ロナン・ブルレック:現代フランスデザインを牽引する詩的実用主義者
バイオグラフィー
ロナン・ブルレック(Ronan Bouroullec、1971年フランス・ブルターニュ地方カンペール生まれ)は、現代フランスを代表するデザイナーかつアーティストである。パリを拠点とし、家具、照明、テキスタイル、空間デザイン、そして建築プロジェクトまで、多岐にわたる分野で活躍している。
パリの国立高等装飾美術学校(École Nationale Supérieure des Arts Décoratifs)で学び、1996年に卒業後すぐに独自のスタジオを設立した。同年、彼のデザインした花瓶「Vase Soliflore」がパリのポンピドゥーセンターの永久コレクションに加わり、若くして認められることとなった。1997年、パリのサロン・デュ・ムーブルで発表した「Disintegrated Kitchen(分解されたキッチン)」が、イタリアの家具メーカー・カッペリーニ社の創設者ジュリオ・カッペリーニの目に留まり、最初の産業デザインプロジェクトの機会を得た。同年、パリ市からグランプリ・デュ・デザインを授与されている。
1998年から弟のエルワン・ブルレック(1976年生まれ)と共同でデザイン活動を開始し、1999年に正式にパリのベルヴィル地区にスタジオ「Bouroullec Studio」を設立した。この兄弟デュオは約20年以上にわたって協働し、現代デザイン界で最も影響力のあるパートナーシップの一つとなった。2000年、三宅一生から新コレクション「A-POC」のパリ店舗のデザインを依頼され、さらに同年、Vitraのロルフ・フェールバウム会長との出会いが、革新的なオフィス家具システム「Joyn」(2002年発表)の開発につながり、これが長期的かつ実りあるパートナーシップの始まりとなった。
兄弟での協働期間中、Vitra、Kvadrat、Magis、Kartell、Ligne Roset、Flos、Hay、Alessi、Artek、Iittala、Samsung等、ヨーロッパおよび世界の主要デザインブランドとの協力関係を築き、数々の象徴的なデザインを生み出した。2023年頃、二人は独立してそれぞれの道を歩み始めることを決定。ロナンは現在、産業デザインとともに、パリのGalerie kreoとの協働による限定版家具の制作、さらに日本の筆ペンを用いた繊細な反復線による緻密なドローイング作品、陶器のレリーフ彫刻などのアート作品制作にも注力している。
彼の作品は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)、パリのポンピドゥーセンター国立近代美術館、パリ装飾美術館、ロンドンのデザイン・ミュージアム、シカゴ美術館、ロッテルダムのボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館など、世界の主要美術館の永久コレクションに収蔵されている。2011年にはポンピドゥーセンター・メッスで大規模な回顧展「Bivouac」が開催され、その後シカゴ現代美術館に巡回した。
デザインの思想とアプローチ
ロナン・ブルレックのデザイン哲学の核心は、「詩的実用主義(Poetic Practicality)」にある。弟エルワンは「私たちは単に機能的な作品を作りたいわけではない」と述べており、ブルレック兄弟の作品は機能性と美的魅力を融合させながらも、それ以上の感情的・精神的な体験を提供することを目指している。
彼らのデザインアプローチは、手書きのスケッチ、模型制作、そして魅力的なイメージでの発信を重視している。ロナンのノートブックには、幻想的な生き物、自然の情景、抽象的なイメージが溢れ、これらが独自のユーモアあるデザインの源泉となっている。ドローイングは幼少期から彼の日常生活の重要な一部であり、デザインプロセスにおける基礎的要素として機能している。ロナンは「ドローイングは一種の瞑想、自己催眠の状態」だと語っており、反復的な線の描画は彼にとって創造的思考の重要な手段である。
彼らの作品は、シンプルさ、バランス、細部へのこだわりによって特徴づけられる。新合理主義者として識別されることもあるロナンは、過去の作品――自身のものであれ、デザイン史上の先人のものであれ――から距離を置いて世界を見ることで、創造性を刺激し、独創性を促進し、純粋性を保つと考えている。彼は自分自身や他者の繰り返しを決して望まず、永遠に新しいものを追求し続けている。
素材と質感への深い関心も彼の作品の重要な側面である。ガラス、陶器、木材、金属、テキスタイル、プラスチックなど多様な素材を扱い、それぞれの素材の本質を引き出すことに注力している。手作業の痕跡や不規則な仕上げを好み、小さなオブジェから大規模な建築プロジェクトまで、この傾向は一貫して見られる。
また、デザインにおける「柔軟性」と「適応性」を重視している。Joynオフィスシステムやモジュラー式のテキスタイル壁システムなど、現代の多様な生活様式やワークスタイルに対応できる柔軟な構造を創造することに力を注いでいる。これは家具を単なる静的なオブジェクトとしてではなく、空間全体を変容させる動的な要素として捉える彼らの空間デザインへのアプローチを反映している。
