揮発性の高い溶剤に樹脂を溶かした塗料による塗装。溶剤が飛ぶことで塗膜になるため、乾いた塗膜も同じ溶剤で再び溶ける。
ラッカー塗装
ラッカー塗装とは、ニトロセルロースなどの樹脂を揮発性の高い溶剤に溶かした塗料による塗装のこと。溶剤が揮発することで塗膜が形成される。
解説
硬化の仕組みが他の塗装と根本的に異なる。化学反応を経ずに、溶剤が飛ぶことだけで塗膜になる。乾燥は速く、吹き付けから数十分で表面が乾く。この方式を溶剤揮発型と呼ぶ。日本では1926年に国産化され、スプレー塗装の導入とあいまって、それまで家具の主役だったセラックニスに代わる存在となった。
ここから重要な性質が導かれる。塗膜が固まったあとも、同じ溶剤をかければ再び溶けるのである。補修の際、新しく吹いた塗料が既存の塗膜を溶かして一体化するため、部分的な塗り直しが成立する。境目が残りにくく、傷んだ箇所だけを直せる。輸入アンティーク家具を扱う修理の現場で、いまもラッカーやセラックニスが使われるのはこの性質による。
塗膜は薄く仕上がり、木の導管が完全には埋まらないため、手で触れたときに木の凹凸が残る。原料のニトロセルロースが植物由来のセルロースを出発点とすることもあり、木質感を活かせることが木工用に用いられる理由になっている。使い込むうちに生じる小さな傷も、周囲の塗膜になじんでいく。
一方で、耐水性、耐摩耗性、耐候性はいずれも高くない。塗膜の硬さは鉛筆硬度でHB程度と、ウレタン塗装の2H程度に比べて軟らかい。熱い湯呑みや濡れたコップを置けば輪染みになり、アルコールや除光液のような溶剤で溶けることもある。直射日光が当たる場所では変色も進む。また、木材の内部から水分が抜けて木が痩せると、それに追従できない塗膜が凹凸や細かな割れとして現れる。塗膜が薄く、木の動きを大きく妨げないことの裏返しでもある。
語として使うときの注意
本来この語はニトロセルロースを主成分とする塗料を指す。しかし現在は、揮発性の溶剤を用いた速乾性の塗料全般を指す語としても使われており、アクリル樹脂を用いたスプレー塗料も「アクリルラッカー」と呼ばれる。後者は合成樹脂塗料であって、ニトロセルロースラッカーとは別の材料である。家具の仕上げについて調べる際は、どちらを指しているかを確認する意味がある。
Reference
- ウレタン塗料の基礎知識とウレタン塗装品の取り扱い方法(モノ・モノ/長澤良一)
- https://monomono.jp/?p=7891
- 木製品塗料の概略性能(和信化学工業)
- https://www.washin-chemical.co.jp/corporate/chemistry/coatingguide/cguide_05performance.html