このページについて

ベジタルチェアは、ロナン&エルワン・ブルレックが設計しヴィトラが製造した椅子である。枝が分かれるような細いリブを三層に組んで座面のシェルをつくる。屋外で使え、重ねられる。現在は生産を終了しており、入手は中古市場に限られる。

このページでは、中古で選ぶ際の確認箇所、仕様と選べる色、同種の樹脂製の椅子との比較、座り方と設置の条件、手入れ、購入できる場所を扱う。設計の成り立ちについては紹介ページを参照されたい。

正規品の基本情報:仕様・サイズ・素材

ベジタルチェアの構想は2000年代半ばに始まった。着想源は、アメリカの庭師が若木を長年の剪定によって家具のような形状に成長させる20世紀の園芸技術、イギリスの鋳鉄製ガーデンベンチ、アメリカのラスティックスタイルの椅子など、歴史的な庭園と家具の接点にある。ブルレック兄弟が追求した本質的な問いは「成長した椅子にいかに近づけるか」であった。開発プロセスでは手描きのスケッチや手彫りの縮尺模型といった伝統的手法と、バーチャルモデリングソフトウェアやCADによるプロトタイプ製作という最先端技術が融合された。当初円形であった枝の断面をT字型プロファイルに変換するという技術的革新により、構造強度と軽量性、そして樹脂の流動性の最適化が同時に達成された。高温で液状化したプラスチックを高圧で金型に注入し、冷却・固化・取出しまでを2分以内に完了させるインジェクション成形の厳格な制約の中で、植物の成長パターンに基づく有機的デザインを実現させたことは、工業デザインにおける画期的達成である。

正式名称 Vegetal Chair(ベジタルチェア)
素材 ガラス繊維で強化したポリアミド。原料の段階で着色する
製造方法 射出成形
構造 シェルと前脚を一体で成形し、後脚を別部材として組む。リブは三層に配され、断面はT字型をとる
サイズ 幅603mm × 奥行578mm × 高さ813mm
重量 約5.5kg
カラー展開 6色(自然を想起するカラースキーム:ブリック、カクタス、チョコレート他)
スタッキング 可能
屋外使用 可(耐水性、耐候性、UV耐性)
受賞歴 2009年 ICFF賞(国際現代家具見本市)
美術館収蔵 AIC ベジタルチェア(2009年) 収蔵番号 2012.505/クーパー・ヒューイット(2010-41-2)、デンバー美術館(2010.394)にも収蔵がある
生産状況 終了。入手は中古市場に限られる。1/6スケールのミニチュアは現在も販売されている
参考価格帯 生産を終了しているため、メーカーの公表価格はない。中古の相場は状態、色、出品の数によって幅があり、一定していない

枝状リブ構造の技術的革新

ベジタルチェアの座面シェルは、扁平化された枝のような構造が3つのレベルで非対称的に織り成されて形成されている。この非対称的かつ幾何学的な透かし構造は、自然界の植物の成長パターンを忠実に反映しながらも、座面としての機能性と快適性を損なわない。椅子の下部では支持脚から成長するように伸びるリブ構造が座面全体を安定させている。開発過程で当初の非対称試作品は安定性に課題があったため、対称的な形状へと再考され、座る人を均等に支えるために必要な「枝」の本数が精密に計算された。枝の断面を円形からT字型プロファイルに変換したことが構造的強度・軽量性・成形適性の三者を同時に達成する鍵となった。

カラーバリエーションと素材特性

ベジタルチェアは繊維強化ポリアミドの原液着色により製造されるため、塗装による表面コーティングではなく素材そのものに色が浸透している。これにより表面の擦り傷が目立ちにくく、長期使用でも色褪せが緩やかであるという利点がある。カラースキームは「ブリック」「カクタス」「チョコレート」等、自然を想起する名称と色調で構成されており、植物の成長をコンセプトとするデザイン哲学との一貫性が保たれている。ガラス繊維による強化により、繊細な透かし構造でありながら体重を支える十分な強度と剛性が確保されている。

類似商品・競合との比較

樹脂を成形した椅子は、シェルを面で埋めるか、抜きをつくるかで分かれる。抜きの有無は、屋外での水の抜け方と重量に関わる。

比較項目 ベジタルチェア パントンチェア ルイゴースト
シェルの構成 細いリブを組み、あいだに抜きが残る 面で埋める 面で埋める(透明)
水の抜け 抜きから落ちる 座面に溜まる 座面に溜まる
屋外での使用 対応する 型番による 想定されていない
重ねられるか
重量 約5.5kg 製品による 製品による
生産状況 終了 現行 現行

選び分けの目安

屋外に置きっぱなしにする場合
リブのあいだに抜きがあるため、雨は座面に溜まらずに落ちる。面で埋めたシェルでは水が残り、拭き取るか傾けることになる。
新品で購入したい場合
ベジタルチェアは生産を終了している。現行品を求める場合は他の二者が該当する。
座面に物を落としたくない場合
抜きがあるため、小さな物は下へ落ちる。面で埋めたシェルではこれが起きない。

