マーク・ニューソン:現代デザインの先駆者
マーク・アンドリュー・ニューソン(Marc Andrew Newson CBE RDI、1963年10月20日生まれ)は、オーストラリア出身の世界的インダストリアルデザイナー、クリエイティブディレクター、アーティストである。家具、プロダクト、輸送機器、ラグジュアリーグッズ、ファッション、ファインアートまで多岐にわたる分野で活躍し、現代デザイン界で最も影響力のあるデザイナーの一人と評価されている。
デザイン評論家アリス・ロースソーンは彼を「世代を代表する最も影響力のあるデザイナーの一人」と評し、親交の深いジョナサン・アイブは「マークは今や比類なき存在」と称賛する。代表作のロックヒード・ラウンジは存命デザイナーの作品として史上最高額の記録を保持しており、2015年のオークションで240万英ポンド(約4.4億円相当)で落札された。
バイオグラフィー
1963年10月20日、シドニーで電気技師の父ポールと19歳の母キャロルの間に生まれる。幼少期に父が家を去り、母方の祖父母とともに育った(母方はギリシャ系)。母が著名な建築事務所ペティット&セヴィットで働いていたため、幼い頃からモダン建築とその巨匠たちの作品に触れる環境にあった。祖父のガレージを工房に自転車やおもちゃを修理し、「二次元ではなく三次元で、形を作るのではなく物を構築したかった」と後に語っている。ケン・アダムのジェームズ・ボンド映画や、キューブリックの『博士の異常な愛情』『2001年宇宙の旅』の未来的なセットにも魅了された。
1984年、シドニー芸術大学でジュエリーデザインと彫刻を学んで卒業。在学中に働いた新聞販売店で『ドムス』などのヨーロッパのデザイン雑誌に触れ、エットーレ・ソットサスやメンフィス・ムーブメントに強い影響を受けて家具デザインに傾倒していく。「家具は身体に非常に近いため、家具をデザインすることはネックレスを作ることと同じくらい有効なジュエリーの形態だ」と考えるようになった。
1986年、23歳でオーストラリア工芸評議会の助成金を得て、シドニーのロズリン・オクシー9ギャラリーで初個展「6人掛けのシーティング」を開催。後に「ロックヒード・ラウンジ」となるLC1の初期バージョンを含むこの展示は、「水銀の大きな滴のような、光り輝く無定形の金属の塊」として大きな反響を呼び、国際的なキャリアの出発点となった。
1987年に東京へ移り、デザイン会社イデー(Idée)と主に仕事をして、シャーロット・チェア(1987)、スーパーグッピーランプ(1987)、エンブリオチェア(1988)、ブラックホールテーブル(1988)を制作した。イデーのオーナー黒崎輝男がフィリップ・スタルクら西洋のデザイナーを代表していた縁で著名なデザイナーと出会い、1991年のミラノ家具見本市での展示を経て国際的なメディアの注目を集めた。
1991年にパリへ移ってスタジオを設立し、フィンランドのイッタラ、イタリアのアレッシ、マジス、フロスといったメーカーのために家庭用品をデザイン。1994年にはスイスの実業家オリバー・アイクと時計ブランド「イケポッド」を創設した(2012年に会社を離れる)。1997年にはロンドンへ移り、ビジネスパートナーのベンジャミン・デ・ハーンとマーク・ニューソン・リミテッドを設立。より大規模な産業プロジェクトに取り組む拠点として、バイオメガの自転車MN01(1999)、フォードの021Cコンセプトカー(1999)、ファルコン900Bプライベートジェットの内装(1999)など輸送機器デザインに着手した。
2002年からはカンタス航空のビジネスクラスシート「スカイベッド」を皮切りに航空業界と長く関わり、2005年から2015年まではカンタス航空のクリエイティブディレクターとして、エアバスA380の機内全体やシドニー・メルボルンの空港ラウンジをデザインした。ニューヨークのレバーハウス・レストラン(2002-2003)も手がけている。2005年には『タイム』誌「世界で最も影響力のある100人」に選出され、2006年に王立産業デザイナー(RDI)、2012年に大英帝国勲章コマンダー(CBE)を受けた。
2014年9月、ジョナサン・アイブに招かれてアップル社にデザイン上級副社長として入社し、主にアップルウォッチのデザインに関わった。2019年6月、アイブとともにアップルを退社してデザインコンサルタント会社「ラブフロム(LoveFrom)」を共同設立し、アップルはその主要クライアントの一つとなっている。2000年以降はギャラリー・クレオに代表され、産業デザイナーとして唯一ラリー・ガゴシアン・ギャラリーにも代表されている。彼の作品は世界40以上の美術館に収蔵され、ニューヨーク近代美術館、ロンドンのデザイン・ミュージアム、ポンピドゥー・センター、ヴィトラ・デザイン・ミュージアムなどで個展が開催されている。
