概要
B 9 は、マルセル・ブロイヤーが1925年から1926年にかけて設計した入れ子式のサイドテーブルである。クロムメッキ仕上げの曲げ鋼管の脚に矩形の天板を載せた構成で、高さの異なる4点が互いの下に滑り込む。バウハウス・デッサウ校の食堂に向けて設計され、現在もトーネットが生産を続けている。
特徴・コンセプト
脚を開いて入れ子にする
4点のテーブルは高さが段階的に異なり、幅もそれに応じて変わる。使うときは離して置き、使わないときは小さいものから順に大きいものの下へ収める。占有面積は最大の1点分にまで縮む。
脚の平面形はコの字で、一方の側面が開いている。この開いた側から次のテーブルが入るため、入れ子にするのに持ち上げる動作がいらない。脚を4隅に置けば横から差し込めず、上から重ねるしかなくなる。開いた辺をつくることが、この使い方を成立させている。
鋼管一本が脚と貫を兼ねる
フレームはクロムメッキを施した曲げ鋼管一本で、脚と貫を兼ねる。天板は矩形の板材で、現行品では塗装または着色仕上げのブナ材が選べる。部材は鋼管と板の二種類しかなく、接合部も最小限にとどまる。
プログラムの構成
4点にはそれぞれ B 9 a、B 9 b、B 9 c、B 9 d の型番が与えられ、単品でも購入できる。ほかに天板の仕様が異なる B 9 d/1、同じ構成をスツールに展開した B 9 Ha があり、2点組も用意されている。
エピソード
ブロイヤーは1925年から1928年まで、デッサウに移転したバウハウスで家具工房を率いた。この時期に鋼管という新しい素材を家具に用いる試みを進めており、トーネットによれば、デッサウの航空機メーカーであるユンカース社との近い関係が開発を早めたという。B 9 は棚や小家具とともに、その初期の設計に含まれる。
当初はバウハウス・デッサウ校舎の食堂のために設計された。同社の記述では、ヴァルター・グロピウスが手がけた学生用住居とマイスターハウスでも広く使われた。トーネットの1930/31年のカード式カタログには、B 9 のプログラム全体が掲載されている。同社は曲げ木の技術を19世紀から蓄えており、曲げ鋼管の量産にもその経験が生きた。
評価と影響
ブロイヤーは1935年にイギリスへ移ったのち、成形合板によるネストテーブル(アイソコン)を設計している。入れ子という考え方は共通するが、素材も製造元も別の製品である。同じ時期のチェスカ・チェア(B32)と同様、曲げ鋼管を構造材として扱っている。
美術館コレクション
ニューヨーク近代美術館は、クロムメッキ鋼管とラッカー塗装合板による1925〜26年の4点一組を収蔵番号204.1950.1-4で登録している(アニー・バウマン博士からの寄贈)。同館の記録によれば、4点の高さは60.7cm、55.7cm、50.6cm、45.7cmで、奥行はいずれも38.7cmである。2008年から2009年の建築デザイン部門の展示替えや、2019年から2021年の「Design for Modern Life」展で公開された記録が残る。
マルセル・ブロイヤーの設計思想や経歴について詳しくはマルセル・ブロイヤープロフィールページをご覧ください。
トーネットの歴史や他の製品について詳しくはトーネットブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | B 9 ネストテーブル / B 9 Nesting Tables |
|---|---|
| デザイナー | マルセル・ブロイヤー(Marcel Breuer) |
| ブランド | トーネット(Thonet) |
| 発表年 | 1925〜1926年 |
| デザインの成立国 | ドイツ |
| 分類 | ネストテーブル/サイドテーブル |
| 主要素材 | クロムメッキ仕上げの曲げ鋼管、木製天板 |
| 構成 | 4点組(B 9 a / b / c / d)。単品でも展開 |
| 高さ | 45cm〜60cm(型番により異なる) |
| 関連モデル | B 9 d/1(天板仕様違い)、B 9 Ha(スツール) |
| 収蔵 | ニューヨーク近代美術館(204.1950.1-4) |
Reference
- Nesting Tables (model B9) | MoMA
- https://www.moma.org/collection/works/2641
- B 9 | Thonet
- https://www.thonet.de/en/products/b-9