バイオグラフィー

1887年10月6日、スイス北西部のラ・ショー=ド=フォンに生まれる。本名シャルル=エドゥアール・ジャヌレ=グリ。時計職人の父と音楽教師の母のもと、精密工業で栄える街で幼少期を過ごす。1902年、地元の装飾美術学校に入学し、時計の文字盤彫刻を学ぶが、やがて建築への興味を深めていく。

1907年から1911年にかけて、ヨーロッパ各地を遍歴。ペーター・ベーレンスやオーギュスト・ペレのもとで修業を積み、鉄筋コンクリートの可能性に目覚める。1917年、パリに居を構え、画家オザンファンとともにピュリスム(純粋主義)運動を展開。1920年、雑誌「エスプリ・ヌーヴォー」を創刊し、このときから筆名「ル・コルビュジエ」を用いるようになる。

1922年、従弟ピエール・ジャヌレと共同で建築事務所を開設。1930年、フランスに帰化し、イヴォンヌ・ガリと結婚。第二次世界大戦後は、マルセイユのユニテ・ダビタシオンをはじめとする大規模プロジェクトを手がけ、晩年にはロンシャンの礼拝堂など、より自由な造形の建築を生み出した。1965年8月27日、南仏カップ・マルタンの海で遊泳中に心臓発作により逝去。享年77歳。

デザインの思想とアプローチ

ル・コルビュジエは「住宅は住むための機械である」という言葉で知られ、機能主義建築の旗手として20世紀建築を牽引した。1926年に発表した「近代建築の五原則」は、ピロティ、屋上庭園、自由な平面、水平連続窓、自由な立面という革新的な概念を提示し、建築の新たな地平を切り拓いた。

人体の寸法を基準とした独自の尺度体系「モデュロール」を考案し、建築と人間の調和を追求。黄金比と人体寸法を組み合わせたこの体系は、建築のみならず家具デザインにも応用され、機能と美の統合を実現した。都市計画においては「輝く都市」構想を提唱し、高層建築と緑地を組み合わせた理想都市の姿を描いた。

作品の特徴

建築作品は初期の白い箱型住宅から、後期の彫刻的で有機的な形態まで、常に時代の先端を行く革新性を示した。鉄筋コンクリートの可塑性を最大限に活用し、光と影、内部と外部の関係性を巧みに操作。機能性と詩的な空間体験を両立させた。

家具デザインにおいては、シャルロット・ペリアン、ピエール・ジャヌレとの共同作業により、20世紀を代表するLCシリーズを創造。スチールパイプと革の組み合わせによる機能美は、モダンデザインの規範となった。建築と家具を総合的にデザインすることで、生活空間全体の質を高めることを目指した。

主な代表作とその特徴・エピソード

サヴォア邸(1931年)

パリ郊外ポワシーに建つこの住宅は、近代建築の五原則を完璧に体現した作品。白い箱が宙に浮かぶような外観は、20世紀住宅建築の記念碑的存在となった。建築主との度重なる衝突にもかかわらず、妥協することなく理想を追求した結果、建築史に残る傑作が誕生した。

ユニテ・ダビタシオン(1952年)

マルセイユに建つ集合住宅は、337戸の住戸に加え、商店街、保育園、屋上庭園を備えた「垂直の田園都市」。粗い打ち放しコンクリート(ベトン・ブリュット)の力強い表現は、ブルータリズム建築の出発点となった。

ロンシャンの礼拝堂(1955年)

正式名称ノートルダム・デュ・オー礼拝堂。曲線的な屋根と厚い壁に穿たれた不規則な開口部が、神秘的な光の空間を創出。機能主義者と見なされていたル・コルビュジエの、より自由で彫刻的な側面を示す傑作。

LCシリーズ(1928-1929年)

LC2(グラン・コンフォール)をはじめとする一連の家具は、建築的思考を家具デザインに応用した革新的作品群。特にLC4シェーズロングは「休息のための機械」として、人間工学と造形美を見事に融合させた。

功績・業績

1928年、近代建築国際会議(CIAM)の創設メンバーとして、モダニズム建築の国際的普及に貢献。アテネ憲章の起草に中心的役割を果たし、都市計画の新たな指針を示した。

