加熱して溶かした樹脂を金型に射出し、冷却・固化させて成形品を得る方法。複雑な形状のプラスチック部品を量産する標準的な工法。
射出成形
射出成形とは、加熱して溶かした樹脂を金型の中へ射出し、冷却・固化させて成形品を取り出す加工方法のこと。英語では injection molding と表記する。
解説
粒状の樹脂をシリンダに投入し、200度から300度程度に加熱して溶かす。金型を閉じ、溶けた樹脂を高い圧力で射出し、充填が終わったあとも圧力をかけ続ける。この段階を保圧と呼ぶ。樹脂は冷えると体積が縮むため、縮んだぶんの樹脂を押し込んで補う工程である。十分に固化したら金型を開き、突き出しピンで成形品を押し出す。型締め、射出、保圧、冷却、型開き、取り出しという一連の流れが1サイクルとなり、これを繰り返して連続的に生産する。
家具では、一体成形の椅子のシェルや、スタッキングチェアの座面、収納家具の引き出しなどがこの方法でつくられる。曲面と厚みの変化を含む形状を、継ぎ目のない一つの部品として得られることが採用の理由になる。フィリップ・スタルクのルイゴーストはポリカーボネートの射出成形による一体構造で、透明なまま複雑な輪郭を成立させている。ポリプロピレンのように樹脂の性質が、そのまま製品の性格を決める面もある。
設計には工法由来の制約が現れる。金型から抜くために、面にはわずかな傾きを付ける必要がある。肉厚に差があると冷却の速さが場所によって変わり、厚い部分の表面に窪みが生じる。一体成形の椅子の裏側に細いリブが張り巡らされているのは、肉厚を厚くせずに剛性を確保するための構造である。また、金型内で樹脂の流れが二手に分かれて再び合流する箇所には、線状の跡が残ることがある。
金型の製作費が高いため、少量生産には向かない。大きな椅子のシェルを成形するには大型の成形機と大型の金型が要り、初期投資はさらに大きくなる。裏を返せば、生産数が増えるほど一個あたりの費用は下がる。20世紀半ば以降にプラスチックの椅子が普及したのは、この工法と大量消費の市場が噛み合ったためである。
Reference
- 射出成形とは|CAE解析の基礎知識(旭化成 エンプラ総合情報サイト)
- https://www.asahi-kasei-plastics.com/knowledge-cae/plastics-cae4/
- 射出成形法の図解(テイカ精密)
- https://www.teika-precision.co.jp/knowledge/detail.html?id=93