LC4 シェーズロングは、1928年にル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンの三人のデザイナーによって創造された、モダニズムデザインを象徴する名作である。「休養のための機械」というル・コルビュジエの哲学を体現するこの寝椅子は、人間工学に基づいた流線形のフォルムと、無段階調節が可能な革新的な構造によって、快適性と機能美を高次元で融合させている。1929年のパリ・サロン・ドートンヌにおける発表以来、20世紀を代表する家具デザインとして、世界中のデザイン愛好家から称賛され続けている。

デザインの誕生と背景

ヴィラ・チャーチのための創作

LC4 シェーズロングは、当初ル・コルビュジエが設計したヴィル・ダヴレーのヴィラ・チャーチの内装のために構想された。1928年、ル・コルビュジエは従兄弟であるピエール・ジャンヌレとともに、建築家シャルロット・ペリアンをアトリエに迎え入れた。ペリアンの参加は、ル・コルビュジエが本格的に家具デザインに取り組む転機となった。この協働は、建築と家具を統合的に捉える、モダニズムの理想を実現する試みであった。

シャルロット・ペリアンの貢献

LC4の誕生において、シャルロット・ペリアンの役割は特筆に値する。彼女は地元の金属加工専門会社アワー・アンド・ラバディと協力し、サン・シュルピスの自身のアトリエで最初のプロトタイプを製作した。ペリアン自身がキャンバスと革で張地を施し、ル・コルビュジエとジャンヌレに提示したのである。ペリアンは後に回想録で「私たちの椅子のデザインは、人体の姿勢に直接関連していましたが、同時に建築、設定、威厳の要求によっても決定されていました」と述べている。彼女は疲れた兵士が背中を伸ばし、足を木に預け、バックパックを頭の下に置く姿勢からインスピレーションを得たという。

1929年サロン・ドートンヌでの発表

1929年、パリのサロン・ドートンヌにおいて、LC4はル・コルビュジエのコンセプト展示「住宅の設備」の一部として初めて公開された。この時、シャルロット・ペリアン自身がLC4に横たわる有名な宣伝写真が撮影された。当時としては大胆とされる短いスカートと、ボールベアリング製のネックレスを身につけたこの写真は、ペリアン自身が演出したものであり、製品の注目度を高めることに成功した。展示会での反応は賛否両論で、機械的な鉄骨フレームの構造は従来の美学観念を覆し、多くの人々を当惑させた。しかし、デザイン愛好家や一部の批評家は、その革命的で型破りなデザイン言語と並外れた快適性を高く評価した。

デザインの特徴とコンセプト

「休養のための機械」という哲学

ル・コルビュジエは家具を人間の延長、すなわち人工の四肢として捉えていた。彼は著書『装飾芸術論』において、家具を伝統的な教義から解放され、純粋で独立したオブジェとして論じた。LC4はこの思想を具現化した「休養のための機械」として構想され、人間のニーズを設計の中心に据えるという彼の建築哲学が見事に応用されている。「装飾のない装飾芸術」というスローガンに集約される美学が、この作品には貫かれている。

革新的な構造システム

LC4の構造は、極めて独創的である。下部の安定したH型ベースと、その上に載る可動式の弓形フレームという二つの主要部分から成る。弓形フレームは二本の半円形のパイプによって支えられ、これにより使用者は垂直から完全なリクライニングまで、無段階で角度を調整することができる。このシステムは追加的な機構を必要とせず、ベースのクロスバーに装着されたゴムストッパーによる摩擦力だけで、あらゆる傾斜角度において安定性が保証される。この簡潔さと機能性の融合が、LC4の天才性を物語っている。

人間工学と美的完成度

LC4の流麗なカーブは、人体の自然な曲線を精密に研究した結果である。綿密に計算された背もたれのカーブは、身体を優しく包み込み、調節可能な首用クッションが頭部に快適なサポートを提供する。クロームメッキまたは黒塗装の鋼管フレームと、レザー、毛皮、またはキャンバス地の張地との対比は、工業的な力強さと有機的な柔らかさを見事に調和させている。幾何学的純粋性と人間工学的意図の完璧なバランスが、時代を超越した美しさを生み出している。

