Eames ESU(Eames Storage Unit)は、チャールズ&レイ・イームズ夫妻が1949年から1951年にかけてデザインし、1950年から1955年にかけて初期生産された革新的なモジュラー収納システムである。デトロイト美術館で開催された「An Exhibition for Modern Living」展(1949年)で初公開されて以来、「働く芸術(working art)」と称されてきたこの収納システムは、戦後アメリカの変化する生活様式に対応する経済的で柔軟な解決策として設計された。産業用倉庫や工場で使用される金属製シェルビングから着想を得た本作は、工業生産技術を用いながら、美しく手頃な価格の家庭用家具を創造するというイームズ夫妻の継続的な努力の結晶である。

ESUの革命性は、その完全にカスタマイズ可能なモジュラーシステムにある。標準化された部品の組み合わせにより、使用者は自身のニーズや空間に合わせて、棚、引き出し、扉の配置を選択できた。100シリーズ(1段高)、200シリーズ(2段高)、400シリーズ(4段高)という3つの高さバリエーションと、フルワイズとハーフワイズの幅の選択肢により、リビングルーム、ダイニングルーム、ベッドルーム、オフィスなど、あらゆる空間に対応する無限の構成が可能となった。この先駆的なデザインは、「モジュラリティ」や「ハイテク」という言葉がデザイン言語に入る遥か以前に、標準化された工業部品を美しい家具に変換する可能性を示したのである。

特徴・コンセプト

構造と素材の革新

ESUの構造は、亜鉛メッキまたはクロームメッキ処理されたスチールアングル材を主要な支持体として採用し、対角線状のワイヤーブレーシングによって安定性を確保している。この「橋のような」シンプルな構造は、イームズ夫妻が「素材への誠実なアプローチ(honest use of materials)」と呼ぶ哲学を体現している。スチール構造は装飾されることなく、むしろその工業的な美しさが前面に押し出されている。

素材の組み合わせは多彩である。棚板にはバーチ、ウォールナット、または黒のプラスチックラミネート仕上げの合板を使用。扉には、円形の凹み(ディンプル)パターンを真空成形した薄い合板や、8色(赤、黄、青、黒、タン、グレー、白を含む)のエナメル塗装されたメゾナイトパネルが用意された。背面パネルには穿孔金属板も選択可能で、これらすべての要素が相互に交換可能な設計となっている。

イームズハウスとの関連性

ESUのデザインは、同時期に完成したイームズハウス(ケーススタディハウス#8、1949年)と密接な関係にある。両者は同じ設計原理を共有しており、既製の工業部品を使用し、スチールフレーム構造にX字型のワイヤーブレーシングを採用している。イームズハウスのファサードに見られる構造的な十字ブレーシングは、ESUの小さなスケールでのワイヤーブレーシングと同じ原理に基づいている。チャールズ・イームズ自身が述べたように、これらの類似性は単なる視覚的な演習ではなく、構造的な論理と素材の誠実な使用という共通の哲学から生まれたものである。

カラーバリエーション

ESUは主に3つのカラーオプションで提供された。「-C」モデルは「カラフル」を意味し、原色(赤、青、黄)を含む鮮やかなパネルを特徴とした。「-N」モデルは「ニュートラル」または「ナチュラル」を意味し、グレー、ベージュ、白、黒のより控えめな色調で構成された。1952年には「-K」オプション(チェッカーボード)も追加され、黒と白のパネルの組み合わせが可能となった。この多様なカラーパレットにより、購入者は伝統的な自然木の外観から、モンドリアンを思わせる鮮やかな色彩構成まで、自由に選択することができた。

エピソード

デトロイト美術館での華々しいデビュー

1949年9月9日、アレクサンダー・ジラードがキュレーションを手がけた「An Exhibition for Modern Living」展において、ESUは初めて公開された。イームズルームと呼ばれた展示空間には、複数のESUユニット、成形合板の椅子、ラ・シェーズラウンジチェアのプロトタイプ、そして「ギャラクシーライト」と名付けられた照明器具が配置された。ジョージ・ネルソンはこの空間を「部屋の文字通りの表現というよりも、特別な個人的語彙を通じて伝えられる態度の表現」と評した。この展覧会でESUは即座に「働く芸術」と称され、実用的な収納機能と芸術的な存在感を併せ持つ家具として認識されたのである。

