Artek(アルテック)
Artekは、1935年12月にフィンランド・ヘルシンキで設立された家具メーカーである。建築家のAlvar Aaltoとその妻Aino Aalto、美術の支援者Maire Gullichsen、美術史家Nils-Gustav Hahlの4人が設立し、家具の販売と、展示や教育を通じた近代的な住まい方の普及を事業の目的として掲げた。製品はフィンランド産のバーチ材を用いた木製家具が中心で、生産は現在もトゥルクの工場が担う。2013年からスイスのVitraの傘下にある。
事業と製造の実体
Artekの木製家具は、フィンランド南西部トゥルクの工場で製造される。約7,000平方メートルの規模で、無垢のバーチ材の曲げ加工、積層材と成形合板の成形、突板の貼り、指物と塗装の各工程を扱う。半工業的な生産方式が採られ、工程の多くを手作業が占める。
製造技術の核にあるのは、脚部の成形方法である。Aaltoは1920年代からトゥルクの家具工場を率いていたOtto Korhonenと共同で木材の曲げと積層を試み、無垢材の端に切れ込みを入れて薄板を差し込み、直角に曲げる方法を開発した。この構成はL字の断面から「L-leg」と呼ばれ、脚と天板・座面を金具なしで接合できる。分岐する脚のY-leg、扇状に広がるX-legは、いずれもこの方法を発展させたものにあたる。
樹種はフィンランド産のバーチを基本とし、仕上げはクリアラッカー、着色、リノリウム貼りなどから選ぶ構成を採る。同社は使用済みの自社製品を買い取って再販する「2nd Cycle」の枠組みを設けており、修理と再流通を事業に組み込んでいる。
沿革
設立の経緯
Alvar Aaltoは1927年ごろからトゥルクの家具製造業者Huonekalu- ja Rakennustyötehdasの責任者Otto Korhonenと組み、木材の積層と曲げ加工を試みていた。この技術的な蓄積が、1932年のパイミオのサナトリウムのための家具、および1933年のスツール60につながる。1933年にはロンドンで家具の展示が行われ、国外での関心を集めた。
1935年12月、Alvar Aalto、Aino Aalto、Maire Gullichsen、Nils-Gustav Hahlの4人がヘルシンキでArtekを設立した。社名はartとtechnologyを組み合わせた造語で、1920年代のモダニズム運動が掲げた両者の統合という主張を踏まえている。事業の目的は家具の販売にとどまらず、展示会などを通じた近代的な住まい方の普及を含むものとされた。GullichsenとAalto夫妻を引き合わせたのはHahlで、彼が初代の経営責任者を務めている。
販売と展示の両立
設立当初から、Artekは家具の販売と美術の展示を同じ組織で行った。Gullichsenの主導により、PicassoやFernand Léger、Alexander Calderらの展覧会がヘルシンキで開かれ、1936年には最初の店舗が開設されている。1950年にはGullichsenがArtek Galleryを設けた。この構成は、家具販売店と展示施設を兼ねる後年の業態の先例にあたる。
Aaltoの建築の設計と家具の生産は相互に結びついており、Artekの製品はAaltoが手がけた建物の内装に用いられた。同社は現在もAaltoの家具について唯一の許諾を受けた製造者である。
製品群の拡張と資本の移動
20世紀後半以降、ArtekはAalto以外のフィンランドの設計者へ対象を広げた。Ilmari Tapiovaaraの家具の権利を取得したほか、Tapio Wirkkala、Eero Aarnio、Yrjö Kukkapuroの設計を扱う。2013年9月、スイスの家具メーカーVitraがArtekを取得した。買収後もArtekは独立した事業体として運営されている。
デザイナーとの協働
Artekの製品の基盤は、設立者であるAalto夫妻の設計にある。同社はAaltoの家具について唯一の許諾を受けた製造者であり、1930年代の設計を当時と同じ加工方法で生産し続けている。これに加えて、20世紀フィンランドの設計者の家具を権利の取得によって製品群へ組み入れる方法を採ってきた。
現行世代では、Ronan & Erwan Bouroullec、深澤直人、Shigeru Banらとの協働がある。設計と製造の関係は設立当初から変わらず、木材の曲げと積層という自社の加工条件が製品の形を規定する。
Alvar Aaltoの設計思想や経歴について詳しくはAlvar Aaltoプロフィールページをご覧ください。
Aino Aaltoの設計思想や経歴について詳しくはAino Aaltoプロフィールページをご覧ください。
主な製品群
L-legを用いた製品が中心を占める。1933年のスツール60は同じ脚部を反復して構成したもので、積み重ねができる。同じ脚部はテーブル80A、テーブル81、テーブル81B、テーブル90といった卓の一群にも用いられ、天板の形状と寸法を変えることで用途を分ける。子ども用にはチルドレンズチェア N65がある。
積層材と成形合板を用いた製品では、1932年にパイミオのサナトリウムのために作られたパイミオチェアがある。壁面の収納ではシェルフ112(壁付け棚 112)、照明では真鍮のシェードを持つゴールデンベル (A330S)とビーハイブ(A331)を扱う。
Aalto以外の設計では、Ilmari Tapiovaaraのドムスチェア、Enzo Mariのセディア 1(アウトプロゲッタツィオーネ)、Ronan & Erwan Bouroullecによるカーリ コレクションのカーリデスクとカーリ ウォールシェルフがある。布製品ではシエナ・クッションなど、Aino Aaltoらの図案を用いた品目を扱う。
基本情報
| ブランド名 | Artek(アルテック) |
|---|---|
| 設立 | 1935年12月 |
| 設立者 | Alvar Aalto、Aino Aalto、Maire Gullichsen、Nils-Gustav Hahl |
| 本社所在地 | フィンランド・ヘルシンキ |
| 生産拠点 | フィンランド・トゥルク |
| 資本関係 | 2013年よりVitra傘下(独立した事業体として運営) |
| 事業内容 | 家具・照明・付属品の製造および販売 |
| 公式サイト | https://www.artek.fi |
Reference
- Artek - About Artek
- https://www.artek.fi/en/company/about
- Dezeen - Vitra acquires Artek
- https://www.dezeen.com/2013/09/06/vitra-acquires-artek/
- designindex - Artek
- https://www.designindex.org/companies/design/artek.html
- smow Blog - Vitra acquire Artek
- https://www.smow.com/blog/2013/09/vitra-acquire-artek-eames-meets-aalto-again/