現在はイギリスを拠点とし、2008年にファッションスタイリストのシャーロット・ストックデールと結婚、2人の子をもうけた。コッツウォルズの邸宅を中心に、ロンドン、パリ、ギリシャにも住居を持ち、毎年イタリアのミッレミリアでヴィンテージスポーツカーを走らせている。
デザインの思想とアプローチ
マーク・ニューソンのデザイン哲学は、極限までシンプルにし、流線化し、滑らかにするという一貫した原則に基づいている。その根底には、自然からのインスピレーションと、素材および製造プロセスへの深い理解がある。
自然とバイオモルフィズム:「デザインの観点から自然が完璧であるというのは控えめな表現でしかない」と語るように、ニューソンの作品の多くは自然の形態から着想を得ている。有機的で流動的な形状、透明性・半透明性、鋭いエッジの不在は、20世紀に始まったバイオモルフィズム(生物形態主義)の現代的な解釈として、自然の生命力を捉えようとする試みである。
素材への執着:ジョナサン・アイブは「マークの形態はしばしば模倣されるが、模倣が難しいのは素材とプロセスへの彼の執着だ」と指摘する。ニューソン自身も「革新とはしばしば、素材を使用する新しい方法を考え出すことに過ぎない」と述べ、アルミニウム、ファイバーグラス、カーボンファイバー、カラーラ大理石、クロワゾネエナメル、ポリウレタンフォームなど多様な素材を、その限界まで引き出すことに情熱を注ぐ。
精密性と問題解決:最先端の製造技術を駆使しながらも、ニューソンは手仕事の価値を重んじる。「紙の上に曲線を描けばそれが正しいかすぐにわかるが、コンピュータでは同じことはできない。曲線はフリーハンドで描かれた形態なのだ」と『ドムス』誌で語っている。彼は自らを「明確化し、洗練させ、単純化する者」と位置づけ、「私の職業の核心はトラブルシューティングと問題解決であり、ペンであろうとメガヨットであろうと同じ厳密さを適用する」と、デザインを実用的な課題への解決策として捉えている。
ジャンルを超える汎用性:ニューソンは単一の分野にとどまらず、家具、時計、ジュエリー、輸送機器、レストラン、小売空間、プロダクトと、あらゆる規模とジャンルを横断する。「デザインの世界では、ジェネラリストであることは有益であるだけでなく必要不可欠だ」と語り、異なる分野間でアイデアと技術を相互に応用して革新的な解決策を生み出している。
作品の特徴
マーク・ニューソンの作品は、視覚的に即座に識別できる独特の美学を持つ。
流線型とシームレスな形態:最も顕著な特徴は、滑らかな幾何学的ライン、有機的な形状、鋭いエッジの不在である。彼の家具やプロダクトは、まるで液体が固まったかのように継ぎ目のない外観を持ち、触覚的に心地よく視覚的に未来的で、この特徴はロックヒード・ラウンジからアップルウォッチまで一貫する。多くの作品は継ぎ目や接合部を最小限に抑え、全体が一つの連続した形態として流れるよう設計されている。
素材の革新と透明性:リベット留めアルミニウム、ネオプレンゴム、カーボンファイバー、クロワゾネエナメル、一体成形ガラス、カラーラ大理石など、産業用素材や予期しない素材を探求し、各プロジェクトで可能性を限界まで押し広げる。ガラスやアクリルなど透明・半透明素材の使用は、軽さと洗練の感覚を生み、物体と環境の対話や光と影の相互作用を生み出す。
彫刻性と色彩:多くの作品は実用品でありながら彫刻としての質を持ち、オルゴンチェアやヴォロノイシェルフは空間に置かれるだけで存在感を放つ。ニューソンは「内部の空隙が外部の脚になり、その逆も然り」と語り、内外・ネガティブスペースとポジティブスペースの境界を曖昧にする設計を好む。色彩では、初期に蛍光色のデイグロー・カラーでエンブリオチェアのような作品に活気をもたらし、後期はより洗練されたパレットを用いながら、常に色彩を形態と素材の重要な要素として扱う。
主要代表作品とその特徴
ロックヒード・ラウンジ(1986-1988)
マーク・ニューソンのキャリアを決定づけた象徴的作品。1986年の初個展で発表されたLC1の原型を経て1988年に完成版が生まれ、アメリカの航空機メーカー、ロッキード・マーティンの機体のリベット留めアルミニウムパネルに似ていることから名付けられた。サーフボード用のフォームから彫刻し、ファイバーグラスで型を取った後、手作業でハンマー加工した薄いアルミシートで覆う。各パネルを個別にカット・調整して組み立てるため一作に6ヶ月を要し、それぞれがユニークである。新古典主義、バイオモルフィズム、宇宙開発競争、サーフィン文化など多様な源泉から着想を得たその官能的なフォルムは、1993年にマドンナのミュージックビデオ「Rain」に登場して国際的な名声を得た。
オークションでは、2006年にサザビーズで96万8千ドル、2009年にフィリップス・ド・ピュリーで110万ポンド、2010年に140万ポンド、そして2015年に240万ポンド(約4.4億円)で落札され、4度にわたり存命デザイナーの作品としての記録を更新した。
エンブリオチェア(1988)
