概要
ジョエ・コロンボ(1930-1971)は、イタリアのデザイナーである。絵画と建築を学んだのち、1962年にミラノで設計事務所を開いた。一つの家具に複数の機能を収める構成をとり、限られた面積で生活を成立させることを条件とした。1969年のボビーは、回転する引き出しを積層した可動の収納である。41歳で没するまでの約10年に多数の製品を残した。
バイオグラフィー
1930年7月30日、ミラノに生まれた。ブレラ美術学院で絵画を学び、続いてミラノ工科大学で建築を学んでいる。
1950年代前半は前衛美術の運動に加わり、絵画と彫刻を制作した。1958年に父の電気設備の会社を継ぎ、樹脂の成形について実務で学んでいる。
1962年、ミラノに設計事務所を開いた。カルテル、オルーチェ、ビエッフェなどのために製品を設計している。
1969年から1971年にかけて、住空間そのものを提案する「ヴィジオーナ」の展示を行った。1971年7月30日、41歳の誕生日に没している。
デザインの思想と方法
コロンボが前提としたのは、住宅の面積が限られているという条件である。一つの家具が一つの機能しか持たなければ、必要な機能の数だけ家具が要る。彼が試みたのは、複数の機能を一つの単位に収めるという方向だった。
機能を一つの単位に集約する
ボビーは、回転する引き出しを積層した可動の収納である。段ごとに引き出しの向きを変えられるため、周囲のどこからでも取り出せる。車輪が付いており、使う場所へ移動できる。収納、作業台の脇机、道具入れという複数の用途を一つの単位で満たす。
樹脂の成形を前提とする
父の会社で樹脂の成形を実務で扱った経験が、設計の前提にある。射出成形では、複雑な形も型さえ作れば量産できる。ボビーやユニヴェルサーレは、この工法でなければ成立しない構成をとる。
家具を積み木として扱う
チューブチェアは、直径の異なる4つの円筒を組み合わせる椅子である。円筒は入れ子にして収納でき、金具で連結して座る形にする。連結の順序を変えれば姿勢も変わるため、椅子としての形が一つに定まらない。
住空間そのものを提案する
1969年からのヴィジオーナでは、個々の家具ではなく生活の単位そのものを提案した。台所、寝る場所、くつろぐ場所を一つの構造物にまとめ、住宅の間取りに依存しない構成を示している。
カルテルの歴史や他の製品について詳しくはカルテル ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
エルダチェア(1963年、コンフォート)
ファイバーグラスの殻に革のクッションを収めた安楽椅子である。殻が身体を囲い、回転する台座に載る。樹脂で椅子の外殻を作った早い例にあたる。名称は妻の名に由来する。→エルダチェア
ユニヴェルサーレ チェア(1967年、カルテル)
樹脂の射出成形による椅子である。脚を差し替えることで座面の高さを変えられ、積み重ねもできる。当時、樹脂で椅子全体を成形する試みはまだ少ない。ニューヨーク近代美術館、V&A、シカゴ美術館が収蔵している。→ウニヴェルサーレ チェア 4867
チューブチェア(1969年)
直径の異なる4つの円筒を組み合わせる椅子である。円筒は入れ子にして収納でき、金具で連結して座る形にする。連結の順序で姿勢が変わり、椅子としての形が一つに定まらない。メトロポリタン美術館が収蔵している。→チューブチェア
ボビー(1969年、ビエッフェ)
回転する引き出しを積層した可動の収納である。段ごとに引き出しの向きを変えられ、周囲のどこからでも取り出せる。車輪が付いており移動できる。収納、脇机、道具入れという複数の用途を一つの単位で満たす。ニューヨーク近代美術館、V&A、シカゴ美術館が収蔵している。→ボビーワゴン
ヴィジオーナ(1969-1971年)
住空間そのものを提案する展示である。台所、寝る場所、くつろぐ場所を一つの構造物にまとめ、住宅の間取りに依存しない構成を示した。個々の家具ではなく生活の単位を扱う試みにあたる。
評価と影響
コロンボは一般に、1960年代のイタリアで、限られた面積に複数の機能を収める方向を追った設計者と評価されている。住宅の面積という条件から家具の構成を導くという進め方にあたる。
樹脂の成形を前提とする設計は、父の会社での実務経験に基づく。工法を知ったうえで形を決めるという立場が、当時の樹脂家具のなかでも特徴的である。
