プランクについて
Plank(プランク)は、イタリア北部・南チロル地方のオーラ(ボルツァーノ県)に本拠を置くデザイン家具メーカーである。1893年にカール・プランクによって創業された同社は、130年以上にわたり父から子へと受け継がれてきた家族経営の企業であり、「メイド・イン・イタリー」の伝統と先進的なインダストリアルデザインとを融合させた製品づくりで、世界のデザインシーンにおいて確固たる地位を築いている。
チェア、アームチェア、スツール、テーブルシステムを中核とするプランクのコレクションは、コンスタンティン・グルチッチ、深澤直人、ビョルン・ダールストロームといった国際的に著名なデザイナーとの緊密な協働から生まれてきた。なかでもコンスタンティン・グルチッチによるMIURAスツールとMYTOチェアは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)をはじめとする世界の主要美術館に永久収蔵されており、21世紀のインダストリアルデザインを代表するアイコン的存在として高い評価を受けている。テクノロジーとデザインの統合、環境への配慮、そして職人的精緻さへのこだわり——これらがプランクという企業の根幹をなす哲学である。
ブランドの特徴・コンセプト
プランクのブランド哲学は、「テクノロジーとデザインの融合」という一貫した理念に集約される。創業以来、同社は先端的な工業生産技術の研究に情熱を注ぎ、革新的なフォルムへのアプローチを追求してきた。高度な自動化システムを駆使しながらも、手作業が不可欠な工程については今なお職人の技を大切にするという姿勢は、アルティザナルな起源を持つ企業ならではの矜持といえるだろう。
素材への革新的アプローチ
プランクの製品を特徴づける最も顕著な要素のひとつが、素材に対する独創的な取り組みである。ガラス繊維強化ポリプロピレンによるMIURAスツールの一体成型、BASFとの協働で実現したUltradur® High Speed樹脂によるMYTOチェアのモノブロック射出成型など、素材の可能性を極限まで追究する姿勢は、プランクの製品に他に類を見ない個性と品質をもたらしている。同時に、MONZAアームチェアに見られるように、無垢材とプラスチック射出成型を巧みに組み合わせることで、職人的な木工の伝統と近代的な工業デザインの特性を一つの製品のなかで結びつけることにも成功している。
環境への責任
プランクは、イタリアの家具メーカーとして早い段階でDIN ISO 9001品質認証を取得した企業のひとつであり、2009年にはISO 9001:2008に準拠した統合マネジメントシステムを導入している。環境とその資源を共有財産と捉え、持続可能な生産体制の構築に取り組む姿勢は、MYTOチェアの100%リサイクル可能な素材採用や、BENCHシリーズにおける地元産スプルース材の使用といった具体的な製品にも表れている。
デザイナーとの長期的パートナーシップ
プランクのもうひとつの際立った特質は、デザイナーとの長期的かつ深い協働関係にある。とりわけコンスタンティン・グルチッチとは20年以上にわたるパートナーシップを維持しており、MIURAスツール(2005年)からMYTOチェア(2008年)、MONZAアームチェア、REMOチェア、CUPラウンジチェア、BENCHベンチに至るまで、プランクのコレクションの中核を形成する数多くの製品を世に送り出してきた。深澤直人とはLANDラウンジチェアやBLOCCOチェア、TOサイドテーブルなどで協働し、ビョルン・ダールストロームとは2022年からの新たなパートナーシップでVELITチェアを発表している。このように、デザイナーの創造性と製造者の技術力が長い時間をかけて相互に深化していくプロセスこそが、プランクの製品に宿る固有の質を生み出している。
ブランドヒストリー
創業と職人的起源(1893年〜)
プランクの歴史は、1893年、南チロル地方においてカール・プランクが創業したことに始まる。当時のオーストリア=ハンガリー帝国領であったこの地域は、アルプスの豊かな森林資源と木工の伝統に恵まれており、プランクもまた木製家具の手工業的な生産からその歩みを始めた。創業者カール・プランクから息子のカール・ジュニアへ、さらにその息子マルティンへと、イタリアの優れた企業に典型的な父子継承の伝統に則って事業は引き継がれていった。
工業化への転換(1953年〜1990年代)
1953年、プランクはボルツァーノ県オーラの地にて新たな段階を迎える。テクノロジーとインテリアデザインの統合を目指す方針を掲げ、手工業的な起源から工業的な企業体へと変貌を遂げていった。1979年からはマルティン・プランクが経営を引き継ぎ、デザインプロジェクトへの注力を一層強化。実用性と美的価値の調和をより意識した、意味のある製品づくりへと舵を切った。高度な自動化システムの導入により、コストと品質の最適なバランスを実現しながらも、手作業が不可欠な工程ではあくまで職人の技を堅持するという独自の生産哲学が確立されたのもこの時期である。
