オプティック クロックは、1970年にイタリアの工業デザイナー、ジョー・コロンボによって設計された目覚まし時計である。当初はリッツ・イタローラ社によって製造され、1988年からはアレッシィ社が復刻生産を手がけている。コロンボが提唱した「未来の環境」構想を体現する一作として、20世紀プロダクトデザインの金字塔に数えられる。

完全な立方体を思わせる幾何学的フォルムと、カメラのファインダーを彷彿とさせる遮光フードが特徴的である。ABS樹脂による射出成形という当時最先端の製造技術を採用し、機能美と量産性を高次元で両立させた。ニューヨーク近代美術館(MoMA)、メトロポリタン美術館、フィラデルフィア美術館、ブルックリン美術館、サンフランシスコ近代美術館など、世界の主要なデザインコレクションに収蔵されている。

特徴・コンセプト

オプティック クロックの最も顕著な特徴は、その彫刻的な造形美にある。約8センチメートル四方の立方体に収められた文字盤は、周囲を覆う遮光フードによって外光の影響を受けることなく、常に鮮明な視認性を確保する。この構造はカメラのレンズフードから着想を得たものであり、「オプティック(光学的)」という名称の由来でもある。

コロンボは「未来の環境の創造者」を自認し、人々の生活空間を革新することを設計思想の根幹に据えていた。従来の時計が単なる時刻表示装置であったのに対し、オプティック クロックは居住空間を構成する知的なオブジェクトとして構想された。丸みを帯びた輪郭線と未来的な佇まいは、1960年代から70年代にかけての宇宙時代の美意識を色濃く反映している。

素材にはABS樹脂を採用し、射出成形による一体成型を実現した。プラスチック素材の可能性を最大限に引き出すというコロンボの設計哲学が、この時計にも貫かれている。ブラック、ホワイト、レッドといったカラーバリエーションは、ポップアートの影響を受けた当時のデザイン潮流を象徴するものである。

エピソード

「未来の環境」構想との関連

オプティック クロックは、コロンボが生涯をかけて追求した「未来の環境」構想の一環として誕生した。1969年のヴィジョナ展で発表した「未来の住居」では、従来の家具という概念を超越した、統合的な生活システムを提案している。時計もまた単なる道具ではなく、未来の生活空間を構成する要素として位置づけられていた。

アレッシィによる復刻

1988年、イタリアの名門キッチンウェアメーカーであるアレッシィ社がオプティック クロックの復刻生産を開始した。この際、デザイナーのピオ・マンズーが文字盤のデザインを一部更新し、分表示を60分すべて表示するよう改良を加えている。2004年に一度生産を終了したものの、2010年に再び復刻され、現在もアレッシィ社のベストセラー製品のひとつとして販売が継続されている。

コロンボの早逝

ジョー・コロンボは1971年7月30日、41歳の誕生日に心臓発作により急逝した。オプティック クロックは彼の晩年の作品であり、わずか10年余りのデザイナーとしてのキャリアにおける集大成のひとつとなった。彼の死後、スタジオは長年のアシスタントであったイニャツィア・ファヴァータによって引き継がれ、その遺産は現在も守り継がれている。

評価

オプティック クロックは、20世紀後半を代表するプロダクトデザインの傑作として、国際的に高い評価を受けている。その革新的なフォルムと機能性の融合は、宇宙時代のデザイン美学を象徴するものとして、デザイン史における重要な位置を占める。

世界の主要美術館がこの作品を永久コレクションに加えていることは、その芸術的・歴史的価値の証左である。ニューヨーク近代美術館(MoMA)、メトロポリタン美術館、フィラデルフィア美術館、ブルックリン美術館、サンフランシスコ近代美術館、さらに英国のデザイン・イン・プラスチック美術館など、デザイン分野を専門とする機関が競ってこの時計を収蔵している。

コレクターズ市場においても、特にリッツ・イタローラ社製のオリジナル版や、1988年のアレッシィ初期復刻版は希少性が高く、ヴィンテージデザインの愛好家から高い人気を博している。半世紀以上を経た現在もなお、その先進的なデザインは色褪せることなく、現代のインテリアにおいても存在感を放ち続けている。

基本情報

デザイナー ジョー・コロンボ(Joe Colombo)
デザイン年 1970年
製造 リッツ・イタローラ(1970年〜)、アレッシィ(1988年〜)
素材 ABS樹脂(射出成形)、クォーツムーブメント
寸法 約8 × 8 × 8 cm
カラー ブラック、ホワイト、レッド
機能 時計、アラーム
生産国 イタリア
主な収蔵館 ニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、フィラデルフィア美術館、ブルックリン美術館、サンフランシスコ近代美術館