概要
.03チェアは、マールテン・ヴァン・セーヴェレンが1998年にヴィトラのために設計したスタッキングチェアである。座面と背もたれを一体成型のポリウレタンで構成し、フレームには金属を用いる。ヴィトラとヴァン・セーヴェレンの協働から生まれた最初の量産チェアにあたる。
特徴・コンセプト
背もたれにばねを組み込む
背もたれの内部には板ばね(リーフスプリング)が組み込まれている。身体を後方へ傾けると背もたれの上部がわずかにたわみ、姿勢の変化を受け止める。可動部品を持たない一体成型の椅子では、たわみは素材の弾性だけで決まる。板ばねを入れることで、たわむ量と戻る力を設計の側で決められる。
二種類の素材で構成する
主要な素材は、金属のフレームとポリウレタンの座部だけである。座面と背もたれは、表面に皮膜が形成されるインテグラルスキンフォームで一体成型される。詰め物と張り地を別に持たないため、部材の層が減る。フレームは後脚にスチールパイプ、前脚にアルミニウムの押出材を用い、仕上げは黒または銀の粉体塗装、あるいはクロームめっきから選べる。
積み重ね
スタッキング仕様では、床置きでも専用の台車を使っても複数脚を重ねられる。オフィス、会議室、講堂、カフェテリア、図書館など、使わない時にまとめて収める必要がある場所で用いられる。
エピソード
ヴァン・セーヴェレンが最初の椅子を設計したのは1986年である。以来、自身の工房で少量の生産を続けながら、椅子という形式を繰り返し検証していた。ヴィトラとの協働が本格的に始まったのは1996年で、.03チェアはそこから生まれている。自身の工房での製作からヴィトラでの量産へという移行が、この椅子の背景にある。
2011年に竣工したコーネル大学ミルスタイン・ホールには、多数の.03チェアが導入された。
評価と影響
板ばねを組み込むことで、一体成型でありながら背もたれのたわみを設計できるようにした点が特徴として挙げられる。同じヴィトラのティップ・トンは、可動部品を持たずに姿勢の変化に対応するという点で近い方向にある。
美術館コレクション
ニューヨーク近代美術館は、ポリウレタンとスチールパイプによる.03チェアを収蔵番号387.2009.1-2で登録している(製造元からの寄贈。同館は制作年を1999年としている)。
マールテン・ヴァン・セーヴェレンの設計思想や経歴について詳しくはマールテン・ヴァン・セーヴェレンプロフィールページをご覧ください。
ヴィトラの歴史や他の製品について詳しくはヴィトラブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | .03チェア / .03 Chair |
|---|---|
| デザイナー | マールテン・ヴァン・セーヴェレン(Maarten Van Severen) |
| ブランド | ヴィトラ(Vitra) |
| 発表年 | 1998年(美術館の記録では1999年) |
| デザインの成立国 | ベルギー |
| 分類 | チェア/スタッキングチェア |
| 主要素材 | 座面・背:ポリウレタン(インテグラルスキンフォーム、一体成型)/フレーム:スチールパイプ(後脚)、アルミニウム押出材(前脚) |
| 機構 | 背もたれに板ばねを内蔵 |
| 仕上げ | 粉体塗装(黒・銀)、クロームめっき |
| スタッキング | 可(専用台車あり) |
| 収蔵 | ニューヨーク近代美術館(387.2009.1-2) |
Reference
- .03 Chair | MoMA
- https://www.moma.org/collection/works/125768
- .03 | Vitra
- https://www.vitra.com/en-us/product/details/03