作品の特徴
ロナン・ブルレックの作品は、以下の特徴によって識別される:
有機的で彫刻的なフォルム
自然からインスピレーションを得た流動的で有機的な形態が顕著である。「Vegetal Chair」の枝のような構造、「Algue」の海藻を思わせるモジュラー形態、「Ploum Sofa」の丸みを帯びた柔らかなシルエットなど、自然界の成長パターンや有機的構造を反映したデザインが特徴的である。これらの形態は単なる装飾ではなく、機能性と快適性を高めるための構造的解決策として機能している。
革新的な素材の探求
ブルレックは常に素材の可能性を限界まで追求している。「Vegetal Chair」では繊維強化ポリアミドを用いた複雑な射出成形技術、「Algue」では簡単に接続可能なポリプロピレンモジュール、「Serif TV」ではファブリックで覆われた背面パネルなど、それぞれのプロジェクトで素材と製造技術の革新に挑戦している。また、Iittalaとの協働で制作したガラス製品では、口吹きガラスの伝統技術と現代デザインを融合させ、Mutinaの「Pico」タイルでは陶器素材の質感を強調したマットな仕上げを採用している。
ミニマリズムと精緻さの融合
一見シンプルで控えめなデザインでありながら、驚くべき精緻さと技術的洗練を内包している。「Belleville Chair」のスタッキング可能な椅子のシリーズは、シンプルな外観でありながら快適性と耐久性を兼ね備えている。この「エレガントな抑制(Elegant Restraint)」は、過剰な装飾を排除しながらも、親しみやすい魅力を放つ彼の作品の特徴である。
モジュラー性と柔軟性
多くの作品がモジュラーシステムとして設計されており、ユーザーが自由に構成を変更できる柔軟性を持つ。「Algue」は数百のモジュールを組み合わせてパーティション、カーテン、壁装飾を自由に創造できる。Kvadratとの協働による「Clouds」テキスタイル壁システムや「North Tiles」も同様に、空間を柔軟に区切り、音響環境を改善するモジュラーソリューションである。
色彩への大胆なアプローチ
特にKvadratとの協働において、ブルレックは色彩の探求者として知られている。彼らのテキスタイルデザインは、ニュートラルトーンから鮮やかな原色まで幅広いパレットを提供し、空間に感情的な深みをもたらす。ロナンは「色彩は私の人生を通じて続くテーマだが、それを説明する言葉は多くない。色彩は直感的なもので、間違った色というものは存在しないが、その使い方は恐ろしいものになりうる」と述べている。
機能性を超えた物語性
各作品には明確な機能を超えた物語や哲学が込められている。「Serif TV」は、テレビを単なる電子機器ではなく、空間の一部として機能するインテリアオブジェクトとして再定義した。電源を切っているときでもスクリーンセーバーモードで視覚的に魅力的であり続け、上面はシェルフとして機能する。これは「オブジェクトは時代、エロティシズム、本質、人間の感情、夢をも表現する」というブルレックの信念を体現している。
主な代表作とその特徴
Algue(アルグ)|2004年|Vitra
フランス語で「海藻」を意味する「Algue」は、ブルレック兄弟の最も革新的なデザインの一つである。小さなプラスチック製のモジュール(各25.7×32cm)を手作業で組み合わせることで、パーティション、カーテン、壁装飾など、様々な空間構成要素を創造できる。射出成形ポリプロピレン製で、簡単な円筒形のペグで接続する仕組みは、ミリ単位の精密さで製造されながら、道具を使わず手だけで組み立てられる。
ブルレック兄弟は「木の葉のように光をまだらにし、葉が光をあちこちで遮るように、密度の変化によって濃い影から光の愛撫のようなほとんど存在しない影まで、異なるタイプの光を提供する」と説明している。5色(白、黒、緑、赤、ライトグリーン)で展開され、1平方メートルの構造を作るには25個のモジュールが必要である。MoMA、シカゴ美術館の永久コレクションに収蔵されている。
Vegetal Chair(ベジタルチェア)|2008年|Vitra
「育った椅子」という概念に最も近い椅子を構築するという問いから始まったこのプロジェクトは、4年間の開発期間を要した。アメリカの庭師が小さな木を椅子の形に仕立てているのを見て着想を得たブルレック兄弟は、枝のような構造を3層に編み込んで丸く不規則な座面シェルを形成するデザインを考案した。
繊維強化ポリアミドを用いた射出成形により製造され、屋内外両用として設計されている。椅子の裏側は支持脚から成長するように伸びるリブによって補強されており、自然の成長パターンを模倣している。6色で展開され、スタッキング可能である。このプロジェクトは、デザイナーとメーカーが時間的制約なく、例外的なソリューションの実現に専念したときにのみ達成できる、複雑な形態の好例である。2009年にICFF賞(屋外家具部門)を受賞し、デンバー美術館、インディアナポリス美術館などの永久コレクションに収蔵されている。
Joyn(ジョイン)オフィスシステム|2002年|Vitra
