イームズ ワイヤーチェア アウトドアは、20世紀を代表するデザイナー夫妻チャールズ&レイ・イームズが1951年に発表した名作椅子の屋外対応版である。溶接されたスチールワイヤーを用いて構築された座面シェルは、彼らが追求し続けた単一成形シェルの概念をメタル素材で実現したものであり、透明感のある軽やかなシルエットと高度な技術的洗練を兼ね備えた傑作として、発表から70年以上を経た現在もなお世界中で愛され続けている。パウダーコート仕上げにより耐候性を獲得した本モデルは、屋内外を問わず多様な空間に彫刻的な美しさをもたらす。

特徴・コンセプト

イームズ ワイヤーチェアの最大の特徴は、曲げ加工と溶接を施したスチールワイヤーによって構成された一体成形シェルにある。この革新的な構造は、イームズ夫妻がファイバーグラス製プラスチックシェルチェアで追求した有機的なフォルムを、金属素材によって再解釈したものである。縦横に編み込まれたワイヤーの網目構造は、籠細工や吊り橋のケーブルからインスピレーションを得たものとされ、三次元のドローイングを思わせる視覚的軽快さを実現している。

構造と素材

座面シェルは、細いスチールワイヤーを精密に曲げ加工し、抵抗溶接によって接合することで形成される。シェルの縁には、強度と安定性を確保するため、より細いゲージのワイヤーを二重に巻いている。この技術的革新により、イームズ夫妻はデザインにおける初のアメリカ機械特許を取得した。アウトドアバージョンではパウダーコート仕上げが施され、紫外線や雨風に対する耐性を獲得している。

エッフェルタワーベース

座面シェルを支えるベースは、その形状から「エッフェルタワーベース」と呼ばれている。細いスチールロッドを用いた脚部は、座面のワイヤーメッシュ構造と視覚的・形態的調和を成し、椅子全体として統一された美学を形成している。軽量でありながら十分な強度を確保したこの脚部設計は、プラスチックシェルチェアと共通のベースオプションを採用しており、イームズ家具コレクション全体におけるモジュラー性を体現している。

オプションのシートパッド

ワイヤーチェアには、座面のみを覆うフラットパッド(DKR-1)と、座面と背もたれを二分割で覆う「ビキニパッド」(DKR-2)の2種類のクッションオプションが用意されている。水着を連想させるビキニパッドの愛称は、1950年代アメリカのポップカルチャーを象徴するものとして知られている。アウトドアバージョンでは、耐久性と撥水性を備えたTEXSILK素材のシートパッドがオプションとして提供されている。

エピソード

イームズ夫妻は元来、プラスチックシェルチェアを金属で製作することを構想していた。しかし当時の技術的制約からファイバーグラスへと素材を転換し、1950年のプラスチックシェルチェア発表後、1951年にようやく念願の金属製チェアを実現するに至った。製造はカリフォルニア州コンプトンのBanner Metals社がHerman Miller社向けに担当し、座面シェルの抵抗溶接技術が製品化の鍵となった。

1953年にニューヨークのCowlデザインショーで展示された際、批評家たちはそのベース形状をパリのエッフェル塔になぞらえ、以来「エッフェルチェア」あるいは「エッフェルタワーベース」の名称が定着した。この椅子は発表直後から成功を収め、その彫刻的な外観、快適性、実用性により即座に市場の支持を獲得した。

Herman Miller社は2012年にアウトドア対応版(型番DKQR)をリリースし、Vitra社も2013/14年にパウダーコート仕上げの「DKR Outdoor」を発表した。2020年代にはHerman Miller社とデンマークのデザインハウスHAY社との初のコラボレーションにより、Mette Hayがキュレーションした新たなカラーパレットが加わり、現代のライフスタイルに対応した屋内外兼用チェアとして新たな価値を獲得している。

評価

イームズ ワイヤーチェアは、戦後アメリカンモダニズムの機能主義を体現する作品として、デザイン史上重要な位置を占めている。透明感のあるスチールワイヤー構造と遊び心あるビキニパッドの組み合わせは、1950年代アメリカの繁栄と楽観主義を象徴するものとして評価されている。

チャールズ・イームズの言葉「快楽が有用でないと誰が言えるだろうか」が示すように、このチェアは合理的な価格で提供される高品質な椅子として、軽さと強度の両立という課題に応えるものであった。イームズ夫妻が信じた「デザインの成功とは最大多数の人々に恩恵をもたらすこと」という理念が具現化された作品である。

ニューヨーク近代美術館(MoMA)は、イームズ夫妻の家具コレクションを50点以上所蔵しており、1973年には「Charles Eames: Furniture from the Design Collection」展を開催した。Herman Miller社、HAY社、そしてイームズ夫妻のいずれもMoMAの永久コレクションに作品が収蔵されており、本チェアは20世紀デザインの金字塔として国際的に認知されている。

受賞・認定

アメリカ機械特許
1955年5月17日、チャールズ・イームズはUS Patent 2,708,476「Furniture Frame Construction」を取得。デザインにおける初のアメリカ機械特許として歴史に刻まれている。
ニューヨーク近代美術館 永久コレクション
イームズ夫妻による家具作品は、MoMAの建築・デザイン部門の永久コレクションに50点以上収蔵されている。
Indoor Advantage Gold認証
現行のHerman Miller製品は、SCS Global Services社による室内空気品質の最高水準認証を取得しており、揮発性有機化合物(VOC)の厳格な排出基準を満たしている。

基本情報

製品名(日本語) イームズ ワイヤーチェア アウトドア
製品名(英語) Eames Wire Chair Outdoor
デザイナー チャールズ&レイ・イームズ(Charles & Ray Eames)
発表年 1951年(オリジナル)、2012年(アウトドア版)
メーカー Herman Miller(北米・南米・アジア・オセアニア・アフリカ)、Vitra(ヨーロッパ・中東)
素材 パウダーコートスチール
寸法 幅約50cm × 奥行約54cm × 高さ約80cm、座面高:約42cm
重量 約5.4kg
使用環境 屋内・屋外兼用
型番(Herman Miller) DKQR(アウトドア)
カラーバリエーション ブラック、ホワイト、Herman Miller x HAYコラボレーションカラー(パウダーイエロー、ミントグリーン、アイアンレッド、ブラックブルー)ほか
オプション TEXSILKシートパッド(撥水性・屋外対応)