カーリ ウォールシェルフは、フランスを代表するデザイナーデュオ、ロナン&エルワン・ブルレックとフィンランドの名門家具ブランド、アルテックとの初めてのコラボレーションから生まれた壁面収納システムである。2015年のストックホルム家具見本市において世界に向けて発表されたカーリコレクションは、テーブル、デスク、ウォールコンソール、そして本製品であるウォールシェルフで構成される包括的な家具システムとして展開された。カーリという名称はフィンランド語で「アーチ」を意味し、その名の通り、曲げ加工されたスチールバンドが描く流麗なアーチ状のシルエットが、コレクション全体を特徴づける象徴的なデザインエレメントとなっている。
ウォールシェルフは、無垢のオーク材による壁面ブラケットと、コレクションの特徴である優美な曲線を描くスチールバンドを組み合わせた構造を持つ。光沢仕上げのメラミン棚板とスチールバンドの相互作用により、独特の流動的なシルエットが創出され、視覚的な軽やかさと構造的な堅牢性を両立させている。複数のサイズバリエーションが用意されており、REB008は3段構成で幅200cm、REB009は2段構成で幅100cmという寸法を持ち、それぞれの空間特性や収納ニーズに応じた選択が可能である。また、デスク機能を統合したREB010およびREB013というバリエーションも展開されており、壁面空間を効率的に活用する多機能型のワークステーションとしても機能する。
デザインコンセプトと特徴
構造的革新性
カーリコレクションの核心を成すのは、垂直荷重と斜め支持という二つの構造原理を巧みに統合した革新的な脚部システムである。垂直方向の荷重は無垢のオーク材によって受け止められ、曲げ加工されたスチールバンドが斜めからの支持を提供することで、まるでアーチ構造のような力学的バランスを実現している。この構造原理は、アルヴァ・アアルトがアルテックの数々の名作家具において採用したL字型レッグと同様のモジュラーシステムとしての汎用性を持ち、様々な形状とサイズの天板や棚板を支持することが可能となっている。
ブルレック兄弟は、この脚部システムが壁面設置型の家具にも応用できることを発見し、それによってウォールシェルフやウォールコンソールといった製品カテゴリーへの展開が実現した。垂直のオーク材ブラケットと湾曲したスチールバンドが織りなす三角形状の支持構造は、静的な安定性を確保しながらも、視覚的には驚くほどの軽快さと透明性を獲得している。この構造的な明快さは、機能と美の完璧な調和を追求するアルテックのデザイン哲学を体現するものである。
素材の選択と表現
カーリ ウォールシェルフにおける素材の選択は、アルテックの伝統的な素材語彙を踏襲しながらも、それらを全く新しい方法で組み合わせることで実現された現代的な表現である。壁面ブラケットには天然のオーク材が用いられ、保護用のクリアヴァーニッシュ仕上げが施されることで、木材の自然な質感と美しい木目が強調されている。このオーク材は、スカンジナビアデザインにおいて長く愛用されてきた素材であり、温かみのある有機的な存在感を空間にもたらす。
対照的に、曲げ加工されたスチールバンドには黒色のパウダーコーティングが施され、鋭角的でモダンな印象を付与している。棚板の表面には高光沢のメラミン仕上げが採用され、光を反射する性質によって空間に動きと深みをもたらす。一方、デスクパネルを持つバリエーションでは、作業面にブラックリノリウムが使用されており、マットな質感が快適な作業環境を提供する。リノリウムとHPL(高圧メラミン)という表面素材は、光の吸収と反射において対照的な特性を持ち、時間の経過とともに使用による独特のパティナを形成していく。この経年変化は、家具に歴史と物語性を付与し、長期的な愛着を育む要素となっている。
視覚的リズムと空間構成
カーリコレクションの特筆すべき特徴の一つは、複数の家具が空間内に配置された際に生まれる視覚的なリズムである。通常、テーブルやシェルフといった家具は静的で建築的な要素として認識されるが、カーリの場合、垂直材と斜めのスチールバンドが創り出す繰り返しのパターンが、空間内に動的なリズム感を生み出す。ウォールシェルフを複数段組み合わせることで、壁面に浮遊するような軽やかさと、同時に構造的な秩序が表現され、インテリア空間全体に詩的な品格をもたらす。