ニューソンが「識別可能なスタイルに初めて到達した作品の一つ」と語る重要作。ポリウレタンフォームで成形し、ネオプレン(ウェットスーツ素材)で覆った丸々とした胚のようなフォルムは、オーストラリアのサーフィン文化を反映している。「その後の多くの作品のDNAを築いた」と本人が認めるこの椅子は、1993年にイデーとカッペリーニで商業生産が始まり、現在もカッペリーニが製造している。1999年にはオーストラリアのデザインを祝う記念切手にも採用された。
イケポッド時計コレクション(1994-2012)
1994年にスイスの実業家オリバー・アイクと設立した時計ブランド。ブランド名は「Ike」の姓とニューソンのシグネチャーである「pod(ポッド)」形状の組み合わせである。1995年の「シースラグ」はボウル状のケースに凸面ベゼルを備えたダイバーズウォッチの革新的解釈で、1997年の「ヘミポッド」は47mmの楕円形モノコックケースとラグのない統合ラバーブレスレットを特徴とし、当時の業界標準(38mm以下)を大きく上回るサイズで最も有名なモデルとなった。1999年の「メガポッド」はパイロット指向の47mmモデル。香り付きラバーストラップや大型ケースなど前衛的なデザインでカルト的支持を得たが、ブランドは2003年と2012年に二度倒産した。統合ラバーストラップのデザインは、後のアップルウォッチの「スポーツバンド」に直接受け継がれている。
フォード021Cコンセプトカー(1999)
1999年の東京モーターショーで発表された、フォードのデザイン責任者J・メイズが業界外のデザイナーに委託した実験的プロジェクト。車の設計経験がなかったニューソンは「自動車デザイナーではないので典型的な自動車のゲームはしない」と全く新しいアプローチを取った。カーボンファイバー製で、後部ヒンジ式リアドア、回転式シート、スライドアウトトランク、プッシュボタン式4速ATなどを備える。車名はお気に入りのパントーンのオレンジ色に由来する。発表当初は「箱型」「アンチデザイン」と批判されたが、若いドライバー向けのシンプルで手頃な都市型車両という意図は先見的と再評価され、コンセプトカーデザイン賞を受賞した。
カンタス航空プロジェクト(2002-2015)
2002年のビジネスクラスシート「スカイベッド」のデザイン依頼が、ニューソンと航空業界の長期的な関係の始まりとなった。2006年にカンタス航空のクリエイティブディレクターに就任し、エアバスA380の機内全体、シドニーとメルボルンの国際空港ファーストクラスラウンジ、機内食器、照明、シートなど包括的なデザインを担当。長距離フライトで完全にフラットになる「スカイベッド」は技術的課題の解決策として高く評価され、A380のエコノミークラスシートは2009年のオーストラリア国際デザイン賞でベスト賞を受賞した。
オルゴンチェア(1989-1993)
ロックヒード・ラウンジの進化形として、製造プロセスとアルミニウムの流動性への探求を表す作品。中空の外観が特徴で、ニューソンは「穴や空間を残すことで内部と外部が融合し、外部の表面を内側に引き込み、その逆も然りとする境界空間が生まれる」と説明する。アルミニウム製・オートモーティブラッカー仕上げの限定エディション(6点+アーティストプルーフ2点+プロトタイプ1点)として、ギャラリー・クレオで発表された。
大理石家具シリーズ(2007)
2007年にガゴシアン・ギャラリーで発表された、ニューソンの芸術的野心を示す転換点。白いカラーラ大理石から彫り出されたヴォロノイシェルフ(限定8点)や、単一の大理石ブロックから彫刻された押し出しテーブル・椅子は、サザビーズから「現代家具の傑作」と評された。「ヴォロノイ」の名は、平面を均等な領域に分割する数学的なヴォロノイ分割に由来し、このパターンは植物の葉からキリンの毛皮まで自然界に広く見られる。
クロワゾネ家具(2015-2017)
通常は小さな箱や花瓶に限られる古代のクロワゾネエナメル技法を、デスクやラウンジチェアのサイズに拡大した革新的プロジェクト。ニューソンは中国で特注の窯を製作できる工房を見つけ、ワイヤーで囲んだ色付きガラスペーストを複数回焼成して、硬く光沢のある虹色のエナメル仕上げを実現した。自由形式の彫刻的な形状と古代技法の組み合わせは、伝統と革新の融合を象徴し、ガゴシアン・ギャラリーで発表された。
アップルウォッチ(2014-2015)
2014年にアップル社へ入社したニューソンは、親友のジョナサン・アイブと協力してアップルウォッチのデザインに貢献した。特に統合ラバーストラップ(スポーツバンド)には、イケポッドでの経験が直接反映されている。アップルは具体的な貢献を公表していないが、彼の時計デザインの経験がアップルウォッチの美学と機能性に重要な影響を与えたことはデザイン界で広く認識されている。アップルウォッチは現在、ロレックスを凌ぐ世界で最も売れている時計となっている。
功績と業績
マーク・ニューソンは40年以上のキャリアで、デザイン界の数々の栄誉を獲得している。
主要な賞と栄誉