2016年、日本の国立西洋美術館を含む7か国17作品が「ル・コルビュジエの建築作品」として世界遺産に登録。大陸を超えた建築群が一括して登録される初の事例となり、その普遍的価値が認められた。

評価と後世への影響

ル・コルビュジエは「建築か革命か」という問いを投げかけ、建築による社会改革を志向した。その理念は世界中の建築家に影響を与え、丹下健三、前川國男など日本の建築家も直接薫陶を受けた。一方で、画一的な都市計画思想は後に批判の対象となり、ジェイン・ジェイコブスらによって人間的スケールの喪失が指摘された。

しかし、その功罪を超えて、20世紀建築の方向性を決定づけた巨人として、その遺産は今も建築界に生き続けている。「建築とは光のもとで繰り広げられる、巧みで正確で壮麗な量塊の戯れである」という彼の言葉は、建築の本質を突く普遍的な真理として、現代においても色褪せることがない。

作品一覧

建築作品(主要作品抜粋)

年月 区分 作品名 場所
1923年 住宅 ラ・ロッシュ=ジャヌレ邸 パリ、フランス
1923年 住宅 小さな家(母の家) コルソー、スイス
1927年 住宅 ヴァイセンホフ・ジードルンクの住宅 シュトゥットガルト、ドイツ
1928年 住宅 ギエット邸 アントワープ、ベルギー
1931年 住宅 サヴォア邸 ポワシー、フランス
1932年 集合住宅 イムーブル・クラルテ ジュネーヴ、スイス
1952年 集合住宅 ユニテ・ダビタシオン マルセイユ、フランス
1955年 宗教建築 ロンシャンの礼拝堂 ロンシャン、フランス
1953年 住宅 カップ・マルタンの休暇小屋 ロクブリュヌ=カップ=マルタン、フランス
1953-1965年 都市計画 チャンディガール都市計画 チャンディガール、インド
1956年 宗教建築 ラ・トゥーレット修道院 エヴー、フランス
1959年 美術館 国立西洋美術館 東京、日本
1959年 住宅 クルチェット邸 ラ・プラタ、アルゼンチン
1965年 文化施設 フィルミニの文化センター フィルミニ、フランス

家具作品(LCシリーズ)

年月 区分 作品名 ブランド
1928年 椅子 LC1 バスキュラントチェア Cassina
1928年 ソファ LC2 グラン・コンフォール(プティ) Cassina
1928年 ソファ LC3 グラン・コンフォール(グラン) Cassina
1928年 椅子 LC4 シェーズロング Cassina
1928年 テーブル LC6 ダイニングテーブル Cassina
1928年 椅子 LC7 回転椅子 Cassina
1928年 スツール LC8 回転スツール Cassina
1928年 スツール LC9 バスルームスツール Cassina
1928年 テーブル LC10-P 長方形ローテーブル Cassina
1928年 テーブル LC11-P テーブル Cassina
1925年 テーブル LC12 テーブル(ヴィラ・ラ・ロッシュ用) Cassina
1929年 椅子 LC13 フォートゥイユ・ワゴン・フュモワール Cassina
1952-1959年 スツール LC14 タブレ(カバノン/メゾン・ド・ブレジル) Cassina
1953年 テーブル LC15 テーブル Cassina

Reference

The Architectural Work of Le Corbusier - UNESCO World Heritage Centre
https://whc.unesco.org/en/list/1321/
Le Corbusier - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Le_Corbusier
Cassina - Le Corbusier Collection
https://www.cassina.com/ww/en/maestri/le-corbusier.html
Le Corbusier's Furniture - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Le_Corbusier's_Furniture
UNESCO adds 17 Le Corbusier projects to World Heritage List - Dezeen
https://www.dezeen.com/2016/07/19/unesco-adds-17-le-corbusier-projects-world-heritage-list/
LC4 Chaise Lounge – Design Within Reach
https://www.dwr.com/living-lounge-chairs/lc4-chaise-lounge/6515.html
Le Corbusier: 10 Iconic Works That Shaped Modern Architecture
https://parametric-architecture.com/le-corbusier-10-iconic-works/
Gerosa Design - LC Le Corbusier Collection
https://www.gerosadesign.com/en/design-cassina-lc-le-corbusier-collection.php