概要
S44シェルフは、マルセル・ブロイヤーが1932年に設計したブックシェルフである。スイス・ジュネーブに建つル・コルビュジエとピエール・ジャンヌレによる集合住宅「メゾン・クラルテ」のために設計された。クロムメッキのスチールパイプと木製の棚板を組み合わせる。現在はドイツのテクタが製造している。
特徴・コンセプト
2本のパイプで支える
4枚の棚板は、一対のクロムメッキスチールパイプによって支持される。側板を持たないため、棚の左右が開き、置いたものの奥行方向が見通せる。棚板の高さは調整できる。脚部は左右へ広く開いて接地し、側板のない構造で必要な安定を得ている。
木で同じ構成をつくろうとすれば、支柱の断面を大きくとる必要がある。金属のパイプに置き換えることで、支える部材を細く保ったまま棚板を渡せる。構造がそのまま外に現れ、隠された部分がない。
空間を塞がない寸法
幅140cm、高さ121cm、奥行37cm。高さが人の目線より低いため、部屋の中に置いても視線が上を越える。重い間仕切りを立てずに区画をつくりたいオフィスや居間に向く。棚板はアッシュ材またはオーク材の突板、あるいはブラック・ホワイトのラッカー仕上げから選べる。追加の棚板とクロムメッキのブックエンドがオプションで用意される。
エピソード
メゾン・クラルテは、ル・コルビュジエが手がけた集合住宅で、鉄骨構造とガラスのファサードを特徴とする。S44シェルフは、この建築のためにブロイヤーが設計した家具の一つである。
ブロイヤーはこの時期、ドイツを離れてスイスに滞在し、チューリヒの家具販売会社ヴォーンベダルフや家具メーカーのエンブル社と関わりながら仕事をしていた。1930年代前半のスイス滞在は、彼がスチールパイプからアルミニウムへと素材の探究を広げていく時期にあたる。
テクタは、バウハウス・アーカイブ(ベルリン)の認可のもとで製造していると説明しており、製品には1922年にオスカー・シュレンマーが考案したバウハウス・シグネットが付される。
評価と影響
ブロイヤーのスチールパイプ家具は、ワシリーチェア(B3)やチェスカ・チェア(B32)とともに語られることが多い。S44シェルフは、その素材と構造の考え方を収納家具に展開した作例である。側板を持たず光を遮らない構成は、現在の住宅やオフィスでも使われている。
マルセル・ブロイヤーの設計思想や経歴について詳しくはマルセル・ブロイヤープロフィールページをご覧ください。
テクタの歴史や他の製品について詳しくはテクタブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | S44シェルフ / S44 Shelf |
|---|---|
| デザイナー | マルセル・ブロイヤー(Marcel Breuer) |
| ブランド | テクタ(Tecta) |
| 発表年 | 1932年 |
| デザインの成立国 | ドイツ |
| 分類 | シェルフ/ブックケース |
| 主要素材 | クロムメッキスチールパイプ、アッシュまたはオークの突板(ラッカー仕上げも選択可) |
| サイズ | 幅140cm × 奥行37cm × 高さ121cm |
| 仕様 | 高さ調整可能な棚板4枚(追加棚板・ブックエンドはオプション) |
| 設計の背景 | メゾン・クラルテ(ジュネーブ、ル・コルビュジエ+ピエール・ジャンヌレ設計)のための家具 |
Reference
- S 44 | Tecta
- https://tecta.de/en/products/s-44