ノックダウン家具としての挑戦

ESUは当初、「ノックダウン家具」として販売された。これは顧客が自ら組み立てる必要がある分解式の家具で、輸送コストの削減と価格の低減を狙ったものだった。しかし、組み立て作業は予想以上に困難で、多くの顧客から苦情が寄せられた。さらに、初期の軽量な脚部は輸送中の取り扱いミスで曲がることがあった。これらの問題を受けて、ハーマンミラー社は1952年頃から完全組み立て済みの製品を提供し始め、より強固な三角形サポート付きの新しい脚部デザインを採用した。この改良により、ESUはより実用的で耐久性のある製品へと進化したのである。

日本の影響とメカノ理論

ESUのデザインには複数の文化的影響が指摘されている。多くの批評家は、その簡潔な幾何学的構成と構造の露出に日本建築の影響を見出している。戦後アメリカにおいて、日本的な美学への言及は大胆な選択であったが、イームズ夫妻は東洋と西洋の美的感覚を見事に融合させた。一方、別の理論では、1898年に発明された組み立て式玩具「メカノ」との類似性が指摘されている。金属フレームと組み立て式という特徴から、ESUは「大人のためのティンカートイ」とも呼ばれ、遊び心と実用性を兼ね備えた家具として評価された。

評価

ミッドセンチュリーモダンの象徴

ESUは、ミッドセンチュリーモダンデザインの最も重要な成果の一つとして広く認識されている。ニューヨーク近代美術館(MoMA)、ビクトリア&アルバート博物館、デンバー美術館、クーパー・ヒューイット・スミソニアンデザイン博物館など、世界の主要な美術館のパーマネントコレクションに収蔵されている。これらの機関は、ESUを20世紀デザインにおける革新性、多様性、そして時代を超越した魅力を持つ作品として評価している。

デザイン哲学の体現

ESUは、チャールズ&レイ・イームズの「生活のための問題解決」というデザイン哲学を完璧に体現している。工業生産技術を用いて、美しく、機能的で、手頃な価格の家具を創造するという彼らの目標は、ESUにおいて見事に達成された。標準化された部品の利点を最も明確に示すデザインとして、製造業者にとってのコスト削減は消費者への低価格化につながり、デザインの民主化という理想を実現したのである。

現代における再評価

1998年にハーマンミラー社が、そして後にヴィトラ社がESUの再生産を開始したことは、このデザインの時代を超えた価値を証明している。現代のデザイナーやコレクターの間で、ESUは単なるヴィンテージ家具ではなく、モジュラーデザインと持続可能性の先駆的な例として再評価されている。特に、カスタマイズ可能性と適応性は、現代の柔軟な生活空間のニーズに完璧に対応しており、70年以上前のデザインが今なお革新的であることを示している。

受賞歴・展覧会

  • 1949年:「An Exhibition for Modern Living」展(デトロイト美術館)で初公開、「働く芸術」として称賛
  • 1950年:『Arts and Architecture』誌4月号にチャールズ・イームズによる論文「A New Series of Storage Units」掲載
  • 1950-1955年:MoMAの「Good Design」展シリーズに継続的に出展
  • 2011-2013年:MoMA「Plywood: Material, Process, Form」展に出展
  • 2019年:デンバー美術館・ミルウォーキー美術館共同企画「Serious Play: Design in Midcentury America」展に出展
  • 2019年:MoMA「The Value of Good Design」展に出展

基本情報

デザイナー チャールズ・イームズ(Charles Eames, 1907-1978)
レイ・イームズ(Ray Eames, 1912-1988)
デザイン年 1949-1951年
初期生産期間 1950-1955年
再生産開始 1998年〜現在
製造ブランド ハーマンミラー(Herman Miller)
ヴィトラ(Vitra)
主要素材 亜鉛メッキ/クロームメッキスチール、バーチ/ウォールナット合板、エナメル加工メゾナイト、穿孔金属板、ファイバーグラス(一部モデル)
シリーズ展開 100シリーズ(高さ1段)
200シリーズ(高さ2段)
400シリーズ(高さ4段)
サイズ(400シリーズ) 高さ:約149cm × 幅:約119cm × 奥行:約43cm
カラーオプション -C(カラフル):原色を含む鮮やかな配色
-N(ニュートラル/ナチュラル):控えめな配色
-K(チェッカーボード):黒白の組み合わせ(1952年追加)
美術館収蔵 ニューヨーク近代美術館(MoMA)
ビクトリア&アルバート博物館
デンバー美術館
セントルイス美術館
クーパー・ヒューイット・スミソニアンデザイン博物館
クランブルック美術館