概要
Eames Wire Chair(イームズ ワイヤーチェア)は、1951年にチャールズ&レイ・イームズ夫妻によってデザインされた革新的なチェアである。プラスチックシェルチェアと同じ形状を、溶接したスチールワイヤーで構成する。
成形合板、FRPに続く素材として工業用スチールワイヤーが用いられた。縦横のロッドが交差し、網目状のシェルを構成する。同じ形状でも、面が閉じるか隙間が残るかが異なる。
特徴・コンセプト
ワイヤーは細いが、縁を二重にすることで断面が増える。荷重は交点で分散し、格子全体が撓む。硬い素材でありながら、詰め物なしで座面が身体に沿う。
ワイヤーは工業用の規格品で、曲げと溶接だけで成形できる。樹脂の成形では形ごとに型を要するが、ワイヤーなら治具を替えるだけで済む。交点の並びがそのまま面の模様として現れる。
バリエーションと名称
型番はシェルとベースの組み合わせを示す。DKRはロッドを組んだベース、DKXは4本脚、DKWは木製の脚による。シェルが共通のため、ベースだけを替えられる。
ビキニパッド
オプションのクッションは、座面と背もたれが分離した2枚で構成される。シェル全体を覆えば格子が見えなくなるが、2枚に分ければ縁と中間にワイヤーが残る。レザーやファブリックから選べる。
エピソード
1950年代初頭、ワイヤーの曲げと接合の技術が研究された。トレーや籠など、既存のワイヤー製品が参照されている。
翌1952年には、ノルからベルトイア サイドチェアが発表されている。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は、ベルトイアが1940年代後半にカリフォルニアでイームズらとともに働くなかで、初期の椅子の構想を練ったと記録している。
溶接用の治具を用いることで、手作業でも接合位置が揃う。シェルの縁を上下2本のワイヤーで挟んで溶接する構造は、1952年12月に出願され、1955年に米国特許(第2,708,476号、権利はハーマンミラーに譲渡)となった。
評価と影響
線材を格子に組んで面をつくる構成は、ベルトイア サイドチェアやヒー・チェアとも共通する。ワイヤーチェアは縦横のロッドを交差させ、ベルトイアは湾曲した格子を用いる。ヴィトラは、粉体塗装の仕様(木脚のDKWを除く)について、季節的・一時的な屋外での使用を認めている。
シェルの形状は同じイームズによるプラスチックシェルチェアと共通する。面が閉じるか隙間が残るかで、光の通り方と重量が変わる。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館)。同館は「Side Chair (model DKR-1)」として登録しており、素材はワイヤー、パッド入りレザー、金属のグライドとされ、製造元からの寄贈にあたる。
- MoMA サイドチェア(model DKR-1、1951年) 収蔵番号 217.1953
設計思想や経歴について詳しくはチャールズ・イームズ、レイ・イームズの各プロフィールページをご覧ください。
ヴィトラの歴史や他の製品について詳しくはヴィトラブランドページをご覧ください。
基本情報
| デザイナー | Charles & Ray Eames(チャールズ&レイ・イームズ) |
|---|---|
| デザイン年 | 1951年 |
| 製造・販売 | Herman Miller(ハーマンミラー)/ Vitra(ヴィトラ) |
| 主な素材 | 溶接スチールワイヤー(クローム仕上げ/パウダーコート仕上げ) |
| サイズ | W483 × H794mm(ワイヤーベース。ハーマンミラー日本公式の値) |
| 座面高 | 429mm(ワイヤーベース。ハーマンミラー日本公式の値) |
| バリエーション | DKR、DKX、DKW、LKR等 / クッションオプション有 |
| 収蔵美術館 | ニューヨーク近代美術館(MoMA、収蔵番号217.1953) |
製造元の変遷
Reference
- US2708476A Furniture frame construction | Google Patents
- https://patents.google.com/patent/US2708476A/en
- Side Chair (model DKR-1) | MoMA
- https://www.moma.org/collection/works/2733
- Diamond Chair | Victoria and Albert Museum
- https://collections.vam.ac.uk/item/O121019/