- 1984年
- オーストラリア工芸評議会賞受賞
- 1993年
- パリ・サロン・デュ・ムーブル デザイナー・オブ・ザ・イヤー
- 1998年
- I.D.マガジン(イギリス)トップ50デザイナー賞
- 1999年
- 東京モーターショー コンセプトカーデザイン賞(フォード021C)
- レッドドット・デザイン賞(ドイツ)プロダクトデザイン部門(エンブリオチェア)
- ジョージ・ネルソン・デザイン賞(アメリカ)
- オーストラリアデザイン記念切手に作品が採用
- 2005年
- 『タイム』誌「世界で最も影響力のある100人」に選出
- 2006年
- 王立産業デザイナー(Royal Designer for Industry)任命(イギリス)
- デザイン/マイアミ デザイナー・オブ・ザ・イヤー
- シカゴ・アテネウム グッドデザイン賞(サムソナイト スコープ・ラゲージ)
- 2007年
- リーフ賞(イギリス)国際インテリアデザイン部門(カンタス・ファーストクラスラウンジ)
- 2008年
- ロンドン・デザイン・フェスティバル デザイナー・オブ・ザ・イヤー
- ロンドン・デザイン・フェスティバル ロンドン・デザイン・メダル
- GQマン・オブ・ザ・イヤー(ドイツ)デザイン部門
- 2009年
- オーストラリア国際デザイン賞 総合優勝(カンタス A380)
- オーストラリア国際デザイン賞(カンタス A380 ファーストクラススイート)
- オーストラリア国際デザイン賞(カンタス A380 エコノミーシート)
- コンデナスト・トラベラー イノベーション&デザイン賞 航空部門(カンタス A380)
- ウォールペーパー・デザイン賞(イギリス)(スメッグ キッチン家電)
- シカゴ・アテネウム グッドデザイン賞(カンタス A380 ファーストクラススイート)
- 2011年
- ラッキーストライク・デザイナー賞(レイモンド・ローウィ財団)生涯功労賞
- 2012年
- 大英帝国勲章コマンダー(CBE)受勲
- 2013年
- フィラデルフィア美術館 コラボ・デザイン・エクセレンス賞
- 2022年
- ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 名誉博士号授与
- 2023年
- オーストラリアン・グッドデザイン賞 オーストラリアン・デザイン・プライズ受賞
名誉職と教育
- シドニー芸術大学 客員デザイン教授
- 香港理工大学 客員デザイン教授
- シドニー大学 名誉博士号
- ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(ロンドン)名誉博士号(2022年)
主要な展覧会
- 1986年:「6人掛けのシーティング」ロズリン・オクシー9ギャラリー、シドニー(初個展)
- 1995年:「バッキー」インスタレーション、カルティエ現代美術財団、パリ
- 2001-2002年:大規模回顧展、パワーハウス・ミュージアム、シドニー
- 2004年:「ケルヴィン40」フォンダシオン・カルティエ、パリ
- 2007年以降:複数回の個展、ガゴシアン・ギャラリー、ニューヨーク、ロンドン、パリ
- 2013年:「マーク・ニューソン:アット・ホーム」フィラデルフィア美術館、アメリカ
美術館コレクション収蔵
- ニューヨーク近代美術館(MoMA)
- クーパー・ヒューイット・スミソニアン・デザイン・ミュージアム、ニューヨーク
- サンフランシスコ近代美術館
- デザイン・ミュージアム、ロンドン
- ヴィクトリア&アルバート博物館、ロンドン
- ポンピドゥー・センター国立近代美術館、パリ
- 装飾美術館、パリ
- ヴィトラ・デザイン・ミュージアム、ヴァイル・アム・ライン
- 応用美術館、フランクフルト
- 工芸美術館、ハンブルク
- デザイン&ファッション博物館、リスボン
- イスラエル博物館、エルサレム
- パワーハウス・ミュージアム、シドニー
- ビクトリア国立美術館、メルボルン
評価と後世への影響
マーク・ニューソンは現代デザイン界で最も影響力のある人物の一人とされ、その影響は美学的な模倣を超えて、デザインプロセス、素材の使用、分野横断的なアプローチにまで及んでいる。
業界からの評価
アリス・ロースソーンは彼を「世代を代表する最も影響力のあるデザイナーの一人」と評し、ジョナサン・アイブは2012年の『ニューヨーク・タイムズ』で「マークは今や比類なき存在」「素材の理解から始めなければならない。革新とはしばしば素材を使う新しい方法を考え出すことに過ぎない」と語っている。コーチのクリエイティブディレクター、リード・クラコフは「私にとってマークはデザインのピカソのようなものだ。彼は我々の時代における偉大なデザインの頭脳の一人である」と評価している。
デザイン手法と市場への影響
