バイオグラフィー
トーマス・ディクソン(トム・ディクソン)は、1959年5月21日、チュニジアのスファックスにて、フランス系ラトビア人の母とイギリス人の父のもとに生まれた。幼少期をチュニジア、モロッコ、エジプト、スエズなど北アフリカで過ごし、1963年、4歳の時に家族とともにイギリスへ移住。ハダースフィールド、後にロンドンで学生時代を送った。
ロンドンのホランド・パーク校に通い、そこで陶芸と美術部門に触れ、素材の変容という概念に魅了される。その後、チェルシー・スクール・オブ・アートに短期間在籍したが中退。デザインへの道を歩む前に、彼が最初に情熱を注いだのは音楽だった。ディスコ・ファンクバンド「ファンカポリタン」のベーシストとして活動し、1981年にはザ・クラッシュの全米ツアーのサポートを務め、BBCの音楽番組「トップ・オブ・ザ・ポップス」にも出演。シンプル・マインズやジギー・マーリーのツアーにも参加し、ロンドンで成功を収めた。
しかし、1983年、度重なるバイクの事故が彼の人生の転機となった。腕の骨折により音楽活動が中断を余儀なくされる中、バイクの修理を通じて溶接技術を独学で習得。この新たに発見した技能に魅了されたディクソンは、「スクラップメタルを何か面白く価値あるものに変える能力は、まるで超能力のようだった」と後に語っている。パンクロックの反体制精神に触発され、試行錯誤による実践的なアプローチで彫刻と家具の制作を開始した。
1980年代中頃、ディクソンは「溶接されたサルベージ家具」の作家として注目を集め始める。1987年、フライパン、鍋、お玉などの調理器具を溶接して作られた「キッチンチェア」や、スクラップメタルから創造される実験的な作品群で「才能ある未訓練のデザイナー」として評価を確立した。同年、自身の制作会社「ディクソンPID」を設立し、後に「スペース」と改名。この工房は、マイケル・ヤング、トーマス・ヘザウィック、マイケル・アナスタシアデスなど若手デザイナーたちの創造的シンクタンクとなった。
1980年代後半、イタリアのデザイン界の重鎮ジュリオ・カッペリーニの目に留まり、協働を開始。1988年に創作した「Sチェア」は、1989年にカッペリーニ社から発表され、瞬く間に象徴的な地位を獲得した。このデザインは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久コレクションに収蔵され、国際的な名声を確立する。1992年には、送電塔を思わせるワイヤーフレーム構造の「パイロンチェア」を発表。
1994年、自身のショップ「スペース」を開設し、革新的なデザインの発信拠点とした。1996年、自社ブランド「ユーロラウンジ」を立ち上げ、ポリエチレン製の多機能オブジェ「ジャック」を発表。「座る、積み重ねる、照らす」という3つの機能を持つこの製品は、1990年代のアイコンとなり、時代を象徴する存在となった。
1998年、家具小売大手ハビタットのデザイン責任者に就任。この任命は物議を醸したが、ディクソンは企業文化出身ではなく、自営業者としてのバックグラウンドを持つ「確立された存在」とは見なされない人物だったからである。しかし彼は、ハビタットブランドの大規模な刷新を主導し、1999年に国際デザイン責任者、2001年にクリエイティブディレクターへと昇進。テレンス・コンランのビジョン——シンプルでモダンなデザインを通じて日常生活を豊かにする——を維持しながら、ブランドを再活性化した。2008年までの10年間、この職に留まった。
2002年、ディクソンは自身の名を冠したブランド「トム・ディクソン」を設立。ロンドンのキングスクロスに拠点を置き、照明、家具、家庭用アクセサリーの分野で独自のデザインを展開し始めた。2004年、スウェーデンの投資会社プロヴェントゥスと協働し、デザインと製品開発のためのホールディングカンパニー「デザイン・リサーチ」を設立。同時期、フィンランドの名門家具メーカー「アルテック」のクリエイティブディレクターに就任し(2004-2009年)、伝統あるブランドに新たな息吹を吹き込んだ。
2007年、建築・インテリアデザインを手がける「デザイン・リサーチ・スタジオ」を設立し、事業範囲を拡大。ジェイミー・オリバーのロンドンレストラン「バルベコア」、ロイヤル・アカデミーのレストラン、イーストロンドンの会員制クラブ「ショアディッチ・ハウス」などの高級レストランやクラブを手掛けた。2014年には、モーガンズ・ホテル・グループのために「シー・コンテナーズ・ハウス」を再設計し、初のホテルプロジェクトを完成させた。
2012年、パリのメゾン・エ・オブジェにて初のアクセサリーコレクションを発表。2017年には「スーパー・テクスチャー」と名付けられた初のテキスタイルコレクションを発表し、クッションのシリーズを展開した。2018年、ブランドの本社を「コール・オフィス」へ移転。キングスクロスのコール・ドロップス・ヤードに位置するこの施設は、オフィス、ショップ、ワークショップ、レストランが一体となった革新的な空間である。
