概要
620 チェア・プログラムは、ディーター・ラムスが1962年にヴィツゥのために設計したモジュール式のシーティングである。単体の椅子を連結してソファへ拡張でき、背もたれの高さや脚部の仕様を組み替えられる。606ユニバーサルシェルビングシステムと同じく、規格化された部品を組み合わせる方式をとる。
特徴・コンセプト
肘掛けを外して連結する
単体の椅子として使えるだけでなく、肘掛けを外して複数の椅子を連結すれば、2人掛け、3人掛け、あるいはそれ以上の長さのソファになる。ソファを買い替える代わりに、椅子を足して長さを変えられる。背もたれはローバックとハイバックを選べ、脚部は固定脚、キャスター脚、回転ベースから選択する。
数十年前に製造された部品と現行品が互換性を保つため、壊れた部分だけを交換して使い続けられる。
ウレタンを使わない詰め物
ベースにはCNC加工したバーチ合板を用い、その内側にコイルスプリングを収める。コイルスプリングの上には、ココナッツ繊維(コイア)と天然ゴムを混ぜたパッドを重ねる。発泡ウレタンは経年で劣化して痩せるが、この構成であれば長期の使用に耐える。長く使い続けることを前提とした素材の選択である。
シェルと張地
肘掛けと背もたれのシェルには、ファイバーグラスに似た繊維強化材を温間プレスで成形したものを用いる。張地にはフルグレインのアニリンレザーのほか、リネンも選べる。カバーは取り外して交換でき、長期の使用後も張り替えに対応する。
エピソード
発売から数年後に模倣品が市場へ現れたことを受け、ヴィツゥの共同創業者ニールス・ヴィツゥは長期にわたる法廷での争いを続けた。その結果、1973年に620チェアは家具としては稀な著作権による保護を得た。ドイツの裁判所は、このチェアの設計を独創的な創作と認定している。
2013年、ヴィツゥは発売50年に合わせて全面的な見直しを行った。ラムス自身も加わり、専用のステンレスボルト一本に至るまで検討して再発売している。
評価と影響
部品を交換しながら使い続けられるという設計は、606ユニバーサル・シェルビング・システムと共通する。デザイン史家ハンス・ヴィッヒマンは1971年に、本作を20世紀の主要な家具設計の一つに数えた。1969年のウィーン国際家具展覧会で金賞を受けている。
美術館コレクション
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は、初期の呼称であるRZ 62の名義で本作を収蔵番号CIRC.430:1-1970で登録している(制作年は1962年頃)。
ディーター・ラムスの設計思想や経歴について詳しくはディーター・ラムスプロフィールページをご覧ください。
ヴィツゥの歴史や他の製品について詳しくはヴィツゥブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | 620 チェア・プログラム / 620 Chair Programme(初期の呼称 RZ 62) |
|---|---|
| デザイナー | ディーター・ラムス(Dieter Rams) |
| ブランド | ヴィツゥ(Vitsœ) |
| 発表年 | 1962年(2013年に全面的な見直し) |
| デザインの成立国 | ドイツ |
| 分類 | ラウンジチェア/モジュール式シーティング |
| 主要素材 | バーチ合板、繊維強化材のシェル、コイルスプリング、ココナッツ繊維+天然ゴムのパッド、フルグレインレザーまたはリネン |
| 構造 | 肘掛けを外して連結可。部品の互換性を長期にわたり維持 |
| バリエーション | ローバック/ハイバック、固定脚/キャスター脚/回転ベース、フットスツール |
| 受賞 | 1969年 ウィーン国際家具展覧会 金賞 |
| 収蔵 | ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(CIRC.430:1-1970) |
Reference
- RZ 62 | Victoria and Albert Museum
- https://api.vam.ac.uk/v2/objects/search?q=CIRC.430-1970
- 620 Chair Programme | Vitsœ
- https://www.vitsoe.com/us/620