ブルレック兄弟とVitraとの協働の始まりを告げた革命的なオフィス家具システムである。従来のオフィス家具の硬直性を打破し、「オフィスにソファを持ち込むことは、空のステージの真ん中にマーシャルアンプを接続するようなものだった」と兄弟は語っている。
Joynシステムは、開放的なワークスペースにおける多様な働き方と個人のニーズに対応するモジュラー式のワークステーションである。ミニマリストを好む人から収納にこだわる人、孤立を必要とする人から没入を求める人まで、各ユーザーが自分のワークスタイルに合わせてカスタマイズできる。様々な脚部タイプ、素材、カラーオプションを提供し、見かけのシンプルさにもかかわらず高度にパーソナライズ可能なシステムとなっている。
Cloud(クラウド)/ Clouds システム|2002-2009年|Vitra / Kvadrat
2002年にVitraのために最初にデザインされた「Cloud Bookcase(Nuages)」は、雲のような有機的な形状の本棚システムで、壁に取り付けられる柔軟なモジュラーシステムである。その後、Kvadratとの協働により、2004年に「Cloud Modules」としてテキスタイル版が開発され、2009年には「Cloud Tiles」へと進化した。
これらのテキスタイル壁システムは、空間を柔軟に区切りながら音響環境を改善する機能的かつ美的なソリューションである。様々な形状とサイズのモジュールを組み合わせることで、無限の構成が可能となり、空間に視覚的な軽やかさと動きをもたらす。MoMA、シカゴ美術館、ミラノのポルディ・ペッツォーリ美術館などで展示されている。
Serif TV(セリフテレビ)|2013-2015年|Samsung
Samsungからの委託により開発された「Serif TV」は、テレビデザインの概念を根本から再定義した作品である。市場を支配する薄型で目立たないテレビデザインから脱却し、セリフ書体の大文字「I」の形状からインスピレーションを得た強い彫刻的存在感を持つデザインを提案した。
特筆すべきは、ファブリックで覆われた背面パネルにより、全ての角度から美的に魅力的であり、空間のどこにでも自由に配置できることである。上面はシェルフとして機能し、スクリーンだけではなく部屋の装飾の一部となる。電源オフ時にはスクリーンセーバーモードが起動し、黒い空白になることを避ける。陽極酸化アルミニウムの脚により壁掛けや専用スタンドを必要とせず、柔軟な配置が可能である。2018年には第2世代が発表され、QLED技術が搭載された。このプロジェクトは、ブルレック兄弟の「現代の生活ニーズに応答する柔軟で適応可能な構造を創造する」という広範な哲学を体現している。
Ploum(プルム)ソファ|2011年|Ligne Roset
「Ploum」は、ストレッチファブリックとボタンのようなディテールを組み合わせた独特で即座に認識可能な形状のソファである。丸みを帯びた有機的なフォルムは、快適性と視覚的な柔らかさを提供し、まるで大きなクッションが足を持ったかのような愛らしくも洗練されたデザインである。2011年にレッドドット・デザイン賞「Best of the Best」を受賞した。
Steelwood(スティールウッド)コレクション|2007年|Magis
Magisのために開発されたこのコレクションは、その名の通り、スチールと木材を組み合わせた家具シリーズである。金属フレームと木製要素を融合させ、工業的な強度と自然素材の温かみを兼ね備えたデザインを実現した。「Steelwood Chair」は2011年にイタリアデザイン界で最も権威あるコンパッソ・ドーロ賞を受賞している。
Belleville(ベルヴィル)コレクション|2015年|Vitra
Vitraとの長期的パートナーシップから生まれた多用途チェアコレクションで、ブルレック兄弟のスタジオがあるパリのベルヴィル地区にちなんで命名された。屋内外両用、スタッキング可能、多様な仕上げオプションを持ち、レストラン、オフィス、住宅など幅広い用途に対応する。シンプルで洗練されたデザインでありながら、快適性と耐久性を兼ね備えている。
Copenhagen(コペンハーゲン)シリーズ|2013年|Hay
デンマークのブランドHayのために制作されたこのシリーズは、椅子、ベンチ、テーブルからなる。曲げ合板を使用したシンプルで洗練されたデザインで、木材は自然のままか、明るいパステル調または濃い色に塗装されている。スカンディナビアデザインの伝統を現代的に解釈した作品である。
Alcove(アルコーヴ)ソファ|2006年|Vitra
「Alcove」は、高い背もたれとサイドパネルによってプライベートな空間を創り出すソファシステムである。オープンオフィスや公共空間において、視覚的・音響的なプライバシーを提供しながら快適な座り心地を実現している。複数のサイズとコンフィギュレーションで展開され、現代のワークスペースにおけるソフトシーティングの先駆けとなった。
功績と業績
主要な賞と栄誉
- 1998年
- パリ市グランプリ・デュ・デザイン(Grand Prix du Design de la Ville de Paris)
- 1998年
- パリ・メゾン・エ・オブジェ家具見本市 国際審査員グランプリ