現在、トム・ディクソンブランドは、ロンドン、ニューヨーク、香港、ロサンゼルス、東京にハブを持ち、65カ国以上で600以上の製品を展開する国際的なデザインブランドへと成長した。彼のデザインは、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館、ニューヨーク近代美術館(MoMA)、パリのポンピドゥー・センター、ミラノ・トリエンナーレ、サンフランシスコ近代美術館、香港のM+など、世界中の主要美術館の永久コレクションに収蔵されている。
デザインの思想とアプローチ
トム・ディクソンのデザイン哲学の核心は、素材性への徹底的な探求と、製造プロセスそのものを表現することにある。「私はかつて、親切な友人から『脊椎動物デザイナー』と呼ばれた。つまり、骨格から外側に向かってデザインし、表面には本当に興味がないということだ」と彼自身が語るように、構造と素材の本質が彼の作品の根幹を成している。
彼のデザインアプローチは、パンクロックの反体制精神に深く根ざしている。1970年代後半のロンドンで、パンクムーブメントは若者世代に「正式な教育は必須ではない」というメッセージを解放した。この態度は若きディクソンに強く訴えかけ、彼のデザイン哲学を形成する礎となった。形式的な訓練を受けずとも、急進的で生計を立てられる存在になれるという信念は、彼の全キャリアを通じて貫かれている。
「デザインにルールがあるなら、私はそれを知らない」——この言葉が示すように、ディクソンは常に既成概念への挑戦者であり続けている。彼のアプローチは本能的で、脳内での計算よりも直感を重視する。「物語が好きだが、それらはしばしば事後的な合理化だ。その意味で、私は知的というより本能的だと思う」と彼は説明する。
ディクソンにとって、素材こそがすべての出発点である。「すべては本当に、絶対的なシンプルさにおける素材についてだ。可能であれば、私たちが作るすべては、素材への絶対的な愛によって形作られている。鋳鉄はその重量のため、銅はその温かみのため。一貫して通底するのは素材性だ。これが私たちのレシピだ」。彼の作品は、研磨された金属、吹きガラス、プレス加工されたリブ、真空メタライゼーション加工など、素材の持つ固有の性質と製造プロセスを前面に押し出す。
構造が装飾となる——これもディクソンの重要な信条である。椅子の強度がそのシルエットを定義し、照明の影が空間の一部となる。彼のデザインは、機能と美しさが不可分に融合しており、作られ方そのものが視覚的な魅力となっている。初期のスクラップメタルの溶接作品から、カッペリーニのファットチェアの編み込まれたラタンの座面と背もたれまで、ディクソンの古典的作品はすべて、その製作方法を誇示している。
デザインプロセスにおいて、ディクソンは多産な実践と反復を重視する。「デザインが得意になったのは、単にそれを何度も何度も繰り返したからだ」と彼は信じている。彼の哲学は、完璧な計画よりも、試行錯誤と継続的な実験を尊重する。音楽のキャリアから学んだDIY精神——楽器を手に取り、演奏を学び、自分のサウンドを作り、突然レコード契約を得る——を、デザインの世界に転換した。
商業性とデザインの統合も、彼の独特なアプローチである。「最初から、私は物を作り、物を売っていた。だから商業的側面はデザイン側面から決して分離されていなかった。何かを処分できなければ、それはスタジオに置きっぱなしで、他のものを作ることができず、材料のためのお金もスペースもなかった」。この実用的な姿勢が、彼を単なるデザイナーから、ビジネスと創造性を融合させた実業家へと成長させた。
近年、ディクソンは持続可能性と技術革新にも注力している。ノルウェーのアルミニウム専門企業ハイドロと協働して開発した椅子は、100%リサイクル可能な金属製で、最小限のエネルギーで生産される。その軽量でスタッカブルな形状は、産業プロセスと持続可能性への彼の関心を反映している。
作品の特徴
形態的特徴
ディクソンのデザインは、彫刻的でありながら実用的という二面性を持つ。Sチェアの流麗な曲線、パイロンチェアの送電塔を思わせる幾何学的構造、ウィングバックチェアの抱擁するような大胆なフォルム——これらはすべて、家具でありながら空間における芸術作品としても機能する。
構造の透明性も重要な特徴である。溶接痕、金属の接合部、素材の重なり——製造プロセスの痕跡を隠すことなく、むしろそれらを視覚的要素として前面に押し出す。初期のスクラップメタル家具から、現代の洗練された製品まで、「どのように作られたか」が常に見て取れる。
光と素材の相互作用は、特に照明デザインにおいて顕著である。メルトランプの溶けたガラスのような錯視効果、ミラーボールの完全な球体が空間に溶け込む反射、ビートライトの真鍮表面が反射する黄金の光——これらは光そのものではなく、光と素材の対話を演出している。
