USMハラー:建築の構造思想から生まれたモジュール式家具

USMハラーは、1963年にスイスの建築家フリッツ・ハラーとUSM社3代目経営者パウル・シェアラーの協働によって生まれたモジュール式家具システムである。クロームメッキの真鍮製ボールコネクター、スチールチューブ、そしてパウダーコーティングを施したスチールパネルという三つの基本要素から構成され、自由な組み合わせと再構成を可能にする。半世紀以上を経た現在も、住宅やオフィスで世界的に使われ続けている。

その出発点は、建築と家具の境界を越えた試みにあった。建築家ハラーが手がけた鉄骨モジュラー建築の原理を家具へ応用するという発想は、収納家具の枠を超えて、空間を構成する要素としての家具という考え方を示した。2001年にはニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久コレクションに加えられている。

構造と素材

USMハラーの構造は、徹底したシンプルさのなかに高い機能性をそなえている。システムを構成する三つの基本要素は、それぞれに適した素材と製法でつくられている。

フレームを形づくるスチールチューブにはクロームメッキが施され、耐久性と光沢を両立する。チューブを接合するのは、クロームメッキされた真鍮製のボールコネクターである。この球状の接合部はどの方向からもチューブを接続でき、三次元的な拡張を自在に行える点が、USMハラー最大の特徴であり、誕生以来変わらず採用されている。空間を区切り収納を形づくるパネルはスチール製で、パウダーコーティングによる表面処理が施される。

標準色は14種類が用意され、ピュアホワイトやライトグレーといったニュートラルトーンから、スチールブルー、ゴールデンイエロー、USMルビーレッドといった鮮やかな色まで幅広い。パネルの代わりにガラスパネルを選んでディスプレイ家具として用いることもでき、オフィス環境向けに音響に配慮したアコースティックパネルも用意されている。

モジュール性と拡張性

USMハラーの価値は、そのモジュール性がもたらす柔軟性にある。一度組み立てた家具を分解し、異なる構成で組み直すことができるため、引越しや生活環境の変化、使用目的の変更に応じて、同じ部品を用いながら異なる形態へと変えていける。

コンパクトなサイドボードから始め、パーツを追加することで壁一面を覆う大型の収納へと拡張できる。収納家具にとどまらず、デスクやテーブル、メディアコンソールなど多様な用途にも対応する。ドアや引き出し、棚板、仕切り板といったアクセサリーを組み合わせることで、使い手が自らのニーズに合わせて構成を決められる。

特筆すべきは互換性の高さである。1960年代に製造された初期のパーツと最新の製品を組み合わせて使うことができ、半世紀以上にわたり一貫した規格が維持されている。これは、流行に左右されない設計と安定した製造品質があってこそ実現できることである。

評価と環境への取り組み

2001年、USMハラーシステムはニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久コレクションに加えられた(収蔵番号1411.2001、「Haller System, 1963」として登録)。家具としての実用性を超えて、応用芸術の領域における到達点として認められたことを示すものである。

環境面では、2007年にグリーンガード認証を取得している。これは製品から放出される化学物質や粒子状物質が低レベルであることを示す認証で、USMハラーはヨーロッパの家具製品として初めてこの基準をクリアした。あわせて、必要な部分のみを交換・再構成できるモジュール性は、製品を長く使い続けることを可能にし、資源の消費を抑える点でも評価されている。製造はスイスのミュンジンゲンにある工場で行われ、修理やメンテナンス、部品の追加にも対応する体制が整えられている。

基本情報

製品名 USMハラー モジュールファニチャー(USM Haller)
デザイナー フリッツ・ハラー、パウル・シェアラー
ブランド USM(ユーエスエム)
開発年 1963年(ボールコネクター特許:1965年)
製造国 スイス(ミュンジンゲン)
素材 フレーム:クロームメッキスチールチューブ
コネクター:クロームメッキ真鍮
パネル:パウダーコーティングスチール
カラー 14種類の標準色(ピュアホワイト、ライトグレー、ミッドグレー、アンスラサイト、グラファイトブラック、スチールブルー、ジェンチャンブルー、USMグリーン、ゴールデンイエロー、ピュアオレンジ、USMルビーレッド、USMブラウン、USMベージュ、オリーブグリーン)
特徴 モジュール式、組み替え・拡張可能、ボールコネクターシステム
収蔵 ニューヨーク近代美術館(MoMA)永久コレクション(2001年、収蔵番号1411.2001)
認証 グリーンガード認証(2007年・ヨーロッパ家具製品初)