国際的デザインブランドへの飛躍(1998年〜)
1998年頃、プランクは木製チェアのメーカーから国際的なデザインカンパニーへの転換を本格的に開始する。この変革を象徴する出来事が、コンスタンティン・グルチッチとの協働であった。2005年に発表されたMIURAスツールは、ガラス繊維強化ポリプロピレンによる一体成型のバースツールという画期的なコンセプトで、プランクの企業としてのあり方そのものを変えた。翌年にはiF Product Design Award金賞をはじめ数々の国際的デザイン賞を受賞し、MoMAの永久コレクションに収蔵されるに至った。
2007年にはドイツの化学大手BASFとグルチッチとの三者協働によりMYTOチェアが誕生。先端的なPBT樹脂Ultradur® High Speedを用いた完全プラスチック製カンティレバーチェアは、ヴェルナー・パントンの1960年代の作品以来の革新と称され、2008年の発表直後にMoMAの永久コレクションに選定、2011年には最も権威あるデザイン賞のひとつであるコンパッソ・ドーロを受賞した。
新世代への継承と現在
現在はマルティンの息子マイケル・プランクが第四世代として経営に参画し、家族経営の伝統を次世代へと繋いでいる。近年はMONZAアームチェアやREMOチェアなど、木材とプラスチックを融合させた新たなラインを展開するとともに、深澤直人のLANDラウンジチェアやTOサイドテーブル、ビョルン・ダールストロームのVELITチェアなど、デザイナーの幅を広げながらコレクションの深化を続けている。2022年にはBENCHベンチで地元産のスプルース材を採用し、アルプスの伝統的な椅子メーカーとしてのルーツに立ち返るプロジェクトも発表した。ミラノサローネをはじめとする国際的なデザインイベントへの継続的な参加、北米市場におけるバーンハートデザインとのパートナーシップなど、グローバルな展開を着実に進めている。
主なインテリアとその特徴
MIURAスツール(2005年)
デザイナー:コンスタンティン・グルチッチ
プランクの現代史において最も重要な転換点となった製品である。ガラス繊維強化ポリプロピレンによる一体成型(インジェクションモールディング)のバースツールとして開発され、スタッキング可能な構造と屋内外両用の耐候性を備える。強化ポリプロピレンはアルミニウムの2.5倍の強度を持ちながら軽量で、100%リサイクル可能である。彫刻的でありながら構造原理に基づいた有機的なフォルムは、グルチッチが「形の語彙を再構築する」と表現した新たなデザイン言語の結実であった。ブラック、ホワイト、ピュアオレンジ、トラフィックレッド、ワインレッド、ライトブルー、イエローグリーンの7色展開。ニューヨーク近代美術館(MoMA)、ミュンヘンのノイエ・ザムルング、シカゴ美術館、チューリッヒのデザインミュージアム、ミラノのトリエンナーレ・デザインミュージアムなど、世界の主要美術館に永久収蔵されている。
受賞歴:100% Design Blueprint Best Product Award(2005年)、Interior Innovation Award imm Cologne Best of the Best(2006年)、Red Dot Design Award(2006年)、iF Product Design Award金賞(2006年)、ドイツ連邦共和国デザイン賞銀賞(2007年)。
MYTOチェア(2008年)
デザイナー:コンスタンティン・グルチッチ
デザイナー、家具メーカー、化学メーカーの三者による前例のない協働から生まれたカンティレバーチェア。ドイツの化学大手BASFが開発した高流動性PBT樹脂「Ultradur® High Speed」を素材とし、頑強なフレーム構造と網目状の座面・背もたれを一体のモノブロックとして射出成型するという革新的な工法を実現した。1960年代のヴェルナー・パントン以来となる完全プラスチック製カンティレバーチェアの再解釈として、近代家具デザインの象徴的類型に新たな生命を吹き込んだ作品である。最大8脚までスタッキング可能、UV耐性、-90℃から+150℃の耐温性を備え、100%リサイクル可能。イタリアのオートバイ「カジバ・ミト」にちなんで名づけられた。
2008年の発売直後にMoMAの永久コレクションに選定され、以降ヴィトラ・デザインミュージアム、ロンドンのデザインミュージアム、シカゴ美術館など世界中の美術館に収蔵されている。受賞歴:ICFF Editors Award(2008年)、iF Product Design Award(2009年)、Interior Innovation Award Best of the Best(2009年)、Brit Insurance Design Award(2009年)、ADIコンパッソ・ドーロ第22回(2011年)。
MONZAアームチェア
デザイナー:コンスタンティン・グルチッチ
