Thonet(トーネット)

Thonetは、ドイツ・ヘッセン州フランケンベルクに拠点を置く家具メーカーである。1819年にMichael Thonetがボッパルトで工房を開いたことに始まり、蒸気で加熱したブナ材を型で曲げる曲木の技術を確立した。部材を少数に絞り、分解した状態で輸送して現地で組み立てる方式を採ったことで、家具の量産と国際的な流通を成立させた。1920年代以降はスチールパイプを用いた家具も手がけ、現在は創業家の子孫が経営に関わる。

事業と製造の実体

Thonetの製造の中核にあるのは、無垢のブナ材の曲げ加工である。木材を蒸気で加熱して軟化させ、金属の帯を添えて型に沿わせ、乾燥させて形を固定する。外側の繊維が伸びて破断するのを防ぐために帯を用いる点が、この方法の要点にあたる。装飾を彫り出す従来の家具製造と異なり、部材そのものの形状で構造を成立させるため、必要な部材の数が少なくてすむ。

この加工は生産の組み立て方とも結びついている。同社は工程を標準化して分業を導入し、部材を規格化した。No.14チェア(ウィーンチェア)は6つの曲木部材とねじで構成され、分解した状態で梱包して輸送し、現地で組み立てられる。このノックダウン方式は輸送の容積を大きく減らし、国外への出荷を可能にした。

1920年代以降は、鋼管の曲げ加工が加わった。溶接を用いず一本の管を連続して曲げる構成は、曲木で培った型と治具の考え方を金属に移したものにあたる。チェスカ・チェア(B32)S 33 チェアのような後脚を持たないカンチレバー構造の椅子は、鋼管の弾性を前提として成立している。

現在もフランケンベルクの工場で曲木と鋼管の双方の製造が行われている。

沿革

曲木技術の確立

1796年にライン川沿いのボッパルトで生まれたMichael Thonetは、家具職人としての修業を経て1819年に同地で工房を開いた。1830年ごろから、薄板を膠で貼り合わせて蒸気で曲げる方法の実験を重ねている。

1841年、コブレンツの展示に出品した曲木家具がオーストリアの宰相メッテルニヒの目に留まり、ウィーンへの移住を勧められた。同じころフランス、イギリス、ベルギーで曲木の技術について特許を出願している。1842年にウィーンへ移り、宮殿の内装などを手がけた。

1849年にウィーンで自身の工房を設立し、無垢のブナ材を曲げる技術を完成させる。同年にカフェ・ダウムのために作った椅子No.4は、1851年のロンドン万国博覧会に出品された。1853年には5人の息子に事業を譲り、社名をGebrüder Thonetに改めている。

量産と国際的な展開

1856年、豊富なブナ材と労働力を求めて、モラヴィア地方のコリチャニ(現チェコ)に大規模な工場を設けた。1859年にはNo.14チェア(ウィーンチェア)の量産が始まる。1867年のパリ万国博覧会で金メダルを受け、以後この椅子はヨーロッパの喫茶店で広く用いられた。

1871年にMichael Thonetが死去した後も、息子たちがオーストリア=ハンガリー帝国各地やドイツ、ロシアへ工場を広げ、ロンドン、パリ、ニューヨークなどに販売網を設けた。20世紀初頭には取り扱う製品が1,000点近くに達している。

鋼管家具と近代デザイン

第一次世界大戦後の1922年、ThonetはKohn-Mundusと合併しThonet-Mundusとなった。この時期から、1919年に創設された造形学校バウハウスに関わる設計者との協働が始まる。

1920年代後半には、後脚を持たない鋼管の椅子が相次いで作られた。Mart StamによるS 33 チェア(1926年)、Ludwig Mies van der RoheのMRチェア(1927年)、Marcel Breuerによるチェスカ・チェア(B32)(1928年)がこれにあたる。Breuerの設計では、入れ子の卓B 9 ネストテーブルや机S 285 デスクも同社が製造した。

戦後の分割と現在

第二次世界大戦により各国の拠点は分断された。戦後はドイツのフランケンベルクとウィーンでそれぞれ別の会社として再建され、Thonetの商標の国際的な権利はドイツのThonet GmbHが保有している。

ドイツのThonetはNo.14をNo.214として生産を続け、曲木と鋼管の双方の製品を扱う。2006年には社名をGebrüder Thonet GmbHからThonet GmbHへ改めた。現在も創業家の子孫が経営に関わっている。

デザイナーとの協働

Thonetは、創業から19世紀を通じて社内で設計と製造の双方を担った。Michael Thonet自身が加工技術の開発者であり、部材の形状と生産方式を一体で組み立てている。外部の設計者との協働が事業の中心になるのは1920年代以降で、鋼管という新しい素材に対して、当時の造形学校に関わる設計者を起用する形が採られた。

この時期の協働相手にはMarcel Breuer、Mart Stam、Ludwig Mies van der Roheが挙げられる。戦後も外部の設計者との協働が続いている。

主な製品群

曲木の製品ではNo.14チェア(ウィーンチェア)が中核にある。後脚と背もたれの支柱を一本の材で兼ね、曲木の輪と座、補強の輪を組み合わせる構成で、現在はNo.214として生産される。

鋼管の製品では、Mart StamのS 33 チェア、Marcel Breuerのチェスカ・チェア(B32)がある。いずれも後脚を持たず、鋼管の弾性によって座り心地を得る構成を採る。Breuerの設計ではほかにB 9 ネストテーブルS 285 デスク、机ではS 1200 デスクを扱う。

基本情報

ブランド名 Thonet(トーネット)
創業 1819年(ボッパルトの工房として)
創業者 Michael Thonet
本社・生産拠点 ドイツ・ヘッセン州フランケンベルク
正式社名 Thonet GmbH(2006年にGebrüder Thonet GmbHから改称)
事業内容 曲木および鋼管を用いた家具の製造・販売
公式サイト https://www.thonet.de

Reference

Thonet - 公式サイト
https://www.thonet.de
Wikipedia - Gebrüder Thonet
https://en.wikipedia.org/wiki/Gebr%C3%BCder_Thonet