各棚板の間隔は35cmという実用的な寸法が確保されており、書籍、装飾品、日用品など、様々な物品の収納と展示が可能である。幅200cmのREB008は大容量の収納空間を提供し、リビングルームやホームオフィスにおいて壁面全体を活用した統一的な収納システムとして機能する。より小規模な空間に適した幅100cmのREB009は、限られたスペースにおいても優雅な収納解決策を提供する。デスクと一体化したREB010およびREB013は、コンパクトな住空間において収納とワークスペースを統合する理想的なソリューションであり、学生の部屋や在宅勤務スペースに最適な多機能性を備えている。
デザインの背景と開発プロセス
アルテックからブルレック兄弟に与えられた課題は、明確かつ挑戦的なものであった。それは、アルテックのブランドアイデンティティに適合しながらも、過去の製品との明示的な類似性を避け、完全に新しいデザイン言語を創造することであった。アルヴァ・アアルトの家具がL字型レッグによって特徴づけられていたように、ブルレック兄弟もまた、独自の構造的アイコンを必要としていた。
デザインプロセスにおいて、ブルレック兄弟は多数のアイデアを開発したが、その中で一つの提案が際立っていた。それは革新的なテーブルレッグ、より正確には、小型から大型まで、円形から矩形まで、低いものから高いものまで、あらゆる種類の天板を支持できる体系的な脚部構造であった。この汎用的な構造システムの開発過程で、同じ原理が壁面設置型の家具、すなわち単体の棚やシェルフユニット全体にも応用可能であることが明らかになった。
テーブルという家具類型に対するブルレック兄弟の考察は、哲学的な深みを持つものであった。椅子が移動可能で多様な表現形態を持つ個性的な対象物である一方、テーブルは建築的要素として静的で安定した存在である。デザイン史において記憶に残る椅子は数百に及ぶが、デザイン史に名を刻んだテーブルは極めて限られている。テーブルの機能は常に同一であり、特定の高さに位置する水平面として定義される。20世紀中頃以降、テーブルに適した素材はほとんど変化していない。しかし、だからこそ、実用的でありながら独自性を持つ新しいテーブルシステムを開発することは、真の挑戦となる。
この課題に対するブルレック兄弟の解答は、新しい素材や革新的技術の導入ではなく、アルテックの伝統的素材である木材とスチールを全く新しい方法で組み合わせることであった。観察者は、カーリの家具を見たとき、完全に新しい何かを目撃しているという印象を受ける。しかし興味深いことに、この印象は素材の新規性や技術的革新に基づくものではなく、既存の素材を前例のない方法で統合することによって達成されている。このアプローチは、革新とは必ずしも全く新しい要素の導入を意味するのではなく、既存の要素を新たな視点で再構成することでも実現できるという、デザインにおける本質的な洞察を示している。
アルテックとの協働
カーリコレクションは、ロナン&エルワン・ブルレックとアルテックとの初めての協働であり、フランスの現代デザインとフィンランドのデザイン伝統の出会いを象徴する重要なプロジェクトとなった。アルテックは1935年にアルヴァ・アアルト、アイノ・アアルト、マイレ・グリクセン、ニルス=グスタフ・ハールという4人の若き理想主義者によって設立され、その事業戦略は「家具を販売し、展覧会その他の教育的手段を通じて近代的な生活文化を推進すること」と定義されていた。創立者たちは日常生活のための新しい環境を提唱し、芸術の壮大な統合を信じ、デザインと建築、そして都市計画においても変革をもたらそうとした。
2015年に創立80周年を迎えたアルテックは、デザイン、建築、芸術の交差点において新たな道を切り開く最も革新的な貢献者の一つとして認知されている。アルテックのコレクションは、アルヴァ・アアルト、イルマリ・タピオヴァーラ、タピオ・ウィルカラ、エーロ・アールニオ、ユルヨ・ククカプーといった北欧の巨匠たちの家具、照明、アクセサリーで構成されているが、同時に坂茂、ロナン&エルワン・ブルレック、コンスタンティン・グルチッチ、ヘラ・ヨンゲリウス、ハッリ・コスキネン、エンツォ・マーリ、トビアス・レーベルガーといった国際的に著名な建築家、デザイナー、アーティストとも協働している。