ニューソンの重要な貢献の一つは、デザイナーがジャンルや規模の境界を超えて働く可能性を示したことである。家具から時計、自動車、航空機、スマートウォッチまで、一貫した美学的ビジョンが異なる文脈でどう適用されるかを示し、現代のデザイナーが単一の専門分野に縛られず広い視野で問題解決に取り組むことを促した。手打ちアルミニウムからクロワゾネ技法の現代的適用まで、素材と製造プロセスを深く探求する姿勢も多くのデザイナーに影響を与えている。市場面でも、ロックヒード・ラウンジが存命デザイナー作品の史上最高額で落札されたことは、産業デザインがファインアートと同等の文化的・経済的価値を持ち得ることを証明した。ガゴシアン・ギャラリーに代表される唯一の産業デザイナーとして、彼はデザインとファインアートの境界を曖昧にし、デザイナーがアートギャラリーの文脈で作品を発表する正当性を確立した。
テクノロジー企業との協働と持続的影響
アップル社での仕事は、世界最大のテクノロジー企業がトップインダストリアルデザイナーの専門知識を求めることの重要性を示した。アップルウォッチの成功はウェアラブルテクノロジーにおけるデザインの役割を証明し、ジョナサン・アイブと共同設立したラブフロム(LoveFrom)は、独立したクリエイティブコレクティブとして複数のクライアントに戦略的デザインを提供する新しいモデルを提示している。彼の国際的成功はオーストラリアのデザイナーが世界で活躍できることを示し、母校シドニー芸術大学の客員教授として後進の指導にも関わってきた。1980年代後半のロックヒード・ラウンジやエンブリオチェアが40年近く経っても現代的に見えることは、彼のデザインが表面的なスタイルではなく形態・機能・素材の根本原則に基づくことを物語る。2024年にタッシェン社から出版された包括的なモノグラフ『Marc Newson: Works 84–24』は、40年にわたるキャリアの全貌を記録し、デザイン史における位置づけを確かなものとしている。
作品一覧
| 年月 | 区分 | 作品名 | ブランド / クライアント |
|---|---|---|---|
| 1985-1986 | 椅子 | LC1 Chaise Lounge | Basecraft |
| 1986 | 時計 | Large POD Watch | 自主制作 |
| 1987 | 時計 | Small POD Watch | 自主制作 |
| 1987 | 椅子 | Charlotte Chair | Idée |
| 1987 | 照明 | Super Guppy Lamp | Idée |
| 1988 | 椅子 | Peanut Chair | 自主制作 |
| 1988 | 椅子 | Embryo Chair | Idée / Cappellini |
| 1988 | テーブル | Black Hole Table | Idée |
| 1988-1990 | 椅子 | Lockheed Lounge (LC2) | Pod / Basecraft |
| 1988 | 椅子 | Wood Chair | Cappellini |
| 1989 | 椅子 | Felt Chair | Cappellini |
| 1989 | 椅子 | Orgone Lounge | Cappellini / Idée |
| 1989-1993 | 椅子 | Orgone Chair | Pod / Marc Newson |
| 1990 | 椅子 | Wicker Chair | Idée |
| 1990 | 家具 | Pod of Drawers | 自主制作 |
| 1993 | 照明 | Helice Lamp | Flos |
| 1993 | 椅子 | Chair for Moroso | Moroso |
| 1993 | テーブル | Orgone Table | Cappellini |
| 1994 | テーブル | Event Horizon Table | Galerie kreo |
| 1994-2012 | 時計 | Ikepod Watch Collection (Seaslug, Hemipode, Megapode, Horizon, Isopode, Solaris等) | Ikepod |
| 1995 | インテリア | Coast Restaurant | ロンドン |
| 1995 | インスタレーション | Bucky | Fondation Cartier pour l'art contemporain, Paris |
| 1997 | プロダクト | Dish Doctor Dish Rack | Magis |
| 1997 | 家具 | Riga Desk | Cappellini |
| 1997 | プロダクト | Hangman Coat Rack | Cappellini |
| 1997 | プロダクト | Newson Vase | Cappellini |
