MAGIS(マジス)

1976年、イタリア・ヴェネト州の活気溢れる大地に誕生したMAGIS(マジス)は、「日常の製品にこそ、優れたデザインを」という揺るぎない信念のもと、世界のインテリアデザインに革新をもたらし続ける家具・家庭用品ブランドです。その名が示すとおり、MAGISとはラテン語で「もっと」を意味する比較級の形容詞であり、すべての製品には「さらなる高み」を目指す飽くなき探求心が込められています。

創業者ユージニオ・ペラッツァの先見性と情熱により築かれたMAGISは、現在では世界的なデザインラボラトリーへと成長を遂げました。ジャスパー・モリソン、コンスタンチン・グルチッチ、ロナン&エルワン・ブルレック、マーク・ニューソン、フィリップ・スタルク、ロン・アラッドといった世界を代表する錚々たるデザイナーたちの創造性と、MAGISが誇る最先端の技術力が融合することで、時代を超越した価値を持つ製品が生み出されています。

世界70カ国へと発信されるその斬新な製品群は、数々の国際的なデザイン賞を受賞し、ニューヨーク近代美術館やパリ国立近代美術館をはじめとする世界の名だたる美術館のパーマネントコレクションに選定されています。プラスチック成形技術における先駆的な取り組み、特にエアモールド成形技術を芸術的領域に昇華させた功績は、家具デザイン史において特筆すべき業績として評価されています。

ブランドヒストリー

創業の軌跡と「魔法の瞬間」

創業者ユージニオ・ペラッツァは、35歳に至るまで家庭用品メーカーの商務部に従事していました。しかし彼は、生産には投資を惜しまない一方で、マーケティングや開発には全く力を注がない経営方針に深い疑問を抱いていました。それは既存製品を単に模倣する作業に過ぎず、真の創造性が欠如していると感じたのです。

ある日、彼は勇気を持って社長に商品開発部門の立ち上げを提案しました。すると予期せぬことに、彼自身がそのプロジェクトを任されることになったのです。しかし、何も生まれない日々が続きました。そんなある日、運命的な出会いが訪れます。彼がとある路地の本屋のショーウィンドーで目にしたのは、スチールロッドで構成された名作椅子の写真でした。

スチールロッドの加工技術は、まさに彼の会社が得意とする分野でした。その本を購入し、翌日には実物の椅子も2脚購入した彼は、社に戻って製造コストを見積もりました。すると、驚くほど安価に製造できることが判明したのです。ここに新しいマーケットの可能性を見出した彼は、デザイナーとの協働による製品開発を提案しましたが、会社の反応は「デザイナーなどと働くつもりはない」という冷淡なものでした。

ユージニオは決断しました。会社を辞め、自らの信念を実現するため、1976年にMAGISを設立したのです。彼は後にこう語っています。「誰の人生にも『魔法の瞬間』があると信じている。チャンスが与えられる短い瞬間に、どう反応したかで、人生の方向が大きく変わってくる。私の魔法の瞬間は、一冊の本と出会ったあの路地を歩いていたときに訪れた」と。

デザインラボラトリーとしての成長

創業以来、MAGISは他の企業とは一線を画す「知」の蓄積と、常に展開している新プロジェクトの両方を兼ね備えた健全な企業として発展してきました。難解で複雑、そしてハイリスクなプロジェクトに果敢に向き合い、強い挑戦意欲と高度な技術の蓄積によって、数々のプロジェクトを完遂させてきたのです。

MAGISの特徴は、優秀なデザイナー、卓越したデザインチーム、並外れたサプライチェーン、表現豊かなコミュニケーション、プロジェクトへの深い探求心、そして倫理観の重視という、複合的な要素が見事に調和している点にあります。変わらないのは、「アイディアは常にMAGISから生まれる」という原則です。デザインとは考え方そのものであるという信念のもと、一つのプロジェクトに対してMAGISがアイディアを提供し、デザイナーと共に取り組み、平均3年という歳月をかけて商品化を目指しています。

2020年には、創業者ユージニオ・ペラッツァが、イタリアデザイン界で最も権威あるコンパッソ・ドーロ特別功労賞を受賞しました。この栄誉は、彼が持ち前の情熱とデザイン文化の可能性を最大限に活用し、伝統保持に内在する因習的な慣習主義から脱却し、新しい手法と技術を駆使したハイエンドデザイン文化の普及に貢献した功績を称えるものです。

ブランドの特徴とデザイン哲学

革新的なプラスチック成形技術

創業から長年にわたり、MAGISはプラスチック素材を活用する数少ない先駆的企業の一つでした。現在では追随する企業も増加していますが、MAGISは今なお最も進歩的なプラスチック成形技術を保有しています。特筆すべきは、MAGISが世界で初めてエアモールド成形技術を芸術的な作品に取り入れた企業であるという点です。

