ココナッツチェアは、1955年にジョージ・ネルソン率いるジョージ・ネルソン・アソシエイツがデザインし、1956年にハーマンミラー社が製品化したラウンジチェアである。その名が示す通り、ココナッツを8等分したひとかけらを思わせる三角形のフォルムが最大の特徴で、従来のラウンジチェアとは異なる造形として発表当時から注目を集めた。
シカゴ美術館(The Art Institute of Chicago)やロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)のコレクションに収蔵されており、20世紀のミッドセンチュリーモダンを代表するラウンジチェアの一つとして知られている。
デザインの特徴とコンセプト
有機的な造形美
ココナッツチェアの最も特徴的な要素は、彫刻的な三角形のシェルフォルムにある。成形ポリマーによって一体成形されたシェルは、三つの角を持つ曲面で構成され、ココナッツの殻を割ったひとかけらを思わせる。背もたれに相当する角が両サイドの角よりわずかに長く設計されており、このプロポーションが背部のサポートと視覚的なバランスを両立させている。シェルの外側は白で、内側のクッションがレザーまたはファブリックで覆われるという配色について、デザイナー自身がココナッツの色を反転させたものと語っている。
自由な着座姿勢の実現
ネルソンはこのチェアを、快適さとともに大きな動きの自由をラウンジ家具に与えるものとして構想した(ハーマンミラー)。浅くカットされた両サイドと包み込むような曲面によって、着座者は正面から腰を下ろすだけでなく、横向きに身体を預けたり、足を組んだりと、さまざまな姿勢でくつろぐことができる。
厚みのあるフォームラバークッションは一枚のレザーまたはファブリックで覆われ、シェル全体を柔らかく包み込む。この単一のクッション構造により、座面・背もたれ・アームレストの境界が曖昧になり、身体の接触点に応じて柔軟にサポートする。固定的な着座姿勢を前提とする従来のチェアとは異なる設計思想である。
構造と素材
シェルはグラスファイバー強化プラスチック(FRP)の成形品で、軽量でありながら十分な強度を持つ。現在のハーマンミラー製品およびヴィトラ製品では、より持続可能なポリマー素材へと仕様が更新されている。
三本脚のベースはスチールパイプを曲げ加工したもので、クロームメッキまたはパウダーコーティング仕上げが施される。最小限の接地点による軽快なスタンスが、シェルの有機的なフォルムと視覚的に調和している。
現行生産とコレクション
ココナッツチェアは現在も生産が続けられており、アメリカではハーマンミラー社、ヨーロッパおよび中東ではヴィトラ社が正規の製造・販売を担っている。両社とも近年は環境負荷を抑えた素材へと仕様を更新している。初期生産品はヴィンテージ市場で取引されており、現行品とは構造や素材の細部で区別される。
シカゴ美術館(The Art Institute of Chicago)には、ジョージ・マルハウザー/ジョージ・ネルソン・アソシエイツ、ハーマンミラー製造の作品として収蔵されている。ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)もこの作品を所蔵している。
基本情報
| デザイナー | ジョージ・ネルソン(ジョージ・ネルソン・アソシエイツ/実制作:ジョージ・マルハウザー) |
|---|---|
| デザイン年 | 1955年 |
| 発表年 | 1956年 |
| 製造元 | ハーマンミラー社(アメリカ)、ヴィトラ社(ヨーロッパ・中東) |
| 分類 | ラウンジチェア |
| 寸法 | 幅約101cm × 奥行約82cm × 高さ約83.5cm(座面高約29.5cm)※ヴィトラ仕様。製造元により若干異なる |
| 主要素材 | グラスファイバー強化プラスチック(FRP)シェル、ウレタンフォーム、レザーまたはファブリック張り、スチールパイプ脚部(クロームメッキまたはパウダーコーティング) |
| 収蔵美術館 | シカゴ美術館(The Art Institute of Chicago)、ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA) |