部品の状態で輸送し、届いた先で組み立てる方式。輸送の容積を抑えられる代わりに、接合部の設計が製品の性格を決める。
ノックダウン
ノックダウンとは、製品を完成させずに部品の状態で輸送し、届いた先で組み立てる方式のこと。KDと略される。家具では、購入者自身が組み立てる製品を指してノックダウン家具、組立家具と呼ぶ。
解説
組み立て済みの椅子やテーブルは、体積の大半が空気である。脚と天板を分けて平らに積めば、同じ容積で運べる数が何倍にもなる。輸送費が容積で決まる以上、この差はそのまま価格に跳ね返る。倉庫の保管効率、階段や玄関を通せるかどうかにも同じことが当てはまる。
この考え方は近年のものではない。19世紀のトーネットは、曲木の椅子を数点の部材まで絞り込み、分解した状態で船に積んで世界各地へ送っていた。ヨーロッパの工場から南米やアジアまで椅子を届けられたのは、この輸送方式によるところが大きい。20世紀にこの方式を小売の前提にまで押し広げたのはイケアである。1956年、カタログ撮影のためにテーブルを運ぼうとした担当者が、車に積めず脚を外したことがきっかけだったと伝えられている。運搬の都合から始まった処置が、設計の段階から分解を織り込む発想へ変わり、家具を購入者が持ち帰って組み立てるという流通の形をつくった。
設計の焦点は接合部に移る。工場で接着や溶接ができない以上、締結はねじ、ボルト、ダボ、金具に頼ることになる。木材のように繊維に沿って割れやすい材料では、ねじを直接ねじ込むと締結力が経年で落ちるため、鬼目ナットや金属のインサートを埋め込む方法が取られる。座面のように荷重が繰り返しかかる部位では、緩みを前提に締め直せる構造にしておく必要もある。
ノックダウンであることは、必ずしも簡易さを意味しない。分解と再組立を前提にすることで、引っ越しの際に運びやすく、部材が傷んだときには一部だけを交換できる。長く使う設計と噛み合う方式でもある。この点は、破損した部分だけを取り替えられない一体成形の製品とは対照的である。一方で、組立の精度が使用者に委ねられるため、締め付けの順序や下地の指定を守らないとがたつきが残る。取扱説明書の手順に意味があるのはこのためである。
Reference
- 225 years of Michael Thonet(Thonet GmbH)
- https://www.thonet.de/en/magazine/history-brand/detail/225-years-of-michael-thonet
- IKEA relaunches first flat-pack table(Dezeen)
- https://www.dezeen.com/2013/07/22/ikea-revives-three-legged-diy-side-table/