エアモールド成形とは、射出成形時にガスを注入することでコアを中空にし、従来では実現不可能だった微妙なボリュームや複雑な形状の表現を可能にする革新的技術です。この技術を用いて2000年に誕生したジャスパー・モリソンによる「エアチェア」は、一見シンプルなデザインに高度な成形プロセスを組み合わせた傑作として、家具業界に革新をもたらしました。

現在では、コンスタンチン・グルチッチの「チェアワン」に代表されるように、ダイキャストアルミニウムやウッドなどの新素材、さらには環境問題に配慮したエコ素材など、新しい製造方針へと挑戦の幅を広げています。2020年にはコンスタンチン・グルチッチがデザインした「ベル」チェアが発表されました。これは産業廃棄物を100%使用した再生ポリプロピレンで製造され、平均的なプラスチックチェアの約半分という超軽量を実現した、サステナビリティへの取り組みを象徴する製品です。しかしながら、プラスチックはこの先もMAGISを代表する基本素材であり続けるでしょう。

世界的デザイナーとの協働

MAGISは世界的に著名なデザイナーと協働する一方で、駆け出しの新鋭デザイナーの発掘にも積極的に取り組んでいます。ジャン=マリー・マソーやイェジ・セイモアは、MAGISのもとでデザイン業界にデビューを果たしました。また、巨匠と称されるロビン・デイ、エーロ・アールニオ、ピエール・ポーランといったデザイナーたちとの取り組みも、重要な潮流となっています。

ジャスパー・モリソン、コンスタンチン・グルチッチ、フィリップ・スタルク、ロナン&エルワン・ブルレック、イェジ・セイモアといったデザイナーたちは、長期にわたりMAGISとともに歩み、世界的な成功を収めてきました。彼らはパートナー以上の存在であり、MAGISファミリーの一員として位置づけられています。創業者ペラッツァは「MAGISのデザイン部門に上下関係はありません。私たちは一つのチームであり、創造的なコラボレーションを何よりも信じています」と述べています。

クラフツマンシップと生産体制

MAGISはメーカーでありながら、自社工場を持たないという独自の生産体制を採用しています。何世紀にもわたりクラフツマンシップと創造性が育まれてきたヨーロッパ有数の家具生産地、イタリア・ヴェネト州の卓越した生産力と技術力を最大限に活用しながら、世界を代表するデザイナーたちの創造性をもって、時代の変化を的確に捉え、最先端のものづくりを実現しています。

2004年にはISO9001認証を、2008年にはISO14001認証を取得し、MAGISのマネージメントシステムが品質と環境の両面において国際基準を満たす企業であることが立証されています。この認証は、MAGISが製品の卓越性のみならず、企業としての社会的責任を果たしていることの証明でもあります。

代表的なプロダクト

エアチェア(Air-Chair)

2000年に発表されたジャスパー・モリソンによる「エアチェア」は、世界で初めてエアモールド成形技術で製作された椅子として、家具業界に革新をもたらした記念碑的作品です。その名が示すとおり、空気のように軽やかなフォルムと実際の軽量性を兼ね備え、シンプルでありながら無駄のない洗練されたデザインが特徴です。

スタッキングが可能で最大10脚まで積み重ねることができ、屋外での使用にも対応しています。座面に設けられた穴は、持ち運びやすさと雨天時の水はけを考慮した機能的デザインです。一体成型のため手入れも容易で、住宅、オフィス、店舗など様々なシーンで活用されています。2000年にはブループリント賞とCATAS2000賞を、2001年にはグッドデザイン賞とオブザーヴァー・デュ・デザイン賞を受賞し、ポンピドゥーセンター(パリ)やデザインミュージアム(ロンドン)などに収蔵されています。

チェアワン(Chair One)

2004年に発表されたコンスタンチン・グルチッチによる「チェアワン」は、三角形をモジュールとして立体的に形成された、無駄のない斬新なデザインで世界中の注目を集めました。この作品はグルチッチの名を世界に知らしめると同時に、MAGIS社にとってもロングセラーとなり、同社を代表する椅子の一つとなっています。

幾何学的な空間が並んだシェルは、ある意味サッカーボールのような構造を持ち、金属から複雑な三次元形状を作り出すという技術的挑戦の結果として誕生しました。ダイキャストアルミニウムを使用し、屋外での使用も可能なスタッキングチェアとして、住宅から商業施設まで幅広く採用されています。その彫刻的な美しさと機能性の見事な融合は、現代デザインの傑作として高く評価されています。

