Muuto(ムート)
Muuto(ムート)は、2006年にデンマーク・コペンハーゲンで創立された家具・インテリアブランドです。創業者はピーター・ボーネンとクリスチャン・ビエの2名で、スカンジナビアデザインの伝統を受け継ぎながら、新しい素材や発想によって現代の暮らしに合う製品を提案することを掲げています。ブランド名は、フィンランド語で「変化」「新たな視点」を意味する「muutos」に由来します。
Muutoは北欧の現代デザイナーとの協働を軸に、家具、照明、テキスタイル、インテリア小物まで幅広いコレクションを展開しています。審美性、機能性、クラフトマンシップという北欧デザインの価値観を基盤に、実験的な素材使いや色彩表現を取り入れた製品づくりで、ニューノルディックデザインを代表するブランドのひとつとして知られています。
ブランドの理念とデザイン哲学
Muutoが掲げる「新たな視点」とは、形態の新しさだけを指すものではなく、素材、製造技術、色彩、機能といった複数の要素において従来の枠組みを見直すことを意味しています。北欧デザインが培ってきた簡潔さと機能美を基盤としながら、現代的な感性を加えることで、長く使えて新鮮さも保つ製品を目指しています。
環境への配慮も早くから重視してきました。PEFC認証を受けた木材の使用や、従来のラッカー塗装から室内環境と人体への影響を抑える水性ラッカー塗装への切り替えなどに取り組んでいます。
色彩への関心も特徴のひとつです。社内に専門のカラーディレクションチームを置き、自然木のトーンにとどまらず、落ち着いたアースカラーからモダンな色合いまで幅広い色を展開しています。この色彩設計が、製品に温かみと現代性を与えています。
デザイナーとの協働
Muutoの製品は、北欧を中心とするデザイナーとの協働から生まれます。確立されたデザイナーから新進の才能まで幅広く起用し、それぞれの作風を製品に反映させています。
デンマークのデザイナー、セシリエ・マンツは創業当初からMuutoと関わってきました。コペンハーゲンの王立デンマーク芸術アカデミー(デザイン学科)を1997年に卒業し、ヘルシンキの芸術デザイン大学でも学んでいます。彼女が手がけたWorkshop ChairやWorkshop Tableは、原型的なスカンジナビアデザインに現代的な解釈を加えた製品です。マンツは、自分にとって意味のあるものをつくること、そして新しい製品をつくる明確な理由を持つことを設計の前提に置くと語っています。
ノルウェーのデザインデュオ、アンデシェン&ヴォルは、Outline SofaやIn Situ Modular Sofaを手がけています。イタリアのソファが持つ存在感と、北欧デザインの簡潔さを組み合わせた作風が特徴です。
ストックホルムを拠点とするTAF Studio(ガブリエラ・レンケとマティアス・ストールボム)は、70/70 TableやRime Pendant Lampを発表しています。デンマークを拠点とするIskos-Berlinによるファイバーチェア(Fiber Chair)シリーズは、ウッドファイバーとプラスチックの複合材を用いた製品です。これらのデザイナーとの協働では、デザイナーの構想を尊重しながら、Muutoの社内チームが技術的な実現性と市場性を調整し、製品としてまとめています。
代表的なコレクション
Iskos-BerlinによるFiber Chairシリーズは、木材を細かくしたウッドファイバーとプラスチックの複合材でシェルを成形した製品です。身体を包む曲面のシェルは、ダイニングからオフィスまで幅広い空間に合わせやすく、Wood Base、Tube Base、Swivel Baseなど複数のベースと、ファブリック・レザーの選択肢が用意されています。
照明では、Form Us With LoveによるUnfold Pendant Lampが代表作のひとつです。工業用照明のシェードに柔らかなシリコンゴムを用い、温かみのある光を生み出します。TAF StudioによるRime Pendant Lampは、どんぐりの形に着想した半透明のガラスシェードが特徴です。
ソファでは、アンデシェン&ヴォルによるOutline SofaとIn Situ Modular Sofaが知られています。Outline Sofaは輪郭線を生かした明快なプロポーションを持ち、In Situ Modular Sofaはモジュール構成によってさまざまな空間に対応します。
テーブルでは、トーマス・ベンゼンによるAround Coffee Table(2011年)、セシリエ・マンツによるAiry Coffee Table(2014年)、TAF Studioによる70/70 Tableが知られています。Aroundは天板の縁に回した木製のフレーム、Airyは細い金属脚と軽やかな天板、70/70はシンプルな天板と脚の構成が、それぞれの特徴です。
セシリエ・マンツによるWorkshop ChairとWorkshop Tableは、薄い背もたれのシェルとわずかに湾曲した座面が生むシルエットが特徴で、原型的なスカンジナビアデザインに遊び心を加えた製品です。
素材と環境への取り組み
Muutoは製品開発において、視覚や触感の魅力だけでなく、持続可能性と耐久性も重視しています。木材にはPEFC認証を受けた材料を採用し、表面処理では水性ラッカー塗装への切り替えを進めてきました。
Fiber Chairシリーズで用いられるウッドファイバーとプラスチックの複合材は、木材の利用と強度・質感の両立を図った素材です。耐久試験を経たこの素材は長期使用に適しており、製品を長く使うこと自体が環境負荷の低減につながるという考え方に基づいています。
沿革と国際的な展開
創業以降、Muutoは北欧の新興ブランドから国際的に知られるブランドへと成長しました。2018年には米国の家具メーカーKnoll(ノル)がMuutoを約3億ドルで買収し、Muutoはその傘下に入りました。Knollは2021年にハーマンミラーと統合してMillerKnoll(ミラーノル)となり、現在Muutoはそのグループに属しています。買収後もコペンハーゲンの本社とブランドの独立性は維持されています。
フラッグシップストアは、コペンハーゲン、ストックホルム、パリ、台北、東京に置かれています。2024年春に東京・北青山にオープンした「Muuto Store Tokyo」は日本初のフラッグシップストアで、世界で5番目の旗艦店にあたります。家具、照明、ラグ、アクセサリーまでフルラインナップを揃えています。Muutoはミラノサローネをはじめとする国際的な見本市にも継続的に参加し、新作を発表しています。
基本情報
| ブランド名 | Muuto(ムート) |
|---|---|
| 設立 | 2006年 |
| 創業者 | Peter Bonnén(ピーター・ボーネン)、Kristian Byrge(クリスチャン・ビエ) |
| 本社所在地 | デンマーク・コペンハーゲン |
| 親会社 | MillerKnoll(2018年にKnollが買収。2021年のハーマンミラーとの統合によりMillerKnoll傘下) |
| ブランド名の由来 | フィンランド語で「新たな視点」「変化」を意味する「muutos」から派生 |
| 主要デザイナー | Cecilie Manz(セシリエ・マンツ)、Thomas Bentzen(トーマス・ベンゼン)、Anderssen & Voll(アンデシェン&ヴォル)、TAF Studio、Iskos-Berlin、Form Us With Love、Margrethe Odgaard、JDS Architects他 |
| 製品カテゴリー | 家具(チェア、ソファ、テーブル等)、照明、テキスタイル、インテリアアクセサリー |
| フラッグシップストア | コペンハーゲン、ストックホルム、パリ、台北、東京 |
| 公式サイト | https://www.muuto.com |