素材の革新
ディクソンは未開拓の素材と製造技術のパイオニアである。
- 真空メタライゼーション:サングラスに使用される高度なプロセスを家具デザインに応用。コッパーシェードコレクション(2005)とメルトコレクション(2015)で、ポリカーボネートに金属コーティングを施し、独特の反射効果を実現。
- 手作業の真鍮加工:ビートライトコレクション(2006)では、インドの職人による手作業で真鍮を叩き、成形。各ランプは独自のテクスチャーを持ち、伝統的な水瓶の形状からインスピレーションを得ている。
- プレス成形金属:ボイドランプシリーズでは、金属板をプレス、スピニング、ろう付けして二重壁のシェードを形成。手作業で研磨し、鏡面仕上げを施して高光沢を維持する。
- ポリエチレン成形:ジャックライト(1994)は、工業用交通ポールを再解釈し、回転成形されたポリエチレンで製造。積み重ね可能で、座面にも照明にもなる多機能オブジェクト。
- コルク:2010年代には、温かく自然な質感を持つコルクを用い、塊状のシルエットと組み合わせた家具コレクションを展開。
- リサイクルアルミニウム:持続可能性への取り組みとして、100%リサイクル可能なアルミニウムを使用した軽量家具を開発。
色彩と表面処理
ディクソンの色彩パレットは、素材の本質を活かすアプローチが特徴的である。研磨された銅の温かみのある輝き、黒塗装されたスチールの工業的な力強さ、真鍮の黄金色の優雅さ——色彩は塗装ではなく、素材そのものから生まれる。
一方で、ファットチェアやウィングバックチェアのような布張り家具では、クヴァドラット社の高品質ファブリックを使用し、鮮やかな色彩やテクスチャーのバリエーションを提供している。
主要代表作とそのエピソード
Sチェア(1988-1989)
ディクソンの名声を確立した象徴的傑作。このデザインは、ニワトリの落書きから始まったという。「Sチェアのインスピレーションについてよく尋ねられるが、正直なところ、私が覚えているのは、ニワトリの小さな落書きを描いたことだけだ」とディクソンは語る。
初期のプロトタイプは、リサイクルゴムで編まれ、後にラフィアが使用された。1988年、ロンドンの工房で手作業により、マイルドスチールを優雅なループ状の「S」字形に曲げ、座面には編み込まれた葦や籐を使用した。正式な図面なしに、完全に目測で制作されたこの椅子は、直感的なデザインアプローチの体現だった。
1989年、イタリアのジュリオ・カッペリーニがこのデザインを発見し、工業生産へと導いた。カッペリーニ社による初期モデルは、手編みの沼地の藁や籐を使用し、各座面の製作に6時間以上を要した——大量生産においても職人的タッチを維持した。鮮やかなフェルト張りで発表されたSチェアは、瞬く間に象徴的地位を獲得し、現在もカッペリーニ社によって生産されている。
このデザインは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)、ミラノ・トリエンナーレ、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館の永久コレクションに収蔵されており、「表現を恐れないデザインの決定的な例」として評価されている。
ジャックライト(1994-1996)
1990年代のアイコンとなった多機能オブジェクト。工業用交通ポールという既製品の形状から発想を得たジャックは、回転成形されたポリエチレン製の「座る、積み重ねる、照らす」という3つの機能を持つデザインである。
自社ブランド「ユーロラウンジ」から1996年に発表されたこのデザインは、即座に成功を収めた。1997年、ミレニアム・マーク賞を受賞し、ディクソンを家庭的な名前へと押し上げた。そのシンプルな形状、鮮やかな色彩、多機能性は、1990年代のデザイン美学を完璧に捉えており、若者文化とポップカルチャーの象徴となった。
コッパーシェード(2005)
ディクソンの最も人気のあるデザインの一つ。サングラスに使用される真空メタライゼーションという高度なプロセスに魅了されたディクソンは、2005年にこの技術を照明デザインに応用した。
巨大な球体は、複雑な射出吹き込み技術によってポリカーボネートで形成され、内外両面に反射性の銅色コーティングが施される。その結果、ヘリウム風船のような軽やかさを持ちながら、圧倒的な視覚的存在感を放つ照明が誕生した。反射と透明性の最先端を行くこのデザインは、周囲の環境を映し出しながら、空間に温かみのある輝きをもたらす。
ビートライト(2006)
インドの伝統的な水瓶からインスピレーションを得た照明コレクション。2004年、ディクソンはインドのジャイプールで、急速に消滅しつつある職人とその技術のための代替的可能性を創造するイニシアチブに参加した。