製造と普及

トーネットからカッシーナへ

LC4は当初、ペリアンのプロトタイプをもとにトーネット社によって製造された。初期の名称は「Chaise longue à Reglage Continu(無段階調節シェーズロング)」であった。しかし、LC4が真に世界的な名声を獲得したのは、1965年にイタリアの名門家具メーカー、カッシーナがその製造権を取得してからである。カッシーナはペリアンの指導のもと、この作品を「LC4 シェーズロング」として再発行し、「イ・マエストリ(巨匠たち)」コレクションの一部として位置づけた。以来、LC4はカッシーナのベストセラー商品の一つであり続けている。

正規品の証明

カッシーナは現在もLC4の唯一の正規ライセンス製造者である。各製品には、デザイナーの署名と固有の識別番号が刻印され、真正性が保証されている。2022年9月、カッシーナはこの作品の名称を本来のフランス語「Chaise longue à reglage continu」に戻し、2023年には「イ・マエストリ」コレクション50周年を記念して、ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンの遺族および財団との合意のもと、オリジナルのフランス語名称への復帰を完了した。

文化的影響とエピソード

美術館コレクションと評価

LC4 シェーズロングは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のパーマネントコレクションに収蔵されている。20世紀家具デザインの最も象徴的な作品の一つとして、世界中の主要美術館やデザインミュージアムで展示されており、デザイン史における不朽の地位を確立している。その影響力は家具デザインの枠を超え、モダニズム運動全体の理念を体現する文化的アイコンとなっている。

ポップカルチャーにおける存在

LC4は数多くの映画やテレビドラマに登場し、洗練された現代的なライフスタイルの象徴として描かれてきた。特に著名な例として、人気テレビドラマ「マッドメン」において、主人公ロジャー・スターリングのオフィスに置かれたLC4が、彼がリラックスし思索を巡らせる場面で効果的に使用された。このように、LC4は「休養のための機械」としての役割を、フィクションの世界においても見事に果たしている。

特別限定版

カッシーナは、シャルロット・ペリアンとル・コルビュジエの南米への頻繁な旅を記念して、2017年に南米産レザーを使用した限定版を発売した。また、ルイ・ヴィトンとのコラボレーションによる、シャルロット・ペリアンへのオマージュとしての特別限定版「CP LC4」も存在する。これらの限定版は、LC4の普遍的な魅力と、現代においてもなお革新を続ける可能性を示している。

後世への影響

LC4 シェーズロングは、90年以上を経た現代においても、その先進性と美しさを失っていない。機能主義と美学の完璧な統合、人間工学への深い理解、そして装飾を排した純粋なフォルムの追求という、モダニズムの理念を体現するこの作品は、現代のデザイナーたちに多大な影響を与え続けている。LC4は単なる家具を超えて、デザインにおける思想と実践の統合を示す、永遠の教科書として存在し続けているのである。シャルロット・ペリアン、ピエール・ジャンヌレ、そしてル・コルビュジエという三人の巨匠の協働から生まれたこの傑作は、真の意味で時代を超越したデザインの力を証明している。

基本情報

名称	LC4 シェーズロング / Chaise longue à reglage continu
デザイナー	ル・コルビュジエ / ピエール・ジャンヌレ / シャルロット・ペリアン
デザイン年	1928年
発表	1929年パリ・サロン・ドートンヌ
製造	カッシーナ(1965年〜)
分類	シェーズロング / ラウンジチェア
素材	クロームメッキ鋼管フレーム、レザー / 毛皮 / キャンバス地張り、黒塗装鋼管ベース
寸法	幅約160cm × 奥行約56-58cm × 高さ約67-70cm
収蔵	ニューヨーク近代美術館(MoMA)他