LC6テーブルは、20世紀を代表する建築家ル・コルビュジエ、その従兄弟であり協働者のピエール・ジャンヌレ、そして若き才能シャルロット・ペリアンの三者による共同デザインとして、1928年に誕生した。近代建築の五原則を提唱したコルビュジエが、その建築思想を家具という領域へと昇華させた記念碑的作品である。

本作品は、当時としては革新的なスチールパイプと透明ガラスという工業素材を大胆に採用し、装飾を排した機能美を追求している。その明快な構造と洗練されたプロポーションは、発表から一世紀近くを経た今日においてもなお、モダンデザインの規範として世界中の建築家やデザイナーから敬意を集め続けている。

特徴・コンセプト

LC6テーブルの設計思想は、ル・コルビュジエが唱えた「住宅は住むための機械である」という理念を体現している。構造は極めて合理的であり、楕円形または矩形のガラス天板を、精緻に計算されたスチールパイプの脚部が支える明快な構成をとる。

素材と構造

脚部には、当時の航空機産業や自動車産業で用いられていたスチールパイプを採用している。この選択は、伝統的な木工家具からの決別を意味すると同時に、工業生産による民主化されたデザインの可能性を示唆するものであった。天板には透明ガラスを用い、視覚的な軽やかさと空間の連続性を実現している。

脚部の接合部には、高度な精度で成形されたキャストを使用し、構造的な堅牢さと美的な一貫性を両立させている。各脚には微調整可能なアジャスターが設けられ、あらゆる床面において水平を確保することが可能である。

デザイン哲学

本作品において最も注目すべきは、装飾と構造の完全なる一体化である。装飾的要素は一切存在せず、すべての造形要素が機能的必然性から導き出されている。この「誠実な構造」というアプローチは、後のモダニズム家具デザインに決定的な影響を与えることとなった。

また、ガラス天板を通して脚部の構造が透視できる設計は、建築における「自由な平面」の概念を家具スケールで表現したものと解釈することができる。空間を遮断することなく、むしろ空間の一部として存在するこのテーブルは、建築と家具の境界を溶解させる試みでもあった。

エピソード

LC6テーブルは、パリ郊外ヴィル=ダヴレーに建設されたヴィラ・チャーチ(Church邸)のためにデザインされた。この邸宅は、アメリカ人実業家ヘンリー・チャーチの依頼により1927年から1929年にかけて建設され、コルビュジエの住宅建築における実験の場となった。

1929年のサロン・ドートンヌ(パリ秋季展)において、「住居設備」と題された展示空間にて本作品は初めて公に披露された。この展示は、シャルロット・ペリアンが中心となって構成され、LC1からLC7に至る一連の家具群が、近代的な生活空間の提案として発表された。当時のパリ社会において、この革新的なデザイン言語は賛否両論を巻き起こしたが、その歴史的意義は今日では広く認められている。

シャルロット・ペリアンがコルビュジエのアトリエに参加したのは1927年のことである。当初、コルビュジエは女性デザイナーの参画に消極的であったとされるが、ペリアンの才能を認めた後は、家具デザイン部門の責任者として重要な役割を委ねた。LC6テーブルをはじめとするLC家具群は、この協働関係から生まれた成果である。

評価

LC6テーブルは、20世紀デザイン史において最も重要な家具作品の一つとして位置づけられている。ニューヨーク近代美術館(MoMA)をはじめとする世界の主要美術館がLCコレクションを永久収蔵品として所蔵しており、その文化的・芸術的価値は国際的に認知されている。

建築とインテリアデザインの融合という観点において、本作品は先駆的な意義を持つ。コルビュジエが提唱した「総合芸術としての建築」という理念を、実用的な家具という形式で具現化した点において、その重要性は計り知れない。

また、1964年よりイタリアの名門家具メーカー、カッシーナ社がル・コルビュジエ財団からの正式なライセンスのもとで製造を継続していることも、本作品の永続的な価値を証明している。現在に至るまで、オリジナルの設計図面に忠実な製造が続けられており、真正なモダンデザインの継承という観点においても模範的な事例となっている。

受賞歴・収蔵

  • ニューヨーク近代美術館(MoMA)永久収蔵品
  • ヴィトラ・デザイン・ミュージアム収蔵品
  • パリ装飾芸術美術館収蔵品
  • コンパッソ・ドーロ受賞(カッシーナ社のLCコレクションに対して)

基本情報

名称 LC6 / LC6テーブル
デザイナー ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアン
発表年 1928年(1929年サロン・ドートンヌにて発表)
製造元 カッシーナ(1964年より正規製造)
素材 スチールパイプ(エナメル塗装またはクローム仕上げ)、強化ガラス天板
サイズ展開 長方形タイプ(225×85cm)、楕円形タイプ(各種サイズ)
高さ 69-74cm(アジャスター調整可)
カラーバリエーション 脚部:ブラック、グレー、ブルー、グリーン、アイボリー等(エナメル)/クローム
原産国 イタリア