Tile Cushion(タイル・クッション)は、デンマークのインテリアブランド「Muuto」が2016年に発表したクッションです。ノルウェーを代表するデザインデュオ、アンダーセン&ヴォル(Anderssen & Voll)によってデザインされた本作は、伝統的な北欧のテキスタイル技術と現代的なデザイン感覚を融合させた、革新的なホームアクセサリーです。

製品名が示すとおり、タイルのような幾何学的パターンが特徴的な本作は、ノルウェーの歴史ある織物工場「Gudbrandsdalens Uldvarefabrik(グドゥブランスダーレン・ウルドヴァーレファブリック)」との緊密な協業により実現しました。1887年創業の同工場が持つ伝統的な織物技術と、Muutoの革新的なデザイン哲学、そしてアンダーセン&ヴォルの創造性が見事に融合し、単なるクッションを超えた芸術的な作品が誕生したのです。

特徴・コンセプト

Tile Cushionの最大の特徴は、特別に開発された二重織り技術によって生み出される立体的な視覚効果にあります。遠くから見ると単色に見えるパターンは、近づくにつれて複雑で豊かなディテールを露わにし、見る角度や距離によって異なる表情を見せます。この視覚的な奥行きは、単純な染色パターンでは決して実現できない、織物ならではの魅力です。

革新的な製造技術

本製品のために特別に開発された織り技術は、カラフルな二重織りを黒い底面織りの上に重ね、3つの色を結合させることで、テキスタイルに繊細なニュアンスを生み出しています。この複雑な織り構造により、光の当たり方によって変化する陰影と、触れたときの豊かなテクスチャーが実現されています。

素材へのこだわり

外側のカバーは100%純ウールで製作されており、自然素材ならではの温かみと耐久性を兼ね備えています。ウールの持つ天然の撥水性、防汚性、そして通気性により、日常的な使用に適した実用性も確保されています。中材にはフェザーとポリエステルの混合素材を採用し、適度な弾力性と形状保持性を実現しています。

スカンジナビアデザインの新たな視点

Muutoの名前の由来であるフィンランド語の「muutos(新しい視点)」という理念を体現した本作は、伝統的なスカンジナビアデザインの価値観を尊重しながら、現代的な解釈を加えています。機能性、品質、職人技という北欧デザインの核心的価値を維持しつつ、新しい技術と創造的思考によって、これまでにない表現を実現しています。

デザインの背景とエピソード

Tile Cushionの開発は、Muuto、アンダーセン&ヴォル、そしてGudbrandsdalens Uldvarefabrikという三者の緊密な協業によって実現しました。この協業プロジェクトは、単なる製品開発を超えて、北欧のデザイン文化と伝統的な製造技術の継承という、より大きな意義を持っていました。

歴史ある織物工場との出会い

Gudbrandsdalens Uldvarefabrikは、1887年にノルウェーのリレハンメルに設立された、130年以上の歴史を持つ織物工場です。同工場は、ノルウェーの伝統衣装「ブナード」の生地製造でも知られ、その技術力と品質は国際的に高く評価されています。工場は創業以来、一貫して同じ場所で、原材料から完成品まですべての工程を自社内で行う垂直統合型の製造を続けており、この包括的な生産体制が、Tile Cushionの高い品質を支えています。

デザイナーの哲学

アンダーセン&ヴォルは、「良いプロダクトは伝統を構築し拡張しながら、同時にその伝統のルールを破る」という哲学を持っています。Tile Cushionにおいても、伝統的な織物技術を基盤としながら、現代的な幾何学パターンと革新的な織り技術を導入することで、この哲学を実現しています。彼らは「デザインに特別な関心を持たない人々にも、思考と内省を刺激する」ことを目指し、誰もが直感的に魅力を感じるデザインを追求しました。

評価と影響

Tile Cushionは、その革新的なデザインと高い品質により、国際的なデザイン界から高い評価を受けています。複雑な織り技術と洗練されたデザインの融合は、テキスタイルデザインの新たな可能性を示し、多くのデザイナーやメーカーに影響を与えました。

