概要
Etch Candleholder(エッチ・キャンドルホルダー)は、英国を代表するデザイナー、トム・ディクソンが2010年に発表した、純粋な数学の論理と幾何学的構造から着想を得たキャンドルホルダーです。わずか0.4mmという極薄の金属シートに施されたデジタルエッチングによる繊細なパターンが、キャンドルの炎を通して複雑で美しい影のパターンを生み出します。産業用電子部品の製造技術を応用した革新的な製造プロセスにより、有機的でありながら精密な幾何学模様を実現しています。
特徴・コンセプト
Etch Candleholderの最大の特徴は、測地線構造(geodesic structures)に基づく複雑な幾何学パターンです。このデザインは、純粋数学の論理から導き出された形状であり、不規則な五角形のパターンが精密に計算され、全体として調和のとれた球体の一部を形成しています。
デジタル酸エッチング技術により実現された穿孔パターンは、単なる装飾ではなく、光のフィルターとしての機能を果たします。キャンドルの炎が灯されると、金属面の無数の小さな穴を通して光が漏れ、周囲の壁や天井に万華鏡のような影のパターンを投影します。この効果により、小さなキャンドルホルダーが空間の雰囲気を演出する照明としても機能します。
素材には真鍮、銅、ステンレススチール、ブラックの4種類が用意されており、それぞれが異なる光の反射と影の表情を生み出します。特に真鍮と銅は温かみのある光を、ステンレススチールはクールで現代的な光を演出します。
デザインエピソード
トム・ディクソンは、このEtchコレクションの開発において、ビクトリア朝時代のブリキ玩具の組み立て方法から着想を得ています。薄い金属板をタブで接続して立体を形成する手法は、19世紀の玩具製造技術への敬意を表しながらも、21世紀のデジタル技術と融合させることで、全く新しい表現を生み出しました。
ディクソンは電子部品製造に使用される産業用フォトエッチング技術を、装飾的な照明器具の製造に応用しました。通常は回路基板や精密機器の製造に用いられるこの技術を、詩的で感情的な表現を持つインテリアオブジェクトに転用することで、工業技術と芸術的表現の境界を曖昧にしています。
「数学と幾何学の長年にわたる探求の中での新たな実験」とディクソン自身が語るように、Etchシリーズは彼の継続的な研究の成果であり、純粋な形態の美しさと機能性を追求した結果として生まれました。
評価
Etch Candleholderは、産業用エッチング技術を装飾照明に転用したアプローチで知られています。火を灯していないときは幾何学的なオブジェとして、点灯時には光と影のパターンを投影する照明として、二つの表情を持ちます。
シンプルな幾何学形態が点灯時に複雑な光と影のパターンを生み出す点が、このシリーズの特徴です。また、薄い金属シートをタブで組み立てるフラットパック構造は、輸送効率の高い設計となっています。
モダンな空間では幾何学的な造形が際立ち、落ち着いた空間では東洋的なランタンを思わせる表情を見せるなど、設置する場所によって異なる印象を与えます。
発表・展示
Etchシリーズは2010年、ミラノデザインウィークのSuperstudio Più(スーパースタジオ・ピゥ)で初めて発表されました。その後2012年には、ミラノデザインウィークの企画展「Luminosity」(MOST会場)で、同じくエッチング技術を用いた大型ペンダント照明Etch Webが発表され、シリーズが拡張されています。
基本情報
| デザイナー | トム・ディクソン(Tom Dixon) |
|---|---|
| ブランド | Tom Dixon |
| 発表年 | 2010年 |
| サイズ | 直径12.6cm × 高さ10.2cm |
| 素材 | 真鍮、銅、ステンレススチール、ブラック仕上げ |
| 板厚 | 0.4mm |
| 製造技術 | デジタル酸エッチング加工 |
| カラーバリエーション | ブラス、カッパー、ステンレススチール、ブラック |
| コレクション | Etchコレクション |
| デザイン | イギリス(英国) |