ベジタルチェアは、フランス人デザイナー兄弟であるロナン&エルワン・ブルレックが2008年にデザインし、スイスの家具メーカーであるヴィトラが製造する革新的なチェアである。自然界の植物が成長する様を椅子として再現するという独創的なコンセプトのもと、4年間の集中的な開発期間を経て実現された作品として、現代デザイン史において重要な位置を占めている。

屋内外を問わず使用できる汎用性と、有機的でありながら高度に機能的な形態を併せ持つこのチェアは、インジェクション成形技術の限界に挑戦した画期的なプロジェクトとして高く評価されている。その優れたデザインと技術的革新性により、2010年には世界有数の美術館のパーマネントコレクションに収蔵され、現代デザインの傑作としての地位を確立している。

デザインコンセプト

ブルレック兄弟は、植物が自然に生長して形を成すように見える椅子を創造することを目指した。このコンセプトの着想源は多岐にわたり、アメリカの庭師が若木を長年にわたって剪定と手入れを施すことで家具のような形状に成長させる20世紀の園芸技術、イギリスの鋳鉄製ガーデンベンチ、アメリカのラスティックスタイルの椅子など、歴史的な家具デザインにも影響を受けている。

デザイナーたちが追求した本質的な問いは、「成長した椅子」という理想にいかに近づけるかということであった。この哲学的な探求は、単なる形態の模倣を超えて、植物の枝分かれのような構造原理を椅子の構造そのものに組み込むという、より深い次元での自然とデザインの融合を目指したものである。

形態的特徴

ベジタルチェアの最も特徴的な要素は、扁平化された枝のような構造が3つのレベルで織り成され、わずかに不規則な円形のシート形状を形成している点である。この非対称的かつ幾何学的な透かし構造は、自然界の植物の成長パターンを忠実に反映しながらも、座面としての機能性と快適性を損なうことがない。椅子の下部では、支持脚から成長するように伸びるリブ構造が、座面全体を安定させる役割を果たしている。

当初の試作品は非対称的であったが、実用性の観点から安定性に課題があったため、デザイナーたちは対称的な形状へと再考を重ね、座る人を均等に支えるために必要な「枝」の本数を精密に計算した。この反復的なデザインプロセスは、自然の美しさと機能的要求との間で最適なバランスを見出すための重要な段階であった。

製造技術と素材

ベジタルチェアは、繊維強化ポリアミドを用いたインジェクション成形によって製造される。この製造プロセスでは、高温で液状化したプラスチックを高圧で金型に注入し、冷却・固化させて取り出すまでの全工程を2分以内に完了させる必要がある。ブルレック兄弟とヴィトラは、植物の成長パターンに基づく有機的なデザインコンセプトを、この高度に制約された工業生産技術に適合させるという、きわめて困難な課題に取り組んだ。

開発プロセスにおける重要な技術的革新の一つは、当初円形であった枝の断面をT字型プロファイルへと変換したことである。この形状変更により、構造的強度を維持しながら、より軽量で、かつ成形プロセスにおける樹脂の流動性を最適化することが可能となった。手描きのスケッチや手彫りの縮尺模型といった伝統的な手法と、バーチャルモデリングソフトウェアやCADによるプロトタイプ製作という最先端技術を組み合わせた、職人的でありながらハイテクなアプローチが採用された。

完成したベジタルチェアは、屋外使用に必要な耐水性、実用性を考慮したスタッキング機能、そして軽量性と耐久性を兼ね備えている。6色のカラーバリエーションが用意され、多様な空間に調和する汎用性を実現している。

開発の軌跡

2000年代半ばに構想が始まったベジタルチェアは、ブルレック兄弟もヴィトラも当初予想していなかった4年間という長期にわたる集中的な開発期間を必要とした。この期間は、革新的なデザインコンセプトを実現可能な工業製品へと昇華させるために不可欠なものであった。

開発プロセスは、図面、コンピューターレンダリング、模型の制作と修正を繰り返す反復的なものであった。デザイナーたちは、植物のような枝分かれを構造原理として用いるという願望と、座面としての実用性および幾何学的要求を両立させることを追求した。このような複雑な形状は、デザイナーと製造者が時間的制約にとらわれず、卓越した解決策の実現に専念した場合にのみ達成可能であるという事実を、この椅子は証明している。

クーパー・ヒューイット美術館が所蔵する2005年のデザイン図面は、ブルレック兄弟の創造的プロセスへの貴重な洞察を提供している。この図面には、初期段階における形態探求の痕跡が記録されており、最終的な完成形に至るまでの思考の変遷を窺い知ることができる。

評価と影響

ベジタルチェアは、現代におけるインテリアと屋外空間の柔軟な使用という潮流に呼応する作品として高く評価されている。歴史的な庭園デザインの文脈に位置づけられるだけでなく、屋内、庭園、テラスを問わず耐候性のある家具を多目的に活用する現代的なライフスタイルにも合致している。

その革新性と完成度の高さは、2009年のICFF(国際現代家具見本市)賞の受賞によって広く認められることとなった。また、発表直後から世界の主要な美術館が相次いでパーマネントコレクションへの収蔵を決定したことは、この作品が単なる商業的成功を超えて、デザイン史における重要な到達点として評価されていることを示している。

ヴィトラ・デザイン・ミュージアムのミニチュアコレクションにも含まれたベジタルチェアは、産業用家具デザインの歴史における重要なマイルストーンとして位置づけられ、デザイン教育や建築の現場において理想的な教材としても活用されている。この椅子は、自然の形態原理と現代の製造技術の融合という、21世紀デザインの重要なテーマを体現する作品として、後世のデザイナーたちに多大な影響を与え続けている。

コレクションと受賞歴

主要美術館パーマネントコレクション

ベジタルチェアは、2010年を中心に世界有数のデザイン美術館のパーマネントコレクションに収蔵されている。クーパー・ヒューイット・スミソニアン・デザイン・ミュージアム、フィラデルフィア美術館、デンバー美術館、シカゴ美術館、パリ装飾芸術美術館など、国際的に権威ある機関がこの作品を恒久的展示品として選定したことは、その歴史的重要性を証明するものである。

受賞歴

  • 2009年 ICFF賞(国際現代家具見本市)受賞

基本情報

デザイナー ロナン&エルワン・ブルレック
ブランド ヴィトラ
デザイン年 2008年
発表年 2009年
素材 繊維強化ポリアミド
製造方法 インジェクション成形
サイズ 高さ81.3cm × 幅60.3cm × 奥行57.8cm
用途 屋内外両用
特徴 スタッカブル、耐水性
カラー展開 6色