粉末状の塗料を対象物に付着させ、加熱して溶融・硬化させることで塗膜をつくる塗装方法。有機溶剤を使わない。
粉体塗装
粉体塗装とは、樹脂や顔料を粉末にした塗料を対象物の表面に付着させ、加熱して溶融・硬化させることで塗膜をつくる塗装方法のこと。英語では powder coating と呼ぶ。
解説
粉末をどう付着させるかで方式が分かれる。静電粉体塗装は、スプレーガンの放電で粉体を帯電させ、接地した被塗物へ静電気の力で引き寄せる方法である。膜厚が揃いやすい反面、静電気を利用する以上、被塗物に導電性が必要になる。もう一つの流動浸漬塗装は、あらかじめ加熱した被塗物を、空気で流動させた粉体の槽に浸す方法で、厚い塗膜を得やすいが膜厚は不均一になりやすい。いずれの方式でも、付着させたのち100度から200度程度で焼き付けて塗膜とする。
家具で用いられるのは、スチール製の脚やフレーム、屋外で使う製品などである。一度の工程で数十から百数十マイクロメートルの厚い塗膜が得られ、傷や衝撃、紫外線に対して強い。液体塗装で同じ厚みを出そうとすれば重ね塗りが必要になるため、工程の短縮にもつながる。溶剤を含まない塗料であるため、乾燥の過程で揮発性有機化合物が排出されず、溶剤中毒や引火の懸念もない。
制約もある。焼き付けを伴うため木材や樹脂には適用しにくく、対象は実質的に金属に限られる。焼付炉に収まる大きさでなければならず、大型の製品では設備側の制限を受ける。膜厚が厚くなる性質上、薄く仕上げたい場合や微妙な膜厚調整には向かない。また、いったん硬化した塗膜の上に塗り直すことが難しく、補修は同じ工程を通せる設備を持つ事業者に限られる。
液体塗装との違い
木部に用いるウレタン塗装やラッカー塗装は、顔料と樹脂を有機溶剤や水で溶いた液体の塗料を使う。粉体塗装は塗料そのものが粉末である点が根本的に異なり、そこから工程と適用範囲の差が生じる。
| 比較項目 | 粉体塗装 | 液体塗装 |
|---|---|---|
| 塗料の形態 | 粉末。溶剤を含まない | 有機溶剤または水で溶いた液体 |
| 硬化 | 100〜200度程度で焼き付ける | 常温乾燥または比較的低い温度で乾燥・硬化 |
| 一度に得られる膜厚 | 厚い。数十〜百数十マイクロメートル | 薄い。厚みを出すには重ね塗りが必要 |
| 主な対象 | 金属 | 木材・金属・樹脂 |
| 補修 | 同じ設備を持つ事業者に限られる | 部分的な塗り直しがしやすい |
なお、金属の表面処理という点ではクロムめっきやアルマイトと並べて語られることがあるが、これらは金属皮膜や酸化皮膜を生成する処理であり、樹脂の膜を載せる塗装とは仕組みが異なる。
Reference
- 粉体塗装(パウダーコーティング)とは(ノードソン)
- https://nordson-web.jp/column/detail02/
- 日鉄防食の粉体塗装(日鉄防食)
- https://acc.nipponsteel.com/powder-coating/
- 静電粉体塗装法(日本パウダーコーティング協同組合 提供)
- http://www.howa-kogyo.co.jp/powder/process01.html