LC2ソファは、1928年にル・コルビジェ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンの3人による共同デザインから生まれた、20世紀モダンデザインの金字塔と言える作品である。「Fauteuil grand confort, petit modèle（小型モデルの大いなる快適椅子）」という正式名称が示すように、このソファは単なる座具ではなく、新しい生活様式を体現する「家庭用設備（équipement de l'habitation）」として構想された。

1929年のパリ・サロン・ドートンヌで初めて発表されたLC2は、クロームメッキを施したスチールパイプフレームと、独立した4つのクッションという革新的な構造により、従来の家具の概念を根底から覆した。この分離された構造は、工業生産時代の合理主義的思想を体現すると同時に、建築家としてのル・コルビジェの「支持体と被支持体の明確な分離」という設計哲学を家具というスケールで具現化したものである。

特徴・コンセプト

構造的革新

LC2の最大の特徴は、外部に露出したクロームメッキのスチールパイプフレームである。このフレームは単なる構造体ではなく、デザインの重要な要素として積極的に視覚化されている。円形断面を持つチューブラースチールは、特殊な溶接技術により滑らかな曲線を描き、工業的な美しさと職人技の融合を示している。

「クッションバスケット」とル・コルビジェ自身が呼んだこのデザインは、フレームが籠のようにクッションを包み込む構造を持つ。座面、背もたれ、そして両側の肘掛けという4つの独立したクッションは、それぞれが取り外し可能で、メンテナンスの容易さと工業生産への適合性を考慮している。

快適性への追求

LC2は、英国紳士クラブの重厚で快適なアームチェアを、モダニズムの美学で再解釈したものである。深く沈み込むクッションは、ポリウレタンフォームとポリエステル綿を組み合わせた多層構造により、適度な弾力と包み込まれるような座り心地を実現している。カッシーナ社の現行モデルでは、ダクロン充填版とダウン充填版が選択可能となっており、より豊かな快適性が追求されている。

モジュロールと人体工学

ル・コルビジェが提唱した「モジュロール」という人体寸法に基づく黄金比システムは、LC2のプロポーションにも反映されている。座面高、背もたれの角度、肘掛けの高さなど、すべての寸法は人体の自然な姿勢と動きを考慮して決定されており、長時間の使用でも疲れにくい設計となっている。

エピソード

3人の巨匠による協働

LC2の誕生には、3人の才能ある人物の出会いが不可欠であった。1927年、シャルロット・ペリアンがサロン・ドートンヌで発表したアルミニウムとクロームメッキスチールの家具を見たル・コルビジェは、彼女の才能に感銘を受け、自身のスタジオへの参加を要請した。当初、ル・コルビジェは「ここではクッションの刺繍はしない」と女性デザイナーに対して懐疑的だったが、ペリアンの革新的な作品を見て考えを改めた。

ペリアンの参加により、ル・コルビジェのスタジオは家具デザインに本格的に取り組むこととなった。彼女は自然素材の温かみをモダニズムデザインに取り入れることを提案し、従来の冷たく無機質なイメージを払拭することに成功した。1932年の手紙で、ル・コルビジェは「建物の家庭用設備を実現する全責任」がペリアンにあることを認め、「この分野における彼女の創造性、イニシアチブ、実現能力は例外的である」と賞賛している。

Maxell広告での象徴的使用

1980年代、LC2の姉妹モデルであるLC3が、Maxellの有名な「Blown Away」広告キャンペーンに使用されたことで、このデザインは大衆文化のアイコンとなった。広告では、男性がLC3チェアに座り、スピーカーからの音圧で髪やネクタイが後方に吹き飛ばされる様子が印象的に描かれた。写真家スティーブ・スタイグマンが撮影したこのイメージは、高級オーディオと洗練されたインテリアの象徴として、今日まで記憶されている。

カッシーナ社との独占契約

1964年、ル・コルビジェがまだ存命中に、イタリアのカッシーナ社は彼の家具デザインの独占製造権を取得した。この契約は、ル・コルビジェ財団およびペリアン、ジャンヌレの相続人との合意に基づくもので、オリジナルデザインへの敬意と品質へのこだわりが評価された結果であった。以来、カッシーナ社は「I Maestri（巨匠たち）」コレクションとして、各作品に製造番号、デザイナーの署名、カッシーナのロゴを刻印し、真正性を保証している。

評価

デザイン史における位置づけ

LC2は、インターナショナルスタイルを象徴する家具として、20世紀デザイン史において不動の地位を確立している。ニューヨーク近代美術館（MoMA）のデザインコレクションに永久収蔵されており、その芸術的・歴史的価値は世界的に認められている。美術評論家たちは、LC2を「機能主義と美学の完璧な融合」と評し、モダニズム運動の理想を体現する作品として高く評価している。

現代における影響力

発表から95年以上が経過した今日でも、LC2の影響力は衰えることがない。世界中の建築家、インテリアデザイナー、家具デザイナーたちは、このデザインから構造の明快さ、素材の誠実な使用、そして機能美の追求という教訓を学び続けている。現代のミニマリズムデザインの多くが、LC2が確立した「少ないことは豊かである」という原則に基づいている。

持続可能性の観点から

近年では、LC2の長寿命性と修理可能な構造が、サステナブルデザインの観点からも再評価されている。分解可能な構造は部品交換を容易にし、高品質な素材は長期間の使用に耐える。カッシーナ社は特定モデルに対して最長50年の保証を提供しており、使い捨て文化への対抗としてLC2の価値を強調している。

受賞歴

LC2自体は特定のデザイン賞を受賞したというよりも、ル・コルビジェの家具コレクション全体として、またモダニズム運動の一部として評価されてきた。1929年のサロン・ドートンヌでの発表は大きな反響を呼び、その後の国際的な展覧会で繰り返し展示されることで、デザイン界における地位を確立した。

ル・コルビジェ自身は、建築と都市計画における功績により、1953年にRIBA（王立英国建築家協会）ゴールドメダル、1959年にAIA（アメリカ建築家協会）ゴールドメダルを受賞している。彼の家具デザインは、これらの栄誉の一部として間接的に評価されている。

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