複数の部材を接合するのではなく、ひとつの型で全体を一度に成形する方式。継ぎ目が生じず、荷重が連続した面で受け止められる。
一体成形
一体成形とは、複数の部材を接合して形をつくるのではなく、ひとつの型を用いて全体を一度に成形する方式のこと。椅子では、座面と背もたれ、あるいは脚までを含めた全体が継ぎ目のないひとつの部品となる。
解説
接合部は、構造の上では弱点になりやすい。ねじや接着で結ばれた箇所には応力が集中し、繰り返しの荷重で緩みや剥離が生じる。一体成形ではこの箇所そのものが存在しないため、荷重は連続した面を伝わって分散する。座面と背もたれが一枚の殻としてつながっている椅子が、見た目の薄さに対して丈夫なのはこの理由による。ヴェルナー・パントンのパントンチェアは、座面から背もたれ、床に接する部分までを一度に成形した例で、後脚を持たないカンチレバー構造がこの方式によって成立している。
成形の手段は素材によって異なる。樹脂であれば射出成形や回転成形、木質材料であれば成形合板、金属であればダイカストやプレスが用いられる。いずれも共通するのは、型の形状がそのまま製品の形状になるという点である。したがって、型を起こす費用が初期の負担として大きくのしかかる。少量では引き合わず、同じ形を長く作り続けるほど有利になる構造は、これらの工法に共通する。
逆にいえば、一体成形は特定の素材と結びついた概念ではない。同じ殻の形を、時期ごとに違う素材で成形してきた例もある。求められているのは継ぎ目のない一枚の面であり、それをどの材料でつくるかは工法の選択にすぎない。
設計上の制約もある。型から抜けない形状はつくれないため、アンダーカットのない構成が求められる。肉厚に差があると冷却や硬化の速さが場所によって変わり、収縮の差が窪みや反りとなって現れる。一体成形の椅子の裏面に細いリブが走っているのは、肉厚を増やさずに剛性を確保するための処理である。
使用者にとっての差は、清掃と修理に出る。継ぎ目や隙間が無いため汚れが溜まりにくく、屋外で使う製品では水の侵入経路も減る。一方、一部が破損した場合に、その部分だけを交換することはできない。部材ごとの交換が可能なノックダウンの家具とは、修理の考え方が根本的に異なる。
Reference
- 射出成形とは|CAE解析の基礎知識(旭化成 エンプラ総合情報サイト)
- https://www.asahi-kasei-plastics.com/knowledge-cae/plastics-cae4/
- 合板|木質建材の種類と特徴(日本木材総合情報センター)
- https://www.jawic.or.jp/syurui/03.php
- Eames Shell Chair Family(Herman Miller)
- https://www.hermanmiller.com/products/seating/side-chairs/eames-shell-chairs/