鋼を管状に成形した材。中実の棒より軽く曲げに強いという性質が、20世紀の家具の形を変えた。

スチールパイプ

スチールパイプとは、鋼を管の形に成形した材のこと。鋼管ともいう。家具に用いられるものは、日本産業規格ではJIS G 3445「機械構造用炭素鋼鋼管」に規定され、記号STKMで表される。この規格は適用範囲として、機械器具や自動車と並んで家具を挙げている。

解説

製管の方法は三つに分かれる。素材を穿孔して管とする継目無し、帯状の鋼板を丸めて合わせ目を電気抵抗溶接する電気抵抗溶接、加熱して縁を圧着する鍛接である。家具に使われるものの多くは電気抵抗溶接によるもので、外面と内面の溶接ビードは除去されるため、仕上げた表面に継ぎ目は残らない。

管が家具に向く理由は、断面の形にある。曲げに対する強さは、材料が断面の中心からどれだけ外側に配置されているかで決まる。中実の丸棒では中心付近の材料がほとんど働かないのに対し、管は材料をすべて外周に配置している。同じ重さであれば、管のほうが曲げに強い。細く見えて丈夫という椅子の脚が成立するのはこの性質による。

加えて、管は曲げ加工が容易である。専用の型を用意すれば連続した曲線をつくることができ、溶接によって接合もできる。カンチレバー構造の椅子が1920年代に生まれた背景には、工業製品としての鋼管が安価に流通しはじめたという条件があった。座面と背もたれを一本の材で支えるという構成は、しなりに耐える細い管なしには成立しない。マルセル・ブロイヤーのB 9 ネストテーブルのように、曲げた管をそのまま脚の輪郭として見せる構成も、この加工性から導かれている。積み重ねられる椅子の脚に用いられるのも、細さと強さを両立できるためである。

鋼であるため、そのままでは錆びる。表面にはクロムめっき粉体塗装が施される。前者は金属の光沢を残し、後者は厚い塗膜で保護しつつ色を与える。脚の先端は管の切り口がそのまま床に接するため、樹脂のキャップやフェルトが取り付けられる。このキャップが外れたまま使うと、切り口の縁が床を傷つけ、管の内側から錆が進む。

Reference

JIS G 3445:2025 機械構造用炭素鋼鋼管(日本規格協会)
https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JIS+G+3445:2025
機械構造用炭素鋼鋼管(STKM)とは?規格・サイズについて解説(シンニチ工業)
https://www.shinnichikogyo.co.jp/column/p3916/
機械構造用炭素鋼鋼管 STKM(日鉄めっき鋼管)
https://www.nscsp.nipponsteel.com/product/machine_carbon/

この用語が登場するページ