| 1998 | 家具 | Gluon Chair | Moroso |
| 1999 | 自転車 | MN01 Bicycle | Biomega |
| 1999 | 自動車 | Ford 021C Concept Car | Ford Motor Company |
| 1999 | 航空機 | Falcon 900B Private Jet Interior | クライアント個人 |
| 2000年代初頭 | プロダクト | Strelka Cutlery | Alessi |
| 2002-2003 | インテリア | Lever House Restaurant | ニューヨーク、マンハッタン |
| 2002 | 航空機内装 | Qantas Skybed I (Business Class Seat) | Qantas Airways |
| 2002-2003 | プロダクト | Cookware Range | Tefal |
| 2002-2003 | バスルーム | The Newson Suite | Ideal Standard |
| 2003 | 携帯電話 | Talby Mobile Phone | KDDI (日本) |
| 2004 | シューズ | Zvezdochka Sneaker | Nike |
| 2004 | ファッション | Australian Olympic Team Uniforms | アテネオリンピック / Richard Allan協力 |
| 2004 | ラゲージ | Scope Luggage | Samsonite |
| 2004-2005 | ファッション | Clothing Collection | G-Star |
| 2005 | インテリア | Hotel Puerta America Bar and 6th Floor | マドリード |
| 2005-2015 | 航空機内装 | Qantas A380 Interior (First, Business, Economy Class) | Qantas Airways (Creative Director) |
| 2006 | インテリア | Marie-Hélène de Taillac (MHT) Jewellery Store | 東京 |
| 2006 | インテリア | Azzedine Alaïa Shoe Boutique | パリ |
| 2006 | プロダクト | Dom Pérignon Limited Edition Magnum Container | Dom Pérignon |
| 2006 | 家具 | Chop Top Tables | 限定12点 (Design Miami) |
| 2007 | インテリア | Qantas First Class Lounges | シドニー・メルボルン国際空港 |
| 2007 | 家具 | Extruded Tables and Chairs (Marble) | Gagosian Gallery |
| 2007 | 家具 | Voronoi Shelf (Carrara Marble) | Gagosian Gallery |
| 2007 | 家具 | Micarta Tables and Chairs | Gagosian Gallery |
| 2007 | 航空機 | Sky Jet Cabin Design | EADS Astrium |
| 2008 | プロダクト | Ovens and Hobs | Smeg |
| 2008 | 時計 | Atmos Clock (561) | Jaeger-LeCoultre |
| 2008 | 光学機器 | Binoculars Concept | Swarovski Optik |
| 2008 | 自転車 | Additional MN Bicycle Designs | Biomega |
| 2009 | ジュエリー | Julia Necklace | Boucheron |
| 2009 | 自転車 | Trek Art Bike for Lance Armstrong LiveStrong | Trek |
| 2010 | ボート | Riva Aquariva Speedboat | Riva (限定22艇) |
| 2010年代 | 照明 | Diode Floor Lamp | Flos |
| 2010年代 | 家具 | Bumper Bed | Domeau & Pérès |
| 2010年代 | プロダクト | Hercules Coat Hangers | G-Star |
| 2010年代 | ラゲージ | Horizon Luggage | Louis Vuitton |
| 2013 | 航空機内装 | Qantas A330 Business Class Suite | Qantas Airways |
