教室で使われていた分子模型のイメージも下敷きにしているとされる。
構造とフック
白く塗装されたスチールワイヤーのフレームに、大小あわせて14個の木製ボール(大8個・小6個)が取り付けられている。各ボールがフックとして働き、コートや帽子、バッグ、アクセサリーなどを掛けられる。ボールにはメープル材が用いられ、色付きのラッカーで仕上げられている。壁に正しく取り付けた状態で全体の耐荷重は約23kg(50ポンド)とされる。
子ども部屋から暮らし全体へ
子ども部屋のための製品として世に出たハングイットオールだが、発売後まもなく、明るく親しみやすいデザインは大人にも受け入れられ、玄関やリビング、オフィスなど幅広い場所で使われるようになった。レイ・イームズはこれを「機能する装飾(functioning decoration)」と表現している。1950年代の撮影では、レイがボールにローラースケートや人形、リボンなどを掛けてみせ、使い方の自由さを示したという逸話も残っている。
評価と再生産
ハングイットオールは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のコレクションに収蔵されている(2018年、ジョージ・R・クラヴィス II コレクションからの寄贈)。また2012年にMoMAで開催された展覧会「Century of the Child: Growing by Design, 1900-2000」では、イームズ夫妻の玩具からの発想を示す作例として展示された。
オリジナルはティグレット・エンタープライズ社が製造・販売していたが、同社の撤退後に一時生産が途絶えた。その後、ハーマンミラー社が1994年に再生産を開始し、現在はハーマンミラー社とヴィトラ社がイームズのデザインを正式に継承して生産を続けている。近年ではデンマークのブランドHAYとの協業により、木球をガラス球に置き換えたバージョンも作られている。
基本情報
| デザイナー | チャールズ&レイ・イームズ(Charles & Ray Eames) |
|---|---|
| デザイン年 | 1953年 |
| メーカー | ハーマンミラー(Herman Miller)/ ヴィトラ(Vitra) |
| オリジナル製造 | ティグレット・エンタープライズ社(Tigrett Enterprises) |
| 素材 | スチールワイヤー(塗装仕上げ)、メープル材(ラッカー塗装) |
| サイズ | 幅495mm × 高さ368mm × 奥行165mm(現行ハーマンミラー仕様) |
| フック数 | 14個(大8個・小6個) |
| カテゴリー | 壁掛けコートラック / ウォールハンガー |