このページについて
Sチェアは、トム・ディクソンが1987年に設計した椅子である。スチールの骨組みがS字の曲線を描き、そこへ編んだ草や籐、革などを巻く。カッペリーニが1991年から製造している。設計者自身のブランドによる別の仕様もある。
このページでは、2つの仕様の違い、選べるカバーの素材、座り方と設置の条件、手入れ、購入できる場所を扱う。設計の成り立ちについては紹介ページを参照されたい。
トム・ディクソンの設計思想や経歴について詳しくはトム・ディクソン プロフィールページをご覧ください。
Sチェアのデザインストーリーについて詳しくはSチェア紹介ページをご覧ください。
正規品の基本情報:仕様・サイズ・素材
Sチェアには、カッペリーニが製造する仕様と、2016年に設計者自身のブランドからリリースされたリデザイン版の二系統が存在する。ここではカッペリーニ版を中心に記し、リデザイン版についても併記する。
| 正式名称 | S-Chair(エスチェア) |
|---|---|
| 製造ブランド | カッペリーニ(イタリア) |
| サイズ(リデザイン版) | 幅500 × 奥行630 × 高さ967mm |
| 座面高 | 約470mm |
| 重量 | 約12.5kg |
| フレーム | 粉体塗装のスチール |
| 脚部 | カッペリーニの仕様は樹脂、設計者自身のブランドによる仕様は鋳鉄による |
| カバー選択肢(カッペリーニ版) | 編んだ草、籐、革、布から選ぶ |
| カバー(リデザイン版) | 硬さの異なる2種のフォームに、ウールのカバーを掛ける |
| 制作時間(ラッシュ版) | 編む工程を手作業で行う |
| 参考価格帯(税込目安) | カッペリーニは価格を公表していない(2026年8月19日確認)。正規取扱店への問い合わせによる。カバーの素材で価格が変わり、輸入品のため為替の影響も受ける |
| 製品保証 | 2年(正規品の場合) |
| 収蔵美術館 | MoMA Sチェア(1991年) 収蔵番号 457.1997/V&A Sチェア(1987年) 収蔵番号 W.6-1993 |
仕上げオプションの詳細
Sチェアの最大の魅力のひとつは、同一のスチールフレームに異なる素材を纏わせることで、まったく異なる表情を生み出す多義性にある。カッペリーニ現行モデルでは、以下の仕上げオプションが用意されている。
- ラッシュ(marsh straw)版
- オリジナルに最も近い仕上げ。湿地帯で採取された藁(ラッシュ)を職人が一本一本手作業で編み込む。一脚あたり6時間以上を要する緻密な手仕事であり、Sチェアの原点となる素材である。自然素材ならではの温かみと素朴な風合いが特徴。
- 籐(ラタン)版
- ラッシュよりもやや光沢のある質感を持つ籐を用いた仕上げ。着色処理が施され、ラッシュ版とは異なる洗練された表情を見せる。耐久性においてもラッシュより優れている。
- レザー版
- エクストラレザー、スーパーレザー、ホワイト/ブラックスポッテッドレザーなど、カッペリーニの豊富なレザーコレクションから選択可能。レザーで覆われたSチェアは、より都会的でラグジュアリーな印象を呈する。
- ファブリック版
- エコペレ、フェルト、パンノ、オプティク、スモールドットなど、多様なファブリックから選択可能。カラーバリエーションが最も豊富で、空間に合わせた色彩の選択が容易である。
リデザイン版(2016年)について
2016年にトム・ディクソン自身のブランドからリリースされたリデザイン版は、オリジナルのS字フォルムを継承しながら、現代の製造技術と素材を活用して快適性を進化させたモデルである。ステアリングホイールからインスピレーションを得た鋳鉄製ベースが安定性を高め、硬質・軟質フォームの組み合わせとピュアウールカバーにより、より人間工学的な座り心地を実現している。カッペリーニ版の職人的な手仕事の美しさとは異なる、洗練されたモダンなアプローチである。
類似商品・競合との比較
曲線で身体を受ける椅子は、その曲線を何でつくるかで分かれる。骨組みに素材を巻くか、面そのものを成形するかによって、座面の交換の可否と手入れが変わる。
| 比較項目 | Sチェア | パントンチェア | CH24 ウィッシュボーンチェア |
|---|---|---|---|
| 曲線のつくり方 | スチールの骨組みに素材を巻く | 樹脂を成形する | 木を曲げる |
| 身体を受ける素材 | 編んだ草/籐/革/布から選ぶ | 樹脂そのもの | ペーパーコード |
| 素材の交換 | 張り替えになる | できない | 編み直しになる |
| 床との接し方 | 下端が細く絞られる | 面で接する | 4本の脚 |
| 重量 | 約12.5kg | 製品による | 軽い |
選び分けの目安
- 素材の質感を選びたい場合
- 編んだ草、籐、革、布から選べる。手触りと経年での変化が大きく異なる。
- 床との接地面を小さくしたい場合
- 下端が細く絞られ、床に接する範囲が狭い。面で接する椅子より、床の見え方が変わる。
- 軽さを求める場合
- 約12.5kgと、この寸法の椅子としては重い。頻繁に動かす用途には向かない。
使用感と設置条件
2つの仕様
カッペリーニが製造する仕様では、スチールの骨組みに編んだ草、籐、革、布のいずれかを巻く。脚は樹脂による。