この経験から生まれたビートライトは、真鍮を手作業で叩き、溶接し、成形して黄金の光を反射する彫刻的な照明である。ファット、ストウト、トール、ワイドなど、さまざまな比例とサイズで展開されるこのコレクションは、各ランプが独自のテクスチャーとハンマー痕を持つ。
メルトランプ(2015)
ディクソンの最も象徴的でベストセラーのデザインの一つ。真空メタライゼーションを使用して作られた歪んだ鏡面の球体は、溶けたガラスの錯覚を創り出し、液体のような劇的な反射を空間に投げかける。
このデザインの独特性は、完全に滑らかでもなく、完全に不透明でもないその表面にある。ポリカーボネート製のシェードに、PVD(物理蒸着)表面コーティング技術を用いて金属カバーを施すことで、半透明で歪んだ、まるで溶けているかのような視覚効果を実現した。
ミラーボール(2006年頃)
空間に消えるようにデザインされたが、かえって超可視的なスターとなった照明。完全に球形で、全面が鏡面仕上げのこのデザインは、有名な宇宙飛行士のヘルメットとディスコボールからインスピレーションを得ている。
軽量で耐久性があり、周囲の環境を反射しながら、下方に環境光を投射する。その直径は25cm、40cm、50cmのバリエーションがあり、単独で使用しても、クラスターで吊るしても劇的な効果を発揮する。
ウィングバックチェア(2007年頃)
17世紀英国のウィングバックチェアと18世紀のバルーンバックチェアの古典的原型への現代的オマージュ。ショアディッチ・ハウス会員制クラブのために開発されたこのデザインは、過去への敬意と21世紀の快適さを融合させている。
表現力豊かな曲線は、スチールフレームを内包する硬質ポリウレタンフォームシェルによって形成され、腰部サポートのために人間工学的に考慮されている。翼は、携帯電話使用のための音響保護と、短時間の仮眠のためのヘッドレストを提供する——現代生活の実用的ニーズに応えている。
ファットチェア(2012年頃)
英語の「ラブシート」、フランス語の「コゾーズ(対話する)」からインスピレーションを得た革新的なシーティング。背中合わせに座る形式は、横並びよりも親密な会話を可能にする——この洞察が、ファットチェアのコンセプトの基盤となった。
「伝統的なソファは、壁に押し付けてテレビを見るという旧世界の一部だ。しかし現代生活の現実は、ソファで皆が異なることをしている。一人はiPadで宿題をし、もう一人はモバイルで買い物をし、三人目は映画を見ている。彼らはまだ一緒にいたいが、同じものを見るために一列に座る必要はない」とディクソンは説明する。
功績と業績
主要な賞と栄誉
- 2001年
- OBE(大英帝国勲章オフィサー) - エリザベス2世女王陛下より、英国デザインへの貢献に対して授与
- 2004年
- 名誉博士号 - バーミンガム市立大学
- 2007年
- 名誉博士号 - ロンドン芸術大学
- 2014年
- デザイナー・オブ・ザ・イヤー - メゾン・エ・オブジェ、パリ。この権威ある賞は、ディクソンの国際的な影響力と革新性を認めたもの
- 2019年
- 銀メダル(ベスト・ガーデン部門) - RHSチェルシー・フラワー・ショー
- 2019年
- ロンドン・デザイン・メダル - ブリティッシュ・ランド・セレブレーション・オブ・デザイン・アワード
- 2025年
- CBE(大英帝国勲章コマンダー) - チャールズ3世国王の2025年新年叙勲リストにて授与。これは大英帝国勲章の最高位であり、デザイン界への影響力の集大成を示す
ミュージアムコレクション
ディクソンの作品は、世界の主要美術館の永久コレクションに収蔵されている:
- ヴィクトリア&アルバート博物館(ロンドン、英国)
- ニューヨーク近代美術館(MoMA)(ニューヨーク、米国)
- ポンピドゥー・センター(パリ、フランス)
- ミラノ・トリエンナーレ(ミラノ、イタリア)
- サンフランシスコ近代美術館(サンフランシスコ、米国)
- M+(香港)
- ナショナル・ミュージアムズ・リバプール(リバプール、英国)
- ヴィトラ・デザイン・ミュージアム(ドイツ)
グローバル展開
現在、トム・ディクソンブランドは:
- ロンドン、ニューヨーク、香港、ロサンゼルス、東京にハブを持つ
- 65カ国以上で製品を販売
- 600以上の製品をカタログに保有
- 照明、家具、アクセサリー、テキスタイル、フレグランス(香り)まで幅広く展開
評価と後世への影響
トム・ディクソンは、現代英国デザイン界において最も重要かつ影響力のある人物の一人として広く認識されている。
ディクソンは、デザイン界における「マーベリック(異端児)」「反逆者」「革命児」として一貫して評されている。正式な訓練を受けていない独学のデザイナーでありながら、またはそれゆえに、彼は既成概念に挑戦し、デザインの境界を押し広げ続けてきた。
「才能ある未訓練のデザイナー」という1980年代の評価は、彼のキャリアを通じて肯定的な意味を持ち続けている。学術的な訓練の欠如は弱点ではなく、むしろ自由で実験的なアプローチを可能にする強みとして見なされている。