ブルレック兄弟とアルテックの協働は、伝統と革新、クラフトマンシップと工業生産、有機的形態と幾何学的明快さといった、一見対立するかに見える価値観の調和を追求するものであった。カーリコレクションは、アアルトの曲木技術という歴史的遺産を尊重しながらも、スチールバンドという新たな構造要素を導入することで、アルテックのデザイン言語に現代的な章を加えた。この協働によって誕生した家具群は、アルテックの過去を参照しながらも、それに縛られることなく、独自の美学的アイデンティティを確立している。
デザイナー ロナン&エルワン・ブルレック
ロナン・ブルレック(1971年生)とエルワン・ブルレック(1976年生)は、フランス・ブルターニュ地方のカンペールに生まれた兄弟デザイナーである。彼らの祖先は何世代にもわたってこの地で農業を営んでいたが、兄弟は異なる道を選び、デザインの世界へと進んだ。ロナンはパリの国立装飾美術学校(École nationale supérieure des arts décoratifs)で学び、エルワンはパリ=セルジー国立高等美術学校(École nationale supérieure d'arts de Paris-Cergy)を卒業した。1999年以来、二人は継続的に協働し、その作品は工業デザインから工芸、大量生産から研究、製品から公共空間に至るまで、多様な表現領域にわたっている。
ブルレック兄弟のキャリアは、国際的な大企業から伝統技能を持つ職人まで、ヨーロッパから日本に至る幅広い協働によって特徴づけられている。彼らは、ヴィトラ、クヴァドラ、マジス、カルテル、エスタブリッシュド&サンズ、リーニュ・ロゼ、アクソール、アレッシィ、イッセイ・ミヤケ、カッペリーニ、マティアッツィ、フロス、ムティナ、ヘイ、イッタラ、そしてアルテックといった、世界を代表するデザインブランドのために作品を創造してきた。また、パリのギャラリー・クレオにおいて実験的な活動を継続し、2001年から2012年の間に4回の個展を開催している。
ブルレック兄弟は数多くの栄誉ある賞を受賞している。1998年にパリのメゾン・エ・オブジェで審査員国際大賞を受賞し、1999年にニューヨークで最優秀新人デザイナー賞を受賞、2001年にミラノでコンパッソ・ドーロにノミネートされた。2007年には、クヴァドラのために制作した「ノース・タイルズ」がD-Design Forum AID賞を受賞し、ジュリオ・カッペリーニのデザインコレクションに加えられた。2011年にはマジスのスティールウッドチェアでコンパッソ・ドーロを受賞し、2014年にはロンドン・デザイン・メダルを受賞、2017年にはミラノ市の公式賞とデザイン賞を受賞している。
カーリコレクションに対しても、複数の賞が贈られている。2016年には、ウォールペーパー・デザイン・アワードでベストホームオフィス賞を受賞し、エル・デコール・インターナショナル・デザイン・アワード(EDIDA)の家具部門で表彰された。これらの受賞は、カーリが単なる商業的成功にとどまらず、デザイン批評家や専門家からも高く評価されていることを示している。
製造と品質
カーリ ウォールシェルフは、イタリアとポーランドにおいて、厳格な品質基準のもとで製造されている。アルテックは長年にわたり、北欧デザインの伝統的な製造技術と現代的な生産手法を組み合わせることで、最高品質の家具を生み出してきた。木材部品には天然のオーク材が使用され、各木目の個性を尊重しながら、保護用ヴァーニッシュで丁寧に仕上げられる。スチールバンドは精密な曲げ加工技術によって成形され、パウダーコーティングによって耐久性のある表面処理が施される。
棚板の表面は、高品質のメラミン材によって構成され、厚さ19mm(3/4インチ)という堅牢な仕様を持つ。縁部には黒色のABS樹脂が用いられ、視覚的な完成度と物理的な保護を両立している。組み立ては詳細な説明書に従って行われ、壁面への確実な固定が実現される。アルテックは各製品に対してCADデータやBIMデータを提供しており、建築家やインテリアデザイナーが空間計画において正確な寸法情報を活用できるよう配慮している。
アルテック製品の多くは、今日でもフィンランド国内で木工部品が製造されており、北欧の木工技術の伝統が現代に受け継がれている。カーリコレクションもまた、この品質への徹底したこだわりを体現しており、適切な使用と手入れによって世代を超えて受け継がれる価値を持つ家具として設計されている。時間の経過とともに表面に形成されるパティナは、大量生産品では得られない、使用者との深い関係性を物語る証となる。
