概要
イームズ・ストレージ・ユニット(ESU)は、チャールズ&レイ・イームズが1949年から1950年にかけて設計したモジュール式の収納である。亜鉛めっきまたはクロムめっきのスチールアングルで骨組みを組み、そこに棚板、引き出し、扉、背面パネルを組み合わせる。1998年から生産が再開されている。
特徴・コンセプト
斜めの線で四角い枠を保つ
アングル材で組んだ矩形の枠は、そのままでは平行四辺形に傾く。ESUでは背面と側面に細いワイヤーを斜めに張り、三角形をつくって変形を止めている。太い部材で固めるかわりに、細い線を一本渡すことで剛性を得る方法である。
このワイヤーブレースは隠されず、そのまま外に見える。同じ時期に完成したイームズ邸(ケース・スタディ・ハウス#8)のファサードにも、同じ原理のX字のブレースが現れる。
部材を組み替える
高さは1段、2段、4段の3種類、幅はフル幅とハーフ幅が用意される。棚板、引き出し、扉、背面パネルはいずれも交換でき、開いた棚と閉じた収納の配分を使う人が決められる。産業用の棚に使われる規格部材の考え方を、家庭用の家具に持ち込んでいる。
面ごとに素材を変える
棚板にはバーチやウォールナットの合板を、扉には円形のくぼみを真空成形した薄い合板や、色を塗ったメゾナイトのパネルを用いる。背面には穴を開けた金属板も選べる。骨組みは共通のまま、面材の組み合わせで見え方が変わる。現行のハーマンミラー版では2種類の配色が用意される。
エピソード
ESUは1949年、アレクサンダー・ジラードが企画したデトロイト美術館の「An Exhibition for Modern Living」展で初めて公開された。
当初は購入者が自分で組み立てるノックダウンの形で販売された。輸送の容積と価格を抑える狙いだったが、組み立てが難しいという声が多く寄せられた。初期の脚部は輸送中に曲がることもあった。ハーマンミラーは1952年頃から組み立て済みの製品を出すようになり、三角形の補強を加えた脚部に改めている。
評価と影響
規格化した部材を組み合わせて構成を決めるという方式は、USMハラー モジュールファニチャーや606ユニバーサルシェルビングシステムにも見られる。ESUはそのなかで早い時期の例にあたり、金属の骨組みに木と樹脂の面材を組み合わせる点が異なる。1998年にハーマンミラーが、のちにヴィトラが生産を再開した。
美術館コレクション
ニューヨーク近代美術館は、樹脂塗装合板・ラッカー塗装メゾナイト・クロムめっきスチールによる1950年のイームズ・ストレージ・ユニットを収蔵番号434.1992で登録している(ジョン・C・ワデルからの寄贈。寸法148.6×119.4×42.5cm)。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は、1949〜1950年のESU 421-Cを収蔵番号W.5:1 to 8-1991で登録している。
二人の設計思想や経歴について詳しくはチャールズ・イームズ、レイ・イームズの各プロフィールページをご覧ください。
ハーマンミラーの歴史や他の製品について詳しくはハーマンミラーブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | イームズ・ストレージ・ユニット / Eames Storage Unit(ESU) |
|---|---|
| デザイナー | チャールズ&レイ・イームズ(Charles & Ray Eames) |
| ブランド | ハーマンミラー(Herman Miller)/ヴィトラ(Vitra) |
| 発表年 | 1949〜1950年設計/初期生産1950〜1955年/1998年より再生産 |
| デザインの成立国 | アメリカ |
| 分類 | 収納家具(モジュール式) |
| 構造 | スチールアングルの骨組みに、斜めのワイヤーブレースで剛性を確保 |
| 主要素材 | 亜鉛めっき/クロムめっきスチール、バーチ・ウォールナット合板、塗装メゾナイト、穿孔金属板 |
| シリーズ展開 | 100シリーズ(1段)/200シリーズ(2段)/400シリーズ(4段)。幅はフル・ハーフ |
| 収蔵 | ニューヨーク近代美術館(434.1992)、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(W.5:1 to 8-1991) |
Reference
- Eames Storage Unit (ESU) | MoMA
- https://www.moma.org/collection/works/3585
- ESU 421-C | Victoria and Albert Museum
- https://api.vam.ac.uk/v2/objects/search?q=W.5-1991