MIURAとMYTOに続く、グルチッチとプランクの協働のさらなる発展を体現するチェアである。スカンジナヴィアの椅子の類型を参照したシンプルな木製構造に、ポリプロピレン射出成型による一体型の背もたれ・アームレストを組み合わせるという手法で、プランクの職人的な木工のルーツと近代的な工業デザインの特性とを巧みに接続している。フレームはアッシュ、オーク、ウォールナットの3種類の木材から選択可能で、背もたれのポリプロピレンパーツは多色展開。スタッキング可能であり、レストランやカフェ、オフィス、住宅など幅広い空間に対応する。アウトドア仕様のイロコ材バージョンも展開されている。
REMOチェア(2015年〜)
デザイナー:コンスタンティン・グルチッチ
2015年にまずウッドチェアとして発表され、翌年にはアイコニックなシートシェルの形状をプラスチック射出成型に翻訳したバージョンが加わった。同じ家具を二つの異なる素材で実現するという挑戦的なプロジェクトであり、グルチッチ自身が「以前は敢えてしなかった試み」と述べている。2022年にはフルアップホルスタードバージョンが追加され、コレクションは多様な用途と空間に対応するシリーズへと拡充されている。
LANDラウンジチェア
デザイナー:深澤直人
日本を代表するプロダクトデザイナー深澤直人がプランクのために手がけた汎用性の高いラウンジチェアである。プラスチック製のアウトドア対応バージョンとアップホルスタードバージョンがあり、オットマンやTOサイドテーブルとのコーディネートが可能。控えめでありながら存在感のある佇まいは、深澤のデザイン哲学である「意識の中心に置かない」デザインの具現であり、住宅からコントラクト、パブリックスペースまで幅広い環境に溶け込む。2019年のミラノサローネではラウンジチェアのアップホルスタードバージョンが発表され、コレクションの進化が続いている。
BENCHベンチ&ベンチテーブル(2022年)
デザイナー:コンスタンティン・グルチッチ
2022年のミラノサローネで発表された、プランクのヘリテージを象徴するプロジェクトである。地元のアルプスの森林から調達したスプルース(トウヒ)材を用いることで、南チロルの伝統的なアルパインチェアのメーカーとしてのプランクの原点に敬意を表している。ベンチはサイズと形状が固定されているが、テーブルはさまざまなフォーマットと脚の位置で構成可能。その普遍的なシンプルさにより、パブリックスペースから住宅まで、伝統的な空間にもモダンな空間にも適応する。2023年にはGerman Design Award金賞を受賞。
VELITチェア(2022年)
デザイナー:ビョルン・ダールストローム
スウェーデン出身のデザイナー、ビョルン・ダールストロームとプランクの新たなパートナーシップから生まれた一脚。細い金属ロッド——それぞれ単体では所定の荷重に耐えられないほど繊細なワイヤー——を組み合わせ、溶接の精緻さによって構造を成立させるという、素材の限界に挑む造形的実験である。グラフィックデザイナーとしてのバックグラウンドを持つダールストロームは、ワイヤーの成型を「一本一本の線を描き、それらが精巧な形状へと融合していく」プロセスと表現している。2024年にはラウンジチェアとサイドテーブルが追加され、コレクションの拡充が図られている。
RANDEVUテーブル
デザイナー:ビアジオ・チゾッティ+サンドラ・ラウベ
チゾッティ+ラウベが設計したフォールディングテーブル。専用に開発された折りたたみ機構により、迅速かつ容易に所望の位置へ移動させることが可能。コントラクト空間における機動性と住宅における省スペース性を兼ね備えた、実用的かつ洗練されたデザインである。
主なデザイナー
コンスタンティン・グルチッチ(Konstantin Grcic)
1965年ミュンヘン生まれ。英国ドーセットのジョン・メイクピース・スクールでキャビネットメーカーとしての訓練を受けた後、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートでデザインを学ぶ。1991年にミュンヘンにてKonstantin Grcic Industrial Design(KGID)を設立。Vitra、Flos、Magis、Mattiazziなど世界有数のデザイン企業と協働し、Floss のMAYDAYランプ(2001年コンパッソ・ドーロ受賞)やプランクのMYTOチェア(2011年コンパッソ・ドーロ受賞)など、現代インダストリアルデザインの最も記憶に残る作品の数々を手がけてきた。プランクとは20年以上にわたるパートナーシップを維持しており、MIURA、MYTO、MONZA、REMO、CUP、BENCH、SOLなど、同社コレクションの中核をなす製品群を生み出している。英国王立芸術協会よりHonorary Royal Designer for Industry(Hon RDI)の称号を授与されている。
深澤直人(Naoto Fukasawa)