1971年に41歳で没しており、設計者としての活動は約10年にとどまる。この期間に残した製品の多くが、現在も生産または再生産されている。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、Met=メトロポリタン美術館、AIC=シカゴ美術館)。
- MoMA アシンメトリコ グラス(1964年) 収蔵番号 106.1996
- MoMA アームチェア(1964年) 収蔵番号 350.1966
- MoMA クーペ フロアランプ(モデル3321、1966年) 収蔵番号 2226.1967
- MoMA スプリング テーブルランプ(1967年) 収蔵番号 461.1970
- MoMA ユニヴェルサーレ スタッキングチェア(1967年) 収蔵番号 138.1988.1-3
- MoMA ポーカーテーブル(1968年) 収蔵番号 463.1972.1-2
- MoMA ボビー3 可動収納(1969年) 収蔵番号 153.1977
- MoMA スクエア・プラスチック・システム(1970年) 収蔵番号 471.1972.1-4
- MoMA リビングセンター(1970年頃) 収蔵番号 1424.2000
- MoMA スタッキングカップ(1971年) 収蔵番号 454.1974.1-8
- MoMA ビリッロ バースツール(1971年) 収蔵番号 1407.2001
- V&A モデル4801(1963年) 収蔵番号 CIRC.214-1970
- V&A ユニヴェルサーレ(1965-67年) 収蔵番号 CIRC.887-1968
- V&A ボビー(1970年) 収蔵番号 W.5:1 to 4-1992
- Met スパイダー フロアランプ(1965年) 収蔵番号 1987.378
- Met スプリング 照明システム(1966年) 収蔵番号 1987.1096.1、1987.1096.2
- Met チューブチェア(1969-70年) 収蔵番号 1987.98.1a-d
- AIC エルダチェア no.1005(1963年設計) 収蔵番号 2015.314
- AIC スタッキングチェア(1965年頃) 収蔵番号 1988.520.1、1988.520.2
- AIC ボビー3 可動収納(1969年) 収蔵番号 2016.406
- AIC ビリッロ スツール(1971年) 収蔵番号 1992.631
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1963年 | 椅子 | エルダチェア | Comfort / Longhi |
| 1965年 | 照明 | スパイダー | Oluce |
| 1966年 | 照明 | クーペ(モデル3321) | Oluce |
| 1967年 | 椅子 | ウニヴェルサーレ チェア 4867 | Kartell |
| 1969年 | 椅子 | チューブチェア | Flexform |
| 1969年 | 収納 | ボビーワゴン | Bieffeplast / B-Line |
| 1969-1971年 | 展示 | ヴィジオーナ | Bayer |
| 1970年 | 収納 | スクエア・プラスチック・システム | Elco |
| 1971年 | スツール | ビリッロ | Zanotta |
| 1970年代 | 時計 | オプティック クロック | Alessi |
プロフィール
| 生没年 | 1930年7月30日〜1971年7月30日 |
|---|---|
| 出身地 | イタリア・ミラノ |
| 国籍 | イタリア |
| 活動拠点 | ミラノ |
| 分野 | 家具、照明、収納、展示 |
| 主な協働ブランド | Kartell、Flos、Oluce、Arflex、Zanotta |
Reference
- Studio Joe Colombo
- https://www.joecolombo.com/
- Joe Colombo | Kartell
- https://www.kartell.com/us/en/designers
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325
- The Metropolitan Museum of Art Collection
- https://www.metmuseum.org/art/collection
- The Art Institute of Chicago Collection
- https://www.artic.edu/collection