概要

スパゲッティチェアは、イタリアの建築家ジャンドメニコ・ベロッティが設計し、1979年にAlias社が製品化したダイニングチェアである(品番101)。細いスチールパイプのフレームに、PVCチューブを縦方向に張り渡して座面と背もたれをつくる。座る面に隙間が残るため、背後が透けて見える。

Alias社にとって最初の製品にあたる。

特徴・コンセプト

フレームはクロームメッキまたは焼付塗装のスチールパイプ。そこに透明または着色したPVC(ポリ塩化ビニル)のチューブを張り、座面と背もたれとする。1脚に使われるPVCロッドの総延長はおよそ70mに及ぶ。チューブは座る人の体重で撓み、体の形に合わせて沈む。硬いフレームと柔らかい座面という役割分担が、部材数を増やさずに座り心地を成立させている。

籐や紐を張った椅子は、細い素材を張り渡して面をつくる。PVCチューブはこれを工業素材で置き換えたものにあたる。天然素材は個体差があり湿度で伸縮するが、押出成形の樹脂であれば断面と特性が一定に保たれる。

チューブは縦方向にのみ張られる。格子状に組めば交点で互いを拘束するが、一方向であれば各本が独立して撓む。

エピソード

「オデッサ」から「スパゲッティ」へ

原型は1962年に遡る。ベロッティが、マリーナ・ディ・マッサにあるマリーナホテルの屋外エリア用に設計した椅子で、当時の名は「オデッサ」といった。のちにAlias社を創業するエンリコ・バレリにとって、最初のデザインの仕事となったPluri社との協働プロジェクトから生まれている。

「スパゲッティ」の呼称は1960年代に付けられた。PVCチューブの見た目に由来する。

Alias社での改良

1979年にAlias社が生産を始めるにあたり、ベロッティは細部の手直しを続けた。背もたれの横桟の湾曲を緩やかにし、支柱の上端に小さなゴム製ストッパーを付け、中央の横桟をベースへ移し、座面と背もたれの素材を見直している。形は変わらないまま、椅子としての完成度だけが上がっていった。

ヘーベルリによる再解釈

2015年、アルフレド・ヘーベルリが7点の限定版を制作した。構造の細部は変えず、寸法と比率だけを操作している。フレームとチューブという構成が保たれるため、寸法を変えても成立する。

評価と影響

線材で座面をつくる構成は、ベルトイア サイドチェアイームズ ワイヤーチェアが金属の格子を用いるのに対し、こちらは樹脂のチューブを一方向に張る。金属は形が保たれるが、樹脂は荷重で撓んで身体に沿う。屋外向けのリ・トゥルーヴェも同じく隙間を残し、雨水を抜く。

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館)。同館は「Spaghetti Side Chair」として登録し、原型の設計年である1960年で記録している。

  • MoMA スパゲッティ サイドチェア(1960年) 収蔵番号 435.1983

基本情報

製品名 スパゲッティ チェア(Spaghetti Chair)/品番 101
デザイナー ジャンドメニコ・ベロッティ(Giandomenico Belotti, 1922-2004)
発表年 1979年(原型「オデッサ」は1962年)
メーカー Alias(イタリア)
素材 フレーム:クロームメッキスチール または 焼付塗装スチール
座面・背もたれ:PVCチューブ または 革
サイズ 幅40cm × 奥行51cm × 高さ84cm(座面高約46cm)
フレームカラー クローム、ホワイト、ブラック、サンド、ライトグレー、コーラルレッド、ネイビーブルー、イングリッシュグリーン、マットーネレッド、オークルブラウン
PVCカラー クリア(透明)、ニュートラルオパール、ホワイト、ブラック、コーラルレッド、ベージュ
コレクション スパゲッティ チェア(101)、スパゲッティ アームチェア(109)、スパゲッティ ジェミニ、スパゲッティ スツール/ハイスツール、スパゲッティ アームレスト
生産国 イタリア