| 2013 | 航空機内装 | Qantas Premium Economy Seat | Qantas Airways |
| 2013 | チャリティー | (RED) Auction Curation (Jony Ive協力) | Sotheby's for (RED) |
| 2014 | 銃器 | 486 Shotgun | Beretta |
| 2014-2015 | ウェアラブル | Apple Watch | Apple Inc. |
| 2015-2017 | 家具 | Cloisonné Furniture (Desk, Lounge, Chair) | Gagosian Gallery |
| 2017 | プロダクト | Hennessy X.O Cognac Bottle | Hennessy |
| 2019 | 刀剣 | "Aikuchi" Samurai Sword | 日本の9代目刀工マスターと協力 |
| 2020 | 建築 | Public Toilet Design | The Tokyo Toilet Project |
| 2021 | ヨット | M/Y Solaris Superyacht | 個人クライアント (11,250 GT) |
| 2022 | 椅子 | Newson Task Chair | Knoll |
| 2023年進行中 | ヨット | Nausica Superyacht | 個人クライアント (6,500 GT) |
| 2024 | 光学機器 | Swarovski Optik AX Visio 10x32 Binoculars (AI搭載鳥類認識) | Swarovski Optik |
| 2024 | プロダクト | Sukeban Wrestling Championship Belt | Sukeban |
| 2024 | ラゲージ | Horizon Luggage (Spring 2025 Collection) | Louis Vuitton / Pharrell Williams |
Reference
- Marc Newson - Wikipedia
- https://en.wikipedia.org/wiki/Marc_Newson
- Marc Newson | Biography, Designs, & Facts | Britannica
- https://www.britannica.com/biography/Marc-Newson
- Marc Newson Ltd - Official Website
- https://marc-newson.com/
- Marc Newson | Gagosian
- https://gagosian.com/artists/marc-newson/
- Marc Newson | Knoll
- https://www.knoll.com/designer/Marc-Newson
- Marc Newson, Cappellini interior designer
- https://www.cappellini.com/ww/en/designers/marc-newson.html
- In-Depth: Marc Newson Opens Up About Ikepod | Hodinkee
- https://www.hodinkee.com/articles/marc-newson-opens-up-about-ikepod
- Marc Newson's Lockheed Lounge sets new record at auction | Dezeen
- https://www.dezeen.com/2015/04/29/marc-newson-lockheed-lounge-new-auction-record-design-object-phillips/
- 6 iconic modern designs by Marc Newson | Cultural Union
- https://culturalunion.com/6-iconic-modern-and-contemporary-designs-by-marc-newson/
- Marc Newson: At Home | Philadelphia Museum of Art
- https://philamuseum.org/calendar/exhibition/marc-newson-at-home
- Marc Newson wins Lucky Strike Designer Award 2011 | Dezeen
- https://www.dezeen.com/2011/10/27/marc-newson-wins-lucky-strike-designer-award-2011/