2014年、メゾン・エ・オブジェでの「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」受賞は、彼の国際的な影響力を決定的に証明した。この栄誉は、ディクソンが単なる英国の国内的存在から、グローバルなデザイン界のリーダーへと昇華したことを示している。
ディクソンの「素材からのデザイン」アプローチは、多くの若手デザイナーに影響を与えている。彼は、素材の固有の性質とその製造プロセスを理解し、それを視覚的言語として表現することの重要性を示した。
構造が装飾となるという彼の哲学は、ミニマリズムとマキシマリズムの間の第三の道を提示している。機能と美しさは対立するものではなく、融合できるという示唆は、現代デザインにおける重要なテーマとなっている。
DIY精神とパンクの反体制精神を高級デザインの世界に持ち込んだことも、重要な貢献である。彼は、正式な教育や確立されたルートを経ることなく、情熱と実践によって成功できることを証明した。これは、新世代のデザイナーに大きな勇気を与えている。
トム・ディクソンブランドの明確な使命の一つは、「英国家具産業の復興」である。2002年のブランド設立以来、彼は一貫してこのビジョンを追求してきた。イタリアやスカンディナビアが支配的だった国際デザイン市場において、ディクソンは英国デザインの独自性——個性的な革新、堅牢な工学、独特の遺産——を前面に押し出し、国際的な認知を獲得した。
ディクソンは、新しい製造技術の探求者として、デザイン界における技術革新を推進してきた。真空メタライゼーション、CNCカッティング、射出成形、3Dプリンティング——彼は常に最新の技術を取り入れ、それをデザインの可能性拡大に活用してきた。
彼の遺産は、「デザインに規則はない」という信念と、「素材への絶対的な愛」という哲学によって定義されるだろう。正式な訓練を受けずとも、情熱と実践と実験によって、デザイン界のトップに到達できること——これが、トム・ディクソンが後世に残す最も重要なメッセージである。
作品一覧
| 年月 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1980年代初期 | 家具 | 溶接サルベージ家具シリーズ | 自作 |
| 1987年 | 椅子 | キッチンチェア | 自作 |
| 1987年 | 椅子 | フィッシュパンチェア | 自作 |
| 1988年 | 照明 | スパイラルライト(金色) | 自作 |
| 1988-1989年 | 椅子 | Sチェア | Cappellini |
| 1992年 | 椅子 | パイロンチェア | Cappellini |
| 1994年 | 照明・家具 | ジャックライト(ジャックランプ) | Eurolounge |
| 1997年 | 照明 | スターランプ(テーブル・フロア・ペンダント) | Eurolounge |
| 1998年 | 照明 | メロンランプ(テーブル・フロア) | Eurolounge |
| 1998年 | 照明 | ブロックフロアランプ | Eurolounge |
| 2000年代初期 | 家具 | フレッシュファット(プラスチック家具シリーズ) | Tom Dixon |
| 2005年 | 照明 | コッパーシェード(ペンダント・フロア) | Tom Dixon |
| 2006年 | 照明 | ビートライト(ファット・ストウト・トール・ワイド) | Tom Dixon |
| 2006年 | 照明 | ミラーボール(25cm・40cm・50cm) | Tom Dixon |
| 2006年頃 | 家具アクセサリー | ビートベッセル(ドロップ・トール・トップ) | Tom Dixon |
| 2007年頃 | 椅子 | ウィングバックチェア | Tom Dixon |
| 2007年頃 | 椅子 | ウィングバックマイクロチェア | Tom Dixon |
| 2007年頃 | ソファ | ウィングバックソファ(2人掛け・3人掛け) | Tom Dixon |
| 2007年頃 | オットマン | ウィングバックオットマン | Tom Dixon |
| 2008年 | 家具 | フレームカット(椅子・テーブル・リクライナー) | Tom Dixon |
| 2010年頃 | 椅子 | ペグチェア | Tom Dixon |
| 2010年頃 | 照明 | ボイドランプ(真鍮・銅・ステンレススチール) | Tom Dixon |
| 2010年代 | 家具 | コルクコレクション | Tom Dixon |
| 2012年頃 | 椅子 | ファットチェア | Cappellini / Tom Dixon |
| 2012年頃 | 椅子 | スラブラウンジチェア | Tom Dixon |