使用感と設置条件

座り方

リブは三層に配され、断面はT字型をとる。平らな板より曲げに強いため、同じ樹脂量でも撓みにくい。座ると全体がわずかにしなり、身体の形に沿う。

リブのあいだには抜きが残る。通気があるいっぽう、薄い衣服ではリブの線が感触として出る。長時間座る場合はクッションを載せることになる。

リブの配置は非対称で、座る向きによって当たり方が変わる。左右が同じ形ではない。

屋外で使う場合

樹脂に紫外線対策が施され、屋外での使用に対応する。抜きから水が落ちるため、雨のあとに座面が濡れたままにならない。

原料の段階で着色しているため、表面が擦れても下地の色が出ない。ただし長年の屋外使用では全体が退色する。

設置に要する寸法

幅603×奥行578×高さ813mm。背もたれが高く、一般的なダイニングチェアより上方に伸びる。テーブルに寄せた際、背もたれが視界を遮ることがある。

重量は約5.5kgと軽い。重ねられるため、使わないときは片付けられる。重ねた際にリブどうしが接するので、砂や埃を拭いてから重ねる。

経年変化とメンテナンス

素材に起きること

ガラス繊維で強化したポリアミドは、樹脂単体より剛性が高い。細いリブで構成できるのはこの強化によるが、繊維を含むぶん割れると断面が毛羽立つ。

紫外線対策が施されているが、効果は永続しない。長年の屋外使用では色が変わる。リブが交差する箇所は応力が集中するため、割れが生じるとしてもこの箇所からになる。

日常の手入れ

ふだん
水洗いできる。抜きがあるため水が抜け、乾きも早い。汚れは薄めた中性洗剤で洗う。
避けるもの
研磨剤、有機溶剤は表面を傷める。高圧の洗浄機は細いリブに負担がかかるため用いない。
重ねる前
砂や埃が付いたまま重ねると、リブどうしが擦れて傷が付く。拭いてから重ねる。

どこで買うか

生産終了について

ヴィトラは現在この製品を扱っていない。同社が販売しているのは1/6スケールのミニチュアである。実物の入手は中古市場に限られる。

相場は状態、色、出品の数によって幅があり、一定していない。複数脚をまとめた出品と1脚単位の出品では条件が異なる。

状態の確認

確認箇所は、リブが交差する箇所の割れとひび、退色の程度(屋外で使われた個体では進んでいる)、シェルと後脚の接合部、脚裏の保護材である。

原料着色のため擦り傷は目立ちにくいが、割れは補修できない。複数脚を揃える場合、生産時期や屋外使用の有無によって色味が異なることがある。

色について

植物を想起させる色名の6色が展開された。原料の段階で着色しているため、色は樹脂そのものの色になる。塗装ではないため、剥がれは生じない。

購入前チェックリスト

  • リブが交差する箇所の割れとひび
  • 退色の程度(屋外で使われた個体では進んでいる)
  • シェルと後脚の接合部
  • 脚裏の保護材の有無
  • 複数脚を揃える場合、個体間の色味の差
  • 設置場所の寸法(幅603×奥行578×高さ813mm。背もたれが高い)
  • 抜きがあるため小さな物が下へ落ちること
  • 長時間座る場合、クッションを併用するか

よくある質問

現在も購入できますか?
ヴィトラは生産を終了しており、同社が販売しているのは1/6スケールのミニチュアです。実物の入手は中古市場に限られます。
中古の相場はどのくらいですか?
生産を終了しているためメーカーの公表価格はありません。相場は状態、色、出品の数によって幅があり、一定していません。複数脚をまとめた出品と1脚単位の出品では条件が異なります。
屋外で使えますか?
使えます。樹脂に紫外線対策が施されています。リブのあいだに抜きがあるため雨は座面に溜まらずに落ち、雨のあとに濡れたままになりません。ただし紫外線対策の効果は永続せず、長年の屋外使用では色が変わります。
座り心地はどうですか?
リブは三層に配され、断面はT字型をとります。平らな板より曲げに強いため、同じ樹脂量でも撓みにくくなっています。座ると全体がわずかにしなり身体の形に沿いますが、リブのあいだに抜きが残るため薄い衣服ではリブの線が感触として出ます。長時間座る場合はクッションを載せることになります。
重ねて収納できますか?
できます。重量は約5.5kgと軽く、使わないときは片付けられます。重ねた際にリブどうしが接するため、砂や埃を拭いてから重ねてください。
中古で確認すべき箇所はどこですか?
リブが交差する箇所の割れとひび、退色の程度、シェルと後脚の接合部、脚裏の保護材です。リブが交差する箇所は応力が集中するため、割れが生じるとしてもこの箇所からになります。原料着色のため擦り傷は目立ちにくいものの、割れは補修できません。
手入れはどうすればよいですか?
水洗いできます。抜きがあるため水が抜け、乾きも早くなります。汚れは薄めた中性洗剤で洗ってください。研磨剤と有機溶剤は表面を傷めます。高圧の洗浄機は細いリブに負担がかかるため使えません。
色は選べますか?
植物を想起させる色名の6色が展開されました。原料の段階で着色しているため色は樹脂そのものの色になり、塗装ではないため剥がれは生じません。中古では複数脚を揃える場合、生産時期や屋外使用の有無によって色味が異なることがあります。