概要
オド・フィオラヴァンティは、ミラノを拠点に活動するイタリアの工業デザイナーである。椅子を中心とする家具のほか、照明、光学機器、日用品まで手がける。設計を工場の技術者との共同作業として進め、図面よりも自分の手でつくる模型を判断の材料にする進め方で知られる。2011年、ペドラリのために設計したチェア「フリーダ」で第22回コンパッソ・ドーロADIを受賞した。現在も設計と教育の両面で活動を続けている。
バイオグラフィー
1974年生まれ。ミラノ工科大学デザイン学部で工業デザインを学んだ。本人の説明によれば、入学時に選んだのは工学で、4年在籍したのち工業デザインへ移っている。2006年にミラノで自身のスタジオ、オド・フィオラヴァンティ・デザイン・スタジオを設立した。
2007年にペドラリとの協働が始まり、翌2008年に最初の製品となるチェア「スノー」が市場に出た。2010年にはミラノ・トリエンナーレのデザイン・ミュージアムで個展「Industrious Design」が開かれ、2011年にコンパッソ・ドーロADIを受賞した。
設計と並行して教育にも携わり、ミラノ工科大学、ヴェネツィア建築大学(IUAV)、ドムス・アカデミー、イスティトゥート・マランゴーニ、NABA、スクオーラ・ポリテクニカ・ディ・デザイン、ジュネーヴのHEADなどで教えてきた。2022年にはミラノ工科大学デザイン学部のアドバイザリー・ボードに、2023年にはLGエレクトロニクスのグローバル・デザイン・アドバイザーに就任している。デザイン誌への寄稿も続けている。
デザインの思想と方法
工程を分けない設計者という自己規定
2010年の個展で本人が掲げたのは「industrious(勤勉な)デザイナー」という考え方だった。設計と製造を分業として切り分けるのではなく、着想から製品として成り立たせるまでの各段階に設計者自身が入っていく姿勢を指す。個展には椅子や照明のほか、屋根瓦、剪定鎌、水切りの蓋、絨毯叩きといった日用の道具も並べられた。流行や市場の要請から距離を置き、日々使われる道具そのものに向き合う姿勢を示す構成だった。
この自己規定は、実際の仕事の進め方に直結している。フィオラヴァンティは工学を学んだ経験から素材の加工技術に関心を寄せてきたと述べており、成形の方法や型の制約を設計の初期段階から検討の対象に置く。素材が何を許すかを先に確かめ、そこから形を決めていく順序である。
手でつくる模型
スケッチを得意としないと本人は語っており、代わりに厚紙・木・金属で模型を自作して検討を進める。3Dプリントの出力は感触が伝わりにくいとして、寸法と機能上の細部は手を動かしてつくった模型のほうが判断しやすいと説明している。模型を一つつくるごとに気づく点があり、形が定まった段階で初めて、その知見をもとにした提示用の3Dモデルを起こす。
この方法は椅子の設計で繰り返し使われてきた。試作を工場で組み、細部を手で削って輪郭を決める進め方は、フリーダの開発でも採られている。
工場の技術者との協働
フィオラヴァンティは、ペドラリの型職人をはじめとする現場の技術者から多くを学んだと述べ、工程のどの段階からも離れないことを重視する。射出成形の型は一度切れば形の変更が難しく、量産の可否は型が決まる時点でほぼ確定する。型をつくる側と設計の初期から言葉を交わすことが、成立する形の範囲を広げる条件になっている。
ペドラリ向けの「ドーム」では、最初の模型から完成までに与えられた期間は3か月だった。この間、型職人と連日やりとりを重ねて形を詰めたと本人が振り返っている。
代表作にみる方法
スノー(2008年・ペドラリ)
ペドラリとの最初の製品となったスタッキングチェア。屋内外の双方で使えることと、公共空間での連続使用に耐えることが求められた仕事である。素材にはガラス繊維で強化したポリプロピレンを用い、射出成形の際にガスを注入して部材の内側を中空にする手法が採られた。断面を厚く見せながら重量を抑える方法であり、屋外で雨や紫外線にさらされる用途と、頻繁に持ち運ぶ用途の双方に応えている。同年のヤング&デザイン賞で1位を得た。
フリーダ(2008年・ペドラリ)
無垢材のフレームに薄い成形合板のシェルを重ねる構成で、木製椅子の断面を細く保ちながら強度を確保した仕事。図面を描かずに工場で試作を重ねる進め方が、そのまま形の決定に反映されている。2011年のコンパッソ・ドーロADI受賞後、椅子の設計が仕事の中心を占めるようになったと本人は述べている。製品の構造と開発の経緯はフリーダで扱う。
バビラ(2013年・ペドラリ)
厚みを場所によって変える合板の検討から出発し、木製のチェアとして2013年に発表された。以後、ポリプロピレンやテクノポリマーのシェル、張り地を用いた座など、材料を替えながら同じ輪郭を展開している。2017年に張りぐるみのバビラ コンフォート、2020年に座と肘を大きくとったバビラXL、2022年に屋外向けのバビラ ツイストが加わった。バビラXLには、消費後の廃プラスチックと工業廃材を各50パーセント用いた仕様がある。
本人はこの一連の椅子について、人体に沿う曲線と、工業生産という人の考えの側にある直線とを交互に置く発想から出発したと説明している。フリーダで扱った合板の検討を出発点にしながら、単一の製品ではなく材料違いの系列として展開した点が、それまでの仕事との違いにあたる。
ドーム(2016年・ペドラリ)
ガラス繊維で強化したポリプロピレンを射出成形した椅子で、ビストロの椅子の系譜を下敷きにしている。フィオラヴァンティはこの仕事について、プラスチックに対する見え方を変えることを狙ったと述べている。金属や木の継手の形を樹脂の上で読み替えており、一見して手仕事の木製椅子のように見える。使用する材料の量を抑えられる点も、この形を選んだ理由に挙げられている。型職人との集中的なやりとりで短期間に成立させた例でもある。
評価と影響
