S 1200は、ドイツの老舗家具メーカー、トーネット社が2014年に発表したホームオフィス向けセクレタリーデスクである。トーネット・デザインチームに所属するRandolf Schott(ランドルフ・ショット)が設計を担当し、同社が1930年代に確立したスチールパイプ家具の伝統を現代的に再解釈した作品として高い評価を得ている。
バウハウス運動とともに発展したトーネット社のスチールパイプ家具コレクションは、Marcel Breuer(マルセル・ブロイヤー)やMart Stam(マルト・スタム)、Ludwig Mies van der Rohe(ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ)といった近代建築の巨匠たちによって生み出されてきた。S 1200はその系譜を受け継ぎながらも、現代のワークスタイルに適応した機能美を追求している。発表同年には、iF Interior Innovation AwardおよびForum Product Design Awardを受賞し、デザイン界からも広く認められた。
特徴・コンセプト
S 1200の最大の特長は、そのコンパクトな設計思想にある。現代の住環境において、ホームオフィスのための十分なスペースを確保することは容易ではない。本製品は、廊下の片隅やニッチスペースなど、限られた空間にも違和感なく設置できるよう綿密に計算されている。
スチールパイプフレーム
クロームメッキを施したスチールパイプフレームは、傾斜したデザインを採用している。この傾斜は、椅子から立ち上がる際の動作を妨げないよう意図的に設計されたものであり、狭小空間における使い勝手を飛躍的に向上させている。さらに、フレームには足置きが組み込まれており、長時間のデスクワークにおいても快適な姿勢を維持することができる。
二層構造の天板
作業面は二層構造となっており、下段の天板で執筆やPC作業を行いながら、上段には書類や文具を整理して置くことが可能である。この構造により、限られたスペースを最大限に活用しつつ、作業効率を高めることに成功している。天板はMDFに本杢突板またはThonetDur仕上げを施し、オーク、ウォールナット、ブラックステインドビーチなど多彩なバリエーションから選択できる。
オプションアクセサリー
機能性をさらに高めるため、フロック加工を施した金属製のアクセサリーが用意されている。ペンシルボックス(S 1211)、A4ファイリングボックス(S 1212)、多機能ブックレスト(S 1213)、ケーブルマネジメント(S 1214)といったアクセサリーにより、デスク上の整理整頓を実現し、個々のユーザーのニーズに応じたパーソナライズが可能となっている。
エピソード
S 1200の設計にあたり、Randolf Schottとトーネット・デザインチームは、同社が保有する膨大なスチールパイプ家具のアーカイブを徹底的に研究したという。1928年にMarcel Breuervとの提携により始まったトーネット社のスチールパイプ家具製造の歴史は、1930年代には世界最大の生産規模を誇るまでに成長した。第二次世界大戦による中断を経て、1960年代後半から再び注目を集めるようになったこの伝統は、今日に至るまで脈々と受け継がれている。
「家具は、部屋の壁と同様に、もはや重厚でモニュメンタルなものではない。むしろ風通しがよく開放的で、あたかも部屋の中に描き込まれたかのようであり、動線も視界も遮らない」というMarcel Breuervの言葉は、バウハウス時代のスチールパイプ家具の理念を端的に表現している。S 1200は、この精神を現代のホームオフィス環境に適応させた作品といえる。
1819年にMichael Thonet(ミヒャエル・トーネット)がボッパルトで創業して以来、トーネット社は曲木家具で世界的な名声を確立し、その後スチールパイプ家具の分野でも革新を続けてきた。S 1200は、創業から約200年の歴史を持つ同社の技術力と美意識が結実した一品である。
評価
S 1200は、発表以来、インテリアデザイン誌や建築専門メディアから高い評価を受けている。そのミニマリスティックでありながら機能的なデザインは、伝統的な空間にも現代的なインテリアにも違和感なく調和すると評されている。
特に、バウハウス時代のクラシックデザインを現代に蘇らせながらも、単なる復刻ではなく現代のライフスタイルに適応した機能性を備えている点が、デザイン関係者から賞賛されている。Marcel Breuervが設計したS 285デスクと並び、トーネット社のスチールパイプデスクシリーズの代表的モデルとして位置づけられている。
受賞歴
- 2014年
- iF Interior Innovation Award
- 2014年
- Forum Product Design Award
基本情報
| デザイナー | Thonet Design Team: Randolf Schott |
|---|---|
| ブランド | Thonet(トーネット) |
| 発表年 | 2014年 |
| 原産国 | ドイツ |
| サイズ | 幅110cm × 奥行67cm × 高さ88cm |
| 重量 | 28kg |
| 素材 | クロームメッキまたはラッカー塗装スチールパイプフレーム、MDF天板(本杢突板またはThonetDur仕上げ) |
| カラーバリエーション | オイルドオーク、オイルドウォールナット、ブラックステインドビーチ、ラッカードオーク、ThonetDur各種 |
デザイナープロフィール
Randolf Schott(ランドルフ・ショット)は、1974年ドイツ・トルガウ生まれのプロダクトデザイナーである。家具職人としての訓練を受けた後、2000年から2004年にかけてヴェストザクセン大学ツヴィッカウの一部門であるシュネーベルク応用芸術学校でプロダクトデザインを学んだ。卒業後はデルフィン・デザイン事務所でアシスタントとして経験を積み、2006年から2017年までトーネット社の製品開発部門でデザイナー兼プロジェクトマネージャーとして活躍した。
Schottの作品は、イタリアのクラシックデザインと北欧の伝統的なデザインの両方からインスピレーションを得た、機能的かつ美しい造形で知られている。スチールパイプの革新的な使用法により、トーネット社のバウハウスにインスパイアされたデザインの系譜を現代に継承している。