- 1999年
- ニューヨーク国際家具見本市(ICFF) 新人デザイナー賞(New Designer Award)
- 2001年
- ミラノ コンパッソ・ドーロ ノミネート
- 2002年
- パリ・サロン・デュ・ムーブル 年間最優秀デザイナー(Designers of the Year)
- 2005年
- レッドドット・デザイン賞「Best of the Best」(Facett collection / Ligne Roset)
- 2007年
- D - Design Forum AID Award(North Tiles / Kvadrat)
- 2008年
- コペンハーゲン フィン・ユール賞(Finn-Juhl Prize)
- 2008年
- レッドドット・デザイン賞「Best of the Best」(Worknest / Vitra)
- 2009年
- ICFF賞 屋外家具部門(Vegetal Chair / Vitra)
- 2010年
- EDIDA(ELLE Decoration International Design Awards) 年間最優秀デザイナー
- 2011年
- コンパッソ・ドーロ賞(XXII Compasso d'Oro ADI)(Steelwood Chair / Magis)
- 2011年
- サンテティエンヌ・デザインビエンナーレ 国際審査員グランプリ
- 2011年
- レッドドット・デザイン賞「Best of the Best」(Ploum Sofa / Ligne Roset)
- 2012年
- ドイツ・デザイン賞 ゴールド(Axor Bouroullec / Axor Hansgrohe)
- 2014年
- メゾン・エ・オブジェ 年間最優秀デザイナー(Créateurs de l'année)
主要な展覧会
- 2002年:Design Museum、ロンドン(個展)
- 2004年:Museum of Contemporary Art、ロサンゼルス(個展)
- 2004年:Museum Boijmans van Beuningen、ロッテルダム(個展)
- 2004年:La Piscine, Musée d'Art et d'Industrie、ルーベ
- 2008年:Villa Noailles、イエール
- 2009年:Grand Hornu、ベルギー
- 2011年:Arc en Rêve Centre d'architecture、ボルドー「Album」展
- 2011年:Victoria and Albert Museum、ロンドン「Textile Field」展
- 2011-2012年:Centre Pompidou-Metz「Bivouac」(大規模回顧展)
- 2012-2013年:Museum of Contemporary Art、シカゴ「Bivouac」(巡回展)
- 2012年:Vitra Design Museum「Album」展
- 2013年:Musée des Arts Décoratifs、パリ(回顧展)
- 2018年:Giorgio Mastinu Fine Art、ヴェネツィア(ロナン個展・ドローイング)
- 2019年:Galerie kreo、パリ(ロナン個展)
- 2021年:Galerie kreo、ロンドン(ロナン初個展)
- 2021年:Licht Gallery、東京(ロナン個展)
- 2021-2022年:Casa Mutina、ミラノ(ロナン個展)
- 2022年:Philadelphia Museum of Art「Circus: Bouroullec Designs」(2021年Collab Design Excellence Award受賞記念展)
- 2023年:Hôtel des Arts、トゥーロン、フランス(ロナン個展・約300点のドローイング作品)
- 2024年:Galerie ELAC at ECAL、ローザンヌ「Dessins Quotidiens」(ロナン個展)
- 2024年:伊勢丹新宿店「ロナン・ブルレック~この手が覚えていることThe hand remembers~展」(日本国内最大規模40点以上展示)
パブリックコレクション
- ニューヨーク近代美術館(MoMA)
- パリ ポンピドゥーセンター国立近代美術館(Musée National d'Art Moderne – Centre Georges Pompidou)
- パリ装飾美術館(Musée des Arts Décoratifs)
- シカゴ美術館(The Art Institute of Chicago)
- ロンドン デザイン・ミュージアム(Design Museum)
- ロンドン ヴィクトリア&アルバート博物館(Victoria and Albert Museum)
- ロッテルダム ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館(Museum Boijmans van Beuningen)
- リスボン デザイン美術館(Design Museum Lisbon)
