概要
レイ・イームズ(1912-1988)は、アメリカのデザイナーである。抽象画家として出発し、1941年にチャールズ・イームズと結婚してからは、イームズ・オフィスの仕事を共同で担った。家具の色と表面の構成、展示の組み立て、短編映像の制作を主に扱っている。1988年、チャールズの没後ちょうど10年の同じ日に没した。
バイオグラフィー
1912年12月15日、カリフォルニア州サクラメントにベルニース・アレクサンドラ・カイザーとして生まれた。ニューヨークで抽象画家ハンス・ホフマンに6年間師事している。
1936年にアメリカ抽象芸術家協会の設立に加わり、絵画を発表した。
1940年、ミシガン州のクランブルック美術学院に入学した。同地でチャールズ・イームズと出会い、翌1941年に結婚してカリフォルニアへ移っている。
以後、イームズ・オフィスの仕事を共同で担った。1978年にチャールズが没した後は、1988年8月21日に没するまでオフィスの記録の整理にあたっている。
デザインの思想と方法
レイの担当は、成形や構造の側ではなく、面と色をどう構成するかという側にあった。抽象画の訓練を受けており、平面の分割と色の配分を扱う技術がその前提になる。
色を体系として扱う
シェルチェアの色は、単体で選ぶのではなく、複数を並べたときの関係で決められる。抽象画で扱う色の配分の問題が、製品群の色の設定に持ち込まれている。
平面を分割する
テキスタイルの図案や、収納家具ESUの面の割付は、色面の分割として構成される。ESUでは、棚の背板と側板に異なる色を配し、開口の位置と合わせて面を分ける。構造から決まる格子に、色の配分を重ねる方法にあたる。
展示を構成する
イームズ・オフィスは家具のほか、展示と短編映像を多数制作した。展示では、何をどの順で見せるかという構成が中心になる。平面の分割と同じ問題を、時間と空間の側で扱うことになる。
共同名義で発表する
イームズ・オフィスの作品は夫妻の共同名義で発表され、個々の担当は公表されていない。長らくチャールズ単独の仕事として扱われてきたが、近年は共同設計者として個別に検討されることが増えている。
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代表作にみる方法
抽象絵画(1930年代)
ハンス・ホフマンに師事して制作した絵画である。1936年のアメリカ抽象芸術家協会の設立に加わっている。以後の色と面の扱いの前提にあたる。メトロポリタン美術館が1点を収蔵している(収蔵番号1979.322)。
テキスタイル(1940年代)
「シー・シングス」「クロス・パッチ」などの図案を手がけた。色面の分割として構成され、絵画での方法が布に移されている。V&Aとメトロポリタン美術館が収蔵している。
ESU 収納ユニット(1949年)
鋼の枠に木の棚板と色付きの背板を組み合わせた収納である。構造から決まる格子に、色の配分を重ねる。背板と側板の色の組み合わせで、同じ構造から異なる面が構成できる。→イームズ・ストレージ・ユニット
ハウス・オブ・カード(1952年)
切り込みを入れた札を組み合わせて構造をつくる玩具である。札の面には図案が印刷される。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号419.1955)。→イームズ ハングイットオール
イームズ・ハウス(1949年)
ケース・スタディ・ハウス第8番として建てられた自邸である。鋼の骨組みに規格の建材を組み合わせ、外壁の一部に色付きの板を配する。格子に色を重ねるという構成が、建築の規模で現れている。ニューヨーク近代美術館が模型を収蔵している(収蔵番号153.1984)。
評価と影響
レイ・イームズは、長らくチャールズ・イームズの協働者として扱われてきたが、近年は共同設計者として個別に検討されることが増えている。抽象画の訓練を経ており、色と面の構成を担ったとされる。
イームズ・オフィスの活動は家具にとどまらず、展示と短編映像に及んだ。1959年のモスクワ・アメリカ博覧会向けの多面スクリーン映像などがある。
1978年のチャールズの没後は、オフィスの記録の整理にあたった。1988年8月21日、チャールズの命日からちょうど10年後の同じ日に没している。
収蔵
4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したところ、計97件が確認できた。いずれもチャールズ・イームズとの共同名義で登録されている。以下は主要なものの抜粋である。
- Met 絵画(1933年頃) 収蔵番号 1979.322
- MoMA 三本脚のサイドチェア(1944年頃) 収蔵番号 67.1946
- Met 脚副子(1942年) 収蔵番号 1984.246
- Met テキスタイル「クロス・パッチ」(1945年頃) 収蔵番号 1984.265.1
- MoMA サイドチェア(モデルDCW、1946年) 収蔵番号 70.1946
- MoMA 折りたたみ衝立(1946年) 収蔵番号 79.1948
- V&A シー・シングス(1947年) 収蔵番号 CIRC.138-1950 ほか計3点
- MoMA サイドチェアの試作(1948年) 収蔵番号 379.1950、380.1950
- MoMA イームズ・ハウスの模型(1949年) 収蔵番号 153.1984
- Met LAR アームチェア(1949年) 収蔵番号 1986.427.1
- V&A DSS(1950年) 収蔵番号 W.3-2021
- MoMA ザ・リトル・トイ(1952年) 収蔵番号 418.1955
- MoMA ハウス・オブ・カード(1954年) 収蔵番号 419.1955
- V&A アルミニウム・グループ モデル682(1958年) 収蔵番号 CIRC.69-1969
- AIC ラウンジチェア&オットマン(1956年) 収蔵番号 2000.128.1-2
- AIC ロッキング・アームチェア(モデルRAR、1950年設計) 収蔵番号 1976.396
- AIC シェーズ(1968年) 収蔵番号 2001.433
作品一覧
いずれもチャールズ・イームズとの共同設計による。家具の一覧はチャールズ・イームズのページに共通のものを掲げている。
| 年 | 区分 | 作品名 | ブランド / 場所 |
|---|---|---|---|
| 1930年代 | 絵画 | 抽象絵画 | — |
| 1940年代 | テキスタイル | シー・シングス、クロス・パッチ | — |
| 1949年 | 建築 | イームズ・ハウス(ケース・スタディ・ハウス #8) | カリフォルニア州、アメリカ |
| 1949年 | 収納 | イームズ・ストレージ・ユニット | Herman Miller / Vitra |
| 1952年 | 玩具 | ザ・リトル・トイ | Tigrett Enterprises |
| 1954年 | 玩具 | ハウス・オブ・カード | Tigrett Enterprises / Vitra |
| 1950年代 | 什器 | イームズ ハングイットオール | Herman Miller / Vitra |
| 1950-70年代 | 展示・映像 | 展示設計と短編映像 | 各地 |
プロフィール
| 生没年 | 1912年12月15日〜1988年8月21日 |
|---|---|
| 出身地 | アメリカ・カリフォルニア州サクラメント |
| 国籍 | アメリカ |
| 活動拠点 | カリフォルニア州ヴェニス |
| 分野 | 家具、テキスタイル、展示、映像、絵画 |
| 主な協働ブランド | Herman Miller、Vitra |
Reference
- Eames Office(公式)
- https://www.eamesoffice.com/
- Eames Foundation
- https://eamesfoundation.org/
- The Metropolitan Museum of Art Collection
- https://www.metmuseum.org/art/collection
- The Art Institute of Chicago Collection
- https://www.artic.edu/collection