設計者自身のブランドによる仕様では、硬さの異なる2種のフォームにウールのカバーを掛ける。脚は鋳鉄による。素材の構成が異なるため、座り心地と手入れの方法も変わる。
座り方
座面高は約470mm。S字の曲線が背中から腰、脚へと連続する。詰め物を持たない仕様では、巻いた素材が直接身体に当たる。
編んだ草や籐の仕様では、編み目の凹凸が感触として出る。薄い衣服では、この差が現れる。
設置に要する寸法
幅500×奥行630×高さ967mm。背もたれが高く、一般的なラウンジチェアより上方に伸びる。
下端が細く絞られ、床に接する範囲が狭い。柔らかい床材では、荷重が集中して跡が残りやすい。重量は約12.5kgある。
経年変化とメンテナンス
素材ごとに起きること
編んだ草は乾燥すると脆くなり、切れることがある。日光を受けると色が変わる。湿度の低い環境では、切れが早く現れる。
籐は編んだ草より丈夫だが、乾燥すると同様に脆くなる。荷重で編み目が緩む。
革は使用によって色と艶が変わる。乾燥するとひび割れるため、油分を補う。
骨組みの粉体塗装は、素材の下にあるため直接は擦れない。いっぽうで巻いた素材が傷んで露出した箇所では、塗膜の状態が見える。
日常の手入れ
- 編んだ草・籐
- 掃除機のブラシ付きノズルで埃を吸う。編み目に溜まった埃は柔らかい刷毛で払う。水拭きはしない。
- 革
- 乾いた布で埃を払う。年に数回、革用のクリームで油分を補う。
- 置き場所
- 直射日光と暖房の風を避ける。編んだ草と籐の乾燥を早める。
修理
巻いた素材が傷んだ場合、張り替えになる。S字の曲線に沿って巻く作業のため、専門の工程が要る。取扱店を通じて相談する。
どこで買うか
取扱店の調べ方
カッペリーニは公式サイトで製品情報を公開している。同社は価格を公表しておらず、正規取扱店への問い合わせによる。日本国内の正規取扱については、輸入代理店の案内を確認するのが確実である。
注文の際に決めるのはカバーの素材である。編んだ草の仕様は手作業で編む工程を含む。
実物を確認する
カバーの素材によって手触りと座り心地が大きく異なる。編んだ草、籐、革のいずれを選ぶかは、実物で確かめられるとよい。
高さ967mmという寸法と、床に接する範囲の狭さも、設置場所との関係で確かめておく。
中古の流通
1991年以降の個体が流通している。相場は年式、カバーの素材、状態で幅があり、一定していない。
確認箇所は、編んだ素材の切れと緩み、革のひび割れ、骨組みの曲がり、脚の状態である。カバーの張り替えができるかは、素材と傷みの程度による。
購入前チェックリスト
- 仕様の選択(カッペリーニ/設計者自身のブランド)
- カバーの素材(編んだ草/籐/革/布)
- 設置場所の寸法(幅500×奥行630×高さ967mm)
- 床材(下端が細く接地面が狭い。跡が残りやすい)
- 重量約12.5kg(頻繁に動かす用途には向かない)
- 直射日光と暖房の風を避けられる位置か
- 編んだ素材の手入れを継続できるか
- 中古の場合、編んだ素材の切れと緩み
よくある質問
- 価格はどのくらいですか?
- カッペリーニは価格を公表しておらず、正規取扱店への問い合わせによります(2026年8月19日確認)。カバーの素材で価格が変わり、輸入品のため為替の影響も受けます。
- どこで購入できますか?
- カッペリーニの公式サイトで製品情報を確認できます。日本国内の正規取扱については輸入代理店の案内をご確認ください。
- 2つの仕様はどう違いますか?
- カッペリーニが製造する仕様では、スチールの骨組みに編んだ草、籐、革、布のいずれかを巻き、脚は樹脂によります。設計者自身のブランドによる仕様では、硬さの異なる2種のフォームにウールのカバーを掛け、脚は鋳鉄によります。素材の構成が異なるため座り心地と手入れの方法も変わります。
- カバーはどの素材を選べばよいですか?
- 編んだ草、籐、革、布から選べます。手触りと経年での変化が大きく異なります。編んだ草は乾燥すると脆くなり切れることがあり、籐はより丈夫ですが同様に乾燥の影響を受けます。革は使用によって色と艶が変わります。
- 座り心地はどうですか?
- 座面高は約470mmで、S字の曲線が背中から腰、脚へと連続します。詰め物を持たない仕様では巻いた素材が直接身体に当たり、編んだ草や籐では編み目の凹凸が感触として出ます。薄い衣服ではこの差が現れます。
- 床に跡が残りませんか?
- 下端が細く絞られ、床に接する範囲が狭くなっています。柔らかい床材では荷重が集中して跡が残りやすくなります。重量は約12.5kgあります。
- 収蔵されている美術館はありますか?
- ニューヨーク近代美術館(S Chair、1991年、収蔵番号457.1997)と、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(S Chair、1987年、収蔵番号W.6-1993)が収蔵しています。
- 手入れはどうすればよいですか?
- 編んだ草と籐は掃除機のブラシ付きノズルで埃を吸い、編み目に溜まった埃は柔らかい刷毛で払います。水拭きはしないでください。革は乾いた布で埃を払い、年に数回クリームで油分を補います。直射日光と暖房の風は編んだ素材の乾燥を早めるため避けてください。