- デンバー美術館(Denver Art Museum)
- インディアナポリス美術館(Indianapolis Museum of Art)
- ベルギー グランホルヌ(Grand Hornu)
主要な出版物
- 「Ronan et Erwan Bouroullec – Catalogue de Raison」(Images Modernes / Kreo、2002年)
- 「Ronan et Erwan Bouroullec」(Phaidon Press、2003年)
- 「Ronan and Erwan Bouroullec」(Phaidon Press、2008年・改訂版)
- 「Lianes – Rocs – Conques」(JRP/Ringier、64ページ、2010年)
- 「Works」(Phaidon Press、2012年・包括的モノグラフ)
- 「Ronan Bouroullec – Lausanne」(Galerie ELAC at ECAL、2024年)
評価と後世への影響
ロナン・ブルレックは、現代フランスデザイン界における最も重要な人物の一つとして広く認識されている。弟エルワンとの約20年以上にわたる協働期間中、彼らはデザイン史上最も影響力のある兄弟デュオの一つとなった。
デザイン界における位置づけ
ブルレック兄弟の作品は、フランスモダニズムへの繊細な参照を含みながらも、独自の表現を確立している。「詩的実用主義」と評される彼らのアプローチは、機能性を犠牲にすることなく、オブジェクトに感情的・精神的な次元を加えることに成功した。デザイン評論家は、彼らの作品を「興味深い革新性、エレガントな抑制、そして余分な装飾から解放された親しみやすい魅力の独特な組み合わせ」と評している。
新合理主義者として分類されることもあるロナンだが、彼の作品は冷たい合理性を超えた温かみと人間性を持っている。これは、デザインが単に問題解決のためのツールではなく、人々の生活を豊かにし、空間に意味と美をもたらすべきだという彼の信念を反映している。
産業デザインへの影響
ブルレック兄弟は、特にオフィス家具とテキスタイル壁システムの分野で革新をもたらした。「Joyn」オフィスシステムは、硬直した従来のオフィス家具の概念を打破し、柔軟で個人化可能なワークスペースの先駆けとなった。「Algue」や「Clouds」などのモジュラーシステムは、空間の区切り方に新しい可能性を示し、多くのデザイナーに影響を与えた。
「Serif TV」は、消費電子機器のデザインにおいても重要な影響を与えた。テレビをインテリアオブジェクトとして再定義し、電子機器が空間の一部として美的に統合されるべきだという考え方を提示した。これは、技術と生活空間の関係性について新たな対話を促した。
現代デザインへの貢献
ブルレックの作品は、持続可能性、柔軟性、適応性といった21世紀のデザイン課題に直接応答している。モジュラーシステムは長寿命を実現し、ユーザーのニーズの変化に対応できる。多くの作品が10年以上にわたって連続生産されていることは、タイムレスなデザインの実現を証明している。
また、彼らは産業デザインとアート、工芸と技術の境界を曖昧にすることに成功した。Galerie kreoでの限定版作品、ガラスや陶器を用いたアート作品、そして大規模な建築プロジェクトまで、多様な分野を横断する活動は、現代デザイナーの役割を拡張した。
ロナン・ブルレックの独立後
2023年頃にエルワンと独立した後、ロナンは産業デザインを継続しながら、より個人的なアート制作に注力している。日本の筆ペンを用いた繊細なドローイング作品は、反復的な線の描画による瞑想的なプロセスを通じて、色彩と形態を探求している。これらのドローイングは、2024年に三宅一生のHomme Plissé Issey Miyakeの衣服コレクションに統合され、ファッションデザインへの初進出を果たした。
陶器のレリーフ彫刻「Bas-Relief」シリーズも高く評価されており、Galerie kreoで展示・販売されている。これらのアート作品は、彼のデザインワークと共鳴しながらも、より自由で実験的な表現を追求している。
ロナン・ブルレックは、デザインとアートの境界を探求し続ける、稀有な創造者である。彼の作品は、機能性と美、技術と手仕事、産業生産と芸術表現の間に新たなバランスを見出し、現代デザインの可能性を拡張し続けている。
作品一覧
| 年月 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1996年 | 花瓶 | Vase Soliflore | - |
| 1997年 | 展示 | Disintegrated Kitchen | - |
| 1997年 | 花瓶 | Vase Combinatoires | Néotù gallery |
| 1999年 | ベッド | Lit clos (Closed Bed) | Cappellini |
| 2000年 | 椅子 | Spring Chair | Cappellini |
| 2000年 | 空間デザイン | Issey Miyake A-POC Shop | Issey Miyake |