市場での反響

発売以来、Tile Cushionは世界中の高級インテリアショップやデザインストアで取り扱われ、その独特な視覚効果と高い品質により、デザイン愛好家やインテリアデザイナーから支持を受けました。幾何学的でありながら圧倒的でない繊細なデザインは、様々なインテリアスタイルに調和し、空間にアクセントを加える要素として評価されています。

サステナビリティへの貢献

100%天然ウールの使用と、長年使用できる耐久性の高い品質は、現代のサステナブルデザインの要求にも応えています。Gudbrandsdalens Uldvarefabrikの環境に配慮した製造プロセスと、Muutoの「長く愛用できるデザイン」という理念が組み合わさることで、使い捨て文化に対するアンチテーゼとしての価値も持っています。

デザイナーについて

アンダーセン&ヴォル(Anderssen & Voll)は、トルビョルン・アンダーセン(Torbjørn Anderssen)とエスペン・ヴォル(Espen Voll)によって2009年に設立されたオスロを拠点とするデザインスタジオです。両者は以前、影響力のあるデザイングループ「Norway Says」の創設メンバーとして活動していました。

デザイン哲学と作品

彼らのデザインは、感情的な要素を重視し、「魂を持つオブジェクト」の創造を目指しています。家具、照明、ホームアクセサリーなど多岐にわたる分野で活動し、Muuto、&Tradition、Menu、Kvadratなど、北欧を代表するブランドと協働しています。「私たちは教条的ではない。むしろオープンである。デザインを始めると、作品が独自の個性を帯びていく様子を観察する。それはまるで、無生物に生命を吹き込むようなものだ」という彼らの言葉は、デザインに対する独特なアプローチを表しています。

受賞歴

アンダーセン&ヴォルは、ノルウェーおよびスカンジナビアのデザイナー・オブ・ザ・イヤーに選出されたほか、Wallpaper* Design Award、Red Dot Award、iF Design Awardなど、数多くの国際的な賞を受賞しています。彼らの作品は、北欧デザインの新しい波を牽引する存在として、世界中で認知されています。

ブランドについて

Muuto(ムート)は、2006年にクリスチャン・ビュルゲ(Kristian Byrge)とピーター・ボネン(Peter Bonnén)によって設立されたデンマークのデザインブランドです。フィンランド語で「新しい視点」を意味する「muutos」から名付けられた同ブランドは、スカンジナビアデザインの伝統に新たな解釈を加えることをミッションとしています。

デザイン哲学

Muutoは、1950年代から60年代の北欧デザインマスターたちが確立した機能性、誠実さ、品質、職人技という価値観を基盤としながら、現代の素材、技術、創造的思考を組み合わせています。同ブランドは、才能ある若手デザイナーに創造の自由を与え、彼らの個人的なビジョンとスタイルを表現する機会を提供することで、スカンジナビアデザインの新章を開いています。

グローバルな展開

現在、Muutoの製品は世界600以上の店舗で取り扱われており、「アフォーダブル・ラグジュアリー」というポジショニングで、高品質なデザインをより多くの人々に届けています。トレンドを追うのではなく、長年にわたって機能的にも視覚的にも価値を保つデザインを追求することで、持続可能な消費文化の構築に貢献しています。

製品名 Tile Cushion(タイル・クッション)
デザイナー アンダーセン&ヴォル(Anderssen & Voll)
ブランド Muuto(ムート)
製造 Gudbrandsdalens Uldvarefabrik(ノルウェー)
発売年 2016年
サイズ 45cm × 45cm または 50cm × 50cm
素材 カバー:ウール100%/中材:フェザー・ポリエステル混合
カラー ブラック/ホワイト、グリーン、イエロー、タンジェリンなど
お手入れ方法 冷水で汚れを除去、30度のウールプログラムで洗濯、吊り干し