2010年にミラノ・トリエンナーレのデザイン・ミュージアムで開かれた個展「Industrious Design」は、当時の館長シルヴァーナ・アンニッキアリコが企画した現代イタリアデザインの連続展の一環として実施された。工程を分業に委ねない設計者像を提示した企画として受け止められ、以後、この「industrious」という語は本人の仕事を説明する語として用いられている。
ヴィチェンツァの宝飾博物館(Museo del Gioiello)では展示室のキュレーターを務めた。工業デザインの側から装身具を扱う立場として招かれたもので、家具以外の領域にも関与している。
受賞
- 2008年 ヤング&デザイン 1位(スノー/ペドラリ)
- 2008年 プロモセディア Chair of the Year(フリーダ/ペドラリ)
- 2008年 メゾン・エ・オブジェ Prix Les Découvertes 1位(ZoomArt/パロマー)
- 2011年 第22回コンパッソ・ドーロADI(フリーダ/ペドラリ)
- 2011年 第22回コンパッソ・ドーロADI Honorable Mention(ZoomArt、ガリレオの望遠鏡/いずれもパロマー)
- 2014年 ジャーマン・デザイン・アワード(フリーダ/ペドラリ)
- 2014年 第23回コンパッソ・ドーロADI Honorable Mention(コリブリ ランプ)
- 2014年 ホスピタリティ・デザイン・プロダクト・アワード Excellence(ドラゴンフライ/セジス)
- 2015年 デザイン・ミュージアム(ロンドン)Designs of the Year ノミネート(ドラゴンフライ/セジス)
- 2015年 第1回コンパッソ・ドーロ・インテルナツィオナーレ Honorable Mention(Zero 浄水システム)
ペドラリの歴史や他の製品について詳しくはペドラリブランドページをご覧ください。
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 2008年 | チェア | スノー(Snow) | ペドラリ |
| 2008年 | チェア | フリーダ | ペドラリ |
| 2008年 | 光学機器 | ZoomArt(単眼鏡) | パロマー |
| 光学機器 | ガリレオの望遠鏡(Galileo's Telescope) | パロマー | |
| 2013年 | チェア | バビラ(Babila) | ペドラリ |
| チェア(子ども用) | スノー ジュニア(Snow Junior) | ペドラリ | |
| 2014年 | チェア | ドラゴンフライ(Dragonfly) | セジス |
| 2016年 | チェア | ドーム(Dome) | ペドラリ |
| 2016年 | チェア | ハロ(Halo) | ヴェリーウッド |
| 2017年 | アームチェア | バビラ コンフォート(Babila Comfort) | ペドラリ |
| 2020年 | アームチェア | バビラXL(Babila XL) | ペドラリ |
| 2022年 | アームチェア | バビラ ツイスト(Babila Twist) | ペドラリ |
| 照明 | ボネット(Bonnet) | フォンタナアルテ | |
| 照明 | ヴォレ(Volée) | フォンタナアルテ |
プロフィール
| 氏名 | オド・フィオラヴァンティ(Odo Fioravanti/Odoardo Fioravanti) |
|---|---|
| 生年 | 1974年 |
| 国籍 | イタリア |
| 活動拠点 | ミラノ |
| 教育 | ミラノ工科大学デザイン学部(工業デザイン) |
| 分野 | 家具、照明、プロダクト |
| スタジオ設立 | 2006年(ミラノ) |
| 主な協働ブランド | ペドラリ、フォンタナアルテ、セジス、パロマー、ノーマン・コペンハーゲン、フロウ、デザルト、ピアンカ |
Reference
- About | Odo Fioravanti Design Studio
- http://www.fioravanti.eu/about
- News | Odo Fioravanti Design Studio
- http://www.fioravanti.eu/news
- Keeping critical: Interview with Odoardo Fioravanti | Stylepark
- https://www.stylepark.com/en/news/odo-fioravanti-pedrali-dome-frida-snow-chair-milan
- Frida, Pedrali. Odo Fioravanti | Klat Magazine
- https://www.klatmagazine.com/en/design-en/frida-pedrali/65629
- Odoardo Fioravanti - Industrious Design | Exibart
- https://www.exibart.com/design/design_mostre-odoardo-fioravanti-milano-triennale/
- Tra tradizione e innovazione: 10 anni di Babila | Pedrali
- https://www.pedrali.com/it-it/news/25-10-anni-di-babila
- Odoardo Fioravanti | Museo del Gioiello, Vicenza
- https://www.museodelgioiello.it/it/curatori/curatori-sale/odoardo-fioravanti
- Odo Fioravanti | Istituto Marangoni
- https://www.istitutomarangoni.com/it/im-mentors/odo-fioravanti