概要

サイモン・カーコフは、デンマークの建築家である。デンマーク王立芸術アカデミー建築学校で建築を学び、1960年代から国内の設計事務所で実務にあたった。職業としては建築の設計者であり続けたが、その傍らで照明のシェードを考案している。薄い部材に折り目を入れ、切り欠き同士をかみ合わせるだけで立体になる方式で、工具も接着剤も使わずに購入者が自分で組み上げる。この方式による照明はノーマン コペンハーゲンから3点が製品化され、最初の1点であるノーム69は同社の第一号製品となった。現在は引退し、トルコで設計を続けている。

バイオグラフィー

カーコフはデンマーク王立芸術アカデミー建築学校(Kunstakademiets Arkitektskole)で建築の教育を受けた。1960年代以降はデンマーク国内の複数の設計事務所に勤め、コペンハーゲンとその周辺を仕事の場としている。

職業生活の最後のおよそ10年は、フレデリクスベア市の設計部門に属した。この時期に関わった事業として、ノーマン コペンハーゲンの公式サイトはフレデリクスベア病院とフレデリクスベア・ギムナジウムを挙げている。

引退後はトルコに居を移し、現在も設計に取り組んでいる。

デザインの思想と方法

カーコフの照明は、一つの条件から出発している。シェードを平らな状態のまま運び、買い手の手で立体に変えること。接着剤も金具も使わないという条件を加えると、留める役目は部材の形そのものが負うほかない。折り目で張りを出し、切り欠きで隣の一枚を捕まえる。この一点の解き方が、彼の設計の中心にある。

素描から模型へ、そして時間を置く

本人がメーカーの公式サイトで説明している制作の順序は、着想を素描に起こし、それを模型に移し、時間をかけて調整を重ねて最終的な試作に至る、というものである。図面だけで完結せず、手で立体を確かめる工程が中心にある。建築の実務で用いる進め方と重なる手順といえる。

この進め方は、一つの設計に長い時間を要する。ノーム06については、3〜4年かけて取り組み、途中で数か月手を離してから見直したと本人が述べている。中断を挟んで判断をやり直すことが、方法の一部になっている。

部材の重なりが光源を覆う

部材を折り重ねる構成は、そのまま電球を覆い隠す役目も兼ねる。カーコフはノーム69とノーム06のいずれについても、光源を遮って柔らかい光を得るというデンマークのシェード設計の流儀に沿うものだと説明している。光は部材のあいだの隙間から抜けて周囲へ回るため、見上げてもグレアが生じにくい。構造の解決と光の扱いが同じ形から出てくる点が、この方式の要になっている。

形の手がかりを植物に取る

輪郭の手がかりは植物にある。ノーム69では花と松かさ、ノーム06では百合と睡蓮を挙げている。花弁や鱗片が中心を囲みながら隙間を残す並び方は、部材を重ねて光源を包むシェードの構成とそのまま対応する。曲線を装飾として加えるのではなく、部材の配列の規則を植物から借りている。

照明の先にあるもの

カーコフは、このノックダウンの考え方を照明だけで終わらせず、家具やより大きなものへ広げることに関心があると述べている。工場で完成させずに平らなまま出荷し、使い手が最後の工程を担うという分担を、対象を替えて成立させられるかという問いである。

代表作にみる方法

ノーム69(1969年設計・2002年製品化)

方式そのものを成立させた最初の設計にあたる。工具を使わずに立体へ組み上げる手順と、部材の形だけで互いを固定する構成が、ここで一度に決まった。1969年の時点では製品にならず、設計は長く手元に置かれたままだった。2001年にノーマン コペンハーゲンとの接点が生まれ、素材と製法を替えながらの試作を経て2002年に発売されている。以後の仕事は、この方式を別の輪郭へ移し替える作業として続いた。造形や素材の詳細はノーム69で扱う。

ノーム06(2006年設計)

球形から離れ、部材を外へ開いた構成をとる。百合と睡蓮を手がかりにしたと本人が述べており、中心の光源を囲みながら、外周では部材が反り返る。組み立ての方式はノーム69から変えていない。同じ組み方のまま輪郭を球以外へ持ち出せることを、この設計が示した。制作には3〜4年を費やしている。

ノーム12(2012年設計)

湾曲した葉状の部材を重ね、丸みのある輪郭へ戻した設計である。ノーム69の球形ともノーム06の開いた形とも異なり、部材そのものの曲面で光を散らす。設計した年を製品名に採る付け方はノーム69から引き継がれており、3点はいずれも成立年を名に持つ。

評価と影響

ノーム69はノーマン コペンハーゲンが自社製品として最初に出したもので、一般的には同社の出発点として扱われている。平らな板の状態で流通し、購入者が組み立てる照明という形式は、その後も同社の商品構成に残った。ブリット・コーヌムが設計したノーム03のように、同じ形式による別の設計者の照明も加わっている。

カーコフ自身は建築の実務を本業とし、発表した製品は照明の3点にとどまる。数を重ねた設計者ではないが、一つの組み立て方式を30年以上かけて製品まで運び、その後さらに2度作り替えた経過が、仕事の輪郭をつくっている。

受賞

ノーマン コペンハーゲンの公式サイトは、ノーム69に対する受賞として次の2件を記載している。

  • フォルムランド賞(Formlandprisen)2002年/デンマーク
  • imm cologne 2003年 Best Item/ドイツ

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド
1969年(設計)/2002年(発売) ペンダントライト ノーム69 Normann Copenhagen
2006年(設計) ペンダントライト ノーム06(Norm 06) Normann Copenhagen
2012年(設計) ペンダントライト ノーム12(Norm 12) Normann Copenhagen

プロフィール

国籍 デンマーク
教育 デンマーク王立芸術アカデミー建築学校(Kunstakademiets Arkitektskole)
活動拠点 コペンハーゲン、フレデリクスベア(デンマーク)/現在はトルコ
分野 建築、照明
主な協働ブランド Normann Copenhagen

Reference

Simon Karkov(Normann Copenhagen 公式デザイナーページ・英語)
https://www.normann-copenhagen.com/en/product/designers/simon-karkov
Simon Karkov(Normann Copenhagen 公式デザイナーページ・デンマーク語)
https://normann-copenhagen.com/da/Product/Designers/Simon-Karkov
Norm 69 | A Classic and Timeless Pendant(Normann Copenhagen)
https://www.normann-copenhagen.com/en/product/product-collections/norm69-lamp/
Norm 12 | Classic Pendant(Normann Copenhagen)
https://www.normann-copenhagen.com/en/Product/Product-Collections/Norm-12
Norm 06 Small(Architonic/メーカー提供のデザイナー談話を含む)
https://www.architonic.com/en/p/normann-copenhagen-norm-06-small-1198403/