1956年山梨県生まれ。多摩美術大学プロダクトデザイン学科卒業後、セイコーエプソンを経て1989年に渡米しID Two(現IDEO サンフランシスコ)に参画。1996年に帰国後IDEO東京オフィスを設立、2003年にNAOTO FUKASAWA DESIGNとして独立。日本民藝館館長、多摩美術大学統合デザイン学科教授、21_21 DESIGN SIGHT ディレクター、無印良品デザインアドバイザリーボードメンバー、マルニ木工アートディレクターなど要職を歴任。2006年にはジャスパー・モリソンとともに「Super Normal」を提唱。英国王立芸術協会よりHonorary Royal Designer for Industryの称号、2018年にはイサム・ノグチ賞を受賞。プランクではLANDラウンジチェア、BLOCCOチェア・スツール、TOサイドテーブルなどを手がけている。
ビョルン・ダールストローム(Björn Dahlström)
スウェーデンを代表するデザイナーのひとり。グラフィックデザインのバックグラウンドを持ち、プロダクトの視覚的なグラフィカルクオリティを重視するデザインアプローチで知られる。プランクとは2022年からの新しいパートナーシップにより、VELITチェアおよびそのラウンジチェア、サイドテーブルのバリエーションを発表。繊細な金属ワイヤーによる構造体を特徴とする独自の造形言語で、プランクのコレクションに新たな表現の幅をもたらしている。
ビアジオ・チゾッティ+サンドラ・ラウベ(Cisotti + Laube)
1992年にStudio Cisotti Laubeを共同設立したデザインデュオ。プランクのためにRANDEVUテーブルをはじめとするテーブルやコーヒーテーブル、チェアなどを手がけてきた。機能性と優雅さを兼ね備えた家具デザインを得意とし、プランクの長年にわたるデザインパートナーのひとつである。
主な受賞歴・ミュージアム収蔵
受賞歴(主要なもの)
- ADI コンパッソ・ドーロ 第22回(2011年)
- MYTOチェア — イタリア工業デザイン界最高の栄誉
- iF Product Design Award 金賞(2006年)
- MIURAスツール
- Interior Innovation Award Best of the Best(2006年、2009年)
- MIURAスツール、MYTOチェア
- Red Dot Design Award(2006年)
- MIURAスツール
- ドイツ連邦共和国デザイン賞 銀賞(2007年)
- MIURAスツール
- German Design Award 金賞(2023年)
- BENCHベンチ
- Brit Insurance Design Award(2009年)
- MYTOチェア — 家具部門最優秀
ミュージアム収蔵
プランクの製品は、以下をはじめとする世界の主要美術館の永久コレクションに収蔵されている。
- MoMA — ニューヨーク近代美術館(アメリカ)
- Die Neue Sammlung — ノイエ・ザムルング/ピナコテーク・デア・モデルネ(ドイツ、ミュンヘン)
- Art Institute of Chicago — シカゴ美術館(アメリカ)
- Vitra Design Museum — ヴィトラ・デザインミュージアム(ドイツ)
- The Design Museum — デザインミュージアム(イギリス、ロンドン)
- Museum für Gestaltung — デザインミュージアム(スイス、チューリッヒ)
- Triennale Design Museum — トリエンナーレ・デザインミュージアム(イタリア、ミラノ)
- Deutsches Museum — ドイツ博物館(ドイツ、ミュンヘン)
基本情報
| ブランド正式名称 | Plank / プランク |
|---|---|
| 法人名 | Plank Srl(旧 Plank Collezioni Srl) |
| 創業 | 1893年(カール・プランクにより創業) |
| 創業者 | カール・プランク(Karl Plank) |
| 現経営者 | マルティン・プランク(Martin Plank)、マイケル・プランク(Michael Plank) |
| 所在地 | Via Nazionale 35, I-39040 Ora (BZ), Italy(イタリア、トレンティーノ=アルト・アディジェ州ボルツァーノ県オーラ) |
| 事業内容 | デザイン家具の開発・製造・販売(チェア、アームチェア、スツール、テーブルシステム) |
| 主要デザイナー | コンスタンティン・グルチッチ、深澤直人、ビョルン・ダールストローム、ビアジオ・チゾッティ+サンドラ・ラウベ |
| 品質認証 | ISO 9001:2008 統合マネジメントシステム |
| 北米販売パートナー | Bernhardt Design + Plank |
| 公式サイト | https://www.plank.it |