| 2001年 | 家具 | Console with Mirror | Cappellini |
| 2002年 | オフィス家具システム | Joyn Office System | Vitra |
| 2002年 | 本棚 | Nuages (Cloud) Bookcase | Cappellini |
| 2004年 | パーティションシステム | Algue (Algae) | Vitra |
| 2004年 | テキスタイル壁システム | Cloud Modules | Vitra |
| 2004年 | 家具コレクション | Striped Collection | Magis |
| 2005年 | ソファ | Basket Sofa | Cappellini |
| 2005年 | テキスタイル壁システム | North Tiles | Kvadrat |
| 2005年 | ソファ | Facett | Ligne Roset |
| 2006年 | ソファ | Alcove Sofa | Vitra |
| 2006年 | オフィス家具 | Worknest | Vitra |
| 2006年 | 建築 | Maison flottante (Floating House) | CNEAI |
| 2006年 | 空間デザイン | Kvadrat Showroom Stockholm | Kvadrat |
| 2007年 | 椅子 | Slow Chair | Vitra |
| 2007年 | 家具コレクション | Steelwood Collection | Magis |
| 2008年 | 椅子 | Vegetal Chair | Vitra |
| 2009年 | 空間デザイン | Kvadrat Showroom Copenhagen | Kvadrat |
| 2009年 | テキスタイル壁システム | Cloud Tiles | Kvadrat |
| 2010年 | テーブルウェア | Ovale Collection | Alessi |
| 2010年 | バスルームコレクション | Axor Bouroullec | Axor Hansgrohe |
| 2010年 | 空間デザイン | Dos Palillos Restaurant, Casa Camper Hotel | Casa Camper / Berlin |
| 2011年 | 照明 | Piani Lamps | Flos |
| 2011年 | ラグ | Losanges | Nani Marquina |
| 2011年 | 椅子 | Osso Chair | Mattiazzi |
| 2011年 | タイル | Pico Tiles | Mutina |
| 2011年 | ソファ | Ploum Sofa | Ligne Roset |
| 2011年 | オブジェ | L'Oiseau | Vitra |
| 2011年 | 空間デザイン | Kvadrat Showroom Rome | Kvadrat |
| 2012年 | 椅子 | Baguettes Chair | Magis |
| 2012年 | テーブル | Central Table | Magis |
| 2012年 | テーブル | Tambour Table | Magis |
| 2012年 | 椅子 | Pila Chair | Magis |
| 2012年 | テーブル | Pilo Table | Magis |
| 2012年 | 収納 | Corniches | Vitra |
| 2012年 | 家具 | Folio | Established & Sons |
| 2013年 | テレビ | Serif TV | Samsung |
| 2013年 | 家具コレクション | Copenhagen Series | Hay |
| 2013年 | カーテン | Ready Made Curtain | Kvadrat |
| 2013年 | 照明 | Lustre Gabriel (Gabriel Chandelier) | Château de Versailles |
| 2014年 | 家具コレクション | Officina Collection | Magis |
| 2015年 | 椅子コレクション | Belleville Collection | Vitra |
| 2015年 | ローラーブラインド | Kvadrat Shade Roller Blinds | Kvadrat |
| 2015年 | 建築 | Kiosque pour Emerige | Emerige |
| 2016年 | オフィス家具システム | Workbays | Vitra |
| 2018年 | テレビ | Serif TV 2.0 | Samsung |
| 2020年 | 椅子 | Rope Chair | Artek |
| 2020年 | ガラスコレクション | Fleur and Erkkeri Vase | Iittala |
