蒸気などで加熱して可塑性を高めた無垢材を、型に沿って曲げたまま乾燥・固定する木材加工技法。19世紀のトーネットが家具の量産へ結びつけた。

曲木

曲木とは、蒸気などで加熱して可塑性を高めた無垢材を、型や治具に沿って曲げ、その状態で乾燥させて形状を固定する木材加工技法のこと。英語では bentwood と呼ぶ。

解説

木材を高温の水蒸気で数時間蒸すと、繊維同士を結びつけている成分が軟化し、折れずに曲がるようになる。この状態のまま鉄製の型に沿わせ、引き伸ばされる外側に帯金を当てて破断を抑えながら曲げ、そのまま乾燥させると、繊維が切断されないまま曲線が保たれる。切削で曲線をつくる場合は繊維が途中で断たれ、曲がりの外側が弱点になりやすい。曲木の椅子が見た目に対して丈夫なのは、繊維が形状に沿って連続しているためである。

適した樹種は限られる。日本や欧州で主に用いられるブナは、繊維が素直で靭性が高く、蒸したときの追従性がよい。反面、乾燥後の寸法変化が大きく、曲げた直後に固定を解くと戻ろうとするため、型に入れたまま十分に乾燥させる工程が欠かせない。

この技法を家具の量産に結びつけたのは、ミヒャエル・トーネット(1796-1871)である。1819年にボッパルトで工房を継いだトーネットは、膠で煮た薄板を曲げた型に貼り合わせる方法から出発したが、この技術の特許出願は認められなかった。1841年のコブレンツでの展示をきっかけにウィーンへ招かれ、1842年に「あらゆる木材を化学的・機械的手段で任意の形状と曲線に曲げる」特許を得る。しかし膠で貼り合わせた家具は高温多湿の輸出先で剥がれた。改良を重ねた末、1856年に接着剤を使わずブナの無垢材を蒸気で曲げる方法へ到達し、あらためて特許を取得している。最初の工場は、ブナ林の広がるモラヴィアのコリチャニに置かれた。

1859年のNo.14チェア(ウィーンチェア)は部品が六点しかなく、一立方メートルの木箱に三十六脚分を収めて出荷し、届いた先でねじ留めして組み立てられた。曲木が、輸送と組立の条件まで含めて設計できる技法であることを示した例である。1856年の特許は競合他社の異議申立てを受けて1869年末に手放され、以後、曲木家具を手がける工場が各地に増えていった。

成形合板との違い

成形合板は、薄くスライスした単板を重ねて接着し、曲面をもつ型で圧締して固める技術である。曲木が無垢材をそのまま曲げるのに対し、成形合板は複数の薄板を貼り合わせた積層体をつくる。曲木は棒材の一方向の湾曲に向き、成形合板は面の三次元曲面に向くという使い分けになる。

Reference

225 years of Michael Thonet(Thonet GmbH)
https://www.thonet.de/en/magazine/history-brand/detail/225-years-of-michael-thonet
Bentwood cradle(Powerhouse Collection)
https://collection.powerhouse.com.au/object/172983
曲木|技術へのこだわり(浜本工芸)
https://www.hamamotokougei.co.jp/concept/technique/mageru/

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