| 2012年頃 | 照明 | ブロウライト | Tom Dixon |
| 2012年頃 | 照明 | ファットスポット | Tom Dixon |
| 2013年 | テキスタイル | アディダス スポーツウェアコレクション | Adidas × Tom Dixon |
| 2015年 | 照明 | メルトペンダント(コッパー・ゴールド・スモーク・クローム) | Tom Dixon |
| 2015年頃 | 照明 | メルトフロアライト | Tom Dixon |
| 2015年頃 | 照明 | メルトサーフェスLED | Tom Dixon |
| 2016年 | 建築 | HOME(プレハブ住宅) | Tom Dixon × Revolution Precrafted |
| 2017年 | テキスタイル | スーパーテクスチャー クッションコレクション | Tom Dixon |
| 2018年頃 | 照明 | スプリングペンダント(ラージ・スモール) | Tom Dixon |
| 2018年頃 | 照明 | エッチウェブ(真鍮・ステンレス) | Tom Dixon |
| 2019年頃 | 照明 | プレスサーフェス ガラスウォールライト | Tom Dixon |
| 2020年頃 | 照明 | パフペンダント(真鍮・シルバー) | Tom Dixon |
| 2020年頃 | 椅子 | ファットオフィスチェア | Tom Dixon × Steelcase |
| 2020年頃 | 椅子 | ジャスティスチェア | Tom Dixon |
| 2021年 | 照明 | ベルポータブルLEDランプ | Tom Dixon |
| 2021年頃 | 照明 | ストーンポータブルライト | Tom Dixon |
| 2021年頃 | 照明 | メルトポータブルライト | Tom Dixon |
| 2022年頃 | 照明 | コーンフロアランプベース | Tom Dixon |
| 2025年 | テーブル | グルーヴアウトドアダイニングテーブル | Tom Dixon |
| 2025年 | スツール | グルーヴアウトドアスツール | Tom Dixon |
| 不明 | アクセサリー | スワールアクセサリーコレクション | Tom Dixon |
| 不明 | フレグランス | フレグランスコレクション(キャンドル・ディフューザー・インセンス) | Tom Dixon |
| 不明 | テーブルウェア | バーウェアコレクション | Tom Dixon |
| 不明 | 照明 | リンクフロアライト | Tom Dixon |
| 不明 | 照明 | フルオロライト | Tom Dixon |
| 不明 | 照明 | クラウンライト | Tom Dixon |
| 不明 | 照明 | スピンライト | Tom Dixon |
| 不明 | 照明 | アングルライト(フロア・テーブル・ウォール) | Tom Dixon |
| 不明 | 照明 | ベースライト(フロア・テーブル・ウォール) | Tom Dixon |
| 不明 | 照明 | コーンライト(ラージ・スモール) | Tom Dixon |
| 不明 | 照明 | フェルトシェードライト | Tom Dixon |
| 不明 | 照明 | クラブライト | Tom Dixon |
| 不明 | テーブル | ブロックコーヒーテーブル | Tom Dixon |
| 不明 | テーブル | ブロックダイニングテーブル | Tom Dixon |
| 不明 | テーブル | リンクテーブル(ラージ・スモール) | Tom Dixon |
| 不明 | 椅子 | ビーンソファ | Tom Dixon |
| 不明 | 椅子 | リンクイージーチェア | Tom Dixon |
| 不明 | 椅子 | バードロッキングシェーズラウンジ | Cappellini |
| 不明 | 椅子 | EPSチェア(限定500個) | Tom Dixon |
| 不明 | アート | ウィッカーラタン モーターサイクル | Habitat × Tom Dixon |
| 不明 | 家具アクセサリー | エナメルベッセル | Tom Dixon |
| 不明 | 家具アクセサリー | オフカット アクセサリー | Tom Dixon |
| 不明 | 椅子 | ファンチェア | Tom Dixon |
| 不明 | テーブル | ファンテーブル | Tom Dixon |
Reference
- Tom Dixon (industrial designer) - Wikipedia
- https://en.wikipedia.org/wiki/Tom_Dixon_(industrial_designer)
- Tom Dixon - designer profile | STYLEPARK