現代インテリアにおける意義
カーリ ウォールシェルフは、21世紀のライフスタイルと住空間の変化に対応する柔軟性を備えた収納システムである。都市部における住居の小型化、在宅勤務の普及、ミニマリズムへの志向といった現代的な居住トレンドは、効率的で美しい収納ソリューションへの需要を高めている。カーリは、限られた床面積を消費することなく、壁面という垂直空間を最大限に活用することで、現代的な空間利用の問題に対する洗練された解答を提供する。
デスク機能を統合したバリエーションは、パンデミック以降加速したリモートワークの時代において、住空間内に機能的なワークステーションを確立する理想的なソリューションとなっている。学生、フリーランスのクリエイター、在宅勤務者にとって、コンパクトでありながら十分な収納容量と作業面を提供するカーリは、限られた空間を最適化する実用的な選択肢である。同時に、その洗練されたデザインは、仕事空間が居住空間と視覚的に調和することを可能にし、現代生活における公私の境界の曖昧さに対応している。
環境意識の高まりという観点からも、カーリは重要な意義を持つ。高品質の素材と堅牢な構造により、使い捨て文化に対するアンチテーゼとして、長期使用を前提とした持続可能なデザインを体現している。時間とともに美しく経年変化する素材の選択は、新品の完璧さではなく、使用の痕跡が刻まれた深みのある美を尊重する価値観を反映している。アルテックの家具が何世代にもわたって受け継がれてきた歴史は、カーリもまた、単なる消費財ではなく、長期的な投資対象としての価値を持つことを示唆している。
評価と影響
カーリコレクションは、2015年のストックホルム家具見本市でのデビュー以来、デザイン界において高い評価を獲得してきた。専門誌や批評家は、ブルレック兄弟がアルテックの伝統的素材を用いながら、完全に新しい視覚言語を創造したことを賞賛した。ウォールペーパー誌、イエロートレース、デゼーン、デザインブームといった影響力のあるデザインメディアは、カーリを2015年の家具見本市におけるハイライトの一つとして取り上げ、その構造的革新性と視覚的優雅さを称賛した。
シンプルでありながら詩的、実用的でありながら美しいというカーリの特質は、現代デザインにおける本質的な課題、すなわち機能性と美学の完璧な統合を体現するものとして評価されている。ブルレック兄弟の作品は「詩的な実用主義」として特徴づけられることが多いが、カーリはまさにこの表現を体現する作品である。無駄な装飾を排除しながらも、単なる機能主義に陥ることなく、形態の純粋性と素材の本質的な美しさによって、感情的な共鳴を生み出している。
カーリコレクションの影響は、製品そのものの成功を超えて、デザイン界全体に及んでいる。システム化されたモジュラーアプローチ、伝統的素材の革新的な組み合わせ、そして過去の偉大なデザインへの敬意と現代的革新の調和という、カーリが体現する原則は、多くのデザイナーに影響を与えている。アルテックというブランドにとっても、カーリは重要な意味を持つ。創立80周年という記念すべき年に発表されたこのコレクションは、アルテックが単に過去の遺産を管理するブランドではなく、現代の優れたデザイナーとの協働を通じて未来を創造し続ける、生きた伝統であることを世界に示した。
| デザイナー | ロナン&エルワン・ブルレック |
|---|---|
| ブランド | アルテック |
| 発表年 | 2015年 |
| 分類 | ウォールシェルフ / 壁面収納システム |
| 素材 | 壁面ブラケット: 無垢オーク材(クリアヴァーニッシュ仕上げ)、支持材: 平鋼材(黒色パウダーコーティング)、棚板: メラミン(高光沢仕上げ)、縁材: ABS樹脂(黒色) |
| サイズ | REB008: 幅200cm × 奥行35cm × 高さ113cm / REB009: 幅100cm × 奥行35cm × 高さ188cm |
| 製造国 | イタリア、ポーランド |
| 受賞歴 | 2016年 Wallpaper* Design Awards ベストホームオフィス賞 / 2016年 Elle Decor International Design Awards (EDIDA) 家具部門 |