マジス プルースト(Magis Proust)

アレッサンドロ・メンディーニが1978年に発表した有名なアームチェアを、ポリエチレンの回転成型で再解釈した作品です。クッションの膨らみや、木材による細かいバロック調の装飾を樹脂で忠実に再現し、サイズはオリジナルより5%小さく設計されています。

メンディーニ自身が語っているように、「プルーストの安楽椅子」は彼の作品の中でも最も広く知られているものの一つです。ロマンチックなバロック調の肘掛け椅子に、点描風のペイントが本体、装飾部分、ファブリックにまで施されたこの作品は、ネオ・バロック様式の椅子とフランス人画家ポール・シニャックの点描画のディテールをコラージュした、いわゆるリ・デザインの作品でした。MAGISによる回転成型バージョンは、技術と生産の結晶として、不朽のオブジェに新しいカラーとイメージのエネルギーを吹き込んでいます。

Me Too Collection(ミー・トゥー・コレクション)

2004年、MAGISは子どもたちのための特別なコレクション「Me Too Collection」を発表しました。「わたしも、ぼくも」を意味するこのコレクション名には、子どもたちが大人の持っているものではなく、自分たちにぴったり合う家具を欲しているという想いが込められています。

このコレクションが生まれたきっかけは、創業者ユージニオ・ペラッツァが、当時3歳だった孫娘のためにお絵描き用の机を探していたことでした。「それはただ単に、大人用の椅子の縮小版ではなく、子どもに特別に備えられた感性や、思考力を伸ばす特別なコレクションになるだろう」という彼の言葉が、このプロジェクトの本質を表しています。

MAGISは、子どもの心を理解する9人のデザイナーを招聘し、20アイテムからなるコレクションを創り上げました。スペイン人デザイナーのハビエル・マリスカルは、誕生したばかりの双子の名前を冠したキッズテーブルとチェアをデザインし、エーロ・アールニオは置き方次第で座面の高さが変わり、ロッキングチェアにも変身する素晴らしいチェアをデザインしました。ユージニオは、サンプルが出来上がると孫たちに見せ、目が輝いて笑顔になれば商品化するという、子どもたちの反応を最も重視したアプローチを取っています。

主なデザイナー

ジャスパー・モリソン(Jasper Morrison)
1959年イギリス・ロンドン生まれ。現代のデザイン界におけるミニマリズムの原点と称される巨匠。エアチェアをはじめとするAirファミリーをデザイン。シンプルかつアーティスティックで、本当の意味で暮らしを豊かにする実用的なデザインを追求し続けています。
コンスタンチン・グルチッチ(Konstantin Grcic)
1965年ドイツ・ミュンヘン生まれ。チェアワン、ベルチェアをはじめとする数々の作品をMAGISで発表。無駄を削ぎ落としたシンプルな美学に機能性を兼ね備えたプロダクトを数多く生み出し、現代デザイン界を牽引する存在です。
ロナン&エルワン・ブルレック(Ronan & Erwan Bouroullec)
フランスを代表する兄弟デザイナーデュオ。詩的で繊細なデザインアプローチで知られ、MAGISにおいても独創的な作品を発表し続けています。
アレッサンドロ・メンディーニ(Alessandro Mendini)
イタリアのデザイン界を代表する巨匠。プルーストアームチェアの生みの親として知られ、ポストモダンデザインの先駆者として活躍しました。
マーク・ニューソン(Marc Newson)
オーストラリア出身の世界的デザイナー。有機的で流麗なフォルムを特徴とし、家具から航空機のインテリアまで幅広い分野で活躍しています。
フィリップ・スタルク(Philippe Starck)
フランスを代表する世界的デザイナー。斬新で遊び心に満ちたデザインで知られ、MAGISにおいても革新的な作品を生み出しています。
ロン・アラッド(Ron Arad)
イスラエル出身、イギリスを拠点に活動する建築家・デザイナー。実験的で彫刻的なアプローチで知られ、家具デザインに新しい可能性をもたらしました。

基本情報

ブランド名 MAGIS(マジス)
設立 1976年
創業者 ユージニオ・ペラッツァ(Eugenio Perazza)
所在地 イタリア・ヴェネト州
主要製品 家具、チェア、テーブル、収納家具、家庭用品、キッズファニチャー
特徴 プラスチック成形技術(エアモールド成形)の先駆者、世界的デザイナーとの協働、サステナビリティへの取り組み
認証 ISO9001(2004年取得)、ISO14001(2008年取得)
パーマネントコレクション ニューヨーク近代美術館(MoMA)、パリ国立近代美術館、デザインミュージアム(ロンドン)ほか
公式サイト https://magisjapan.com/