- https://www.stylepark.com/en/designer/tom-dixon
- Tom Dixon - designer (1959) - Designers - designindex
- https://www.designindex.org/designers/design/tom-dixon.html
- Tom Dixon - Designer Biography and Price History on 1stDibs
- https://www.1stdibs.com/creators/tom-dixon/
- Tom Dixon Bio – Vertigo Home
- https://www.vertigohome.us/pages/tom-dixon-bio
- Tom Dixon – Friedman Benda
- https://www.friedmanbenda.com/artists/tom-dixon/
- Tom Dixon | Biography
- https://www.davidvillagelighting.co.uk/designer/Tom-Dixon/85
- Who is Tom Dixon? Everything you need to know about the British industrial designer | Wallpaper*
- https://www.wallpaper.com/design-interiors/how-tom-dixon-turned-punk-ethos-into-a-product-empire
- Tom Dixon on Becoming a designer by accident
- https://www.tomdixon.net/en/story/post/becoming-a-designer-by-accident
- Tom DIXON - Biography | Themes and Variations
- https://www.themesandvariations.com/artists/29-tom-dixon/biography/
- Iconic Design - Tom Dixon
- https://www.redbrickmill.co.uk/editorials/iconic-design-tom-dixon
- Tom Dixon lights & lamps at light11.eu
- https://www.light11.eu/tom-dixon/
- Our Studio | Tom Dixon
- https://www.tomdixon.net/en_us/story/category/our-studio/
- Tom Dixon: Design lamps, furniture and accessories | Archiproducts
- https://www.archiproducts.com/en/tom-dixon
- Official Shop | Tom Dixon
- https://www.tomdixon.net/en_us/shop.html
- Tom Dixon, Peter Clegg and Neville Brody recognised in New Year's Honours | Dezeen
- https://www.dezeen.com/2025/01/02/tom-dixon-peter-clegg-neville-brody-new-years-honours/
- About Tom Dixon | Tom Dixon
- https://www.tomdixon.net/eu/explore/about-us
- Tom Dixon Chairs: Timeless Designs from Kitchen Chair to Y Chair – CharmyDecor
- https://charmydecor.com/blogs/iconic-designers-and-masterworks/tom-dixon-chairs-timeless-designs-from-kitchen-chair-to-y-chair
- Tom Dixon Gets Personal | PORTFOLIO Magazine
- https://www.portfoliomagsg.com/article/tom-dixon-gets-personal.html
- Tom Dixon Studio at 20 - The Edit | Lumens.com
- https://www.lumens.com/the-edit/the-brands/tom-dixon-studio/