| 2020年 | ガラスコレクション | Ruutu Vase | Iittala |
| 2020年 | ガラスコレクション | Alcova Collection | WonderGlass |
| 2022年 | ベンチ | Meandering Modular Park Bench | Hay |
| 2023年 | 照明 | Lampes Sèvres | Manufacture de Sèvres |
| 2023年 | ファッション | Collaborative Collection | Homme Plissé Issey Miyake |
| 2024年 | 椅子 | Filo Chair | Mattiazzi |
| 2024年 | ソファ | Cotone Slim | Cassina |
| 2024年 | 家具コレクション | Passage Collection | Kettal |
| 継続制作 | アート | Daily Drawings / Dessins Quotidiens | Galerie kreo |
| 継続制作 | 陶器彫刻 | Bas-Relief Series | Galerie kreo |
| 継続制作 | 家具 | Limited Edition Furniture | Galerie kreo |
Reference
- Ronan Bouroullec ロナン・ブルレック|IDEE SHOP Online
- https://www.idee-online.com/shop/e/eRonanB/
- Ronan Bouroullec - デザイナー | Kvadrat
- https://www.kvadrat.dk/ja/2/ronan-bouroullec
- ロナン & エルワン・ブルレック | Vitra
- https://www.vitra.com/ja-jp/product/designer/ronan-and-erwan-bouroullec
- Ronan Bouroullec | Design | Finnish Design Shop
- https://www.finnishdesignshop.com/en-us/designer/ronan-bouroullec
- Ronan Bouroullec | Galerie kreo
- https://www.galeriekreo.com/en/designer/ronan-bouroullec/
- Ronan & Erwan Bouroullec - Wikipedia
- https://en.wikipedia.org/wiki/Ronan_&_Erwan_Bouroullec
- Ronan & Erwan Bouroullec Design | Official Website
- http://www.bouroullec.com/
- Algues (Algae) Screen | MoMA
- https://www.moma.org/collection/works/98628
- Ronan Bouroullec | MoMA
- https://www.moma.org/artists/23262
- The Design Alchemy of Ronan and Erwan Bouroullec | Philadelphia Museum of Art
- https://blog.philamuseum.org/design-alchemy-ronan-erwan-bouroullec/
- Ronan & Erwan Bouroullec | Dezeen
- https://www.dezeen.com/tag/ronan-erwan-bouroullec/
- Ronan Bouroullec - designer profile | STYLEPARK
- https://www.stylepark.com/en/designer/ronan-bouroullec
- Ronan Bouroullec | Magis
- https://www.magisdesign.com/designer/ronan-bouroullec/
- Ronan and Erwan Bouroullec part ways | Designboom
- https://www.designboom.com/design/ronan-erwan-bouroullec-part-ways-01-04-2024/
- Ronan & Erwan Bouroullec | Design Miami
- https://designmiami.com/article/ronan-and-erwan-bouroullec
- Ronan Bouroullec: Master of Contemporary Design | Encyclopedia of Design
- https://encyclopedia.design/2024/11/23/ronan-bouroullec-master-of-contemporary-design/